[春原久徳のドローントレンドウォッチング]Vol.07 2か月経過した改正航空法の申請許可状況とは?

2016-03-23 掲載

12月10日から施行された改正航空法は、3か月強が経過されましたが、2000件を超える申請が出されたとされ、その中で承認されたものは、空港事務所担当分(空港付近の飛行および150m以上の飛行)で298件(公表分)、国土交通省分(人口密集地の飛行および各飛行方法)で1173件(公表分)でした。

こういった形で改正航空法の承認件数は公表されているだけで1500件近くになっています。米国でのFAAの許可件数が1000件を超えたのは規制案提出後、5か月程度かかったことを考えると、日本での承認件数はかなりのハイペースであるといえます。日本ではこの承認に個人が含まれていますが、その割合は圧倒的に企業が多く、企業の活用が本格稼働かどうかは不明な部分はありますが、少なくとも活用のための準備をしてきているということがうかがえます。

また、国土交通省も今回、ドローンの規制をするというよりも、飛行に関して、その把握を行いたいという意向が感じられます。国土交通省は、申請者が非公表を示す以外の案件に関しては、許可・承認を行った内容の公表を行っています。

■許可・承認の内容(空港事務所担当分)

■許可・承認の内容(国土交通省担当分)

その公開されている情報の内訳を見ていきます(集計記録は2月末のもの)。

空港事務所担当分(飛行場周辺および150m以上の飛行申請)

全体的にどのぐらいの申請が上がってきているかは公表していないこともあり不明ですが、東京航空局管内分は、142件の承認があり、大阪航空局管内分は、156件の承認がありました。東西ほぼ均衡した形になっています。

1.申請者
suna_1-1

この空港事務所担当分の傾向は、改正航空法以前より、航空法内で規定されていた飛行場周辺や高度の飛行制限というものがあり、それまでもホビーでラジコンを行う個人やラジコンクラブが、空港事務所より許可を得ていたということもあり、その流れの中での申請許可が多く、全体の中での個人やラジコンクラブといった団体の比率が高くなっています。

 
2.申請条項
suna_1-2

131条-1A:飛行場周辺
131条-1B:150m以上

<申請条項の項目に関しては、複数の項目にまたがっています>
空港事務所が担当する許可承認は、飛行場周辺、150m以上の飛行となっています。飛行場周辺における飛行は、33件の許可・承認が下りています。 この飛行場周辺の申請がどのぐらい出されているのかは不明ですが、この部分の許可・承認に関しては飛行機との接触といった重大事故につながる危険性があるため、かなり慎重になっていると思われます。150m以上の飛行に関しては、276件の許可・承認が下りています。それ以前の航空法でも、航空路内では高度150mまででしたが、航空路外では高度250mまで飛行可能としていたため、航空路外であれば、250mまでの飛行許可は下りやすいと思われます。

3.地域

許可・承認が下りた飛行区域ですが、国土交通省担当の申請許可に関しては、東京や大阪といった地域が多いのですが、この空港事務所担当分に関しては、ほとんど東京や大阪といった地域での許可が下りていません。2ケタの許可・承認がある地域は、北海道、岩手、茨城、埼玉、静岡、愛知、兵庫、鹿児島などになっています。羽田や成田、関空、福岡などの主要空港は発着便数も多いといった状況や、ラジコンクラブといった活動が多い地域といったものと連動しているものと思われます。

許可機体
suna_1-3

ここでの許可機体は、自作機が多くなっています。このことからも、ホビーでの使用ということがみてとれます。(その他といった部分が多いのも、様々な機体をホビーで楽しんでいることが想像されます)自作機以外では、DJIが多くなっています。 DJIの中での機体数は以下になります。

suna_1-4

Phantom3やInspire1が多くなっていますが、特徴としては、S1000やS900、S800といった、別カメラなどのカメラを搭載するといったカスタマイズ可能な機体がある程度の割合が入っていることでしょう。

国土交通省担当分(人口集中地区での飛行および各種飛行方法の申請)

国土交通省では、人口集中地域の飛行や各種飛行条件に関して、許可・承認を行っています。申請件数は開示されていないため不明ですが、2000件を超える申請が出されていると言われており、その中で2月22日までに、1173件の許可・承認がされております。

1.申請者
suna_2-1

メディアの申請は15件を超え、大手メディアだけでなく、ケーブルテレビ等にまで広がってきています。この流れは今後広がっていくと思われます。企業は850社を超え、空撮サービス、測量、建設土木、機体メーカー等が多く許可・承認を得ていますが、それだけでなく、様々な分野への広がりを見せています。団体は、各協会や協議会だけでなく、地域のラジコンクラブや同好会に対しても、積極的に許可・承認がされています。公共での申請も増えており、各自治体だけでなく、警察や消防といった機関にも広がっています。学校に関しては、25大学で許可・承認を得ています。個人にも多く許可・承認がされており、その数は199件に至っています。

 
2.申請条項
suna_2-2
  • 132条-2:人口集中地域
  • 132条-2-1:日中(夜間飛行)
  • 132条-2-2:目視外
  • 132条-2-3:人・物件との距離(30m以内)
  • 132条-2-4:イベント
  • 132条-2-5:禁止物の輸送
  • 132条-2-6:物の落下
  • <申請条項の項目に関しては、複数の項目にまたがっています>

    人口集中地域における飛行は、914件の許可・承認が下りています。(全体の77.9%)。一方、飛行方法に関しては、一番多いのが、人・物件との距離(30m以内)で、622件(全体の53%)となっています。これは、やはり、多くの飛行が、30m以上離れての運用が難しい場所での運用になっていることを示すものかと思います。夜間飛行に関しても、209件(全体の17.8%)の許可・承認が下りています。目視外飛行に関しては、208件(全体の17.7%)。FPVでの操作を行う場合や自動航行を行う場合には、この目視外飛行の許可・承認が必要といわれていますが、案外、この件数が少ないと感じますが、申請が少ないのか、許可が下りていない案件があるのかは不明です。

    イベントでの飛行も77件の許可・承認が下りています。ここの許可は厳しいという予想があったのですが、安全対策に入念な措置が施されている場合には、許可・承認が下りるということになります。禁止物の輸送および物の落下に関しては、農薬散布のケースが多く、ヤマハやヤンマーといった今まで使用していた機体だけでなく、ヨコヤマコーポレーション、エンルート、丸山製作所の機体が評価されていることをうかがうことが出来ます。また、その他、物流や緊急搬送といった分野でも主に実証実験での許可・承認を受けています。

    3.地域
    suna_2-3

    飛行区域に関して、日本全国(条件がつく場合もあり)での許可・承認が75件与えられています。これはメディアや大手企業、および老舗の空撮サービス会社を中心に与えられています。また、個人に対して与えられているケースもあり、この辺の基準に関しては、もう少しオープンになってくることが望ましいように思います。

    個々の地域としては、東京が133件、神奈川が88件、千葉が74件と続いています。その他、40件を超える許可・承認は、静岡、愛知、北海道、大阪、福岡となっています。また、ほぼ全部の都道府県で許可・承認が行われています。

    4.許可機体
    suna_2-4

    機体メーカーに関しては、DJIが圧倒的に多くなっています(全体の68.5%)。空撮関連業務が多いということが想定されます。DJIの中での機体数は以下になります。

    suna_2-5

    Phantom3が450件に近くなっています。Inspire1が続いています。DJI以外では、エンルート、FreeflySystems、自律制御システム研究所、日本遠隔技術、クエストコーポレーション、ヤマハ発動機、メディックス、amuseoneselfと続いていますが、その他、多くのメーカーの機体が申請され、許可・承認を受けています。また、その中で自作機も許可・承認も100件を超えました。

    今後の飛行申請

    今回の許可・承認の件に関しては、提出側も承認側も手探りの状態で、お互いにかなりの労力でした。その中で、国交省の担当部署は多くの申請に対して、非常に丁寧に対応をしておりました。国交省は、「ドローンの申請許可のための専門部署新設」を発表し、来年度(2016年4月)より稼働する予定をしています。このかなりのハイペースで進んできた申請許可プロセスは、今後もそのペースは上がっていくでしょう。

    WRITER PROFILE

    春原久徳
    現在、ドローン関連コンサルティング、ドローンソフトウェアエンジニア育成事業、ドローンによる農業サービス開発を行っている。 三井物産のIT系子会社で12年、米や台湾企業とITコンポーネンツの代理店権の獲得および日本での展開を担当。その後、日本マイクロソフトで12年、PCやサーバーの市場拡大に向けて、日本および外資メーカーと共同で戦略的連携を担当。 2015年12月ドローン・ジャパン株式会社設立。『ドローンビジネス調査報告書2018』『ドローンビジネス調査報告書2018【海外動向編】』(株式会社インプレス)を調査執筆、Drone.jpでコラム[春原久徳のドローントレンドウォッチング]連載中。他にも各産業業界誌で多数執筆。農林水産省、NEDOや各業界団体でのドローン関連の講師を年間60~80回程度行っている。

    関連する記事

    [春原久徳のドローントレンドウォッチング]Vol.35 コロナ共存社会でのドローンビジネスの行方

    世界中で新型コロナウイルスの感染被害が拡大しており、日本でも同様だ。まずはこのパンデミックの収束に向けて、各国で都市封鎖などの措置が取られており、経済も混乱している。 ただこ... 続きを読む

    [春原久徳のドローントレンドウォッチング]Vol.34 2020年ドローンビジネスの現在

    2015年末にドローンを対象とした航空法が改正され、ドローンの活用に向けて、官民合わせて様々な投資や実証実験が行われてきた。2020年に向けて、5か年計画という形でプロジェクトが実... 続きを読む

    [春原久徳のドローントレンドウォッチング]Vol.33 実用化局面において「DJI」から学ぶこと

    ドローンの実用化を阻むもの 毎年「ドローンビジネス調査報告書」を出版しており、そろそろ2020年度版に向けての調査、インタビュー、執筆の時期となっている。 2019年は、“実証... 続きを読む

    [春原久徳のドローントレンドウォッチング]Vol.32 サウジアラビアの石油施設へのドローン攻撃の影響

    サウジアラビアの石油施設へのドローン攻撃 2019年9月にサウジアラビアの石油施設がドローンに攻撃される事件が起こって以来、筆者も各方面からコメントを求められる機会が増えた。ニュ... 続きを読む

    [春原久徳のドローントレンドウォッチング]Vol.31 ドローン実運用に向けて立ちはだかる壁

    実証実験から実運用のフェーズへ ドローンの業務活用において、2019年度から大きく色合いを変えてきている。それは今まで各企業において、実証実験を繰り返して行ってきたドローンの業務... 続きを読む