[ドローンレースへの道]Vol.06 世界規模で開催されるドローンレースの実情2016

2016-09-12 掲載

今、世界各地で開催されるドローンレース

2016年の夏は、毎週のように日本国内・海外でドローンレースが開催されていました。7月、兵庫県で開催された賞金付きレース「Drone Racing Cup in神戸」から始まり、中旬に、初の8機同時飛行が実現された上海の「Asia Cup Shanghai 2016」、そして下旬には前回の記事でも取り上げた、初の海外選手を日本に招待して開催された、秋田の「DRONE IMPACT CHALLENGE ASIA CUP 2016」のレースがありました。

8月は、各国のトップパイロットが韓国の釜山ビーチに集まった「GiGA Drone Racing World Masters 2016」、そして最後は中国深センの湖に幻想的な照明が施された水上コースで開催された「D1 Asia Cup」です。私はこれら全てのドローンレースにパイロットとして参加してきました。海外のドローンレース事情を肌で感じてみて思ったのは「世界は日本の二歩先を行っているな」という感覚です。以下では海外レースを順に紹介していきます。

初の8機同時飛行を実現した上海ドローンレース

yokota-vol06_drone 上海の中学校で行われた8起動時飛行のドローンレース

上海にある中学校のグラウンドを利用して造られたコースは、スピードも出しやすく、難しすぎないコースではあるものの、レース独特の緊張からクラッシュしてしまう選手は少なくありませんでした。レースはタイムアタック方式で、1人当たり合計4回のチャンスがありました(時間の関係で1回分削減)。1ヒート8機同時飛行で合計15ヒートほどあったことからも、100人以上のパイロットが参加した大規模なレースとなりました。

この上海レースで特筆すべきことは、「ドローンの8機同時飛行」を実現したことです。これまでのレースは日本国内だと3機、海外のレースでは4機同時での飛行が中心でしたが、ドローンのFPV映像をアナログ無線電波で送受信している以上、電波干渉のトラブルはどのレースでも発生しがちであり、さらに8機で問題なく同時飛行するのはなかなか難しいのです。

そこで同レースが8機同時飛行をを実現するために行ったのは、予めパイロットごとに利用周波数(レースバンドを利用)を割当てたVTX(映像無線送信機)とアンテナ(左巻き・右巻きを交互に配布)を各パイロットに提供することです。パイロットである私達は前夜にそれらを配布され、ホテルで機体セッティングを行い、翌日のレースで実際に利用し、大きな電波トラブルなくレースに参加することができました(グラウンドステーションの不良問題はあった)。

yokota-vol06_drone_2 モニターで8機のリアルタイムの状況と順位も参照が可能

実際に8機同時で飛行するのは、操縦する側としても常に自分のドローンの前後にライバルがいるのでアドレナリンも出っぱなしでとても楽しいです。観ている人の目線でも、1、2機クラッシュして墜落しても6機も残っているので見どころが多いです。

ドローンレースで最もトラブルになりやすく、実際の操縦に大きな影響を及ぼすのがこの電波問題だが、このようなVTX・アンテナの事前配布する流れは今後スタンダードになっていくと思います。実際に、後述する韓国・深センのレースでも映像周りは事前配布されていました。

韓国釜山ビーチで行われたハイレベルなドローンレース

yokota-vol06_drone_3 釜山ビーチで盛大に行われたGiGA Drone Racing World Masters 2016

GiGA Drone Racing World Masters 2016は、韓国の釜山にあるビーチで行われました。釜山は観光客が集まるというよりも、ソウルなどの都市にいる人達が遊びに来ることが多いようです。実際に欧米系や日系の旅行客などは少ない印象でした。

しかし、2日間のレース(1日目練習・2日目練習&本番)の間、コースの外は常に人がいる状況であり、さらに隣のエリアでは最近日本国内でも認知が広まった来た「e-sports」のゲームイベントが開催されていてものすごい盛り上がりでした。今回のドローンレースやe-sportsのイベントは、日本でいえばのNTTのような大手通信会社により全面バックアップされた企画ということで、釜山ビーチ全体を利用した大掛かりなイベントでした。

yokota-vol06_drone_4

ビーチにドローンと、最高な環境の中、世界から集まってきたトップパイロット達が、このレースでの注目ポイントです。今年の2月にドバイで開催されたドローンレースは有名ですが、そこで優勝したチーム「XBlades Racing Team」に加え、インドネシア、タイ、香港などからトップパイロットが集まりました。主催の韓国「KDRA」からもパイロットが出場しており、そのうちの3人は前述の上海レースのトップ3でもあります。非常にハイレベルな中、優勝したのは、圧倒的な力の差を見せつけた韓国のキム・ミンチャン氏。以下はその時の映像です。圧倒的な速さに思わず笑っちゃいます。

優勝したキム・ミンチャン氏のフライト

観客動員数最多!?深センの水上ドローンレース

yokota-vol06_drone_5 湖の上にLEDで導かれたコース、真ん中がパイロットの操縦エリア

今やドローンのメッカとなりつつある中国深セン。このD1 ASIA CUPでは観客が2000名を超え、ドローンレースだけではなく、DJI製ドローンによる編隊飛行のデモンストレーションが行われ観客を魅了していました(私はパイロットスタンバイのため見れなかった!)。ドローンには大敵である「水」の上に造られたコースであるため、パイロットからすると興奮というよりもドキドキしてしまうのですが、このレースでは「デジタルVTX」を初めて公式レースで活用したレースでした。

アナログ方式のVTXと異なり電波干渉が少なく、HDのハイクオリティな映像をもとに操縦ができるという特長がデジタルVTXにはありますが、多くのパイロットが初めて利用するほど新しい製品です。日本のパイロットでも所持している人は限定されています。

夜間、観客2000人、水上コース、初めてのデジタルVTXとチャレンジングなイベントでしたが、運営上の問題が多く発生したため、レース自体は行われたものの、ルールや順位などに混乱をきたし、結果としてパイロットには多くの不満が残るものとなりました。観ていた観客はというと、神秘的な湖の上を走り回るドローン(LED全機搭載)に大きな歓声があがり、後のアンケートでも満足したという回答が多かったといいます。

海外レースに参戦してわかったこととは?

この夏、兵庫・上海・秋田・釜山・深センとドローンレースを転戦してきましたが、やはりドローンレースは面白いですね。ドローン大好き人間ばかりでレース以外の時間も楽しいです。そして、ある程度方向性が見えてきたと思ったら、新しいチャレンジが連続して起きていく。最後のレースはパイロットには大きな不満が残ったものの、反対に言えばこれを改善すれば、つまり、観客も楽しみパイロットも気持ちよく力を発揮できるイベントができたら、本当の意味でエンターテイメントスポーツと呼べるのではないでしょうか?

世界の実力は本当に高く、日本の二歩先を行っていると私は考えています。一歩ほど近くもなく、五歩も十歩も離れてはいません。まだまだ世界に勝てるはずです。そのために必要なこととはなんだろうと最近よく考えます。最新機体?練習?場所?法律?どれも必要だけど、一番重要なのは「本気で楽しむ」ことなんだと、アジアを飛び回って感じたしだいです。

韓国釜山のレースに参加したXBlades Racing TeamのDani Pacha氏の映像

WRITER PROFILE

 Atsushi YOKOTA
大手企業向けECシステムのプロマネ、Webマーケティングアプリのエンジニアを経て独立。ドローン入門者向けサイト BE INTO DRONE運営。ドローンスポーツの開発やドローンレースにも参戦。

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