[小林啓倫のドローン最前線]Vol.13 保険会社の新たなドローン活用モデルになるか「パーソナル街灯」

2016-11-29 掲載

ドローンとの関係を深める保険業界

前回に引き続き、保険業界とドローンに関するニュースを取り上げよう。保険業界とドローン、初めて耳にするという方には意外な組み合わせかもしれないが、実はこの領域ではさまざまな取り組みが始まっている。大別すると、次の3点に整理できるだろう。

(1)ドローン保険

まずは前回も取り上げた「ドローン保険」だ。文字通りドローンを使っていて事故を起こしてしまった場合に、各種の補償をしてくれるというものである。すでに国内の保険会社でもドローン保険を扱う企業が登場しており、その内容も対人・対物・機体本体への損害補償から、修理中に借りた代替機の費用のカバーに至るまで、幅広いものとなっている。

(2)損害調査

事故や自然災害などが発生し、損害保険の契約者から保険金請求が行われた場合、保険会社は損害の状況を速やかに調査し、支払う保険金を算出しなければならない。その際に人間だけで調査を行っていては、高い場所(屋根の上など)が確認しづらかったり、広範囲におよぶ損害を調べるのに時間がかかったりしてしまう。そこでドローンを活用した空撮を行うことで、調査にかかる時間やコスト、危険性を下げるという取り組みが行われている。

(3)リスク調査

これは損害調査に似ているが、事件や事故が起きる前の取り組みという点が異なる。大規模な施設や建築物などをカバーする損害保険において、保険会社は対象となる不動産が抱えるリスクを正確に把握し、時にはリスク回避のための提言を契約者に行わなければならない。そこで損害調査の場合と同様に、ドローンで空撮を行って正確かつ迅速な調査を実施し、その後の提言に活用するという取り組みが行われている。

保険会社Erie Insuranceは住宅の損害調査にドローンを活用

このようにドローンと保険業界の関係は、すでに深いものとなっている。特に2と3の「保険の業務においてドローンを活用する」という点について、これから保険各社が積極的に取り組んでいくものと考えられ、コンサルティング会社のPwCでは、この領域の市場規模(世界全体)を68億ドル(約7000億円)と推定している。そしていま、保険業界におけるドローン活用に新たなアイデアが登場した。それは「パーソナル街灯」とも呼べるような内容である。

ドローンで夜道の危険を解消する「フリートライト」

ロンドンから南西に70キロほど離れた場所にある小さな町、ペットワース。街灯が整備されていない道が多く、夜に外出するのは安全とは言い難い。とはいえ仕事帰りや緊急事態への対応など、やむを得ず夜道を移動しなければならない場合が発生する。そんなときは――そう、スマートフォンのアプリから、自分だけの空飛ぶ街灯を呼び出してしまえば良いのだ。そんなイメージビデオが、英国の保険会社Direct Line Groupから発表されている。

保険会社Direct Lineが提案する新たなドローン活用「フリートライト」

Direct Lineはその名が示すように、ダイレクト型での損害保険販売を手掛ける会社で、1985年に英国初の電話販売型保険会社として立ち上げられた歴史を持つ。そんなイノベーションの精神が再び発揮されたと言えるだろうか、今回のコンセプト「Fleetlight(フリートライト)」も、非常にユニークな内容となっている。

使用されているのは、オープンソース技術を活用して開発されたドローン。ユーザーがアプリから呼び出すと、呼び出された場所まで複数のドローンが駆けつけ、ユーザーの後を追いながら上空を飛行する(再びアプリから解除されるまで追跡)。それぞれのドローンに2つもしくは3つのライトが搭載されており、ユーザーは明るく照らされた道を歩いて帰ったり、事故への対応といった作業をしたりすることができるというわけだ。

ドローンには高性能のGPSが組み込まれているだけでなく、通信機器やソフトウェアによって、数台のドローンが編隊飛行できるようになっている。またユーザー(追跡する対象)の動きを予測して飛行するなど高度な制御もなされており、先ほどのイメージビデオから確認できるように、人が歩く速さから自動車が走る速さまで対応可能になっている。自動車を使って捜索活動を行う場合など、幅広いケースに対応できるだろう。

今回のDirect Lineがペットワースで行ったのは、あくまで実証実験であり、正式なサービスとして開始する予定が立っているわけではない。ただDirect Lineは、究極的にはこうしたサービスが「道路や人間の安全を高めることに貢献するだろう」と予想しており、研究を続ける姿勢を見せている。

保険会社は近年、単に「望まれない事態が発生した場合にお金を払う」という意味での安心の提供から、より積極的に契約者の安全を守り「望まれない事態そのものの発生を防ぐ」という意味での安心の提供によりフォーカスするようになっている。フリートライトも、そのような保険業界の変化の方向性を象徴するものと言えるだろう。帰りの夜道に危険を感じたら、ライトや防犯カメラを搭載したドローンをアプリ(恐らく自分が契約している保険会社から提供されるものだろう)で呼び出し、エスコートしてもらう。そんな未来がやって来るかもしれない。

WRITER PROFILE

小林啓倫
経営コンサルタント。SEとしてキャリアを積んだ後、外資系コンサルティング企業等を経て、2005年から現職。著書に『ドローン・ビジネスの衝撃』、訳書に『データ・アナリティクス3.0』など多数。

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