[小林啓倫のドローン最前線]Vol.19 ドローン操縦インターフェースとしてのVR

2018-04-27 掲載

映画の中の未来世界

今年4月、スティーブン・スピルバーグ監督の新しい映画『レディ・プレイヤー1』が封切られた。2045年の米国を舞台に、若者たちと企業の戦いを描いた、いわゆる冒険活劇だ。何の前提知識もなく楽しめる作品だが(ただ80年代~90年代のポップカルチャーに理解があると、より内容にのめり込むことができるだろう)、そこで描かれている未来世界には、さまざまな点で興味を惹かれるだろう。

誰でも参加できるVR(バーチャルリアリティー)サービス「オアシス」が巨大に広がり、インターネットを置き換えるほどの存在になっている近未来。富裕層も貧困層も、それぞれの端末を用いて、オアシスにアクセスしている。ほとんどの端末が装着者の動きをインプットとして、オアシス内でのアバターの動きに置き換えてくれる。

その逆に、アバターが受けた動きを装着者への触感に変えてくれる、いわゆる「ハプティクス」技術も普及している。こうした技術を駆使して、現実世界と相違ない体験が味わえる仮想世界の中で、人々はさまざまな活動を行っており、その一部は現実世界ともリンクしている。たとえばオアシス内で稼いだコインを使って、その中で買い物を行うと、現実世界でデリバリーしてくれるといった具合だ。

そうした現実世界での配送において、消費者に荷物を届けてくれるのは――もちろんドローンである。ドローンは冒頭から登場し、ピザの宅配から始まって、街中の警備、そしてさらに危険な用途にも使われる様子が描かれる。いかにも21世紀的な未来予想図といったところだが、そうしたドローンの姿が違和感なく描かれるほど、2018年時点でのドローン活用が進んでいるのだと言えるだろう。

さて、本稿で話題にしたいのは、こうしたドローンの用途ではない。『レディ・プレイヤー1』の中心テーマであるVRと、ドローンの関係だ。映画の中では、現実世界の人間が体を動かすことで、自由自在に仮想世界内のキャラクターを動かす様子が描かれている。人間から人間ではないもの、そして人間よりずっと大きいものまで、体を使うだけで操縦できてしまうのだ。難しいボタンやコントローラーの操作は必要ない。どんなものでも、すぐ操れてしまうのである。映画に登場する前述のドローンは、どうやら自律飛行しているようなのだが、もしドローンも同じようにVRで簡単に操作できたらどうだろうか。

ドローンを体で操作するFlyJacket

いま「ドローンをVRで操作する」と表現してしまったが、正確に言えば、これは「モーションコントローラー」と呼ばれる技術のひとつとなる。現実世界での体の動きを読み取り、それを仮想世界内で再現する技術となる。通常のコントローラーと違うのは、基本的に体の動きが、そのまま再現される点だ。自分が右を向けば、バーチャルなキャラクターも右を向き、左手を上げれば同じように手を上げるといった具合である。

そしてこのモーションコントローラーを使い、実際にドローンを操縦する技術を開発した人々がいる。ドローン関連の取り組みでおなじみの、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究者らだ。彼らが開発したのは、腕と上半身に装着して使用するタイプの機器で、これが体の動きを読み取ってドローンへの指示を行う。その名も”FlyJacket”(フライジャケット)である。

上記の映像でわかるように、腕のパーツからジャケットに向かって棒のようなものが伸びており、これで腕の動きを検知するようになっている。またジャケット部分は上半身の動きを把握するようになっていて、これらを通じて得られた情報がインプットとなり、仮想空間内の映像、もしくは現実のドローンの動きに反映される。そして装着者はVRゴーグルを通じて、ドローンからの視点を体験できるという仕組みだ。

見るからに楽しそうな仕組みで、ぜひゲームか何かとしてプレイしてみたいところだが、楽しさを追及するだけがこの装置の目的ではない。こうしたVR型のコントロールによって、ドローンの操縦が簡単になると、EPFLの研究者らは考えている。実際に従来のような、プロポ型のコントローラーにくらべ、装着者はドローンをより楽に、より正確に、また安定して操作することが可能になったそうだ。さらに通常のVRだと、映像への違和感から船酔いのような感覚(いわゆる「VR酔い」)に陥ることがあるが、FlyJacketの場合、身体全体の動きと映像が連動しているため、そうした良いに苦しむことが減ったそうである。

また嬉しいことに、FlyJacketには商業化の可能性もあるそうだ。すでにデザインの段階から、低コストで生産できるように設計されており、持ち運びのしやすさや、どんな体形のユーザーにもフィットする装着性も考慮されているとのこと。

さらに今後、逆にドローン側の状況を装着者にフィードバックする、いわゆる「ハプティクス(触覚技術)」の導入も検討されているそうだ。たとえばドローンが何かにぶつかったときに、その衝撃を装着者に伝える、といった具合である。なぜそんな危険なことをするのか、と思われるかもしれないが、あらゆる学習は行動と、それに対するフィードバックによって成り立っている。

何かにぶつかって、その衝撃が体に伝われば、文字通り「体で覚える」ことが可能になるわけだ。もちろん身体に危険がおよぶレベルのフィードバックは非現実的だが、ある程度の反応を与えることで、装着者の操縦技術の向上がより短期間で進むと研究者らは考えている。 映画『レディ・プレイヤー1』でも、このハプティクスによって、仮想世界上で豊かな体験が味わえる未来世界が描かれている。VR技術の発展が、ドローンの世界にも大きな恩恵をもたらすかもしれない。

WRITER PROFILE

小林啓倫
経営コンサルタント。SEとしてキャリアを積んだ後、外資系コンサルティング企業等を経て、2005年から現職。著書に『ドローン・ビジネスの衝撃』、訳書に『データ・アナリティクス3.0』など多数。

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