[Drone Design]Vol.15 アフリカの空を飛ぶ勇ましきドローンたち

2020-05-29 掲載
2月9日から14日にかけてアフリカのルワンダにあるキブ湖でドローンの飛行コンペが開催された

アフリカではこの数年でドローンを活用する動きが拡がり、新たな市場として世界からも注目を集めています。アフリカ全体でドローンビジネスを後押しする動きもあり、今年の2月にはルワンダで「African Drone Forum」が開催され、展示会やカンファレンスなどのイベントが開催されました。

African Drone Forumのプロモーションビデオ

さらに同じ2月にはルワンダの最大の湖であるキブ湖を舞台にした「THE LAKE KIVU CHALLENGE FLYING COMPETITIONS」が5日間にわたって開催され、世界11カ国から応募した70チームから選び抜かれたドローンたちがその技術を競い合いました。

「THE LAKE KIVU CHALLENGE FLYING COMPETITIONS」

世界銀行や英国の国際開発省(U.K. DFID)がスポンサーとなって運営するコンペの開催目的は、4社キブ湖周辺のカロンギ地区において、eVTOLタイプドローンによる医療品などの運送やマッピングのサービスを請け負う業者を選定することにあります。

3つの部門に4社ずつドローンスタートアップが参加した

Emergency Delivery(緊急搬送)、Sample Pick-Up(サンプルの取得)、Find and Assess(探索と査定)の3部門が設けられ、優勝者にはそれぞれ6万ポンド(約780万円)の賞金が贈られます。全体で10社のスタートアップが各部門で4社ずつ参加し、部門賞の他にもシステムや安全性、イノベーティブなアイデアなどが評価され、それぞれに賞金が授与されました。

医療輸送ドローンを展開するZiplineはアフリカを代表するユニコーン企業として知られる

アフリカでドローンといえば、医療品を配達するドローンと専用ステーションを開発するルワンダのユニコーン企業「Zipline」が有名です。シリコンバレーで開発されたドローンはとてもユニークで、専用のカタパルトで勢いよく空へ飛ばして目的地にパラシュートで荷物を落下させ、再び発射場に戻る時は空中に貼られたワイヤーゴムに機体をひっかけるという斬新な方法を取り入れています。

機体は数個に分かれたパーツを組み合わせるようになっていて、整備と運用と使用するエネルギーが最小限に抑えられています。現在はキガリを中心にアフリカ各地で採用が進み、イベントのプログラムでもZiplineのステーションを訪問するツアーが組み込まれていました。

そんなZiplineに続けとばかりに開催されたコンペには、世界ですでに実績のあるドローンスタートアップたちが参加していました。

独WingcopterのWingcopterはUPSでも採用されている

湖の岸辺に設けられたドローンポートから湖に浮かぶブガルラ島までの約20kmを、最低1kgの緊急パッケージをバッテリー交換無しで安全に配送する技術を競うEmergency Delivery部門では、ドイツのWingcopterが優勝しました。高性能なハイブリッドVTOLとして評価も高いWingcopterはやはり圧倒的な性能の高さだったようで、持ち運ぶ荷物の重量、正確な配送時間、空域の安全性、配送するサンプルを安全に保存するという評価ポイント全てをクリアし、最高のスコアをたたき出しました。

独Phoenix-WingsのManta Rayドローン

ブガルラ島から250gモジュールを拾って湖畔のドローンポートに届ける技術を競うSample Pick-Up部門では、同じくドイツのPhoenix-Wingsが優勝しました。Manta Rayと名付けられたずんぐりとしたボディのドローンは、デザインのユニークさと性能の高さの両方を兼ね備えていることから、イノベーション賞にもあわせて選ばれています。

韓国Hojung SolutionsのRemo droneは片手で飛ばすことができる

キブ湖の陸上と水上にある両方の目標のを特定しつつ安全に移動と着陸を行う技術を競うFind and Assess部門では、韓国のHojung Solutionsが優勝しました。コンペに使用されたRemo droneという機体は軽量で高性能な追跡能力を備えていて、離着陸のインフラを最小限に抑えるため片手で機体を持ち上げて飛ばすという方法を採用しています。運用はシンプルだけれども遭難者や事故現場を発見するという複雑な用途にも応えられる性能が評価されたといえます。

米VolansiのVOLY C10は特別賞を受賞

その他では最新のデュアルロール機VOLY M20をリリースしたばかりのカリフォルニアのVolansiが、航空機技術の特別賞を受賞しています。Sample Pick-Up部門に参加したVOLY C10はプエルトリコでの医療搬送ドローンのテスト運用もされていますが、デザイン面のユニークさでManta Rayには勝てなかったのかもしれません。

オランダのAvyは安全性能が評価された

Emergency Delivery部門に参加したオランダのAVYが開発するシンプルで美しいドローンは安全賞を受賞しています。サイトで”空気を切り裂くスイス・アーミーナイフのような飛行性能”と紹介している機体は、すでにアフリカの自然保護地域の監視にも使用されていて実績もあるもよう。コンペに参加した影響でこれからさらに採用が拡がるかもしれません。

コンペティション受賞結果紹介ビデオ

今回のコンペは長距離の移動と探索機能、そして荷物を運ぶペイロードの機能も審査のポイントでした。動画や写真を見るといずれもパラシュート方式を採用しているようでしたが、アフリカで活用が増えれば新しいアイデアが出てくるかもしれません。そのためのビジネスコンテストもAfrican Drone Forumでは開催していて、アフリカのスタートアップを中心に今後の成長が楽しみなところです。

African Drone Forum

WRITER PROFILE

野々下裕子
フリーランスジャーナリストとしてデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行う。掲載媒体は「@DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」「マイコミニュース」など多数。現在のドローンをはじめ、モビリティ、ウェアラブル、XR、AI、デジタルヘルス、スタートアップビジネスの世界的動向などのジャンルに注目している。神戸在住。Twitter:@younos
[Writer:野々下裕子]
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