[春原久徳のドローントレンドウォッチング]Vol.37 災害対応のドローン

2020-06-18 掲載

先月、防災科学技術研究所(防災研)の内山庄一郎先生が執筆した「必携 ドローン活用ガイド-災害対応実践編-」が出版された。この冊子には、災害対応実践について基礎から応用まで網羅されており、災害対応を行う方にはまさに必携という内容である。

「地産地防」プロジェクト

筆者の内山先生とは2年半ぐらい前に、「ドローンビジネス調査報告書」のインタビューでお会いした。その時に互いに話をし、意見が合ったのは各地域で結ぶ災害協定がなかなか機能していないことであった。

いくつか要因はあるのだが、多くのドローン企業や団体と自治体が結ぶ災害協定が、平常時に何度か実証実験を行うだけで災害時の具体的な行動計画が立てられておらず、また、その多くが自治体の地域外の企業や団体となっており、実際の災害時にはなかなか現地に入ることもままならないという点にあった。

そのためには、やはり各地域でのドローンの担い手(操縦や飛行管理、データ管理やデータ理解が出来る人材)の育成が重要であり、そのためにはなるべく出来ることから行っていくのが必要ということだった。内山先生はかねてより、災害調査に関して「5段階の活用レベル」を提唱しており、それは非常に参考になる考え方であった。それは以下のようなレベルである。

  • Lv.1 直上からの状況把握(ドローンを北側を向けて真上に60m上げ、真下を空撮)
  • Lv.2 広範囲の情報収集(半径1000mぐらいを自動航行させ、情報収集)
  • Lv.3 現場地図の作成(ドローンの自動航行とオルソ画像作成)
  • Lv.4 既存情報の重ね合わせ(平常時の地図とLv.3で作成したオルソ画像の比較)
  • Lv.5 現場情報の統合(Lv.3で作成したオルソ画像と捜索経路の重ね合わせ)

この内山先生のメソッドをなるべく地方自治の現場で実践したく、以前から色々とドローンで取り組みを行っていた広島県神石高原町の入江嘉則町長に相談し、広島県神石高原町を対象として、プロジェクトを立ち上げることになった。その際、内山先生には(神石高原町防災アドバイザーに就任いただき、2019年10月に防災・減災目的のドローンコンソーシアムを設立した。

このコンソーシアムでは「地産地防」をキーワードに、「ドローンによる災害対応の迅速化・合理化」に関する知見を実証するためのプロジェクトだ。そこでの成果に関しては、「ドローンを用いた災害初動体制の確立-神石高原町における地産地防プロジェクトの取り組み-」(防災科学技術研究所研究報告 第84号 2020年4月)に詳しく報告されているが、1.担い手育成、2.マップ作成(Lv.4までの実現)3.物資配送を行った。

ドローン・ジャパンでは、このプロジェクトの延長の中で、内山先生にアドバイスをいただきながら、コンソーシアムメンバーの1社であるパーソル・プロセス&テクノロジーと「災害調査」を中心に、各自治体だけでなくインフラ管理企業(電力、通信、ガス、水道、鉄道など)やゼネコンなどの災害時に道路や橋梁などのインフラ構造物の調査を行う企業、損害保険会社に対して提案活動を行っている。

その提案の中で、各社が必要な「災害調査」データが共有できる体制構築が出来ないかと模索をしている(災害が起こった際に、その被災地での調査体制を、各社ごとに構築するのは難しいからだ)。

災害調査以外でのドローンによる災害対応

災害調査以外でも、ドローンによる災害対応がある。それは「遭難時捜索」と「緊急搬送」である。日本ではまだ少ないが海外では遭難時の捜索でドローンは良く使われている。

特に通常捜索が出来なくなる夜間での対応が多い。サーマルのカメラを搭載し、自動航行で山林や森の上空を飛ばし、捜索をするものだ。これはイノシシやタヌキなどの田畑を荒らす害獣の生態調査を行う際の手法と同様で、そういった対策を行う中で訓練や経験を積み、遭難時の捜索につなげていくスキームを各地域で構築していくことが重要だろう。

PRODRONEより引用

もう一つの災害対応が「緊急搬送」である。これは崖崩れや橋の損壊などで地上での搬送経路を取ることが出来ないときに、比較的軽量な薬や血液、AEDなどの医療関連品をドローンで搬送することだ。このドローンでの搬送は実証実験ではよく行われているが、積載物(ペイロード)は10kg程度であるし、実用化にまではまだ以下のような課題がある。

  1. GNSSや電波環境が日によって変化しやすく、定常的な安全飛行が難しい
  2. ペイロード変化(特に積載重量)に伴う自動重量検出による安定飛行性が必要
  3. 飛行ルートに関しての調整が難しい

また、「緊急搬送」に関しては、薬や血液などがそのターゲットになるが、薬事法を初めとした緊急時のドローン搬送ルールを見直す必要もある。ただし、この薬や血液などの搬送はZiplineがルワンダで日常的に行っており、固定翼による特定された地点同士の拠点間搬送などは学ぶところも多く、日本でも同じような実証実験が行いながら、実装していってもよいかと思う。

こういった「遭難時捜索」や「緊急搬送」は、海外で既に実用的な事例が出てきているので、その事例を活かしながら、日本での展開を検討していくことも重要であろう。

WRITER PROFILE

春原久徳
現在、ドローン関連コンサルティング、ドローンソフトウェアエンジニア育成事業、ドローンによる農業サービス開発を行っている。 三井物産のIT系子会社で12年、米や台湾企業とITコンポーネンツの代理店権の獲得および日本での展開を担当。その後、日本マイクロソフトで12年、PCやサーバーの市場拡大に向けて、日本および外資メーカーと共同で戦略的連携を担当。 2015年12月ドローン・ジャパン株式会社設立。『ドローンビジネス調査報告書2018』『ドローンビジネス調査報告書2018【海外動向編】』(株式会社インプレス)を調査執筆、Drone.jpでコラム[春原久徳のドローントレンドウォッチング]連載中。他にも各産業業界誌で多数執筆。農林水産省、NEDOや各業界団体でのドローン関連の講師を年間60~80回程度行っている。

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