[春原久徳のドローントレンドウォッチング]Vol.39 携帯電話等の上空利用を考える

2020-08-21 掲載

7月上旬に官民協議会で議論されている「空の産業革命に向けたロードマップ2020~我が国の社会的課題の解決に貢献するドローンの実現~」が公開された。

2019年から大きく改定された項目は「リモートID」「電波利用」「社会実装」の三つの項目。「リモートID」と「社会実装」については今回から新たに追加された。今回の2020年度の改定は、ドローン利活用における環境整備と技術開発に焦点が当てられている。

ドローンの機体認証制度に関しては、先日の国会で航空法が改正され、まずは機体の登録義務が法制化された。2022年度を目標に「リモートID」の搭載義務化に向けて、検討がされていく。

携帯電話等の上空利用

ここでは「電波利用」に注目したい。上に記した「空の産業革命に向けたロードマップ2020」と同時に「空の産業革命に向けた総務省の取組について」という内容が総務省より発表された。

総務省は2つの項目にフォーカスしている。1つめが「携帯電話の上空利用」(申請処理機関の短縮)と2つめが「目視外飛行を安全・確実に実現するための多数接続技術・周波数共用技術の開発」である。ここでは前者の「携帯電話の上空利用」に注目したい。

「携帯電話の上空利用」に関しては、従来よりドローンの活用を拡大させるために期待されてきた。2016年7月には法律を改定する形で既に飛行台数を監理して使用を認める「実用化試験局制度」が導入され、そこで「携帯電話の上空での利用」に関する受信環境調査を実施し、技術上・運用上の課題等の整理を行った。

携帯電話システムは地上での利用を前提にシステムを構成されており、ドローンのように上空に上がると、同じ周波数の電波を用いる他の基地局と混信を引き起こし、地上の携帯電話が通じないなどの影響を及ぼすことや、上空向けにアンテナが設置されていないため、上空においては利用できる範囲が狭いなどの課題が生じた。

特に前者の地上での携帯電話への影響に関しては、日本だけでなく、国際的な課題となっているため、3GPP Release15という形で2018年6月に「携帯電話の上空利用時の送信電力制御機能(パワーコントロール)に関する国際標準」が制定された。その国際標準に従って、「携帯電話の上空利用」に関しては、以下の項目を実施することで、隣接基地局への干渉低減を図っていく。

現在、この国際標準に準拠する対応端末が各キャリアの中で開発されており、この普及が2020年後半と想定されている。「携帯電話の上空利用に関する実用化試験局制度」に関しては、以下のようなプロセスを経て、多くの申請手続きと2か月程度の期間が必要となっている。

この対応端末の普及を含む携帯電話事業者のシステムが整備された段階で、「携帯電話の上空利用に関する実用化試験局制度」は廃止され、ユーザがWeb経由等で携帯電話事業者に申請して飛行可能な環境を目指しており、それにより、数日前にWebなどで「携帯電話の上空利用」を各携帯電話事業者に申請することで利用可能になっていく。この普及が2020年度中のロードマップで提示されているのだ。

「携帯電話の上空利用」で変わること

ドローンの電波は通常主に3つの用途がある。1つめがプロポからドローンへのコントロール、2つめがドローンから地上端末へ送られるドローンの機体情報(GPSやバッテリーなど)のテレメトリー、3つめがドローンのカメラから地上端末へ送られるFirst Person Viewの映像情報がある。

この電波を一つで行っている場合といくつかの通信で行っている場合がある。周波数帯も主には2.4GHz帯を使っているケースが多いが、これもケースバイケースだ。「携帯電話の上空利用」の際に使われるのは主にテレメトリーとカメラから取得した画像や映像情報になることが想像される。コントロールを含まないのは、コントロールが常時接続性と反応スピードを問われることが多いからだ。

また、ドローンのサービスフレームワークも「携帯電話の上空利用」で大きく変化する。それは今まですべての情報が地上の端末経由でクラウドに上げられていたが、今後、ダイレクトにクラウドに上げることが可能になる。今までドローンは空飛ぶIoTデバイスなどと言われていたが、実際上はインターネットオフラインで運用されていた。スマートフォンなどと同様にインターネットオンラインの端末に変わり、実質上の空飛ぶIoTデバイスになっていくということである。

「携帯電話の上空利用」によるメリットには以下のようなものがある。

  • ドローン搭載カメラでの取得データのクラウドダイレクト送信
    データがクラウドにダイレクト送信されることで、処理時間の短縮や遠隔地での情報共有などが図られる。また、ドローンから自動的に直接にデータを送ることが可能になれば、データ送信のための工数も大幅に削減されるだろう。
  • テレメトリーのクラウド送信
    テレメトリーのクラウド送信により、飛行現場で目視外飛行などの遠距離でのドローン飛行の場合でのドローンの状態把握が可能になる。また、現場で把握できるだけでなく、クラウドに送信されることで、本社などの遠隔地においてリアルタイムでドローンの状態を把握することも可能になる。
  • インターネット経由でのドローンへのコマンド送信
    インターネット経由でドローンへのコマンド送信が可能になると、現状では法律上の制約はあるが、遠隔地からドローンの操作(緊急着陸、ゴーホームや飛行先の変更など)が可能になり、それは今後のドローンの完全無人化での運用につながっていくことだろう。

「携帯電話の上空利用」に向けた準備、考慮点

■通信

各通信に関しては、各現場での通信状況、3G/LTEとの接続エリア(キャリアごと)、上空での接続(高度ごと)、接続スピード、接続品質などを検証する必要がある。今後の運用に関しては、5Gやローカル5Gなども検討していく必要がある。

■データ

ベースとして、データの種類、サイズ、全体量(1飛行あたり、1プロジェクトあたり)の検証から開始し、モバイルネットワークでの送信プロセス、データ送信状況、エラー処理、例外処理などを明確にしていく必要がある。その他、データマネジメントとして、ファイル管理、データ処理、データ管理などのルールを決め、それに伴いアクセス権、バックアップ、セキュリティなどを決めていくことが重要だ。

■テレメトリー

テレメトリーに関しては、どんな内容を管理していくか、飛行位置、飛行スピード・飛行状態、リスク状況(通信、バッテリー、GNSS、風力など)などが挙げられる。そのほか遠隔監視を行う際のアプリケーションの選択やそのアクセス権、セキュリティなどのルールの明確化も必要だろう。

■ドローンのコマンド送信

今後の完全無人化に向けた運用も準備していくことも重要な視点となっていくだろう。

「携帯電話の上空利用」に向けたNext Action

今後ドローンサービサーやドローン活用企業において、次のようなステップで検討を進めていくことが重要だ。

1.「携帯電話の上空利用」に向けての社内検討

  • メリットの確認

2.「携帯電話の上空利用」に向けての社内プロジェクト化

  • プロジェクト予算化
  • メリットの具体化・数値目標
  • 課題やリスクの洗い出し
  • 導入スケジュール

3.実証実験

  • 地上実験
  • 空中実験(各現場での検証)(今年、秋以降)

4.実用化(2021年度以降)

「DMN PoCサービス」

ドローン・ジャパンでは「携帯電話の上空利用」に向けた企業向け支援サービスとして、「DMN(Drone Mobile Network) PoCサービス」を提供開始した。「DMN PoCサービス」は以下より構成されている。

「携帯電話の上空利用」を検討している企業はこういったサービスを使って、導入準備を開始することもよいだろう。

WRITER PROFILE

春原久徳
現在、ドローン関連コンサルティング、ドローンソフトウェアエンジニア育成事業、ドローンによる農業サービス開発を行っている。 三井物産のIT系子会社で12年、米や台湾企業とITコンポーネンツの代理店権の獲得および日本での展開を担当。その後、日本マイクロソフトで12年、PCやサーバーの市場拡大に向けて、日本および外資メーカーと共同で戦略的連携を担当。 2015年12月ドローン・ジャパン株式会社設立。『ドローンビジネス調査報告書2018』『ドローンビジネス調査報告書2018【海外動向編】』(株式会社インプレス)を調査執筆、Drone.jpでコラム[春原久徳のドローントレンドウォッチング]連載中。他にも各産業業界誌で多数執筆。農林水産省、NEDOや各業界団体でのドローン関連の講師を年間60~80回程度行っている。

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