[田口 厚のドローンプロジェクト日誌]Case.09 三密を避ける「空撮ツアー」で地域観光を盛り上げよう!(後編)

2020-09-10 掲載

コロナ禍の中、マイクロツーリズムやソロキャンプなど新しい旅の楽しみ方が出てきていますが、「空撮ツアー」は三密を避けつつ地域を楽しみ、その楽しさをシェアする仕組みとしておすすめです。前回に引き続き、後編の今回は2つの異なるタイプの「空撮ツアー」の事例や運営のポイントをご紹介したいと思います。運営側の自治体や観光産業に携わる方は新しい観光企画の参考に、ドローンユーザーのみなさんには旅をドローンを持って楽しむヒントにしてもらえれば幸いです。

地域の魅力×ドローンユーザー×空撮ツアー

赤銅色の石州瓦とベンガラ色の外観で統一された「吹屋ふるさと村」

「岡山空撮バスツアー2日間(企画/実施:株式会社リョービツアーズ、協力:高梁市)」は地域観光とドローン空撮の楽しさを両立させることをコンセプトに立ち上げた企画。訪問地は日本遺産にも指定され江戸~明治時代に弁柄と銅で繁栄した赤で統一された美しい街並み「吹屋ふるさと村」と現存天守を持つ城跡(国内に12ヶ所しかない)として貴重な「備中松山城」です。

現存天守を持つ貴重で優美な備中松山城

また、今回は観光の楽しさを「地域の歴史の学び」「地域の方々との交流」と位置づけ、吹屋では現地ガイドの方に、備中松山城では高梁市教育委員会の方にご解説いただきながら実際に歩いてまわり、その上での空撮の時間を作りました。撮影をする際、被写体をただカタマリとして撮るのではなく、その意味や背景を踏まえた上で伝えたいことを明確にすると、より人を惹きつける映像になります。

地元の方に解説していただくことで観光にも勉強にもロケハンにもなるわけですね。ちなみに、参加者の方が制作した映像は「第二回日本国際観光映像祭」にて日本部門inCommercial優秀賞を受賞されました!

さらにお楽しみは「吹屋ふるさと村」撮影後の夜の空撮映像上映会です。「吹屋ふるさと村」は観光地なのですが、住居として住まわれている方もたくさんいらっしゃいます。その方々と吹屋の街並みの中に屋外簡易スクリーンを設置して昼間撮影した空撮映像を見て談笑しました。

「吹屋ふるさと村」は数々の映画のロケ地にもなっているのですが、自分たちが住む街を上空から見た人は少なく、吹屋のみなさんは貴重な映像を見ることができたようです。もちろん、自分が撮影した空撮映像を上映した参加者のみなさんが楽しそうだったのは言わずもがなです(苦笑)。

吹屋の街並みの中に簡易スクリーンを設置して地元の方々と吹屋空撮映像鑑賞会を実施

地域の魅力×マイクロインフルエンサー×空撮ツアー

弊社で開催している定番空撮ツアーが「ドローンジェニックな旅をしよう!」というドローン初心者のインフルエンサーにドローン空撮を地域の魅力とともに楽しんでもらいつつ、その楽しさをいろいろな方にシェアしてもらうことを目的とした日帰り空撮ツアーです。

旅をテーマにしたSNSインフルエンサーがたくさんいる中で、ドローンに興味を持ちつつもなかなかドローンを始めることができていない方が多いことに気づきました。ならば、地域の魅力をSNSインフルエンサーに伝えてもらいたい自治体といっしょに招待制の日帰り空撮ツアーを企画して、ドローンのレンタル&レクチャーもしたらWin-Winですよね!…という趣旨で開催しています。

まずは電源の入れ方からレクチャー(舘山寺サゴーロイヤルホテルにて)

ドローンのレンタルや初期レクチャーもするものの、それらの費用や集合地からの移動費は運営側で負担します。そのかわり、参加者は事前に応募者の中からSNSフォロワー数の多い方を選抜させていただく…という仕組みです。ポイントは、フォロワー数が数千〜数万人以下くらいの「マイクロインフルエンサー」が集まってくれること。マイクロインフルエンサーは数十万〜数百万人というフォロワーは抱えていませんが、その分、フォロワーと質が高い&深いコミュニケーションが可能です。

ひとりの強力なインフルエンサーを招待するよりも、マイクロインフルエンサーの方々が複数人集まってくださったほうが発信先のコミュニティも分散されるのでよりいろいろなカテゴリの方々に発信してもらえることになります。

また、そのためにはマイクロインフルエンサーの方々にとって魅力的な空撮地選びも大切です。ドローンの撮影というと広大で雄大な絶景地…というイメージがありますが、SNSで発信する際には「絶景の中にいるジブン」がとても魅力的に写ります。被写体と近く、自分も画角に入れる絶景ポイント…それが場所選びのキモとなります。

浜名湖パルパルではメリーゴーラウンドのカラフルな屋根と真俯瞰で撮影

静岡県では、浜名湖畔の「舘山寺サゴーロイヤルホテル」のプールや遊園地「浜名湖パルパル(休園日に開催)」、山間の彫刻美術館「クレマチスの丘 ヴァンジ彫刻美術館」などを撮影地に開催。今年の3月には日本遺産にも指定されている宇治抹茶の主要生産地京都府和束町で円形茶畑の中に入り込んでの撮影もしました。このような「絶景の中のジブン」を撮れる場所があるところではSNSとドローンを活用したPR企画がとても効果的です。

全国的にも珍しい和束町「円形茶畑」の中にいるワタシ!

空撮ツアー企画・運営のポイント

空撮ツアーを企画・運営する際のポイントをまとめます。ドローン×旅を楽しむ際のヒントにもなるかと思いますので、参考になれば幸いです。

(1)安全な空域を定義しスタッフ/参加者同士で安全管理

何より重要なことは安全に企画が遂行されること。そのためには「離着陸場所」と「飛行エリア」を明確にルール化し、そのルールが守られるようスタッフで運営することが大切です。環境によっては最低飛行高度を設定して規定よりも高く飛ぶようにルール化することも有効です。障害物への接触事故は障害物の最高高度よりも低い高度を飛んでいるので起こります。特に離着陸時は人との接触リスクもありますので「離着陸場所」は確実に安全な場所に設定(または安全な場所を作る)してください。

当日配布資料よりフライトエリアと離着陸エリアについての説明箇所を抜粋
(2)地域との触れ合いを用意する

ひたすらドローンを飛ばす空撮ツアーも楽しいのですが、そこに地域の方と触れ合う機会や、地域の名産に触れる機会などを設けると観光として魅力的なツアーになります。以前、ドローンエモーションで企画運営したツアーでは研修要素を盛り込んでひたすらドローンを飛ばすこともしたのですが、終了後のアンケートでは「せっかく初めて訪れる場所に来たのだから観光も楽しみたかった」というお話があり、当たり前のことをハッと気づかされました。

“茶源郷”和束町では地元お茶農家の方による美味しい和束茶のいれ方講座を開催
(3)撮影した映像を評価し合う

せっかく撮影した映像や写真なのですから、参加者同士見せ合う機会があると参加者同士の交流も深まり、ツアーもより盛り上がります。岡山空撮バスツアーのように、地域の人に見せる機会があると地域の方との交流も自然とできて相乗効果が期待できます。

(4)撮影した素材の活用する

空撮が好きなドローンユーザーが撮影した素材ならば、地域のPR用素材としても活用できるレベルのものもたくさん撮れることでしょう。ならば初めから素材を地域で活用する前提で空撮ツアーを企画するのもひとつの考え方です。実際に、高梁市は吹屋や備中松山城の素材を地域PRに活用していますし、和束町やその他の空撮ツアー開催地域もSNSなどで撮影素材を活用しています。参加者にとっても自分の撮影素材が地域PRに使ってもらえるのは嬉しいポイントです(もちろん、双方事前の承諾は必要)。

2018年に西武鉄道×西武トラベル×ドローンエモーションで開催した秩父・三峯神社空撮ツアーの映像は西武鉄道の秩父〜池袋を結ぶ特急レッドアロー号の車内モニターで一定期間上映されていた

観光に新たな付加価値を加える「空撮ツアー」

ヴァンジ彫刻美術館にて最後に記念撮影

空撮ツアーというと、ドローン側の楽しみ方に重点をおいてしまいがちですが、まずは観光として楽しい旅であることが大切です。ドローン空撮は、その旅をさらに楽しくするための新しい旅のツール。空撮ツアーの楽しさを知ってしまった筆者としては、空撮ツアーが新しい時代の新しい旅のスタイルのひとつになるよう引き続き仕掛けていきたいと思います。みなさんとどこかでご一緒できることを楽しみにしています!

WRITER PROFILE

田口厚
株式会社Dron é motion(ドローンエモーション)代表。観光PR空撮動画制作、ドローンの活用をテーマにした講習等の企画・ドローン操縦士スクール講師、ドローン導入支援等も行う。JUIDA認定講師。DJIインストラクター。

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