ドローンの社会実装を目指す「第1回かながわドローン前提社会ネットワーク」開催

2019-09-05 掲載

神奈川県が目指すドローン前提社会の実現に向けて、産学公連携によりドローンの活用や県民の理解促進を図る「かながわドローン前提社会ネットワーク」の第1回会合が2019年9月2日に県庁で開催された。参加者は市町村や民間企業から集まり、ほぼ満席での開催となった。

第一部は、黒岩祐治知事の挨拶から始まり、県の取組説明、千葉大学名誉教授・一般財団法人先端ロボティクス財団理事長 野波建蔵氏と慶応義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム副代表 南政樹氏の講演が行われ、ドローン関連ベンチャー企業7社の取組事例が紹介された。

第二部は、会場に設けられた各ブースで、ドローンの展示会や交流会が行われ、意見交換が行われた。

公約として掲げるドローン前提社会へ向けた神奈川県の取組み

神奈川県 黒岩祐治知事

黒岩知事:神奈川県は「さがみロボット産業特区」としてロボットの開発実績があり、その中でドローンの活用・開発を進めてきた。第4次産業革命とも呼ばれ、ドローンの世界は今後劇的に変わっていく。まさにドローンが前提となるような社会という言葉を公約の中に掲げた。

ドローンは超高齢化などの多くの課題に対して物流、災害状況の把握、農業、鳥獣被害対策など様々な活用法が考えられる。また同時に、技術には光と影がある。みんなで考え、共通認識を持ちながら必ず訪れるドローン前提社会、その先鞭を神奈川が作っていきたい。

県の未来創生課では、2019年度の取組みについて次のようにコメントしている。

神奈川県未来創生課:社会的な課題解決のための「モデル事業」、「ドローン前提社会ネットワーク」の立ち上げ、モデル事業を「動画」で撮影し周知するという3つの活動を予定しており、今後は、実証環境を蓄積していきたい。

それにより今まで見えてこなかった価値観の創出やサプライチェーンの構築を神奈川県でネットワーク通じて議論できないか。また、このようなことを柱とし、連携することによってドローン前提社会を実現したい。

2022年横浜の上空をドローンが飛び交う

千葉大学名誉教授・一般財団法人先端ロボティクス財団理事長 野波建蔵氏

次に、千葉大学名誉教授・一般財団法人先端ロボティクス財団理事長 野波建蔵氏が登壇し、「国内のドローン産業界と神奈川県との未来に向けた連携」として講演を行った。

産業用ドローンのビジネス化を促進する一般財団法人日本ドローンコンソーシアム(JDC)は、「現在300社の中立的な組織として精力的に活動しており、いかに安全にドローンを実装していくかということについて力を入れている。特に産学官で法律を作成し、2022年には横浜の上空をドローンが飛び交う社会の実現を目指す」としている。

また、神奈川県の産業と社会実装の現状について、研究・開発・事業化の3つに分け、農林水産業、インフラ維持管理など事業化できるもの、遅れているものなどを具体的に解説した。今後、神奈川県でどのようにドローン産業を育成していくのかについては、千葉県のドローン宅配事例を紹介した。

神奈川と千葉の距離は直線にすると約40キロあり、海を越えた物流でのドローン活用を提案した。問題点としては、人材育成におけるソフトウェア技術者の少なさを挙げ、先端ロボティクス財団の活動を紹介した。行政、法律、産業、人材育成など様々な視点からドローン産業について解説した。

ドローン前提社会実装に向けて必要な社会受容

慶応義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム副代表 南政樹氏

慶応義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム副代表 南政樹氏は、「ドローン産業と社会のパブリックアクセプタンスに向けた取り組み」について講演を行った。

南氏はドローンのイメージの一つとしてある首相官邸への落下というニュースやそれに対抗するカウンタードローンなどの事例は望ましい方向ではないという。「ドローンは空を活用するためのデジタルツール」であるとし、南氏が6月に神奈川県で初めてドローンで農薬の空中散布をした事例などを紹介した。

南氏:デジタルテクノロジーが現代社会の前提だとすれば、ようやく人が手で触れられるタンジブルなテクノロジーとして、IoTやロボティクス、ドローンが広がってきた。

ドローン前提社会と社会の受容性を考えた時に大事なのは、ドローンは魅力があり、使うことでメリットがあるということを伝えること。このような事例を集めたいということがモデル事業を始める経緯になった。

南氏は、ドローン前提社会とは「いつ・どこでも・誰でもドローンを利用できる社会」のことであり、例として、視点や空間のポジショニング、インターネットの接続、群れで行動できるなどドローンの利点や可能性を挙げ、ドローン前提社会で実現する未来のイメージを紹介した。

また、ドローン前提社会を目指す上で重要なのは、実証実験に終わるのではなく、サービスや産業として継続できることだとし、人材、プラットフォーム、規制緩和、事業支援という4つのキーワードを挙げ、新たにドローン産業に参入できる環境づくりの重要性を説いた。

かながわドローン前提社会ネットワークではこういった産学官の連携活動を推進している。なぜ神奈川なのかという点については、「神奈川県には大都市や中規模都市、山や海など日本のあらゆるものが含まれており利便性にも優れている。ドローン前提社会が成功すればこのモデルは日本に広がっていく」と南氏はコメントしている。

慶応義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム副代表 南政樹氏

南氏はこの取組みが発足した経緯について、「これまで『さがみロボット産業特区』という枠組みの中でドローン研究を行っていた。3月に黒岩知事が3期目の選挙に出られた時に新しい産業の柱としてドローンの活用を物流や害獣対策などに広げられないかと話したのがきっかけだった」と語る。

規制が多いドローン業界では、県がリーダシップを取り環境を整備すること自体、企業や市町村の支援につながる。第二部で行われた交流会では、各人が持つ疑問や課題に対して参加者同士の率直な意見交換が行われていた。

最後に、講演のテーマでもある社会受容について「思いやりと実例による啓発、十分な議論と緩やかな合意、個人の自発的な意欲により利用を受容していく、自らがやりたくなるというアプローチが大切だ」と言及した。

ドローンベンチャー企業と自治体の紹介

株式会社アイ・ロボティクス 我田友史氏

講演に続いては、株式会社アイ・ロボティクス、株式会社エアロネクスト、株式会社ドローンエモーションなど7社の取組事例が紹介された。

最後にサプライズで登壇したのが、鎌倉市長の松尾崇氏だ。松尾氏は、「鎌倉でも高齢化や災害対策、オーバツーリズムなどの問題を抱えており、ドローン前提社会は大きなキーワードになる。鎌倉からも実証実験フィールドの提供ができるのでは」と提案し、産学公連携の可能性を示した。

今後、県では、2019年9月12日までモデル事業を募集しており、第2回目以降の会合では事例紹介などを予定している。

かながわドローン前提社会ネットワーク

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