同試験は2023年11月に構想を開始し、2024年1月から試験用ロケット「ASCA hopper」の開発を進めている。通常、初期段階のロケット発射試験であっても年単位の開発・試験スケジュールで進行するのが一般的だが、ISCはアジャイル型で開発を進めることで、異例の速度で試験に着手する。
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ISCでは、同試験の成果を踏まえ、来年以降に小型衛星打上げ機「ASCA 1」、2030年代前半に有人輸送機「ASCA 2」の開発を目指していくとしている。
「ASCA hopper」ミッション概要
「ASCA hopper」ミッションは、「ASCAプロジェクト」として初となる試験だ。同試験では、小型離着陸試験機「ASCA hopper」を開発し、ロケットエンジンの燃焼、機体の離着陸、再使用に必要な点検整備の3要素を確認する。
続く小型衛星打上げ機「ASCA 1」や有人宇宙輸送機「ASCA 2」の実機開発に先立って、再使用型ロケットの再使用性、整備性、運用性に対する課題を抽出し、再使用型ロケットの開発能力を獲得することが目的だ。
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「ASCA hopper」ミッションの特徴
「アジャイル開発」による、異例の開発速度
通常、ロケット飛行試験は初期段階であっても年単位の開発・試験スケジュールで進行するのが一般的だ。一方で、ISCは創業2年のスタートアップでありながら、約7ヶ月(開発開始からエンジン燃焼試験実施までの期間)という速度でミッションに着手する。
このような異例の開発速度は、アジャイル型の開発体制・組織体制を取り入れることで実現するという。例えば、試験ロケット「ASCA hopper」の開発には、必要に応じて既成の技術や部品を積極的に取り入れることで開発期間を大幅に短縮している。
また、人的リソースについても、開発スタッフを自社社員だけで確保するのではなく、国内の航空産業や通信技術企業などと業務提携しながらスペシャリストを集めることで、開発チームを組成している。
このように、従来、日本国内の民間宇宙開発企業では、自社開発・自社完結することが一般的な開発プロセスとされていたが、ISCはスタートアップならではの組織体制によって、異例の速度でプロジェクトを推進している。
研究・開発プラットフォーム「P4SD」を軸に、開発能力を段階的に獲得
開発するプロダクトそのものも重要だが、実施したいミッションに応じたプロダクトをスピーディーに企画・設計・製造・試験する「開発能力」こそが中長期的に重要な資産だ。同社では研究・開発プラットフォーム「P4SD」を軸に、開発能力の向上に努めていくという。
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例えば、ロケットエンジンは複雑なシステムであることから開発が長期化し巨額の資金を必要だが、ISCはまず「ASCA hopper」ミッションを通じて小規模なガス押し駆動式のロケットエンジンを開発。
ロケットエンジン開発において最も難易度の高いターボポンプを不要とするガス押し駆動式の採用により、早期にシステムレベルでのエンジン開発能力を構築する。その後、ターボポンプ開発による高性能化や、推進力の向上、小型化・軽量化などに段階的に取り組むという。
さらには、既に開発実績を有する国内外のパートナーとの連携を通じて、ロケットエンジン以外の技術に関する技術成熟度を高めて、ロケットシステム全体の開発能力を向上させていく戦略を進めている。
今後、「ASCA hopper」ミッションを通じて得られた成果をもとにロケットシステム全体の開発能力を向上させ、来年以降に試験を予定する小型衛星打上げ機「ASCA 1」や、2030年代前半に試験を予定する有人輸送機「ASCA 2」の開発を着実に実現していくという。
「ASCA hopper」ミッションの今後の試験予定
- 2024年9月:電装系(アビオニクス)結合試験
「ASCA hoper」の離着陸を制御する電装品を組み合わせたシステムレベルでの検証を行う。
これらの電装品は、小型衛星打上げ機「ASCA 1シリーズ」でも利用可能なものとして今後の開発に繋げていく。 - 2024年10月:ロケットエンジン統合燃焼試験
エンジンだけでなく機体を制御する電装機器を組み合わせて燃焼試験を実施する。
実際の飛行制御装置と制御方法でエンジンをコントロールし飛行を模擬した状態での燃焼状況を確認する。 - 2024年12月:着陸脚落下試験
「ASCA hopper」の着陸脚に実際の飛行時の落下状態を模擬した状態の衝撃を負荷する試験を実施する。
これらの試験は「ASCA hopper」だけでなく、事前の解析結果と比較評価し「ASCA 1シリーズ」の設計にもフィードバックされ、今後の開発に繋げていく。 - 来年以降:地上離着陸試験
「ASCA hopper」ミッションの主たる試験。
離着陸試験用小型ロケット「ASCA hopper」を実際に打上げ、着陸させることにより再使用運航の課題を抽出する。打上げ高度は約10メートルを想定。