ドローンタクシーは実現するのか?Ehang社CEO独占インタビュー [深圳ドローン紀行]Vol.06

2017-07-25 掲載
txt:川ノ上和文(xyZing.innovation-翼彩創新)   構成:編集部 写真提供:北田諭史(株式会社エクサイジングジャパン)

ドローンに人が搭乗する日がまもなくやってくる

2016年のCES(Consumer Electric Show)で大きな注目を集めたドローンタクシーEHang184を開発するイーハン社。2017年夏にはドバイで運用開始されると発表され、新たな空の交通インフラとして期待されている。しかし、実際の飛行映像はなくその実現性を疑問視する声や、大幅な人員削減が財務状況の悪化を表しているのでは、という見方が中国国内のメディアでも報じられていた。

CESで見たモックとは違い、当たり前だが細部まで完成されている

そんなベールに包まれたイーハン社が本拠地を構える中国広東省広州にて同社CEO胡華智(Hu Huazhi)氏、副総裁 唐哲君(Tang Zhejun)氏、販売部門副総裁 羅彪(Luo Biao)氏の3名にインタビューを行った。聞き手は、DRONE.jp深圳特派員も務める川ノ上和文氏。

スピードよりも精度を高める綿密なテスト

—:ドバイでの運用開始のニュースが注目を集めていましたが、プロジェクトの進捗はいかがですか?

羅彪(Luo Biao)氏:はい、ドバイのプロジェクトを皮切りに年内に数カ所で実証実験を行います。我々が目指しているのは新たな空のインフラで、都市交通です。技術的には実現可能ですので、今の段階は確実に精度を高めていくための実証データの蓄積がとても重要です。そして、現時点ではあくまでも“近距離”輸送ですので、飛行機の代替サービスではありません。

例えば、車の渋滞エリア、高低差のあるエリア、災害時の脱出、事故現場からの人員輸送、離島交通などです。面白い引き合いだとレースはできないのか?という引き合いもありました。これについては落ちたらコストはすごいですよ、と返しておきました(笑)。

交通としての導入に向けては、すでに中国国内でも空域管理を行っている空軍と航路設定について協議を進めております。機体についても、CES2016で発表したものはバージョン1で、その後欧米からの問い合わせが多くあり、欧米人の体格に合わせた新型機体を開発中です。バッテリーについては各種電池性能を考慮した結果、現状リポ電池を採用しています。確実に技術革新がおきてくるでしょうから、その都度適したものを積極的に導入していきます。長期プロジェクトとして“着実”に進めています。

川ノ上DRONE.jp深圳特派員/xyZing.innovation-翼彩創新 (左)と胡華智CEO(右)

制御システムを軸にしたドローンタクシー、編隊飛行、そして…

—:イーハン社は今年2月の旧正月イベントで1000機編隊飛行でのパフォーマンスを成功させ、インテルが持っていた500機という世界記録を塗り替えました。このプロジェクトが目指しているのはどんなことでしょう?

唐哲君(Tang Zhejun)氏:まず、我々の強みは制御システムです。空域内のドローン管理という意味でEHang184も編隊飛行プロジェクトも同一線上にあります。編隊飛行についてはクリエイティブの専門チームもあり、広告媒体、エンタメコンテンツとしてサービス化し販売をしており、好評です。私達にとっては機体数を増やすことは難しいことではなく、理論上は2000機でも3000機でも飛ばすことは可能です。直近では6月末に中国で上映開始されたトランスフォーマー5の記念イベントで、パフォーマンスを行いました。

実は、EHang184の実証実験には毎回多額の費用がかかるため、この編隊飛行サービスでの収益は重要な資金源となっています。EHang184プロジェクトでは沢山の失敗を積み重ねていますので、投資家とのやりとりには結構苦労しています(笑)。

さらに、試験的に行なっているサービスとしてドローンを利用した全自動フード配送があります。ユーザーはアプリを使って発注をかけます。店側では注文情報を元に機体に配送先情報が転送されていますので、スタッフが食品を搭載し機体のスイッチを入れれば、自動でユーザーの元へ配送されていくという仕組みです。

現状は弊社周辺の飲食店と協業し、狭い範囲内での実験段階ですが、私もこのサービスを利用してアイスクリームをよく発注していますよ。想定している利用シーンは少し郊外の観光地で周囲に売店がないような状況での配送、また農村や過疎地での物資供給です。実は日本は室内が好きなオタクや外出が困難な高齢者が多いので、このような配送サービスの需要は高いだろうとみています。

空域活用のプラットフォーム整備を進めていく

イーハン社のショールームにて、同社の民生機GOHST2.0の展示も。日本ではあまり聞かれないが北米ではBestbuyなどで販売されるなど人気を誇る

—:イーハン社は航空業における産官学をつなぐ業界団体である深セン市航空業協会が2017年6月に発足させた無人航空機専門委員会の設立メンバーとしても参加されています。産業成長を見据えてどのようなビジョンをお持ちなのでしょうか?

胡華智(Hu Huazhi)氏:私は制御管理システムのエンジニアで、EHang184を新たな空域活用のプラットフォームにすることを目指しています。管理システムについては将来的には国際標準化も視野に入れ、世界的なインフラとして展開させたいと考えています。

私達は2015年に広東省のイノベーション模範企業としても選出されており、政府からの注目も高いです。実は広州市の市長もEHang184に試乗し、低空ですが飛行したことがあります。コンセプトだけの絵空事を進めているわけではなく、確かな実現可能性を持ったプロジェクトです。民間企業として立ち入ることができない空域管理については関連機関と協議をしながら進めています。

進む中国の空域活用の動きに注目

2017年6月に複数の国家機関部署が共同で発表した「無人機システム標準体系建設指南2017−2018」。ここでは無人機システムの300項目以上におよぶ標準体系化を目指す方針が示されており、2020年に向けて2段階で進められる模様。さらにこれらを推し進めることでシステムの国際競争力向上を見据えているようだ。

イーハン社が進める空の革命、そしてその強力な追い風になりそうな国の複数部門が絡んだシステム標準化の動き、引き続き注目していきたい。

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