ja DRONE https://www.drone.jp 国内外のドローン最新ニュースから、「空飛ぶクルマ(eVTOL)」、「自動運転」、「AI」、「ロボティクス」、「EV」、「宇宙技術」など時代を変えるテクノロジーを配信します Sat, 10 May 2025 19:53:01 +0000 GlobeXplore Pro、高精度なバーチャルロケハンを手軽に実現! [Reviews]Vol.89 https://www.drone.jp/column/20250509144119115416.html 115416 trend Friday, 09 May 2025 14:41:19 +09:00 空撮前のロケハン、もう失敗しない!「GlobeXplore Pro」は、Google Earth等の3Dデータを活用し、まるで現地にいるかのようなバーチャルロケハンを実現するプロ向けツール。時間とコストを大幅カット、プロの現場を変える新ツールをレビュー

空撮をするには手続きや許可取りをしなくてはならないことも多く、実際に空撮してみたらイメージと違った…となると、その時間的・コスト的損害は大きなものです。

そして、そのイメージの違いがクライアント側に起きていたとしたら…。それはもはやトラブルにもなりかねません。

今回ご紹介する「GlobeXplore Pro」は、その場でドローンをフライトさせなくても、Google Earthなどのデータを活用してバーチャルロケハンができるプロ向けツールです。

GlobeXplore Proの特徴

GlobeXplore Proは、業務用ドローンシミュレーションソフトウェアです。Google EarthやPLATEAUといった3Dモデルはもちろんのこと、CADデータやフォトグラメトリも読み込ませて画面上で高精度な現場再現=バーチャルロケハンをすることができます。

また、実在する機体を想定したレンズ選択や、日時(太陽の場所や影の出方も含む)の指定、天気の指定などもできるようになっており、本当にその場でドローンをフライトさせて撮影しているかのような画角を作ることができるのも特徴です。

筆者も空撮前には Google Earthを使ってバーチャルロケハン(のようなこと)をしていたのですが、Google Earthではちょっと上空からの景色を見ることはできるものの実際にドローンで空撮したような画角を見ることができず、結局は現場に行ってロケハンする前の“ロケハン準備”のレベルでした。

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Google Earthアプリで見た富津岬(千葉県)。3D表示で立体的ではあるものの、高度を指定した画角で見ることはできない

GlobeXplore Proでは、実際に飛行する場所や高度から実際に使う(焦点距離の異なる)レンズ、撮影する日時と天気を指定することで、その条件で撮影できる画角を忠実に再現できるのです。3DデータはGoogle Earthなどになるので、その限界を超えた解像度やリアル感では見ることはできませんが、下記の画像にある通り、バーチャルロケハンとしては問題ないレベルのリアル感で画角を確認することができます。

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GlobeXplore Proで見た富津岬。高度を変化させたり場所を自由に移動できるのはもちろんのこと、レンズの変更や日時指定による日の傾き、天気までも再現できる

GlobeXplore Proの実際の操作

(1)バーチャルロケハンをする場所を指定する

画面右下の「ロケーション」欄に座標を入れるとその場所に移動することができます。座標はGoogle Map で行きたい場所を右クリックすると表示されますので、それをコピーすると便利です。

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画面いちばん右の「ロケーション」欄に座標を入力、「移動」をクリックするとその場所に移動することができる

(2)日時と天気を指定する

バーチャルロケハンしたい場所へ移動したら、画面左下から日時と天気を指定します。日時を指定すると、その時間の太陽の位置がシミュレートされ、画面の3Dモデルにも太陽の位置や高さに応じた影が落ちます。

天気は「AUTO」にするとそのときの実際の天気(未来の指定では天気予報を参照)がシミュレートされますが、晴れや曇りも決め打ちで指定できますので撮影したい映像に合わせて設定します。

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画面いちばん左側に日時や天候を選択するパネルがある
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さきほどのバーチャルロケハン環境に対して時間を日の入り前に設定したもの。夕焼けに色づいてモニュメントの影も長くなっている
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さきほどのバーチャルロケハン環境に対して天候を「雨」に設定したもの。雨での空撮はあまりないかもしれないが、曇り空も含めてバーチャルロケハンできるのは空撮時のイメージを掴みやすい

(3)「機体とレンズを指定する

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機体は「M3 Pro cine」「I3」「Matrix 300」「FPV」から選択でき、画面表示の方法も一人称視点と第三者視点を選ぶことができます。また、レンズは主要な焦点距離のものはプリセットで入ってるほか、手動で焦点距離を調整することもできます。バーチャルロケハンで画角を確認したいのであれば、一人称視点でレンズを実在のものに設定して画角を見るのがよいでしょう。

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左から「I3」「Matrix 300」「M3 Pro cine」。一人称視点を選択すれば完全にプロポのモニターに投影される映像と同じ画角のものを確認することができる

(4)空撮したい場所や高度へ移動する

機体はもちろん、動かすこともできます。パソコンのキーボードであれば、

  • W…上昇
  • S…下降
  • A…左ラダー
  • D…右ラダー
  • ↑…前進
  • ↓…後進
  • ←…左エルロン
  • →…右エルロン

と、なっています。想定している場所や高度へ移動し、そこから見える映像を確認してみましょう。

富津岬での空撮時に利用してみた

実際にバーチャルロケハンとしてGlobeXplore Proを使用し、富津岬で空撮をしてきた際の使用感をレポートしたいと思います。

富津岬には「明治百年記念展望塔」という複雑な積層構造の展望タワーが岬の先端にあり、今回はこの展望塔を画角に入れながら展望塔の先の海に沈む夕日を撮りたいと思ってバーチャルロケハンを実施しました。

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GlobeXplore Proでの画角(上)とDJI Mavic 3 Pro での画角(下)の比較。ほぼ同じ画角で撮ることができた

まずは富津岬の座標を入力し、GlobeXplore Pro上で「明治百年記念展望塔」を画角に入れながら沈む夕陽を撮れる場所と高さを探りました。決め打ちの場所だけでなく、バーチャル空間を移動しながらイメージに合う画角を探れるのが便利です。

当日は日中は快晴だったものの少しモヤが多く、夕陽が見れるか不安だったのですが、結果は上記の通りとてもエモい夕陽を撮ることができました。GlobeXplore Proでシミュレーションした夕陽のほうが明るく、実際は少し暗い夕陽となりましたが自分としては満足です。

まとめ:ロケハン利用だけでなく企画プレゼンやクライアントコミュニケーションにも

GlobeXplore Proを利用して感じたことは、バーチャルロケハンはもちろんのこと、クライアントへの提案やコミュニケーションの中でもとても便利なツールとなることです。人は何よりも見たものを信じます。100の言葉を並べるよりも、一度見てもらったほうがその魅力は伝わるものです。企画のプレゼンやラフ映像の中への取り込みなどにGlobeXplore Proは利用できることでしょう。

250501_review_GlobeXplore-Pro_11

また、富津岬の陸地中央付近はドローンの飛行が原則禁止となっているのですが、GlobeXplore Proではもちろん空撮画角を確認でき、とても魅力的な画角であることもわかりました。

手続きをして空撮ができるならば、(実際に飛行できるかわかりませんが)その手間と時間をかけても撮ってみたいと思える景色です。GlobeXplore Proでは、そういった実際に飛行して確認することができない場所でも画角を確認できるため、手続きをして空撮してみたけれど大した画角ではなかった…というロスを防ぐこともできそうです。

今回は試せませんでしたが、コントローラーをPCに接続すればドローンをいつも操縦している感覚でバーチャル空間を飛行することもできます。

今後は、WeyPoint のように飛行経路を再現する機能も搭載を調整しているとのこと。GlobeXplore Proをご自身の空撮ワークに取り入れてみてはいかがでしょうか?

GlobeXplore Pro
URL:https://gxpro.app/
月額利用料:49,500円〜

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大阪・関西万博で感じる空飛ぶクルマ&ドローンがあたり前になる社会[Drone Design]Vol.62 JSDII ドローン赤外線調査スクール「建築ドローンコース」プレ開校式開催 DJI、5月13日に新製品発表!Mavic 4シリーズか? PRODRONE、UNIDO支援のもと「ウクライナのグリーン産業復興プロジェクト」に採択される。愛知から地雷除去協力 SiFly Q12ドローン、約145kmの航続距離と耐久性でDJIに挑戦か!? NDAA準拠、高いセキュリティ性能
大阪・関西万博で感じる空飛ぶクルマ&ドローンがあたり前になる社会[Drone Design]Vol.62 https://www.drone.jp/column/20250508100330115522.html 115522 trend Thursday, 08 May 2025 10:03:30 +09:00 4月13日から10月13日にかけて184日間、大阪夢洲で開催される「大阪・関西万博」では、空飛ぶクルマをはじめドローン関連の展示があちこちで見られ、未来のデザインや活用についても提案されています。

4月13日にいよいよ始まった2025年日本国際博覧会こと大阪・関西万博は、大阪市此花区にある人工島の夢洲で10月13日まで半年間開催されます。メインテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」とあわせて、コンセプトに「未来社会の実験場」を掲げており、会期中は空飛ぶクルマをはじめさまざまなモビリティの試乗や実証実験が行われています。

[caption id="attachment_115525" align="aligncenter" width="1280"]万博会場では「未来社会の実験場」をコンセプトにさまざまな最新モビリティの実証実験が行われている 万博会場では「未来社会の実験場」をコンセプトにさまざまな最新モビリティの実証実験が行われている
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巨大な会場は、最寄りにあるUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)の約3倍もの広さがあり、史上初めての海に面した立地となっています。西ゲートの海側、北西部に位置するフューチャーライフゾーンの一番奥にある「モビリティエクスペリエンス」には、空飛ぶクルマの離発着場「EXPO Vertiport」があり、会期中は運航事業者に選ばれた3陣営によるデモフライトが複数回行われます。

[caption id="attachment_115526" align="aligncenter" width="1280"]西ゲート海側の一番奥にある「モビリティエクスペリエンス」こと「EXPO Vertiport」 西ゲート海側の一番奥にある「モビリティエクスペリエンス」こと「EXPO Vertiport」
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最初にデモフライトを行ったのはSkyDrive社とOsaka Metroによる陣営で、会期前の4月9日に開催されたメディアデーに実施されました。3人乗り機「SkyDrive式SD-05型」を無人で自動制御とリモートコントロールにより、約5メートルの高度を約4分間、前後左右の水平移動や旋回も含めた飛行に成功しました。

[caption id="attachment_115527" align="aligncenter" width="1280"]SkyDrive社が最初のデモフライトに成功 SkyDrive社が最初のデモフライトに成功
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続いて会期後は、丸紅陣営がLIFT AIRCRAFT社の1人乗り機「HEXA」の有人飛行によるデモフライトを実施。2023年3月にも大阪城でも試験飛行を公開していますが、今回は週末を中心に一般にも公開されます。しかし、4月26日のフライトで、18個あるプロペラ・モーターのうちの1個と機体フレーム1本が破損し、アーム部分のモーターカバー2つがポート内に落下したため、現在は残念ながら公開を見合わせています。

関連記事:空飛ぶクルマLIFTの1人乗りeVTOLが有人飛行に成功。スムーズな飛行を披露 - DRONE

何かと制約がキツメのデモフライトですが、丸紅はもう一つ別の機体、Vertical Aerospace社の5人乗り機「VA1-100(VX4)」で、会場と尼崎フェニックス(兵庫県尼崎市)に建設された「尼崎フェニックスバーティポート」の2地点間飛行を予定しており、10月の実施に向けて調整を進めています。

また、2地点間飛行は、SkyDrive社が会場の向かいにある大阪港の中央突堤に建設された「大阪港バーティポート」の間で、夏頃に実施することを予定しており、さらに万博会場周辺での周回飛行も計画しています。

[caption id="attachment_115530" align="aligncenter" width="1280"]今年3月28日にオープンした「大阪港バーティポート」 今年3月28日にオープンした「大阪港バーティポート」
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そして、会場周辺での周回飛行はもう1社、ANAホールディングスがJoby Aviation社の5人乗り機「Joby S4」で、9月下旬から閉会式までに行うことを予定しています。デモフライトで使用される機体やバーティポートの情報は、会場内のエンパワーリングゾーン・エリアにあるミニパビリオン「空飛ぶクルマ ステーション」で公開されていて、SkyDrive社「SkyDrive式SD-05型」のフルスケールモックアップは予約すれば実際に搭乗して記念撮影もできます。

[caption id="attachment_115531" align="aligncenter" width="1280"]「空飛ぶクルマ ステーション」では空飛ぶクルマのフルスケールモックアップに搭乗できる 「空飛ぶクルマ ステーション」では空飛ぶクルマのフルスケールモックアップに搭乗できる[/caption]

当初、デモフライトの実施は4陣営が名乗りを上げていましたが、日本航空(JAL)と住友商事が運営するSoracle社は機体の調整が間に合わず、会期後にあらためて行われることが予定されています。その代わりではありませんが、同社は没入体験ができるイマーシブシアター「SoraCruise(そらクルーズ)」をパビリオン内に公開しています。

ディスプレイに囲まれたシアター内では、ソニーPCLが提供するイマーシブソリューションによる、迫力ある映像に音と振動を組み合わせたコンテンツが上映され、まるで空飛ぶクルマに乗っているような気分を味わうことができます。入場前に並んでいる間も飽きない工夫があり、空飛ぶクルマを身近に感じることができます。

[caption id="attachment_115532" align="aligncenter" width="1280"]イマーシブシアター「SoraCruise(そらクルーズ)」は予約が必要 イマーシブシアター「SoraCruise(そらクルーズ)」は予約が必要[/caption]
[caption id="attachment_115535" align="aligncenter" width="1280"]並んでいる間もタブレットで楽しめる 並んでいる間もタブレットで楽しめる
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大阪・関西万博ではその他にも、あちこちのパビリオンで空飛ぶクルマやドローンを活用した未来の技術やアイデアが見らます。たとえば、いのちをテーマに最先端の医療技術や話題の「iPS心臓」と「心筋シート」を展示しているパソナパビリオンでは、山間部や離島等の僻地等でも最先端の治療が受けられる「空飛ぶ手術室」を展示。搬送ではなく、移動しながら治療が行えるようになるというところが、なかなか万博らしい未来の提案だといえます。

[caption id="attachment_115538" align="aligncenter" width="1280"]パソナパビリオンは「空飛ぶ手術室」を展示 パソナパビリオンは「空飛ぶ手術室」を展示[/caption]

また、バーティポートに近い「フューチャーライフヴィレッジ」では、線路点検ドローン「Project SPARROW」が紹介されていました。このエリアは数日間という短い期間で展示が入れ替わるので、運が良ければ他にもドローンに関する新技術が見られるかもしれません。

[caption id="attachment_115540" align="aligncenter" width="1280"]線路点検ドローン「Project SPARROW」のアイデア紹介されていた 線路点検ドローン「Project SPARROW」のアイデア紹介されていた
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そしてなんといってもお楽しみなのが、会期中毎晩開催されるドローンショーです。レッドクリフによる10分弱のショーは午後8時57分からスタートし、大屋根リングのはるか上で1000機のドローンによる美しい演出を会場のあちこちから見ることができます。

[caption id="attachment_115541" align="aligncenter" width="1280"]会場では毎晩ドローンショーを開催 会場では毎晩ドローンショーを開催
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開会式では約2500機を使用し、花火も組み合わせた特別演出が行われ、空に描かれた「ドローンによる最大の木の空中ディスプレイ」でギネス世界記録を更新。また、年間で飛行したドローンの最多数でもギネスに挑戦しています。

まだまだ実物を見る機会が少ない空飛ぶクルマやドローンショーですが、この機会にたくさんの人たちに体験してもらい、次の新しいドローンをデザインするきっかけになってほしいものです。

EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト

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GlobeXplore Pro、高精度なバーチャルロケハンを手軽に実現! [Reviews]Vol.89 JSDII ドローン赤外線調査スクール「建築ドローンコース」プレ開校式開催 DJI、5月13日に新製品発表!Mavic 4シリーズか? PRODRONE、UNIDO支援のもと「ウクライナのグリーン産業復興プロジェクト」に採択される。愛知から地雷除去協力 SiFly Q12ドローン、約145kmの航続距離と耐久性でDJIに挑戦か!? NDAA準拠、高いセキュリティ性能
目視外飛行の行方[春原久徳のドローントレンドウォッチング]Vol.89 https://www.drone.jp/column/20250430103032115400.html 115400 trend Wednesday, 30 April 2025 10:30:32 +09:00 ドローンの活用に向けて、目視外飛行(遠隔操作)に関しては重要な項目としてフォーカスが当たってきた。 現在の目視飛行の状況、そしてその行方について見てみたい。

日本での目視外飛行

日本での目視外飛行に関していえば、2022年12月5日に開始されたレベル3、レベル4の機体認証、無人航空機操縦者技能証明(操縦ライセンス)において、一定のルールが示され、目視外飛行が制度的には動き出しているとも言える。

  • レベル1:目視内での操縦飛行
  • レベル2:目視内での自律飛行(自動飛行)
  • レベル3:無人地帯での目視外飛行
  • レベル4:有人地帯での目視外飛行

制度開始から2年ほど経過しての現在の状況を確認してみよう。 以下は国土交通省が今年の2月末時点での機体認証および操縦ライセンスの取得の状況である。

250428_sunohara_89_01

まずはレベル3の状況は、二等ライセンスが21,585件、型式認証書交付数5件、機体認証書交付数20件となっている。

レベル3に関しては、2023年12月にレベル3.5という改定された制度が既に動き出している。

それは新制度の運用が開始され、1年程度の段階で、二等ライセンスが6,860件あったにも関わらず、型式認証書交付数が1件(しかも、この交付は目視外除外での交付であった)といった環境の中、新制度が機能していないということも受けての市場からの圧力にも寄るものであったであろう。(以下の表が令和6年末時点の状況)

250428_sunohara_89_02

レベル3.5は、レベル3(無人地帯の目視外飛行)の飛行に際し、以下の条件を満たせばその飛行が可能になるといったものとなっている。

  1. 二等ライセンス以上の保有
  2. 保険への加入
  3. ドローンのカメラによる歩行者の有無の確認

具体的には、この条件により、以下が緩和される(省略できる)ものとなった。

  1. 立入管理区画を設定した場合は、当該立入管理区画に立看板等を設置するとともに、インターネットやポスター等により、問い合わせ先を明示した上で上空を無人航空機が飛行することを第三者に対して周知すること
  2. 立入管理区画に道路、鉄道、家屋等、第三者が存在する可能性を排除できない場所が含まれる場合には、追加の第三者の立入りを制限する方法を講じること
  3. 地上において、進行方向の飛行経路の直下及びその周辺への第三者の立ち入りの有無を常に検知できること
  4. 飛行経路には道路、鉄道、家屋が密集している場所がないこと

要は飛行ルートの周知や立ち入り制限、監視員の措置をすることがなく、目視外飛行が可能になるということである。

このレベル3.5により、無人地帯の目視外飛行はルール上動きやすくなったし、また、この1年において、その飛行シーンは多くなってきている。

けれど、無人地帯の目視外飛行(遠隔操縦・遠隔操作)に関しての活用が大きく進んだかというと、「ドローンのカメラによる歩行者の有無の確認」といった通信環境の安定的な稼働のための整備や、そもそものビジネスモデルの構築が出来ていないといったこともあり、まだ実証実験や実用前検証を超えて実用化されているケースはさほど多くない。

これは制度側の課題でなく、ドローン事業者側の課題となろう。

このレベル3.5の制度によって、はしごを外された形になっているのは、機体メーカーが取得してきた・取得しようしてきた第二種型式認証の動きである。

今回のレベル3.5はそれまで必要としてきた第二種型式認証(機体認証)を必要としていないこともあり、この型式認証にコストをかけてきた・かけようとしてきた機体メーカーにとって、そのコスト回収を困難なものにしている。(そのコストはケースによって異なるが数千万となっている)また、今後、その取得を行うモチベーションも著しく低くなっている。

これは機体メーカーの事業性の問題だけでなく、ある一定の安全性を向上・維持させるためにも、何らかの制度改正が必要な内容となっているだろう。

レベル4の状況を見てみよう。 一等ライセンスが2,722件、型式認証書交付数1件、機体認証書交付数4件となっている。

2年経過して、第1種の型式認証機体が1機体という現状は残念ながら、この制度が回っておらず、有人地帯の目視外飛行に関して、大きな足枷となっているとも言えよう。

そういった意味においては、何らかの緩和施策を必要としているが、有人地帯の目視外飛行(遠隔操縦・遠隔操作)における安全性と有用性、もしくは、事業性との天秤において難しい形となっているだろう。しかし、その議論はし始めないと一向に前には進まないだろう。

この議論のためにも、米国の動きは参考になるので、米国の動きを見てみよう。

米国での目視外飛行

米国においては、目視外飛行はBVLOS(Beyond Visual Line of Sight)と呼ばれる。 FAA(Federal Aviation Administration:連邦航空局)が商用ドローンの目視外飛行(BVLOS)運用の標準化を目指す、施行を計画している規制がPart108というものだ。この規制は、基本的に、特定の条件下でドローンが操縦者の目視外飛行を許可するものとなる。

これまでのPart107では、特別な免除を受けない限り、ドローン操縦者は機体を視界内に維持しなければならなかった。この目視内飛行制限は航続距離を著しく制限し、運用規模の拡大における大きな障害となっていた。

Part 108はその大きな転換点となり、新たな枠組みを確立することで、運用者はFAAの免除を常に必要とすることなく、長距離かつ複雑なミッションを遂行できるようになることで、ドローンの活用が大きく広がるということでドローン業界から期待をされてきた。

このPart108の今までの進み方は以下となっている。

  • 2021年 – ARC開始: 2021年6月、FAAはBVLOS航空規則制定委員会(ARC)を設立し、Part 108の勧告策定を開始した。これにより、迅速な規則制定への期待が高まった。2021年末には、当時のFAA長官スティーブ・ディクソン氏が、BVLOSに関するNPRM(規則制定案通知)を2022年末までに発表するとさえ述べた。
  • 2022年3月 – ARCレポート: ARCは2022年3月10日に最終報告書を提出し、FAAに対しPart 108の策定を促し、その運用方法を詳細に示した。この包括的な計画には、リスクに基づく分類、パイロットの資格要件、技術要件、さらには規則のサンプル文言まで含まれていた。業界関係者はこれを青写真と捉え、FAAが迅速に行動することを期待していた。
  • 2022年までにNPRMが成立せず: ARCのレポートがあったものの、2022年にはBVLOSに関するNPRMは成立しなかった。FAAが約束したスケジュールは遅れ、2023年半ばには当局も遅延を認めるようになった。期待されていた「BVLOSの年」が過ぎ去り、ドローン業界からは不満が噴出した。
  • 2024年、FAA再認可 – 議会からの働きかけ: 進展を促すため、米国議会は 2024年FAA再認可法(2024年5月16日署名)に、FAAに対し4ヶ月以内にBVLOS規則を正式に提案するよう指示する条項を盛り込んだ。これにより、Part 108 NPRMの期限は2024年9月16日と定められた。これは議会が事態の進展を切望していたことを反映した、積極的なスケジュールであった。
  • 2024年9月 – 締め切り通過: 9月16日は過ぎたが、NPRMは公表されなかった。同月開催されたCommercial UAV Expoで、FAAの代表者は期限に間に合わないことを認め、2024年末または2025年初頭のNPRMを目指していると述べた。この段階において、FAAの幹部はBVLOSが優先事項であり、水面下で作業が進行中であることを改めて強調した。
  • 2025年現在: 2025年第1四半期現在、BVLOS NPRMはまだ発表されていない。業界関係者は、この遅延がFAA内部の問題、つまりリソースの制約やトランプ政権での優先順位の変化を示唆しているのではないかと懸念を強めている。

ここでみたように、米国においてもドローン業界関係者の期待値とFAAの動きは一致していない。

しかし、そのPart108が通過した際のドローン活用に向かっては、個別承認を与えることで、その検証が進んでいる。その中でも警察・消防で展開を推進している「DFR(Drone as First Responder)」に関しては積極的に承認を与え、その動きが本格化している。

https://www.drone.jp/column/20241022080909101238.html

https://www.drone.jp/news/20241204163235105340.html

この「DFR」での様々な実践の中の検証を受けて、BVLOSのルールに関して、そのルールを構築する際の参考にしていることだろう。

日本での今後の目視外飛行の行方

日本においても、目視内で進めることが出来るドローン活用は、より現実的な実用に進めていく動きをドローン関係者は強化していく必要があるだろう。

一方で、目視外、特に有人地帯の目視外飛行に関しては、何らかの緩和といったものが必要となっている。しかし、その緩和に関しては、様々な意見がそこにあるということもあり、より社会性の高い内容から進めていくことを考えていかなければならない。それに関して、米国の「DFR」の例は参考になるのではないかと思う。

警察・消防、もしくは、防災・災害対応などでの駆け付け・見回りといった分野でのドローンポートとドローンの遠隔システムといった部分での実践的な運用といったものが一番いいのではないかと考える。

恐らく、今年度から来年度くらいにある一定の導入を行い、そこの中での状況や課題の収集を行い、緩和につなげていくといった動きが、米国のPart108とも相性がよいのではと考える。アクションしていくことが重要だ。

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2025年のドローン飛行計画: Mini 4 Proと巡るSFC修行旅 [田路昌也の中国・香港ドローン便り]Vol.51 https://www.drone.jp/column/20250422180507115300.html 115300 trend Tuesday, 22 April 2025 18:05:07 +09:00 古宇利島を空から見下ろしたとき、旅の疲れも吹き飛ぶような光景が広がっていました──。

先月のコラムで予告した通り、今月はANAのSFC修行を兼ねて仙台・松島・沖縄を巡り、各地でドローンフライトを実施してきました。 今回のレポートでは、空撮体験はもちろん、旅先で出会ったご当地グルメ、そして新機材の話題まで、写真とともにたっぷりご紹介します。

仙台編:広瀬川の空撮と"日本一のナポリタン"

仙台~松島編の空撮・グルメをまとめた動画はこちら

仙台では「ドローンフライトナビ」で飛行可能エリアを慎重に確認しつつ、広瀬川河川敷でフライトを実施。遠くに青葉城址を望むカットも撮影でき、仙台らしい景色を空から収めることができました。

[caption id="attachment_115305" align="aligncenter" width="1280"]青葉城址 青葉城址[/caption]

グルメも大充実。仙台駅到着後は「牛タン 司」で腹ごしらえ。ジューシーな牛タンとまろやかなとろろ・卵の組み合わせが絶品でした。

さらに「レストラン・ハチ」では仙台牛100%ハンバーグがのった“日本一のナポリタン”を堪能。締めのプリンは佐藤錦のさくらんぼがのっていて、甘酸っぱさと濃厚さのバランスが最高でした。

[caption id="attachment_115306" align="aligncenter" width="1280"]「牛タン 司」「レストラン・ハチ」 「牛タン 司」「レストラン・ハチ」の充実したグルメ[/caption]

松島・塩釡編:絶景と鮨のしおがま

松島ではレンタカーを活用し、松島湾の美しい島々を上空から撮影。空撮ならではのダイナミックな景色を記録できました。

[caption id="attachment_115307" align="aligncenter" width="1208"]松島湾の美しい島々 松島湾の美しい島々(画面タッチで360°空撮ご覧いただけます)[/caption]

松島 360° 空撮(画面タッチで360°ご覧いただけます)

グルメは、友人おすすめの「鮨のしおがま」へ。優しい大将が丁寧に握る寿司はどれも絶品で、塩釡ならではの新鮮なネタを堪能しました。

[caption id="attachment_115308" align="aligncenter" width="1280"]鮨のしおがま 鮨のしおがま[/caption]

沖縄編:古宇利大橋を空から、渋滞も旅のスパイス

沖縄では那覇空港からレンタカーで約2時間かけて古宇利島へ。夕日は逃しましたが、天候にも恵まれ、エメラルドグリーンの海に架かる古宇利大橋を空撮できました。

[caption id="attachment_115309" align="aligncenter" width="1208"]エメラルドグリーンの海に架かる古宇利大橋 エメラルドグリーンの海に架かる古宇利大橋(画面タッチで360°空撮ご覧いただけます)[/caption]

沖縄 古宇利島 360° 空撮(画面タッチで360°ご覧いただけます)

沖縄 古宇利大橋を撮影した動画はこちら

帰路では大渋滞に巻き込まれましたが、それも旅の思い出のひとつです。

使用機材:空撮と記録の二刀流

今回の旅では、空撮には軽量・高性能な DJI Mini 4 Pro を使用し、食や街の風景など陸上からの撮影には Xiaomi 15 Ultra を使用しました。

スマホとは思えないほど高性能なカメラを搭載したXiaomi 15 Ultraは、明るさや色味の表現に優れており、レストランの料理や街のスナップも美しく記録できました。

Mini 4 Proの実力とMini 5への期待

今回の旅で使用した機体は「DJI Mini 4 Pro」。Miniシリーズは初代から使い続けてきましたが、携帯性・バッテリー持ち・機能面すべてで、旅の相棒として非常に優秀です。

4K/60fps HDR撮影、全方位障害物検知といった多くの機能が詰まっており、旅行や出張での空撮には最適な1台と再確認しました。

[caption id="attachment_115310" align="aligncenter" width="1280"]軽量・高性能な DJI Mini 4 Pro 軽量・高性能な DJI Mini 4 Pro[/caption]

そして今夏には「DJI Mini 5 Pro」の登場が噂されています。1インチセンサーや新たな障害物検知システムの搭載など、発売されれば、秋のSFC修行にぜひ投入してみたい1台です。

SFC修行に「ドローン」という彩りを

SFC修行というと「ただ飛行機に乗るだけ」という印象もありますが、各地でのドローン撮影やご当地グルメを加えることで、旅の充実度は格段に上がります。

飛行機で移動し、ポイントを貯めつつ、美しい風景と味を楽しむ――これが、わたしの新しい修行スタイルです。

次回のSFC修行では秋に盛岡を訪れ、紅葉の岩手山とご当地グルメの空撮旅を計画中です。どうぞお楽しみに!

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GlobeXplore Pro、高精度なバーチャルロケハンを手軽に実現! [Reviews]Vol.89 大阪・関西万博で感じる空飛ぶクルマ&ドローンがあたり前になる社会[Drone Design]Vol.62 JSDII ドローン赤外線調査スクール「建築ドローンコース」プレ開校式開催 DJI、5月13日に新製品発表!Mavic 4シリーズか? PRODRONE、UNIDO支援のもと「ウクライナのグリーン産業復興プロジェクト」に採択される。愛知から地雷除去協力 SiFly Q12ドローン、約145kmの航続距離と耐久性でDJIに挑戦か!? NDAA準拠、高いセキュリティ性能
複合現実(MR)技術を使用した新たなドローンナビゲーション[小林啓倫のドローン最前線] Vol.88 https://www.drone.jp/column/20250410091409115079.html 115079 trend Thursday, 10 April 2025 09:14:09 +09:00 より直感的なドローン操縦にMR技術が期待されている。未経験者でも操縦を実現し、災害現場や危険な環境でのドローン活用に新たな可能性を開く

進化するMR技術

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MR技術を使って、仮想空間を通じてドローンを操縦する技術が登場

ホビーや空撮、そして配送にと、さまざまな用途で使われるようになったドローン。そのパイロットの数も増えているが、それでも一定の重量を持つ物体を飛行させる以上、その操縦は一筋縄ではいかない。たとえば一等無人航空機操縦士の試験については、公式な合格率の詳細は公表されていないものの、複数の情報源によると一般的に6割前後とされている(もちろんこれは実技だけでなく、学科も含めての結果だが)。経験の少ない受験者に限定すれば、もっと合格率は低くなるだろう。

そこでよりドローンを直感的に操れるようにするため、さまざまな研究が行われており、この連載でも何度か関連技術を紹介してきた。そこに新たなアイデアが加わろうとしている。今回は、「複合現実(Mixed Reality, MR)」と呼ばれる技術を活用するものだ。

MRとは、とは、現実世界の映像とコンピューターによって生成された仮想世界を組み合わせ、現実世界の中に仮想的な物体や情報を重ねて表示する技術を指す。従来の拡張現実(AR)技術と違い、表示される仮想世界を現実世界から干渉することが可能で、たとえば目の前に表示されるCGの物体を、自分の手で「触れて」(実際にはCGが表示されている辺りの空間に手をやることで)操作することができる。

たとえば次の映像は、Microsoft社が同社のVR/MR用ヘッドセットであるHoloLensを使用して、MRを実現しているデモンストレーションである。

この中で、作業員がCGで表示される機械のパーツを、自分の手を使って操作する様子が描かれているのが分かるだろう。このようにMRでは、ユーザーが思い通りの物体を仮想世界に出現させることができるだけでなく、それを現実世界の側から直感的に操れるのである。もちろんそれにはHoloLensのようなヘッドセットが必要だが、さまざまな可能性を秘めた技術であることがわかるだろう。

そしてこのMRを利用したドローンナビゲーション技術を開発したのが、ニューヨーク大学タンドン工科学部に所属する研究者らだ。彼らはその研究成果を、「複合現実を通じた未知の環境での人間とドローンの直感的な共同ナビゲーション」というタイトルの論文で発表している。

未経験者でも効率的なドローン操縦が可能に

研究者らは論文の中で、この技術を開発した目的は「ドローンを操作するために専門的な訓練を必要としないシステムを作ること」であったとしている。特に「災害現場での探索や危険な場所の点検など、ドローンの活用が期待される場面で、より直感的で安全な操作を可能にしたかった」という。

具体的にどのようなシステムを作り上げたのか。中心となるのは、前述のMR技術だ。ドローンのパイロットはHoloLensを装着し、目の前に表示される仮想的な地図を見ながらドローンを操縦することになる。

ドローンは搭載されたカメラとセンサーで周囲の環境を3Dマップとして記録し、そのデータをリアルタイムで操縦者のデバイスに送信。操縦者は実際の環境に重ねて表示されるこの3Dマップ上で、指でタップするだけでドローンの目的地を指定できる。さらに、ドローンは障害物を自動的に検知して回避するため、操縦者が完璧な経路を考える必要もない。

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上の画像は論文から抜粋したものだが、これは開発された「人間-ドローン協働ナビゲーションシステム」のデモンストレーションを示している。

右側にある(b)の画像は、ユーザーがヘッドマウントディスプレイ(HoloLens)を装着して、ミニマップと呼ばれる縮小された仮想環境を見ている様子だ(当然ながらCG部分は実際には現実世界には存在しておらず、この画像はHoloLensをかけたユーザーがどのような光景を目にしているのかを表している)。

ユーザーの前には2つの青いタスクボタンが表示されており、これらを使ってドローンに経路を指示している。ユーザーはこのインターフェースを通じて、ドローンの目的地や移動経路を直感的に指定することができるというわけだ。

また左側にある(a)の図は、ドローンが実際の環境内で動作している様子を示している。ユーザーが指定した経路に従って、ドローンは障害物を自動的に回避しながら自律的に飛行することになる。

研究チームは、ドローン操縦の経験者と未経験者、計6名の被験者で実験を実施。従来の一人称視点による操作方法と比較したところ、新システムでは操縦者の精神的負担が約半分に減少し、同じ時間内に探索できる面積が約50%増加するという結果が得られた。特にドローン操縦の未経験者では、探索面積が約90%も増加したという。「これは、専門的な訓練を受けていない一般の人でも、このシステムを使えば効率的にドローンを活用できることを示している」と研究チームは説明している。

前述の通り、このシステムは特に、災害現場での捜索・救助活動や、危険な環境での点検作業などに役立つと期待されている。また研究チームは、今後の展望として、複数の操縦者と複数のドローンが連携できるシステムへの拡張や、よりアクセスしやすいクラウドベースのインターフェース開発を計画しているそうだ。いずれドローン操縦における主要なナビゲーション技術として、MRが大活躍する時代が来るかもしれない。

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GlobeXplore Pro、高精度なバーチャルロケハンを手軽に実現! [Reviews]Vol.89 大阪・関西万博で感じる空飛ぶクルマ&ドローンがあたり前になる社会[Drone Design]Vol.62 JSDII ドローン赤外線調査スクール「建築ドローンコース」プレ開校式開催 DJI、5月13日に新製品発表!Mavic 4シリーズか? PRODRONE、UNIDO支援のもと「ウクライナのグリーン産業復興プロジェクト」に採択される。愛知から地雷除去協力 SiFly Q12ドローン、約145kmの航続距離と耐久性でDJIに挑戦か!? NDAA準拠、高いセキュリティ性能
韓国ドローンスタートアップは、デザインもアイデアも実装スピードも全てにおいて注目の存在[Drone Design]Vol.61 https://www.drone.jp/column/20250327103301114655.html 114655 trend Thursday, 27 March 2025 10:33:01 +09:00 ドローンがビジネス市場として確立されるようになり、参入するスタートアップが世界中で増えています。国際テックイベント「CES」では、他にはないデザインやアイデアのドローンも見られ、中でも韓国の動きには注目すべきものがありました

CES2025で見つけた!韓国発、ユニークドローン最前線

ドローンをテーマにする展示会は国内外でも増えており、毎年1月にラスベガスで開催される国際テックイベント「CES」は、空飛ぶクルマをはじめとするさまざまなドローンが出展されることで注目を集めています。一昔前とは違ってドローンメーカーのブースは見かけなくなったものの、代わりにスタートアップが増え、米国、フランス、イギリス、ウクライナ、タイ、そして日本などから出展があった。特に多かったのが韓国で、面白いデザインやアイデアを取り入れたドローンもありました。

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CES2025は世界から1200のスタートアップが出展し、ドローンスタートアップも多かった

韓国のスタートアップが登壇するピッチイベントで紹介されていたのが、四角くて細長い機体に折りたたんで格納できるブレードを備えたLeaPt社の「LPT Platform」というドローンです。

特徴的なデザインのペイロードで7〜300kgの荷物を用途にあわせて運搬できるよう設計されています。また、荷物以外のモジュールも搭載でき、軍用も含めたさまざまな目的でも使えることも想定されていて、設計に関する新しいアイデアを募集しているということでした。

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四角で細長いデザインをしているLeaPt社の「LPT Platform」
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ブースではモックアップを展示

デザインではさらにユニークだったのが、D-MAKERSの「Nova 400」というドローンでした。四角いフレームをつないで8の字にしたような、デュアルダイヤモンドという飛行安定性を高める独特な形をしていて、4つのローターで空を飛ぶ仕様になっています。ブースにある機体はプロトタイプと思いきや完成品のようで、サイズは366×642×140mm、ホイールベースは400mm、重さは1.4kgと超軽量で、そのため飛行時間も50分となっています。主に偵察用で、他にもブレードが8枚のNova Octo、12枚のNova Dodecaというシリーズがリリースされています。

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デュアルダイヤモンドというユニークなデザインをしたD-MAKERSのクアッドコプター「Nova 400」

航空学科や航空整備学科がある韓瑞大学も、とてもユニークなデザインのドローンを設計していて、UFOのような形をした「Urban Bladeless Delivery Drone System」は、イノベーションアワードを受賞しています。名前にある通り、ブレードを使用せず、騒音を40%以上削減しながら、最大10kgの貨物を運ぶことができます。AIベースのスマートフライトシステムを備え、都市部での配達や監視を実現できるということです。

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ブレード無しで静かに飛ぶUFOのような「Urban Bladeless Delivery Drone System」はイノベーションアワードを受賞している

韓瑞大学はもう一つ、地下での運用を想定し、360°のLIDARとAIを搭載した「Underground Drone」でイノベーションアワードを受賞しています。ブースでは他にもさまざまなドローンに関する技術が紹介されていて、機体の周囲を包むようなLEDディスプレイで映像を表示できるドローンなども展示されていました。

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「Underground Drone」は地下で運用できるよう設計されている
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LEDディスプレイで映像を表示できるドローンを展示

空だけでなく水上向けのドローンもあり、Korea Ocian A.I.ことKoaiは、事故などにより海や川に漏れたオイルを自動で分離、収集するオリジナルのドローンを開発しています。回収する本体と、移動に使用するフロートの部分を組み合わせて、広い海や沿岸、狭い川でも利用できるように設計されていて、現在、試験運用が行われているとのこと。会社設立のきっかけや活動内容も興味深く、いよいよ実装に向けて動きはじめ、CESで活動を広くアピールしているということでした。

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オイル回収ドローンはいろいろなデザインを検討しているところだという
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実際にオイル回収作業で機能を発揮していることが動画で紹介されていた

韓国のドローンスタートアップは、まずその数の多さに驚かされたのですが、単純に高性能な機体を製造するというよりも、新しいアイデアを実装する開発スピードも早くなっているという印象で、国もかなり力を入れているということがわかりました。

技術面でも大学や若手の研究者を中心に、プロトタイプをいろいろ発表しており、こうした動きが世界市場にどのような影響を与えるのか、気になるところです。

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GlobeXplore Pro、高精度なバーチャルロケハンを手軽に実現! [Reviews]Vol.89 大阪・関西万博で感じる空飛ぶクルマ&ドローンがあたり前になる社会[Drone Design]Vol.62 JSDII ドローン赤外線調査スクール「建築ドローンコース」プレ開校式開催 DJI、5月13日に新製品発表!Mavic 4シリーズか? PRODRONE、UNIDO支援のもと「ウクライナのグリーン産業復興プロジェクト」に採択される。愛知から地雷除去協力 SiFly Q12ドローン、約145kmの航続距離と耐久性でDJIに挑戦か!? NDAA準拠、高いセキュリティ性能
2025年のドローン飛行計画:SFC修行を活かした全国空撮の旅[田路昌也の中国・香港ドローン便り]Vol.50 https://www.drone.jp/column/20250325095347114383.html 114383 trend Tuesday, 25 March 2025 09:53:47 +09:00 ANA上級会員資格「SFC」修行とドローン空撮を組み合わせた、一石二鳥の旅。東北から沖縄、韓国まで、各地の絶景を空から捉える撮影スポットとプランを紹介する

飛行機の上級会員資格を獲得しながら日本全国を撮影するーーそんな一石二鳥の旅はいかがでしょうか?

今回は、ANAのSFC(スーパーフライヤーズカード)修行を活用したドローン撮影計画についてお話しします。

SFC修行とドローン撮影の相性

SFC(スーパーフライヤーズカード)とは、ANAの上級会員資格です。一定のプレミアムポイントを獲得することで手に入るこのステータスは、空港ラウンジの利用や手荷物の優先取り扱いなど、さまざまな特典が得られます。

この資格を得るには「SFC修行」と呼ばれる戦略的なフライト計画が必要です。効率よくポイントを稼ぐには、海外発券を利用した長距離移動や、国内でも沖縄-仙台間などの長距離フライトを多用することがポイントです。

私は「せっかく各地を訪れるなら、その土地の魅力をドローンで記録しよう」と考えました。 SFC修行とドローン撮影を組み合わせれば、旅の目的が増え、単なる移動時間が創造的な活動に変わります。

2025年の撮影計画:東北の風景を空から捉える

仙台・塩釡での撮影スポット(4月予定)

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4月に訪れる仙台エリアでは、塩釡を中心に撮影を計画しています:

  • 塩釡湾の景観:多聞山から塩釡湾を空撮する予定です。湾内に浮かぶ船と背景の島々が織りなす風景は、空からの視点でより魅力的に映るでしょう。
  • 機内持ち込みを考えて使用機材はコンパクトなDJI Mini 4 Proを予定しています。
  • 寿司屋激戦区としても知られる塩釡の街並み:空撮と合わせて、地元の名店を巡る「寿司屋さん巡り」も楽しみの一つです。鮮魚市場周辺の活気ある風景はドローンは無理ですが、スマートフォンやOsmo Pocket3で記録したいと思います。

撮影に際しては、港湾区域での飛行制限に注意し、必要に応じて許可申請を行う予定です。また、漁船の往来が多いため、安全管理を徹底して撮影に臨みます。

盛岡での撮影プラン

盛岡訪問では、以下のスポットでの撮影を考えています

  • 岩手山の絶景:盛岡からも見える岩手山は、東北を代表する秀麗な山。適切な場所から空撮すれば、雄大な姿を記録できるでしょう。
  • 四十四田ダムとその周辺:北上川に建設されたこのダムは、周囲の自然と人工構造物のコントラストが魅力的です。ダム湖の青さと周囲の緑、そして遠くに岩手山を望む構図を狙えないかと考えています。

盛岡は名物のじゃじゃ麺や冷麺などのご当地グルメも楽しみの一つ。グルメを堪能した後に撮影に出かけるプランです。ダム周辺での飛行には高度制限がある可能性もあるので、事前に詳細を調査する予定です。

安全なフライトのための事前調査

これまでは地元の友人や、旅先ではその地に詳しいドローン仲間に情報提供してもらうことが多かったのですが、SFC修行で訪れる場所では、そうした人脈がない場合も多くなります。そこで重要になるのが、事前の入念な調査です。

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これまでは、DJIの飛行可能地域を確認できるマップを参考にしながら飛行計画を立てていましたが、さらに詳細な情報が必要だと感じていました。そんなときに発見したのが「ドローンフライトナビ」というアプリです。

ドローンフライトナビの活用

最近発見した「ドローンフライトナビ」は非常に便利なアプリです。

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単にフライト可能かどうかを調べるだけでなく、日の出・日没時間、飛行禁止区域などが確認できます。

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左:仙台周辺情報、中央:送電線表示、右:大船渡 緊急用務区域

例えば、仙台での撮影計画を立てる際、松島周辺の人口集中地区(DID)や飛行制限区域を、地図上ですぐに視覚的に把握できました。この情報は紙の地図や一般的なマップアプリでは得られないもので、無料でもかなりの情報を得ることができます。さらに月額300円でサブスクリプションすると送電線表示などの機能が追加されます。

実際に有料会員登録をし、Xでも開発者の方をフォローしたところフォローバックして頂けたのがなにげに嬉しかったです。ドローンパイロットの方だからこそ作れる有益なアプリだと感じています。

SFC修行の王道:沖縄・韓国ルートとドローン撮影

SFC修行で最も効率的とされているのが、韓国発→羽田経由→沖縄というルートです。このルートは、コストを抑えながらも距離を稼げるため、プレミアムポイントの効率が非常に良いとされています。

韓国での撮影可能性

韓国でのドローン規制についてはあまり詳しくありません。

ソウル市内や空港周辺、軍事施設の近くでは当然 飛行が厳しく制限されているようですが、郊外や観光地によっては、事前登録をすれば飛行可能なエリアもありそうです。

韓国訪問時には、釡山の海岸線や済州島の火山地形など、自然景観の撮影ができればと思っています。事前にウェブサイトで飛行可能区域を確認し可能ならチャレンジしてみたいです。

沖縄の魅力的な撮影スポット

沖縄本島から石垣島、宮古島まで、ドローン撮影の宝庫とも言える沖縄。特に狙っているのは以下のスポットです:

  • 古宇利大橋:エメラルドグリーンの海に浮かぶ橋を真上から撮影すると、まるで絵画のような美しさです。
  • 波照間島のサトウキビ畑と海岸線:日本最南端の有人島で撮影できれば、一生の思い出になると思います。

旅の楽しみ:現地の味覚と文化

SFC修行とはいえ、旅を楽しむことも大切です。各地のグルメも旅の醍醐味のひとつです。

  • 仙台:牛タンと笹かまぼこを堪能
  • 塩釡:新鮮な寿司を味わう
  • 盛岡:じゃじゃ麺と冷麺を楽しむ
  • 韓国:サムギョプサルやビビンバを満喫
  • 沖縄:沖縄そばやゴーヤチャンプルーを味わう

ドローン撮影の合間には、現地の文化や歴史にも触れたいと思います。旅の記憶は映像だけでなく、味覚や体験も含めて残るものです。

まとめ:効率と創造性の両立を目指して

SFC修行とドローン撮影を組み合わせることで、単なる移動が創造的な旅に変わります。効率よくポイントを稼ぎながら、日本の美しい風景を空から記録するーーこれこそが私の2025年の目標です。

この連載では今後も、SFC修行で訪れる各地での撮影体験をお届けしていく予定です。次回は実際に仙台・塩釡エリアを訪れた際の空撮映像と、現地でのフライト体験についてご紹介できればと思います。

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GlobeXplore Pro、高精度なバーチャルロケハンを手軽に実現! [Reviews]Vol.89 大阪・関西万博で感じる空飛ぶクルマ&ドローンがあたり前になる社会[Drone Design]Vol.62 JSDII ドローン赤外線調査スクール「建築ドローンコース」プレ開校式開催 DJI、5月13日に新製品発表!Mavic 4シリーズか? PRODRONE、UNIDO支援のもと「ウクライナのグリーン産業復興プロジェクト」に採択される。愛知から地雷除去協力 SiFly Q12ドローン、約145kmの航続距離と耐久性でDJIに挑戦か!? NDAA準拠、高いセキュリティ性能
ドローンビジネスにおける現在での考慮点[春原久徳のドローントレンドウォッチング]Vol.88 https://www.drone.jp/column/20250324164010114380.html 114380 trend Monday, 24 March 2025 16:40:10 +09:00 10年目を迎えた「ドローンビジネス調査報告書」から、ドローン市場規模の現状と今後を展望し、ドローンビジネスを考える

毎年、数字の予測や執筆に参加している「ドローンビジネス調査報告書」(インプレス)も10年目を迎えた。

ドローンビジネスを捉える際のポイント

ドローンビジネスを捉える際に重要なのは、以下になる。

1.自社事業の立ち位置

大きく分けると、3つに分かれる。

1つ目が機体関連のビジネスである。機体メーカーは勿論であるが、機体メーカーに部品や周辺機器、アプリケーションを納入したり、機体メーカーに対しての開発や検査を請けたり、また、機体の組立てなどを請けたりする事業も、ここに含まれる。ビジネスの市場規模に換算されないが、機体の販売会社や代理店も機体関連のビジネスレイヤーに含まれるだろう。もし限られた機体メーカーのために事業計画を立てている場合は、その機体メーカーの事業依存が高くなる。

日本においては残念ながら、機体メーカーで黒字化している企業や事業部門は少ない。それは、今まで多くが国プロといった補助金や助成金といった形での依存度が強く、その補助金や助成金を受けている間に一定数の機体販売の数量の確保を実現することが難しかったという現状がある。

より詳しい状況は以前のコラムに書いた。

https://www.drone.jp/column/20241119082906103808.html

2つ目がサービス関連のビジネスだ。サービスといっても、いくつかのカテゴリーに分かれる。オペレーション(操縦・運用)系のサービス、ドローンで取得したデータ処理系のサービス、機体や運用管理系のサービスなどとなる。また、サービス提供の仕方も、実際のオペレーターの提供や、アプリケーションやクラウドを中心にしたものなどがある。 このサービス関連のビジネスにおいては明暗が分かれている。この明暗に関しては後述したい。

3つめがドローン周辺関連のビジネスだ。これはオペレータースクールやドローンエンジニアスクール、保険、ドローン活用ユーザー向けの開発業務、コンサルティングなどがある。ドローン市場の拡大とともに、この周辺関連も拡大してきてはいるが、オペレータースクールなどは過剰感が生じている。ドローンビジネス市場規模には換算されないが、今まではドローン関連の国プロや自治体予算のビジネスの窓口や事務局といった動きも一定の規模感があった。

2.活用段階

(1)実証実験

実証実験は、企業が事業企画の予算を支出し行うケースと、国や自治体が公募し実施するケースとある。当初は実態検証のような「何ができるか」を検証する機会も多かったので、国や自治体が開発に近い部分で出しているケースが多かった。

しかし、様々な分野でドローンの実態が明確化していく中で、こういったケースは少なくなってきた。現在も国や自治体が公募するケースはあるが、件数が少なくなっており、どちらかというと、ユーザーやサービサー向けの補助金や助成金にシフトしてきている。企業が支出する実証実験はより実際の環境やシチュエーションの中での効果測定やその進捗の中での効率化といった部分に注力されている形が多い。

(2)実用前検証

これは2020年12月のこのコラムでも書いたが、実際のところ、2020年から現在に至っても、この段階で留まっており、なかなか実用化といったステージに進まないものも多いのが現状だ。

https://www.drone.jp/column/2020122115150541729.html

この段階においては、以前も示した以下のような検証課題がある。

  • 技術の確立 これはその内容に応じた技術が確立しているかという視点で、ドローンの機体制御だけでなく、カメラやセンサーなどのペイロード制御技術やその現場に即した個別の技術が伴っているかということだ。
  • 方式の確立 これは個々の技術ではなく、その技術の方式や自動化などの実施技術がいかに確立しているかという視点となる。これは機体管理や取得したデータ処理などの技術の使いやすさや効率化がなされているかということだ。
  • 容易性 これは「方式の確立」とも連動するが、横展開するためのアプリケーションやトレーニングマニュアルがいかに整っているかという視点である。実用化の壁という点においては、この「容易性」というのは非常に重要なポイントになってきている。
  • 制度化 これは外部的な要因で、法令や省令、業界でのルールやガイドラインが整ってきているかという視点である。特に点検などの市場においては、各種点検でのルール(実施サイクルや点検箇所など)が定まるとドローンの立ち位置が決まるため、定常的な利用という点では非常に有効となるポイントだ。
  • 経済性 ドローンソリューションというものも、多くはそのものが目的ではなく、手段という点からも、この「経済性」が伴わないソリューションが定常化するのは難しいだろう。「経済性」は導入効果ということで、実施することで付加価値を上げるか(企業収入の増加、人的リスクの低減、顧客満足度の向上など)といった方向とコストの削減が図れるか(人的リソースの効率化、期間の短縮、SCMの実現など)といった方向がある。

実用化に進まないのは、その中でも活用のエリアや内容によって、異なるものの多くは技術の問題というよりも、現場で使うに値するものになっているのかというポイントがある。

これは使う側においても、使い勝手が万全でないと採用しないといった、日本特有の完成度の高さをあまりに求めすぎるといった点もあるだろう。

また、ここの段階において、多くのシーンにおいて、より現場にドローンの作業がシフトしていくといった流れもある。その場合、自社の部門ということもあるが、測量や点検といったエリアにおいては、大手企業での活用が多いため、子会社や関係会社に作業委託するケースも多い。年間に数回といった実施ケースの場合には、飛行部分を今まで通りにドローン企業に委託するケースも多いが、日常的な実施の場合には、その子会社や関係会社で実施する形になるケースが多く、その場合には、導入サポートやトレーニングをドローン企業が請け負う。 (いわゆるドローン事業者は、それまでは運用や操縦といったオペレーター業務を請け負っているが、実用が進むにつれてそういったビジネスが少なくなってきており、この実用化が進むフェーズにおいて、ドローン事業者のビジネスが先細りをしていくといった背景がある)

(3)実用化

もし、活用段階がこのステージで安定的にドローンビジネスを伸ばしている会社があれば、それは事業としても異なったステージに入ってきていることになる。

この実用化の段階を迎えている事業に関しては、苦しんでいるドローン事業者が参入してくるケースも多く、事業者の過剰状態にもなりやすく、その中で価格競争なども生じやすい。

ただ、既存の事業者は実用化する中で、工夫をしてきており、そのソリューションが定着していく過程で一定の事業ノウハウも蓄積しており、活用者側も単に価格だけではなく、その効果検証も必要だ。また、自らの顧客にどうやって価値を与え続けるかといった観点も提供する側は重要となってくる。 (この辺に関しては、ドローンビジネスだけでなく、その他のビジネスも同様だ)

3.活用頻度

ビジネスを組み立てたり、その検証したりする中において、重要なのは実用化されたときの活用頻度である。

毎日、週2-3回、週1回、月2-3回、月1回、半年に1回、年に1回、数年に1回など、その活用頻度によって、ドローン事業者の顧客に対するポジショニングも変わってくる。特に利用頻度が高くなればなるほど、先ほど書いたようなオペレーティングの内製化の流れは強くなってくる。

また、一方で活用頻度が高いものは、その初期費用コストが多少高くなっても、1回あたりの使用コストは安くなってくることもあり、コストをかけやすい。逆を返すと、活用頻度が低いものは、その初期費用コストを掛けにくく、その費用対効果の観点が厳しくなる。

また、ドローン事業者もどういったサイクルで売上が上がっていくのかをきちんと考慮して、マーケティングや組織作りをしていくことも必要だろう。

ドローン事業者においては、こういった観点をきちんと捉えて、自社企業の強みや経験値などを考えて、ユーザーに対して、きちんとした提案を行っていくことが肝要であろう。

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GlobeXplore Pro、高精度なバーチャルロケハンを手軽に実現! [Reviews]Vol.89 大阪・関西万博で感じる空飛ぶクルマ&ドローンがあたり前になる社会[Drone Design]Vol.62 JSDII ドローン赤外線調査スクール「建築ドローンコース」プレ開校式開催 DJI、5月13日に新製品発表!Mavic 4シリーズか? PRODRONE、UNIDO支援のもと「ウクライナのグリーン産業復興プロジェクト」に採択される。愛知から地雷除去協力 SiFly Q12ドローン、約145kmの航続距離と耐久性でDJIに挑戦か!? NDAA準拠、高いセキュリティ性能
DJI Matrice 4Tが広大な遊水地上空で活躍。DJI Dock 2も投入、ドローンによる「ヨシ焼き」残火確認 現場レポート https://www.drone.jp/special/20250321113534113165.html 113165 trend Friday, 21 March 2025 11:35:34 +09:00 1500ヘクタールという広大な遊水地で行われる野焼きの「ヨシ焼き」。その残火確認作業に最新ドローン「DJI Matrice 4T」やドローンポート「DJI Dock 2」が導入された。ドローンが残火確認にどのように活用されているのか、現場を取材した

渡良瀬遊水地は栃木県栃木市、小山市、野木町、茨城県古河市、群馬県板倉町、埼玉県加須市の4県6市町にまたがる。遊水地とは河川に接する土地を堤防で囲い、その中を掘り下げて、増水時に河川の水を流入させる治水施設のことだ。

渡良瀬遊水地の面積は3300ヘクタール(33km2)におよび、総貯水容量は2億立方メートルを誇る。しかし、こうした数字だけではそのスケールを実感しにくいかもしれない。広さを東京ドームに換算すれば約706個分、総貯水容量は富山県の黒部ダムに匹敵する。

この広大な湿地には、イノシシやタヌキ、猛禽類のチュウヒなどの動物が生息し、ミズアオイやタチスミレといった貴重な植物が自生する、豊かな自然環境が広がっている。その中でも、渡良瀬遊水地を代表する植物が「ヨシ」だ。イネ科に属し、河川や湖沼の水面からおよそ50センチメートル以上の場所に生育する。

ヨシの育成を管理するために行われているのが「ヨシ焼き」である。ヨシに取り付いた害虫を駆除するために昭和30年代ごろから始められたという。ヨシ焼きによりヨシの芽吹きが助けられ、良質に育つ。また、自然発火、いわゆる「野火」の防止の意味合いも持つ。ヨシ焼きは毎年3月に行われる。

ヨシ焼きは午前8時30分から開始された。この日はほとんど風がなく、煙は上空へとまっすぐ立ち上り、太陽の光さえ遮るほどだった。周囲はまるで日食が起きたかのように暗くなり、幻想的な光景が広がった

2020年度から、ヨシ焼きの残火確認においてドローンを活用する取り組みが進められている。ヨシ焼きで燃焼する面積は1500ヘクタールにのぼる。従来はヨシ原から立ち上る煙を、人間が堤防上から目視で監視していた。これをドローンによる空撮に置き換えて、残火を確認する。

一度ヨシに付いた火は徐々に燃やす範囲を広げていく。焦げ臭さが鼻を突き、まるで身をいぶされる思いだ。ヨシを焼いて発生した降灰も絶え間なく降り注いだ

ドローンの運用は栃木市でドローンを利用した写真測量、レーザー測量の事業を展開する藤成測量が編成したドローンチームが担う。このプロジェクトの責任者である藤成測量の小林将人氏は、取り組みを始めた経緯を次のように説明する。

小林将人氏:藤成測量は地上での測量に加え、ドローンを使用したUAV測量やインフラ点検を手掛けています。また私と小林隼人で共同経営する「スカイブリッジ」ではドローンを活用したプラント点検や点群データを使用した3次元化を行うほか、遊園地の遊具点検なども担当しています。 地元の一大行事であるヨシ焼きでは消火確認を人が担っていましたが、火に巻き込まれ死亡する事故も起きたことがあり、安全に確実に残火確認を行うにはドローンが最適だと考えました。そこでこれまで蓄えたドローン運用の知見を活かせないかと考えて、栃木県など自治体に提案しました。これまでの取り組みでドローンの利用が効果的だと認められており、継続的に依頼を受けています

2024年度の取り組みでは、火山の火口調査や森林調査などにドローンを活用するJDRONEが参加。ドローンの販売を手がけるシステムファイブは、DJIから2025年1月にリリースされた最新の産業ドローン「DJI Matrice 4T」、2024年3月に登場したドローンの自動運航・自動充電に対応するドローンポート「DJI Dock 2」と専用ドローン「DJI Matrice 3TD」を提供した。

2025年1月に登場したDJI Matrice 4T。アームを展開した状態での寸法は、約307.0×387.5×149.5 mm(長さ×幅×高さ)
DJI Matrice 4Tを右後方から撮影。サイズ感としてはDJI Mavic 3シリーズとそれほど変わらない印象。通常のプロペラを搭載した際の離陸重量は1219g

このほかにも各社が所有するDJI Matrice 350 RTK、DJI Matrice 300 RTK、Matrice 30、DJI Mavic 3 Enterprisも投入され、合計6機種のドローンが藤成測量の3チームとJDRONEの2チームで運用され、残火確認に使用された。実際にどのようにドローンが運用されているのか、現地でチェックした。

実施本部には藤成測量のスタッフ、消防関係者が集まり、ドローンから送られる映像を見ながら残火確認作業を行った。ヨシ焼き実施箇所を示す大きな地図も張り出され、ドローンによる残火確認の終了後は、この地図にドローンでマッピングしたデータを書き写し、鎮火が完全に確認されるまで引き続き作業が続けられる

ドローンによる残火確認は午後から行われた。渡良瀬遊水地の北エントランスからクルマで5分にある渡良瀬遊水地湿地資料館内にはヨシ焼きの実施本部が設けられている。作業開始に先立ち小林将人氏が「(2025年2月に発生した)大船渡の山火事のこともあります。災害時の訓練に臨む心構えで取り組みましょう」と訓示した。

実施本部の外にはスターリンクのアンテナが設置された

藤成測量とスカイブリッジは実施本部の一角にモニターとPCを持ち込み、実施本部に詰めているスタッフがDJI FlightHub 2を常時監視できる環境を構築。消火確認で使用されるドローンはDJI FlightHub 2に紐づけられている。

モニターにはDJI Flighthub 2の画面が表示され、一方ではマップ、もう一方では飛行しているドローンから送られた映像が映し出される

DJI FlightHub 2には各機体の光学カメラが捉えた映像が表示され、まだヨシが燃え続けている様子、火は見当たらないが煙がのぼり残火があると考えられる様子、すっかり鎮火したと認められる様子が、クリアな映像により手に取るようにわかる。

DJI FlightHub 2の画面。左上から時計回りに、DJI Dock 2、DJI Mavic 3 Enterprise、DJI Matrice 4T、DJI Matrice 350 RTKのリアルタイム映像を一覧で表示できる

映像から判然としない場合は各機体に搭載されたサーマル(赤外線)カメラへ切り替えも可能。本部にいる藤成測量の小林将人氏や小林隼人氏が各操縦者へサーマルカメラへの切り替えを依頼すると、映像には被写体の温度が色分けで表示された。80℃前後は「まだくすぶっている」、500℃であれば「まだ燃えている」という目安になる。

だが「何℃になったら鎮火」というように定量的なデータで鎮火を判断しない。あくまでサーマルのデータは目安のひとつであり、光学カメラの映像と合わせて、本部に詰める消防関係者と藤成測量スタッフが鎮火を判断する。それでも判断がつかない場合は、ヨシ原に出動している消防団員が現地を確認し、必要に応じて消火作業をする。

DJi Matrice 350 RTKに取り付けられたZenmuse H20Nが撮影した映像。右が光学カメラ、左がサーマルカメラでドローンが捉えた映像。ヨシが燃えた跡は光学カメラでは黒くなっているが、サーマルカメラでは黄色や赤色に表示され、まだ熱を持っていることを示す
DJI Matrice 350 RTKに取り付けられたZenmuse H20Nが撮影した映像。右が光学カメラ、左が可視光カメラでドローンが捉えた映像。ヨシが焼けずに残っている部分が、可視光カメラでは黒くなっている。一方、焼けた方は熱を発するため、可視光カメラでは白くなっている
DJI Matrice 350 RTKに取り付けられたZenmuse H20Nが撮影した映像。この画像では火は右下に向かって燃え広がっている。火の最前線の部分をサーマルカメラで確認すると、光学カメラで炎が上がっているように見える部分よりも幅広い範囲が高温になっているとわかる。目視や光学に頼ると火が消えていると判断してしまうが、サーマルカメラを確認することで種火が残されている可能性にも気づけるのだ
藤成測量が使用したZenmuse H20Nを搭載したDJI Matrice 350 RTK。藤成測量のスタッフが手動操縦で飛行させた

DJI FlightHub 2には地図上にピンを打つ機能がある。色分けして打つことも可能で、これを活用して、青色のピンが「残火確認」、赤が「燃焼中/経過確認」、黄が「消火中」、緑が「鎮火」を示す。ピンを打ったり、色を変えたりする操作は実施本部側のPCでも、機体のプロポでも可能。各ポイントがどのような状態になっているのかひと目でわかり便利だ。

マップ上には飛行するドローン、残火確認を行っている場所を示すピンが表示される。機体のバッテリー残量も表示されるので、操縦者に残量を警告することもできる

ヨシ原内は4箇所の飛行エリアに分けられており、ドローンは一度離陸するとバッテリー残量を確認しながら飛行を続けて残火を探し、発見したらピンを打っていく。この作業を日の入りまで続ける。飛行エリアは藤成測量とJDRONEで2箇所ずつ受け持った。

複数機を同時に近い空域で飛行させる点でもDJI FlightHub 2が活用できる。マップ上にはどの機体がどこを飛行しているかひと目でわかるのだ。各操縦士や実施本部では機体同士の空中衝突を避けるため、マップで機体の位置を確認しながら飛行する場所を決めることになる。

小林将人氏:今回はすべてマルチコプタータイプのドローンを手動操縦で飛行させていますが、初回2019年の取り組みではUTMを活用し6機全てのドローンを自動航行で飛行させてピンを打つという手法を試したこともあります。しかし、必要ない場所を多く飛行してしまい、かえって非効率でした。 その後、固定翼のドローンを活用し迅速に広域を調査しピンを打ち、その後ピンポイントでマルチコプターで残火確認を行う手法はとても効率的でした。他にも多くの企業にご協力をいただき、今の運用体制を構築できたので関係者の皆様には感謝しております。1500ヘクタールという広さも、マルチコプタータイプで作業するにはちょうどいいのではと考えています。

システムファイブ提供のDJI Dock 2は藤成測量が運用を担当しており、まずはその現場を取材した。実施本部からクルマで5分ほどの遊水地内に設けられた駐車場だ。遊水地は、普段は多くの人々が憩う場となっているが、ヨシ焼き当日は遊水地内に入れる場所に警備員が立ち、関係者以外を立入禁止にする措置がとられていた。

渡良瀬遊水地のなかにある藤岡渡良瀬運動公園北側の駐車場に設置されたDJI Dock 2。中央はスターリンクのアンテナ。大型のポータブル電源に接続され、離着陸場を構築した

駐車場にはシステムファイブから貸し出されたDJI Dock 2が衛星インターネット機器「スターリンク」と接続されて置かれていた。また、藤成測量のスタッフも1名配置されていたが、機器および周囲の監視のためだ。

DJI Dock 2から飛び立つDJI Matrice 3TD。この日は実施本部のPCを使用して手動で操縦した。なお、DJI Dock 2の側には藤成測量のスタッフ1名が監視役として常駐した

DJI Dock 2については、残火状況にあわせて設定したポイントを30分おきに自動航行して情報を集めることに加え、手動操縦での運用も行った。小林将人氏は今後のDJI Dock 2の活用方法について、次のようにコメントする。

小林将人氏:今年初めてDJI Dock 2を導入しましたが、操縦者が現地にいなくてもいいという点は確かにメリットだと感じました。ヨシがよく燃えるポイントは過去の経験でわかってきているので、例えばその付近を定期的に飛行させるという使い方が有用ではないかと思います。また、現状ではドローンによる残火確認は日の入りまでの、日中の時間帯で行っています。夜間飛行の承認が取れれば、日の入り後にDJI Dock 2だけ現場に残し、本部で映像や残火の確認をするといった運用もできそうです。

焼き払われたヨシ原が見える位置にDJI Dock 2が置かれた。将来的にはDJI Dock 2を活用した自動航行による残火確認の導入にも期待がかかる

渡良瀬遊水地のほぼ中央に位置する鷹見台にはJDRONEの野口克也氏が陣取り、システムファイブから貸与されたDJI Matrice 4Tを運用していた。DJI Dock 2の取材を終え、鷹見台へクルマでヨシ原の中を突っ切ると、そこかしこにヨシが焼失した跡が見て取れた。

ヨシにはカメムシなどイネの生育に影響を与える害虫が付着する。相変わらず米価の狂騒は収まる気配が見えないが、イネの順調な生育のためにも、ヨシ焼きによる害虫の駆逐が有効なのだという。

DJI Matrice 4Tは35mm換算で24mmの広角カメラ、70mmの中望遠カメラ、168mmの望遠カメラ、レーザー距離計、赤外線サーマルカメラを搭載する
ホバリングするDJI Matrice 4T。無風時の最大ホバリング時間は標準プロペラで42分、最大飛行時間は49分というスペック

クルマを走らせること約15分、鷹見台に到着。野口氏は、残火があると考えられるポイントを重点的にDJI Matrice 4Tで飛行させ、光学カメラとサーマルカメラを使い分けながら状況を確認していた。

この日、Matrice 30をはじめとする産業用ドローンも併用されていた。産業機の飛行経験が豊富な野口氏にとって、DJI Matrice 4Tの使用はこの日が初めて。その使用感について話を聞いた。

野口氏:これまでのDJIの産業機と比較しても、まったく違和感なく操縦できるという印象を持ちました。特に性能が良くなったと感じたのは電源を付けてから離陸するまでのスピード。体感ですが従来機よりも早くなったと感じ取れて、作業に迅速に取り掛かれるのは助かります。

DJI Matrice 4TのプロポはDJI RC Plus 2 Enterprise Enhancedが使用される。最新の映像伝送システム規格であるO4 Enterpriseに対応。AIによって移動する自動車や人間を自動で認識しディスプレイ上にマーキングする

この日、渡良瀬遊水地の上空では最大5機の産業用ドローンが同時に飛行していた。心配になるのが電波の混信だ。その点についても、野口氏は非常に安心して飛行に臨めたと感心した。

野口氏:新しい映像伝送システムである「O4 Enterprise」のおかげで、映像が機体から送られてこないなどのトラブルは一切ありませんでした。映像もクリアですし、他の機体が近い空域を飛行しているなかで遠距離まで飛行させても映像がきちんと届くというのは、電波の質が向上している証拠でしょう。とても心強かったです。

PCでもDJI FlightHub 2に接続し、各機の飛行状況を確認。ポータブル電源を持ち込むことでバッテリー切れにも対応した

DJIは映像伝送システム「O4 Enterprise」について、DJI Mavic 3 Enterpriseシリーズの2倍以上となる20MB/秒のダウンロード帯域幅を持った結果、正確で安定した映像伝送を実現したと公表している。その実力は実際の現場でも存分に発揮されたようだ。

野口氏:今回は予備バッテリーをそれほど準備できなかったので、Matrice 30との併用になりました。でも、バッテリーが4本ほどあればローテーションで賄うことは可能でしょう。従来の産業機と同じかそれ以上に高性能でコンパクトなマシンを、少ない装備で運用できるのはとても魅力的です。

JDRONE野口氏はMatrice 30を併用して残火確認を行っていた。映像のクリアさではDJI Matrice 4Tに軍配が上がる

最後に、ヨシ焼きを取りまとめる渡良瀬遊水地ヨシ焼き連絡会の舘野泰行氏(栃木市地域振興部職員)に話を聞いた。舘野氏はこれまでもヨシ焼きの残火確認役を務めており、人手不足や、作業員が現場に入ることによる事故のリスク、そして細かな残火の確認が難しいことを課題として感じていたという。

舘野氏:残火確認をすべて終え鎮火の確証を取らないと、ヨシ焼きの終了判断ができません。ヨシの乾燥具合や風向き、燃え広がり方などの影響で、終了判断の時刻は年によって異なります。ドローンが導入されたことで残火確認の作業が早く終わるようになったわけではないのですが、残火確認の精度は間違いなく向上しました。クリアな映像やサーマルカメラで数字として状態を把握できるので、人間の目視よりも確実な確認が可能になったと思います。もうドローンを手放すことはできません。

DJI Matrice 350 RTKに取り付けられたZenmuse H20Nが撮影した映像。ヨシ原からイノシシの群れが飛び出してきた。遊水地が生き物たちの良い住処になっているとわかる。光学カメラではっきり見え、サーマルカメラでも赤く光っている部分で認識できる。かなりはっきり姿を捉えることができ、山間の害獣調査にも使えると感じられた

取り組みも5年目となり、ヨシ焼きに携わる人員の中でもドローン運用に対する理解が深まっている。実施本部で取材をしていても、ドローンの映像を確認→実施本部のドローンスタッフと消防関係者で残火の状態を把握→鎮火の確認や監視の継続を操縦者に指示というサイクルがスムーズに回っていた。これも、産業用ドローンの運用に長けた藤成測量の豊富な経験による賜物だろう。

課題もある。ドローン運用は日没までのため、最後は結局、人海戦術で残火確認を行わなければならない。これは上述したDJI Dock 2を活用した夜間飛行で解決の術を見出したいところだ。

今回、ヨシ焼きに参加するスタッフ間の連絡はトランシーバーアプリ「Buddycom」が使用された。使用者の所在地をマップ上に共有する機能もあり、DJI FlightHub 2のピンを打った場所のデータを統合できれば、より作業負担が減るのではと、舘野氏は期待しているという。

今回の残火確認業務に携わったスタッフ。後列右端が小林将人氏、前列右端が野口氏、左端が小林隼人氏

ここまで見てきた通り、ドローンを活用した残火確認はすでに実装の段階に突入している。現状、最終的な鎮火作業は人の手が必要だが、農薬散布ドローンを活用した水の散水による消火などもできるようなれば面白いだろう。

この取り組みで得られた知見は、火災を伴う災害現場でも有用に活用できると考えられる。とくに自治体などにおいては、DJI Matrice 4Tのようなサーマルカメラ搭載ドローンを導入し、今後起こり得る災害に備えることが大切になりそうだ。

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ドローン・ロボティクス業界にいち早く参入して活躍するプレイヤーの方々のキャリアに焦点を当て、その人となりや価値観などを紹介する連載コラム[空150mまでのキャリア~ロボティクスの先人達に訊く]第19回は、エアロネクストの海外事業担当としてモンゴルなどの新興国を開拓中の川ノ上和文氏にインタビューした。

川ノ上氏は、2015年に日本から台湾へ拠点を移したのち、2016年からはアジアのシリコンバレーといわれた深圳をいち早く開拓したアーリーアダプターだ。20代に上海や北京で過ごしたバックグラウンドから、台湾時代には通訳なしで誰とでも話せる語学力とメンタリティを備えていたようだ。2018年頃にはドローン業界のみならず、「深圳といえば川ノ上さん」と知る人ぞ知る有識者になる。いつぞやモンゴルにも進出し、今後は中央・東南アジアやアフリカまで広く視野に入れるという。今回は川ノ上氏が10年の開拓で得た学びを紐解く。

「中国語を話せるスター人材になる」

まずは台湾へ渡る前の話を少し。もともと19歳で日本を飛び出した川ノ上氏は、北京では中国語教室やホームステイなどの日本人向け事業を展開する企業に在籍しており、実は筆者は2011年にここで川ノ上氏と出会った。当時の川ノ上氏はすでに流暢な中国語(標準語)で、中国人スタッフらと共に新たな教育コンテンツを開発するなど大活躍。2014年に同企業が日本法人を立ち上げる際には立ち上げメンバーとして参画していた。

しかし、1年足らずで台湾でのワーキングホリデーを決意する。というのも20代の締めくくりとして、実現したいことがあったのだ。

川ノ上氏:英語を話し世界で活躍する日本人のロールモデルは、俳優やスポーツ選手などたくさんいるけど、中国語ではほぼいなかった。当時は中国語を話せる有名人といえば、卓球の福原愛ちゃんくらい。でも中国語は、世界最大の話者人口を有するグローバルランゲージだ。中国語を話せることでこんな道が開かれるのだ、ということを最初は中国語教室に通うビジネスパーソンに取材して伝えようとしたが、自らがもっと面白いストーリーを示したいという気持ちが湧いてきた。

ワーホリで行けるアジア圏の中で、中国語(標準語)を公用語として使えるのは台湾一択。調べていくと、ICTにもかなり力を入れていると分かり、関心は高まった。「中国語ができる前提で行ったら、何が起きるのか」。模索し体現するため、まずは1年間行ってみることに。「宝探し」10年の旅が始まった。

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コストはとにかく抑えたい。過去、ワーホリのエクスチェンジプログラムを募集していたゲストハウス(ワーホリ開始前のリサーチ訪問時に写メしておいたらしい)に連絡すると、ちょうど1名空きがあるという。1年間ここに住み込んでベッドメイキング、フロント対応、日本語でのSNS更新などの運営業務を行う代わりに、宿と朝食の無償提供を受けた。

このほかの主な活動は、ビジネスフォーラム、エキスポなどのイベントに参加して現地で交流すること。台湾を代表するドローンの専門家に、ホームページの問合せフォームから連絡して、直接つながったのもこの頃だ。いまも彼とつながりがあるという。

川ノ上氏:旅行エキスポ、ITエキスポ、異業種交流会などにもどんどん顔を出して、台湾の人たちがどんなことを話しているのかを聞きまくった。その1つだったIT系の展示会で、当時まだほぼ無名だったイーハンやDJIを知って、ドローンの専門家の方からも話を聞くうち、ドローンって面白そうだなと思い、そこから深圳の開拓にもつながっていった。

「ドローンはラジコンではない」。これが2015年当時から変わらぬ着眼点だ。「ドローンはフィジカルな世界で人間の手となり、目となり、口にもなる、人間の五感や身体機能を拡張させるツールとして、大きな可能性があると思った」と川ノ上氏はいう。

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深圳のDJIオフィス訪問時

時をやや前後するが、日本ドローンレース協会(JDRA)の海外事業担当としても、一時期は精力的に活動したという。「中国語を話せるスター人材になる」と、自身で立てた旗印こそ道なき道を走り出す原動力になった。

川ノ上氏:JDRAでは各国組織との接点強化をミッションに動いていた。アメリカだけでもラスベガス、ロサンジェルス、ハワイといろいろ行ったし、タイ、ベトナム、インドネシア、台湾、マレーシア、シンガポールなどさまざまな国と地域で、何か現地で知りたいことがあったら連絡できる人を見つけておいた。この時の出会いから、今でも何年かごとに連絡を取り合う人も少なくない。実はモンゴルの開拓でも助けられた。

セレンディピティを感じまくった深圳時代

ワーホリ1年間が終わる2016年頃から、深圳でのリサーチも開始。深圳は「すごくエネルギーを感じる街」だったという。

当時、深圳は「世界の工場」として培った素地の上に、BAT(Baidu/バイドゥ、Alibaba/アリババ、Tencent/テンセント)の主要拠点や、米国留学から帰国したハイテクエリート人材が築くスタートアップエコシステムなど、新産業の集積が始まっていた。街中にはリープフロッグ現象が溢れており、中国政府が掲げる「一帯一路」計画にも接続する形で、香港・マカオ・広州・深圳を4大都市とする「大湾区計画」が発表されて、世界にも類を見ない複数都市が連結したベイエリア経済圏の構想が始まっていた。

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熱気あふれる深圳の若者たち
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シェア自転車などシェアリングエコノミーの広がりは爆発的で、ユニコーン企業も次々と生まれていた

ドローン業界の方にとって深圳は、DJIの本社があるハイテクシティという印象が強いかもしれないが、当時の川ノ上氏が感じたのは、深圳にはドローンだけじゃなく、VRや人工知能などあらゆる最新技術と人材が集積しているがゆえの、「とんでもないことが起こりそうな予感」だ。お金もない。家もない。人脈もないなか、まず行ったのは「雑談ヒアリング」だったという。

川ノ上氏:最初はカフェとかに座って仕事してますみたいな顔をして、ひたすら周りの会話に聞き耳を立てていた。するとやっぱり面白いことを話している。スタートアップの資金調達や、いつどんなイベントがあるとか、通訳を入れたら絶対に聞けない話ばかり。当時はノービザで入国できたので、2週間経ったら香港に行ってゼロリセットして、お茶してから深圳にまた戻るっていうビザランを3ヶ月くらいやっていた。

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深圳ではイベントのほか、メーカーにもたくさん顔を出した。そこでは情報収集や人脈開拓だけではなく、例えば「日本のドローンの法規制の状況」など、川ノ上氏も日本語でリサーチした情報を整理して提供した。情報交換を通じて「ビジネスレベルの中国語を使ってドローン分野での日中の橋渡しができる稀有な日本人」として、新たなポジションが確立した。これは狙ってそうしたのだというが、稼ぐありきではなく「宝探し」だったことがポイントだ。

川ノ上氏:第一優先は、自分が面白いと感じるところを掘ること。それは絶対にぶらさなかった。そうすると、知り合った人からの紹介で面白い人に出会う、イベントでたまたま隣に座っていた人と仲良くなったら立場ある人だった、などいろんなセレンディピティが起きた。 日本のビジネス環境を話してほしいとだけ頼まれて気軽にサンダルで出かけたら、扉の向こうに中国企業役員が勢揃いしていたことや、日系大手企業からの依頼で幹部社員向けの講演に登壇すると、もう1人のゲストが広州総領事だったこともある。釣り合ってないけれど大丈夫だろうか、と当時は感じた(笑)。深圳では人的ネットワークを掘る楽しさと重要性を学んだし、そのやり方も試行錯誤するなかで身についた。

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深圳時代も幅広い領域でリサーチや人的ネットワーク構築を行った

この頃はドローンだけでなく「深圳の重点産業と言われるものにはほぼ全てアンテナをはっていた」というから、相当な時間と労力を割いていたはずだが、収入面では苦戦が続いた。だからこそ、自身の状況を冷静かつ楽観的に捉えて宝探しを続けるタフなメンタリティと、目的を達するためには誰にどうアプローチすべきかを逆算して考える戦略性が養われた。

川ノ上氏:もちろん不安もあった。でも、中国語と英語ができれば仕事は何かしらあることは分かっていたので、自分が面白いと感じるほうへ、セレンディピティが起きそうなほうへ、行けるところまで行ってみようと考えた。水面ギリギリでも、途中でちょっと水に浸っても、飛べるところまで飛ぼうみたいな。リアル鳥人間コンテストですね(笑)。

1年後、気づけば風向きは変わっていた。「中国の先端産業をもっと日本に伝えたほうがいい」との想いも芽生え、自身のブランディング戦略としても、日本メディアへの寄稿を増やした。その結果、法人からの視察ツアー、現地調査、講演などの依頼が相次いだ。ドローン関連では、深圳で開催されるドローンエキスポに合わせた日本人向けツアーも、2018年までは年2回のペースで企画し実施した。

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日本人向け深圳視察ツアーでの交流会。DRONE.jp編集長も参加

「何をやるか」よりも「誰とやるか」

苦い経験もあった。深圳ツアーや現地リサーチなどが軌道に乗り始めた頃、日本人3名で会社を設立したが、自身の未熟さにより約1年で行き詰まってしまったのだ。創業メンバーに納得してもらい1人代表になったという川ノ上氏。「経営者として、自分には足りないところがたくさんあった」と振り返りつつ、失敗を通じた学びは現在の指針にもなっていると明かす。

川ノ上氏:苦手なことを無理してやるのは、向いていないからやめようと覚悟できた。中国語も人的ネットワークもリサーチ力も、それ自体を現在の自分の提供価値として仕事を定めて動くのではなく、それらの資源がある前提で、どう拡げていけば自分らしい動き方ができるのか、どんな面白い世界が見えてくるのか、また評価してくれる仲間やお客さんを見つけられるのかを考えながら、事業を創造していく役割を担いたいのだと分かった。 そのためには、"何をやるか"は人が集まるフックとして大事だけれど、"誰とやるか"のほうが事業継続性的にも重要だと考えるようになった。

転機になったのは2019年、株式会社エアロネクストへの参画だ。中国深圳法人を立ち上げて、同社と契約を交わした川ノ上氏が、総経理(現地法人社長)に就任した。エアロネクストの田路代表取締役CEOが、深圳ツアーに参加したことがきっかけとなった。

川ノ上氏:ツアー最終日に参加者からコメントをもらうと、田路さんだけはツアーの感想ではなく、川ノ上さんが素晴らしいというばかりで、今でもそれはよく覚えている。そこで田路さんから"低空域の経済化"というビジョンを聞いて、自分と同じ方向性だったのも印象的だった。決め手は、ツアー後すぐに深圳のピッチの予選大会にチャレンジして、入賞という結果も出したこと。深圳に来て、一緒に何かしようと言ってくれた日本人や企業はたくさんいたが、多くが視察やリサーチ止まりだったのに対して、エアロネクストはスピード感を持って行動に移し、深圳でのピッチ決勝大会でも評価が高かった。

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エアロネクスト田路氏。川ノ上氏が物流ドローン企業の視察にアテンドした

川ノ上氏のよさを殺さずにマネジメントするのは相当難しそうだが…と水を向けると、「これまで通り自由に動いて、エアロネクストの事業に上手くつながりそうだったら、適宜自分の考えで仕掛けてくれればいい」という"放し飼いスタイル"が効いたようだ。田路氏が一貫して標榜する「目的合理的であれ」というスタンスは、川ノ上氏が深圳で養ってきた戦略性と通じていた。

川ノ上氏:私が本来やりたかったことと、私の得意なところを見抜いたうえで、自由に動いていいと言ってくれたことは嬉しかった。そのマネジメントスタイルがいまも変わらないから、続けられているのだと思う。

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エアロネクストが深圳ピッチで入賞。川ノ上氏は左から三番目、田路氏は左から六番目

しかし、米中対立の加速とコロナ禍で状況はまた一変する。この頃はまだ、エアロネクストが物流にフォーカスする前で、独自技術の最適用途を模索中だった。だからこそ深圳というフィールドを活用する意義も大きかったのだが、経済安全保障上の問題をはらむ中国にドローン分野でコミットし続けることは、スタートアップとしてはネガティブリスクのほうが大きいと判断して、川ノ上氏のほうから「中国と距離を置くこと」を提案したという。

川ノ上氏:中国側のコロナ入国規制で久しぶりに1年近く日本に滞在しているときに、しばらくは国際情勢的に中国と協業案件を進めることは難しいだろうと判断した。もちろんベンチマーク調査は従来通り続けていくが、コロナが明けたらすぐに動けるよう、インドネシア、ベトナム、インド、マレーシアなど他の国々も幅広く調べ始めた。深圳に戻ってからは、長期契約でMOU締結していた大学に、1年でプロジェクトを止める交渉をしなくてはならず、これは結構大変だったがよい経験にもなった。

モンゴルへの進出で、自身の強みも大きく転換

2021年にはエアロネクストも大きな変化を迎えた。小菅村に子会社のNEXT DELIVERYを設立してドローン物流にフォーカスすることが決まったのだ。経営方針が定まるまでは、川ノ上氏もやや動きづらさを感じていたというが、この停滞期間を活かしてオンラインスクールであるBBT(ビジネスブレイクスルー)大学にも復学。BBTでは、学び直しやキャリアの棚卸しを行う時間も確保し、ロールモデルも見つけたという。

川ノ上氏:五代友厚という、幕末から明治に活躍した実業家をロールモデルにしたいと考えるようになった。彼は薩摩藩出身で、薩英戦争で対峙したイギリス軍の技術力の高さから、イギリスとは戦うよりも懐に入り、学んだほうがいいと、捕虜になったのち得意な英語力を駆使し、交渉に臨んだ。 そしてイギリスと信頼関係を構築し、留学するためのコネクションを築いた。その後、薩摩スチューデントという視察団を率いて渡英し、産業革命の現場を体感した。帰国後は私の地元の大阪で、海外で得た知見をもとに大阪商工会議所や大阪証券取引所を設立して、大阪の近代経済を築いた人物。 彼からインスピレーションを受けて、語学や異文化理解力、折衷力や実行力を駆使し、人を起点に情報をつなぎ合わせ、構想を示すことで、産業を創出していきたいという、人生の理念が固まってきた。

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2023年にBBTを修了し、現在は講師もつとめているという

深圳に戻ってからは、中国での事業整理をしつつ、次の開拓に向かった。JDRA時代も含めて培ってきた世界中に点在する人的ネットワークや、経済産業省所管の独立行政法人であるJETRO(日本貿易振興機構)の担当者とも壁打ちしながら、日本と中国以外の第三国でどこに進出するのがよいか調査を進めた。

ここで参考になったのもやはり深圳だったという。経済安全保障リスクが叫ばれている中でも、一部の欧米大手企業は深圳への進出を止めておらず、それどころかB2G(Government)のアプローチを着実に進めていたのだ。

川ノ上氏:彼らは戦略的に政府に対して都市型ソリューションを提案して座組を作った上で、現地にラボを設立して研究開発を進めるなど、医薬品、半導体、バッテリーなどの分野において、研究開発・製造拠点としての深圳はずっと動いていた。この動きは資本力がある大手企業でなければ難しいが、都市型ソリューションを現地の政府や企業と一緒に開発し実装していくという座組をうまく作れれば、スタートアップにも実行できると考えた。 ドローン物流においても、ジップラインが2017年からルワンダで血液輸送を、中国ではアントワークが都市部で病院をつなぐ取組を始めるなど、グローバルではユースケースが存在していたので、それをエアロネクストが別の国でやるならどこなのかという観点で独自に調査を進めた。

先行事例を参考にしながら、日本の外交政策や状況をとらまえたうえで、導き出したのがモンゴル。経済規模があまり大きくない都市のほうがインフラ未発達で行政との関係も構築しやすいこと、歴史的、文化的な関係性からくるネガティブな対日感情がほぼないこと、経済安全保障や競合優位性の観点から中国のドローン関連企業がまだ進出していない状況下で事業開発できること、2022年は日本とモンゴルの外交関係樹立50周年で外交的な後押しになるムーブメントが期待できること、日本からの直行便で5〜6時間でアクセスしやすく時差も1時間であることなどから、「日本での小菅村のような、SkyHub海外導入先第1号テストフィールドとしてモンゴルを位置付ける」という青写真を描いて社内にプレゼンした。

もちろん、すぐに事業収益性の見込めない海外事業は、スタートアップにとって「リスクでしかない」という側面もある。けれども、モンゴルであれば「リープフロッグを起こせる可能性が高い」「グローバル進出の突破口としては最適な選択」という経営判断のもと、2022年にJICA事業に採択されたのを皮切りに実証を開始。2024年夏には現地大手企業Newcomグループと協働して、50フライト以上のドローンによる血液輸送を実施して、このうち2名は実際の救命にもつながったという。

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エアロネクストは2023年11月にウランバートル市内上空を横断するドローンによる血液輸送の実証に成功し、その後も継続して事業を推進している

ちなみに、モンゴルを最初に意識したのは、2016年に自身が書いた本誌寄稿記事「モンゴルにおけるドローンの可能性」と、アフリカ・モンゴルでの事業経験を持つ日本人から聞いた「モンゴルで中古車市場が急拡大中」という情報がきっかけになったという。

「確かにモンゴル、ありかも」と思ってからは、数週間集中してリサーチしこの青写真をまとめ上げた。このとき、川ノ上氏の提供価値も大きく変化していた。自身の置かれた状況を冷静に分析して、むしろ意図的に、強みの転換を行ったのだ。

川ノ上氏:語学力やリサーチ力、人的ネットワークを最大限に活かして、さまざまなステークホルダーの最新情報を仕入れてきて、仮説まで立てられるという、"情報編集力"を自分自身のバリューにしていこうと考えていた。

モチベーションは「宝探し」

初モンゴルは2022年6月から8月の2ヶ月間、首都ウランバートルに滞在したが、この渡蒙前後の活動には、ひとつのテーマがあった。「現地でいろいろな人とのつながりを開拓していくことによって情報が集まってくる」という、セレンディピティがたて続いた深圳での一連の流れを、モンゴルで意図的に再現することを狙ったのだ。

川ノ上氏:深圳では日本からも関心が高いITやデジタルの領域で常に情報が入ってくる体制やチャンネルを作れたので、エアロネクストでの業務とは別に自分の会社のほうでも、例えば中国の貴陽というリープフロッグが起きつつある最貧地方都市の開拓で、取組を再現していた。エアロネクストのモンゴルにおいてもやり方は同じ。違うのは、直接的に中国語を使って中国のことを調べて中国の人とつながって中国でやるという一連の流れの最終パート、どこでやるかという場所だけだと考えた。

実際にモンゴルへ行く前には、モンゴルでB2Gの座組を作ることを念頭に、全体感を把握するためリサーチを実施。JICAモンゴルでスタートアップ支援をしている職員の紹介記事を見つけ、その方に白羽の矢を立て、「この方に会うためにはどうしたらいいか」を考えて、知人や知人からの紹介を辿り、ピンポイントでつながることに成功した。オンラインでのヒアリングではモンゴルの情報収集と同時に、モンゴル歴20年以上で日蒙のビジネス交流やマッチングを支援する専門家として両国からの信頼も厚い中村功氏を紹介されたという。

「中村功さんのような、現地の文化やビジネス慣習をよく深く理解されているベテランの方につないでいただくと、相手もちゃんと話を聞いてくれるので、とてもありがたかった」と川ノ上氏は振り返る。

渡蒙後は、"ドローンイノベーション 〜サンドボックス&リープフロッグ〜in モンゴル"という自身が構想したエアロネクストがモンゴルで目指したい姿をプレゼンし、意見を求める場を数多く持ったという。

ここで「プロ開拓者」として、さらなる成功体験を積むことになる。まず、片道切符で行き、1カ月以上生活をしてみる。機会損失を防ぐためだ。ホテルは最初の1週間だけ予約した。あとは現地情報をもとに、適宜調整していく。時間とコストを最大限コントロールし、いろいろな人に会ってリアルな情報を仕入れながら、「モンゴルのどの企業の誰とつながりを持つべきか」を見定めたという。"JICAや中村氏からの紹介"という立ち位置を事前にプロデュースできていなければ、こうはいかなかっただろう。

象徴的なのは、現在エアロネクストの現地協業パートナーであるNewcomグループとの出会いだ。まずはモンゴルにおいて、ドローン物流という新たなインフラや新産業の創出に乗り出す可能性がある企業をリストアップし、各社の企業文化や現地での評判など公開情報では得られない、けれども協業検討においては重要な項目を挙げて、会う人会う人にヒアリングしたという。その中で、モンゴルの基幹産業の創出を担ってきた大手財閥企業であるNewcomの存在を知ることになるが、まだこの時は何も接点がなくアンテナを張り巡らしていた。

川ノ上氏:最初に、日系通信大手のモビコムの日本人役員の方を前述のJICAモンゴルでスタートアップ支援をしている方から紹介してもらった。そこで事業紹介をさせてもらいフィードバックをいただいた。 その後、資本関係もある両社の定例会の雑談で日本のドローンスタートアップであるエアロネクストと面会したことを、幸運にもモビコムの方からNewcomのCEOに伝えていただくことできた。数日後、Newcom CEOのバータルムンフ氏から会いたいと連絡を受けて、すぐに会いに行った。Newcomは、世代交代したばかりで、自国のためにという想いが強い。さまざまなインフラ事業への投資や日本企業との協業にも積極的で、とりわけ若い世代からの支持が高かった。 実際にバータルムンフ氏とお会いすると、2時間も確保してじっくり対話してくださったほか、ご自身が航空業界の経験があり空への思い入れが強いこともあって話はすごく盛り上がった。まだこちらに協業を前に進める予算がなかったため話は具体化しなかったが、CEOの人柄や価値観を確認でき、JICA事業への提案時点で現地パートナー候補として記載できたことは、採択にも少なからず影響したと思う。

JICA事業採択後にも、「お宝」となるネタに出会えた。JICAの紹介で訪問した国立病院で、「国立輸血センターがドローンを使って血液を輸送しようとしたニュースを、そういえば過去に見たことがある」という話が飛び出したのだ。その病院からの紹介で、国立輸血センターに赴き意見交換していくと、地下作業室に眠っている当時飛ばした機体を見せてくれることになった。その後お会いすることなったセンターの院長は「あれは失敗プロジェクトだから…」と、最初こそ恥ずかしそうにしていたものの、プロジェクトの立ち上げストーリーについて伺うとテンションは一変、熱い想いを語ってくれたという。

川ノ上氏:院長から、民航庁の許可を取っていないゲリラ飛行だったと聞いたときは驚いたが、ウランバートル市内は交通渋滞が本当にひどくて救急車での血液輸送に直接的な影響が出ており、そのために人が亡くなる事態も発生している、人命救助のため何とかしたいと聞いた。 日本の感覚からすると、国立の医療機関が飛行許可なしで飛ばすなんてと思うかもしれないが、院長からしたら、人命救助のために必要な社会的に意義があることに挑戦することの何が悪いのかという感じだった。安全意識の相違は協業において埋めるべきだが、現地におけるドローン物流の焦点が定まった。お宝となるユースケースを見つけたと思った。

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ウランバートル市内にて、血液を輸送する救急車に同乗。NHKの取材も受けた
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国立輸血センターの院長夫妻の自宅を訪問。モンゴルが社会主義から変わった直後、当時大学生だった院長の生活やビジネス、モンゴルにおける医療業界の課題や今後の夢など、さまざまな話をして交流を深めたという

「人を起点に産業を創る」モンゴルのサイドストーリー

最後に、モンゴル開拓に不可欠だったサイドストーリーがある。通訳のラブジャー・ソドエルデネ氏との出会いだ。ラブジャー氏は10代から20代にかけて日本での留学・就労経験がある事業家で、現在は川ノ上氏が個人出資する形でウランバートル市内に新しい食体験とコミュニティ創出の拠点となる飲食店「MindFoodStudio」を構えて経営もしている。

もともと、モンゴル開拓で自身の強みである中国語を使えないことは分かっていた。モンゴル語は全く分からず、モンゴル人の知り合いは東京に1人いるだけ。エアロネクストがモンゴルで成功するためには、信頼できる人が現地に必要だった。単なる通訳として関わるのではなく、損得勘定で動くのでもなく、情報と人をつなぐハブとしても機能し、常に川ノ上氏の片腕として動いてくれる人物を現地に置くことこそ、事業成功の要になるからだ。

だからこそ、身銭を切って投資した。「人生を通じて、人と人のつながりをさらに育てていきたい」という意思表示として。

川ノ上氏:ラブちゃん(ラブジャー氏のこと)の仕事ぶりは非常に素晴らしかった。通訳はもちろん、モンゴル人の視点からの助言を求めた業務についても惜しみなく協力してくれ、彼のおかげで理解が深まった。エアロネクストの事業では、"モンゴルのためになる"という想いと誇りを持って、主体的に動いてくれている。Newcomの担当者と意思疎通が難しかった時にも、自分はあまりタバコを吸わないのに喫煙所まで行って、本音をそれとなく聞き出してくれるなど、誰からも見えないところでの細やかな配慮に非常に助けられている。 飲みの席では、生い立ちも含めていろんな話を聞いた。苦労してきたからこそ成功してやるという気概や馬力がある人だと分かり、信頼に値する人物だと思った。彼が飲食店をやりたいと言ったとき、私自身も食分野には関心があったので出資し、ドローン物流と食という2つの新産業創出に向けて一緒に取り組んでいる。最近では輸血センターの院長先生やNewcom側の関係者からの信頼も厚い。本当に頼りになる存在だ」

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ラブジャー氏が経営する飲食店「MindFoodStudio」は日蒙キーマンの会食場所にもなっている

これから川ノ上氏は、まずはエアロネクストのモンゴルでの事業を通じて新産業の創出を目指し、将来的にはこの事例を中央アジアなどの第三国へ展開していくことも見据えたいと話す。

川ノ上氏:自分が新結合のハブとなり、海外を中心にゼロイチの機会を創出することが、今最も楽しい。そのために自らの役割を「エクスプローラー」「アグリゲーター」「プロデューサー」「インベスター」の4つに定めて活動している。 エアロネクストの海外担当のほか、ラブちゃんなど信頼できる人への出資、BBT大学同窓会会長、波長の会(川ノ上氏が人生を通じて出会ってきた方々を横で繋ぐ会)など、「人を起点に情報を編集し、新産業を創出すること」を人生のテーマにしている。なぜなら、自分でコントロールできないことも含め、誰かとともに試行錯誤しながら形にしていくこと自体が、何よりも面白いと思ったからだ。 私ひとりでは何もできない。多くの人を巻き込むことが重要だし、巻き込んだ結果として面白さや共感が広がってそれが新たな原動力になることが楽しい。また、どんなに能力があり、事業を作ったとしても、すべてを自分で管理することはできないのだから、いずれは誰かに託すことになる。それは日本人かもしれないし、外国人かもしれないけれど、信頼が崩れれば、どれだけ事業を作っても、すべて失う可能性がある。だからこそ、何をやるかは手段に過ぎず、大切なのは「誰とやるか」だと考えている。

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コウモリの翼で進化するドローンの飛行[小林啓倫のドローン最前線] Vol.87 https://www.drone.jp/column/20250312123837113324.html 113324 trend Wednesday, 12 March 2025 12:38:37 +09:00 EPFL(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)の研究チームが、コウモリの柔軟翼の空力ポテンシャルを解明してドローン設計に応用した研究を解説

コウモリを参考としたバイオミメティクス

生物の体の構造や動きのメカニズムなど、自然界に存在するものを参考にして新しい技術を生み出すことを、バイオミメティクス(biomimetics)あるいはバイオミミクリー(biomimicry)と呼び、これまでこの連載でも何度かその例を紹介してきた。

今回もその最新の事例を取り上げてみたいのだが、模倣されたのは、ずばり「コウモリ」である。

コウモリは独特の柔軟な膜状の翼を持ち、羽ばたきによって効率的にホバリング飛行できることで知られている。この柔軟な翼による飛行メカニズムは古くから謎とされ、昆虫の飛行との対比で注目されてきた。

昆虫は高速で羽ばたく際に「前縁渦(リーディングエッジ・ボルテックス)」と呼ばれる渦を翼の前縁付近に発生させて揚力を高めていることが知られている。一方でコウモリの翼は、薄い皮膜が指や腕の骨に張り巡らされた構造で、飛行中に大きく変形するようになっている。

これが効率的な飛行を可能にするのだが、どのくらい省エネかというと、同サイズのガに比べてエネルギー消費が約40%も少ない種もいることが報告されている。

​この事実から、コウモリの柔軟な翼とその飛行メカニズムを、人工の飛行体の設計に応用することが研究されてきた。そして今回、EPFL(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)の研究チームが、この柔軟翼の空力ポテンシャルを解明してドローン設計に応用したというわけである。

彼らは「翼を柔軟にすれば空力性能が向上する」という仮説のもと、コウモリの飛行原理を模倣することでドローンのホバリング効率を高める取り組みを進めた。そしてコウモリの膜翼構造を模した柔軟な人工翼を設計・開発し、その空力特性を実験した。

発表された研究論文によると、翼はシリコーン系ポリマー製の変形可能な膜(マイクロメートル厚程度の薄膜)で作られ、それがフレームに取り付けられた。このフレームは前縁と後縁部分に軸回りに回転できる機構を備えており、翼全体が羽ばたく際に自律的に適度な曲率を形成できるよう工夫されている。

これにより、翼の前縁角および後縁角が状況に応じて変化し、膜翼が受ける空気力に応じて受動的にたわむ仕組みが実現されたという。

実験結果

コウモリを模倣して開発された翼(動画はこちらのページから再生可能)

この翼を用いてホバリング時の羽ばたき運動を再現するため、研究チームは特殊な水槽実験装置を構築した。水にポリスチレン粒子などの微小な粒子を混合し、その中で翼を羽ばたかせることで、翼まわりの流れを可視化したのである。

実験の結果、柔軟翼は、剛翼(硬い翼)よりも高い揚力と効率を発揮できることが明らかになった。特に膜翼の柔軟性を最適な範囲に調整した場合、揚力係数が同サイズの剛翼を上回り、エネルギー効率(単位揚力あたりの消費エネルギー)も向上したという。

興味深いことに、昆虫の羽ばたきで見られるような明瞭な前縁渦は発生せず、代わりに空気の流れは、翼表面の滑らかな曲面に沿って分離せずについていく形となったそうだ。この流れが結果として、前縁渦がある場合と同等以上の揚力を生み出すことが確認された(ただ、この効果が得られるのは翼に適度な剛性が残っている場合に限られたという)。

これらの成果は学術的にも工学的にも大きな意義を持つ。まず生物学・航空力学の観点では、コウモリの高度なホバリング飛行能力の一端を解明したことになる。小型のコウモリがなぜあれほど効率よく飛行できるのか、その理由の一つとして翼の柔軟性による効果が示唆されたわけだ。

一方、工学的には、この知見を活かしてより効率的なドローンを設計できる可能性が開かれた。特に、羽ばたき型の小型ドローン設計において、剛体翼ではなく適度に変形可能な膜翼を導入することで、ホバリング時の揚力効率を飛躍的に高められることが示されたのである。

​本研究で示されたコウモリ型柔軟翼の利点は、今後のドローン開発において様々な形で応用できると期待されている。

直接的には、現行のクアッドコプターなどでは対応が難しい超小型ドローンへの適用が考えられる。従来型ドローンが極小サイズになった場合に直面する安定性・効率の問題​に対し、羽ばたき式の柔軟翼ドローンであれば空力的に有利なホバリングが可能となり、ペイロードを維持しつつ機体を小型化できる可能性があると指摘されている。

たとえば室内や林床、都市の狭い路地など、GPSが使えず風も複雑な環境下で、小型の柔軟翼ドローンは安定した飛行プラットフォームとして活躍できるだろう。

将来的な応用としては、災害救助現場での捜索(倒壊建物の隙間に入り込んで被災者を捜索)、環境モニタリング(洞窟や森林内部の生態調査)、さらには軍事偵察(敵地の洞窟や建物内部への潜入監視)など、従来機では難しかった場面が想定される。

コウモリは、哺乳類の中では非常に広く分布している例外的な存在で、南極大陸を除くほぼ全世界に生息している。コウモリに学んだドローンも、非常に幅広い分野に導入されるようになるかもしれない。

https://www.drone.jp/news/20250220181537111827.html

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ドローンポート(ドッキングステーション)のビジネスチャンス[春原久徳のドローントレンドウォッチング]Vol.87 https://www.drone.jp/column/20250226102521112230.html 112230 trend Wednesday, 26 February 2025 10:25:21 +09:00 米国でBVLOS規制緩和が迫る中、鍵を握るのがドローンによる初動対応(DFR)の拡がりだ。日本でも注目を集めるDJI Dock2とSkydio Dockを比較し、ドローンポート戦略の未来を左右するISO5491の重要性と、物流用途にとどまらないドローンポートの可能性に迫る

今年、米国やカナダなどでBVLOS(Beyond Visual Line of Sight、ドローンが操縦者の視界外で飛行すること)の規制が緩和されることが予定されている。

その緩和の行方を占う意味で、現在、米国において、警察・消防の中で展開されている「ドローンによるファーストレスポンダー(DFR)」プログラム(DFRプログラムは、911[日本の110番と同様]通報があるとドローンを飛ばし、警察官が到着する前に現場を監視できるようなシステムデザインされているプログラム)の技術や運用の拡がりはとても重要だ。

https://www.drone.jp/column/20241022080909101238.html

DFRのシステム概要

このDFRは以下のようなシステム概要となっている。

  • 1.ドローン本体:高性能カメラやセンサーを搭載し、リアルタイムで状況を把握。
  • 2.ドローンポート(ドッキングステーション):ドローンの充電やデータ転送を行うための基地。ドローンはミッション終了後にここに戻り、次の出動に備える。
  • 3.通信システム:主に5Gネットワークを利用して、リアルタイムでデータを送受信する。これにより、遠隔地からでもドローンを操作可能。
  • 4.運用ソフトウェア:ドローンの飛行計画やデータ解析を行うためのソフトウェア。
  • 5.緊急対応システム:ドローンが現場に到着する前に、第一応答者に重要な状況認識を提供。また、命を救う医療物資を届けることも可能。

ドローンポート

日本ではこのDFRシステムはまだ動き出してはいないが、昨年ぐらいから、ドローンポートにおいてはその検証や活用が進んできている。

現在、日本でも出荷台数を伸ばし始めているDJI Dock2およびSkydio Dockの内容を見てみよう。

DJI Dock2

DJI Dock 2は、ドローンの自動運用をサポートするために設計された高度なドッキングステーションだ。

システム概要
  • ドローン本体:Matrice 3DまたはMatrice 3TDドローンをサポートし、高性能カメラやセンサーを搭載。
  • ドッキングステーション:ドローンの充電やデータ転送を行うための基地で、クラウドベースのインテリジェント機能を提供。
  • 通信システム:5Gネットワークを利用して、リアルタイムでデータを送受信。
  • 運用ソフトウェア:DJI Pilot 2やDJI FlightHub 2などのソフトウェアを使用して、ドローンの飛行計画やデータ解析を行う。
主要な仕様
総重量 34kg(機体を除く)
サイズ ドックカバー開時:1228×583×412mm
ドックカバー閉時:570×583×465mm
入力電圧 100-240V (AC)、50/60Hz
動作環境温度 -25℃~45℃
保護等級 IP55
収容可能ドローン数 1
最大風圧抵抗(着陸時) 8m/s
最大動作高度 4000m
充電時間 32分(バッテリー残量20%から90%まで)
映像伝送システム O3 Enterprise
ネットワークアクセス 10/100/1000Mbps イーサネットポート
センサー 風速センサー、雨量センサー、外気温センサー、浸水検知センサー、キャビン内温度センサー、キャビン内湿度センサー
セキュリティカメラ 内部および外部に1920×1080解像度のカメラを搭載

管理ソフトであるDJI FlightHub2は、ドローンオペレーションをクラウドベースで管理するためのオールインワン型プラットフォームとなっており、以下はその主要な仕様となる。

主要な仕様
  • リアルタイムデータ共有:ドローンで撮影した映像やデータをリアルタイムで共有可能。
  • 自動航行ルート作成:自動航行のルートを作成・編集する機能。
  • 2Dオルソ・3Dモデル作成:ドローンで撮影したデータを使って2Dオルソマップや3Dモデルを作成可能。
  • フリート管理:複数のドローンを一元管理し、効率的に運用可能。
  • クラウドベースのデータ保存:取得したデータを安全なクラウド環境に保存し、いつでもアクセス可能。
  • 対応機種:DJI Matrice 30/30T、Matrice 350 RTK、Mavic 3 Enterpriseシリーズなどが対応。

DJI Dock2のユーザーからは、非常に使いやすく、また故障も少ないという声も聞く。しかし、その管理ソフトであるDJI FlightHub2のクラウドベースのアプリケーションには懸念点がある。特に取得データや飛行データのセキュリティ面だ。

この懸念に対しては、クラウドAPIを使い、ドックをサードパーティーのクラウドプラットフォームに接続することで、プライベートサーバでの運用も可能だ。だが、そういった開発に投資をしていくかといった検討が必要になる。また、DJIが中国企業である限りにおいては一定のチャイナリスクの懸念はあり、企業としては何らかの対策が必要だということだろう。

Skydio Dock

Skydio Dockも、ドローンの自動運用をサポートするために設計された高度なドッキングステーションとなる。(日本では未発売)

システム概要
  • ドローン本体:Skydio X10やSkydio X2などのドローンをサポートし、高性能カメラやセンサーを搭載。
  • ドッキングステーション:ドローンの充電やデータ転送を行うための基地で、クラウドベースのインテリジェント機能を提供。
  • 通信システム:5Gネットワークを利用して、リアルタイムでデータを送受信。
  • 運用ソフトウェア:Skydio Remote Opsなどのソフトウェアを使用して、ドローンの飛行計画やデータ解析を行う。
主要な仕様
総重量 約32.7kg(エンクロージャのみ)、約46.3kg(ベース付き)
サイズ 25.16×24.33×12.2インチ(ベースなし、アンテナを下げた状態)
ベースを取り付け、アンテナを伸ばすと幅が2.68インチ、高さが22.52インチ追加
動作環境温度 -20℃~50℃
飛行開始時間 20秒以内
通信範囲 Skydio Connect Access Pointsを使用して通信範囲を拡大可能
センサー 気象センサー、ADS-B、温度管理機能付き

管理ソフトであるSkydio Remote Opsは、ドローンの遠隔操作と自動運用をサポートするための高度なプラットフォームとなっており、以下はその主要な仕様となる。

主要な仕様
  • リアルタイムデータ共有:ドローンで撮影した映像やデータをリアルタイムで共有可能
  • 自動航行ルート作成:自動航行のルートを作成・編集する機能。
  • 2Dオルソ・3Dモデル作成:ドローンで撮影したデータを使って2Dオルソマップや3Dモデルを作成可能。
  • フリート管理:複数のドローンを一元管理し、効率的に運用可能。
  • クラウドベースのデータ保存:取得したデータを安全なクラウド環境に保存し、いつでもアクセス可能。
  • 対応機種:Skydio X2、Skydio S2+などが対応。

Skydio DockはDJI Dock2と比較すると、システムの全体価格が少し高価ではあるが、必要な機能は包含している。管理ソフトであるSkydio Remote Opsも、ほぼDJI FlightHub2の機能を踏襲している。Skydioが米国企業ということもあり、DJIとは異なってチャイナリスクといった問題がないことは、今後、日本でも検討されていく余地を多く残している。

日本でのドローンポート

日本においても比較的早くから、ドローンポートの検討や開発が進められてきた。特に、国も支援をしながら進めたブルーイノベーション社のドローンポートのISOへの取り組みは戦略としても重要であった。

ISO(国際標準化機構)は、国際的に通用する標準を開発し、発行する組織となっており、正式名称は「International Organization for Standardization」で、日本語では「国際標準化機構」と呼ばれる。

ISOの主な目的は、製品、サービス、システムの国際標準を制定し、国際的な取引を円滑にし、製品の安全性や品質を向上させることとなっている。

ブルーイノベーションは2023年6月に日本発の「物流用ドローンポートシステムの設備要件に関する国際標準規格ISO5491(以下:ISO5491)」が国際標準化機構ISOにおいて正式採択・発行されたのを受け、ISO5491が定めるドローンポートシステムの設備要件に準拠したドローンポート情報管理システム「BEPポート|VIS」を開発し、そのβ版の提供を物流や点検事業者、UTMサービスプロバイダー、ドローンポートおよびドローン機体メーカーなどに向けて8月より開始した。

この日本発の物流用ドローンポートシステムの設備要件に関する国際標準規格ISO5491は、2019年のISO/TC20/SC16南京総会において、日本が提案し採択され活動を開始し、2023年6月2日に正式発行された。150kg以下のVTOL電動貨物UAS(垂直離着陸式の無人航空機システム)を扱うVertiport(ドローンポート)が自動離着陸オペレーションを実現するために必要なインフラストラクチャと機器の要件を規定している。

なお、本規格は経済産業省の委託事業(省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業委託費省エネルギー等国際標準開発(国際標準分野[新規対応分野])によって標準化されたものだ。

バーティポート(ドローンポート)に関わることを分類し、定義づけをしている。

バーティポート情報システム(Vertiport Information System<VIS>)

バーティポートにおける無人航空機システム(UAS)の運用に必要なすべての情報を集中管理するシステム 注1:各バーティポートの運用状況を管理する。 注2:バーティポートおよび外部システム(ES)と通信し、それらの仲介役を務めるが、UASとは通信しない。ESにバーティポート情報システムの機能が含まれる場合があると想定される。 注3:バーティポート情報システムと他のシステムを含めたシステム構成を以下に示す。

1 .バーティポート 2 .バーティポートシステム 3 .バーティポートオペレーター 4 .周辺機器(検出器、センサー) 5 .バーティポート情報システム(VIS) 6 .バーティポート予約システム 7 .外部システム 8 .UAS オペレーター 9 .UTM/GCS 10. UAS a ステークホルダー(SH)

また、製造業者の責任によるバーティポートの要件として、設計・安全性の確保・通信・ログ・品質管理・取扱説明書が規定されている。そして、VISのサービスプロバイダーの責任によるVISの要件として、設計・安全性の確保・通信・取扱説明書が規定されている。

そして、このISO5491をベースとし、ブルーイノベーションはドローンポートを製品化しており、また、SBIR(Small/Startup Business Innovation Research)といった内閣府を司令塔とした予算支出目標を設定、研究開発初期段階から政府調達・民生利用まで、各省庁連携で一貫支援し、イノベーション促進、ユニコーン創出を目指すプログラムにおいて、ブルーイノベーションはVFRと組んで、ドローンポートの開発に取り組んでいる。

このISO5491の採択そのものは、今後の日本のドローンポート戦略にとっても重要であるし、現在も継続してこの内容が深められていっている中で、国際標準としての骨格を今後、担うことを期待している。だが、このドローンポートのベースが物流用ということもあり、現在、世界で動き始めているドローンポートの動きと少し異なっていることも意識する必要がある。

現在、世界で動き始めている動きは、冒頭に書いたようなDFRといった駆け付け・監視・警備といった分野でのデータ取得といったものを主眼としており、ISO5491の内容に沿う部分と沿わない部分がある。

物流といった観点でいえば、ISO5491に関しては、UTM(UAS Traffic Management:ドローン運航管理システム)との連携が強いが、DFRといった観点では、UTMとの連動性は強くない。

DFRはFlight Hub2やSkydio Remote Opsにあったようなリアルタイムでの映像システムとの連動のほか、取得したデータでの2Dオルソや3Dモデル生成との連携といったデータ処理についてはきちんと織り込まれている。しかし、ISO5491においては、その部分は弱くなっている。

ドローンの物流用途は、ビジネスモデルの形成にまだ時間がかかっており、その立ち上がりがまだ見えていない。その中で、DFRをキーワードとして、駆け付け・監視・警備といった警察・消防分野だけでなく、防災や防犯での見回りや調査、定期的な工事現場や鉱山・廃棄物処理場などでの点検や進捗、計測といった分野でも、ここ1年~2年で急速に立ち上がってくることが予想され、その規模も大きくなるだろう。

そのシステムとして、ドローンポートは重要であるし、同時に機体との接続やシステムアプリケーションとの連携も重要であろう。世界のこの分野での競争にきちんとキャッチアップをしていかないと、大きなビジネスチャンスを逃すことになるだろう。

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ホーチミンでのドローン撮影断念―厳しくなる規制とその現実[田路昌也の中国・香港ドローン便り]Vol.49 https://www.drone.jp/column/20250225110506111975.html 111975 trend Tuesday, 25 February 2025 11:05:06 +09:00 7年前には自由にドローンを飛ばせたベトナム・ホーチミン。しかし、今や厳しい規制が敷かれ、飛行は困難に。「飛ばせる時に飛ばしておく」ことの重要性を再認識しました

ホーチミンでのドローン撮影を試みるも…

1月には台湾でのドローン撮影について執筆しましたが、今月はベトナム・ホーチミンでのドローン事情についてお伝えします。

ホーチミンは7年前に2度訪れ、ドローンを飛ばした経験があります。当時はまだ規制が曖昧で、念のため軍関係者に同行してもらい撮影を実施しました。特に問題なくスムーズに終えることができたため、今回も同様の感覚で考えていました。しかし、現地の状況は大きく変わっていたのです。

せっかく持ってきたのに飛ばせないという悔しさが込み上げました。カバンの中にあるドローンは、その重量以上に重たく感じます。せめて、ホーチミンのドローン事情を知ろうと、現地の人に話を聞こうとしましたが、それすらも叶いませんでした。

ホーチミンの厳しいドローン規制

ホーチミンの厳しい規制の背景には、軍事的な機密保持や治安維持といった理由があると言われています。特に政府機関や空港周辺のセキュリティを理由に、ドローン飛行が厳しく制限されているのだと思います。

また、2019年には韓国・ベトナム航空機がドローンと接触し、機体が損傷する事故が発生。この出来事をきっかけに、規制がさらに厳格化されたとも言われています。我々が飛ばしたのは、その前年の2018年1月と6月。今思えば、規制が厳しくなる前の最後のチャンスだったのかもしれませんね。

現在、100g以上のドローンはすべて許可が必要で、飛行予定日の14日前までに国防省へ申請し、許可を取得する必要があります。さらに、軍事基地や政府の建物の上空、空港周辺などでは飛行が禁止されており、日中のみ飛行が許可されています。

無許可での飛行や、禁止区域での飛行には、罰金が科されます。例えば、2024年10月、ハイズオン省で男性が無許可で人民委員会庁舎をドローンで撮影し、1500万VND(約9万円)の罰金を科された事例があるそうです。

短期間の旅行でこれらの手続きを完了するのは難しく、今回のホーチミンでのドローン撮影は断念せざるを得ませんでした。

実際、ホーチミンでは規制が厳しくなり、かつて一緒に飛ばしていた友人も、ついにドローンを売却してしまいました。

消えていた「ドローンカフェ」

渡航前、ネットでホーチミンに「ドローンカフェ」があるという情報をみつけました。Googleマップで場所を確認し、「最新のドローンが並び、愛好家たちが集う空間」が待っていると期待しながら向かいました。

しかし、そこにあったのは、普通のレストランでした。店員さんに「ドローンカフェは?」と尋ねると、「もう閉店したよ。その住所が今のこの店だよ」と、あっさりと返されました。

未来を感じる場所だと思っていたのに、そこには何の痕跡もなく、ただ普通のレストランがあるだけでした。

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過去のホーチミンとの対比

7年前、ホーチミンの空は今よりずっと自由でした。 ホイアンを流れる川やムイネーの壮大な砂漠を、ドローンで思うままに撮影できました。

軍関係者が同行してくれたとはいえ、特に大きな問題もなく、空は広く開かれていました。 しかし今回は、その同じ空を見上げながら、飛ばせない現実を噛みしめるしかありませんでした。

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ドローン規制はますます厳しくなる

今回、ホーチミンでのドローン撮影を断念せざるを得なかったことで、改めて「飛ばせるときに飛ばしておくことの重要性」を痛感しました。

世界的に見ても、ドローン規制は年々厳しくなっています。国によってルールは異なりますが、特に社会主義国や軍事的な警戒が強い国では、ドローンに対する規制が厳格化される傾向にあります。

例えば、今回のホーチミンのように「100g以上ならすべて許可が必要」という規制は、日本と同様に厳格なものです。ただし、日本では100g以上のドローンは事前登録が必須ですが、申請自体はオンラインで完結し、比較的スムーズに進められます。

他国もこのようなシステムを導入すれば、適切に管理しながら飛行の自由度を確保できるのではないでしょうか。

まとめ:飛ばせるうちに飛ばしておくべき

ドローン規制が緩い国や、寛大な国は、今後ますます貴重になっていくでしょう。 日本・香港・中国のように政府がオンライン登録システムを整備し、適切なルールのもとで飛ばせる環境を作ることが理想かもしれません。

「飛ばせるときに飛ばし、撮れるうちに撮る」。

その一瞬一瞬が、未来のどこかで「あの時撮っておいてよかった」と思える貴重な記録となるでしょう。規制が厳しくなる一方で、私たちがどのように対応するかが、今後のドローン文化を左右するといえるかもしれません。

ホーチミンの空を飛ばせなかった今回の旅が、そのことを改めて教えてくれました。

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参考動画:2018年の撮影データ

ベトナム・ホイアン
ベトナム・ムイネー
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ドローンも周辺技術も見どころだった今年のCES[Drone Design]Vol.60 https://www.drone.jp/column/20250221070053111725.html 111725 trend Friday, 21 February 2025 07:00:53 +09:00 世界最大規模の国際テックイベント「CES」では、今年もさまざまなタイプのドローンが出展されていました。ただし、展示傾向はだいぶ変化していて、大手メーカーではなく周辺技術やシステムを開発する会社が増えたという印象です

新年最初に開催される国際テックイベント「CES」は、年間2万件以上のコンベンションが開催されるラスベガスの中でもその規模はダントツで、今年は4500を超える出展がありました。

当然ながらすべての展示が一つの会場に収まるわけがなく、全米最大の展示面積を誇るラスベガスコンベンションセンター(LVCC)と、ラスベガスでは3番目に広いベネチアン・コンベンション&エキスポセンター、その他にも周囲にあるホテルなどを使ってイベントが行われます。メインのLVCCだけで東京ドーム6つ以上、ベネチアンは2つ以上あるので、いかに会場が途方もなく広いかがおわかりいただけるかと思います。

さらに、対象となる展示カテゴリも年々増えていて、今やその数は50近くにまでなっています。その中にドローンはまだ残っているものの、昔のように大手ドローンメーカーが巨大なブースを出すことはなくなっています。今年はカテゴリ別の展示エリアも見当たらなかったのですが、出展そのものはちゃんとあって、全体的には去年より数が増えたのではないかという印象です。

発見率が高かったのは、前回ご紹介した空飛ぶクルマがいろいろ出展されていた、モビリティ関連の展示が集まるLVCCのウエストホールとノースホールです。多くは完成された機体とかではなく、アイデアやコンセプト段階のプロトタイプ、さらに周辺機器やシステムが中心ではあったのですが、それだけになかなか面白いものがありしました。

そうした中で実機を展示していたのが、韓国航空宇宙研究所では初めてのスピンオフ会社であるNarma Inc.で、主力製品のeVTOL「AF 100」を紹介していました。つるっとした丸っこい白い機体は、幅1m、長さ86cm、高さ30cmとコンパクトで、農業、調査、救急用といった用途に合わせていろいろなバリエーションがあります。他にも救急配送用のeVTOLや、マルチロータータイプの機体も開発していて、発売もしているとのことでした。

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韓国のNarma Inc. はeVTOL「AF 100」の実機を展示

周辺機器やシステムでは、矢崎総業の子会社であるYazaki Innovations, Inc.のブースで、eVTOLに使用する高電圧ワイヤーハーネス組立のサービスがモデルを使って紹介されていました。しかもこのモデルはとてもよくできていて、ちゃんとローター部分が可動するようになっていたところが、さすが日本クオリティと思わされました。

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Yazaki Innovations, Inc.はeVTOLで使用する機器を紹介

さらに同じブースでは、Corvus Roboticsの「Corvus One」らしき機体が、ショーケースに入った状態で展示されていました。どうしてここにあるのかという理由は、担当者が不在だったため不明でしたが、24時間無人で在庫がチェックできる自律型ドローンは、倉庫全体を管理するシステムと組み合わせて紹介されていたと考えられます。

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Corvus Roboticsの自律型ドローン「Corvus One」はケースに入った状態で展示

https://www.drone.jp/news/20241009125554100050.html

周辺機器は実物に近いものがあった方がわかりやすい、ということで4Dイメージレーダーを開発する韓国のSmart Radar Systemが、ドローンや水中ドローンに搭載できるスマートレーダーを、実際に機体に搭載した状態で展示していました。こちらも会場では詳細を聞くことができなかったのですが、ラボではテスト機体を使って開発を進めているようで、ブースでは主に自動運転車向けのソリューションが紹介されていました。

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韓国のSmart Radar Systemはドローンに搭載できるスマートレーダーを開発

ドローンを活用するトータルソリューションとしては、韓国のBeylessが展示していた、配送用ドローンとロボットを搭載して一括運用できる専用のバンがなかなかに面白かったです。荷物の積み込みはもちろん、送付先にあわせて最適な配送ルートと配送方法を選んで、自動でお届けするという機能を備えていて、用途にあわせて大型のUAM(アーバンエアモビリティ)と組み合わせるといった機能拡張も可能です。

話を聞いたところ、開発のきっかけはAmazonに売り込むためで、展示しているバンもAmazonでの配送を想定して作られているのだとか。集荷用のシステムとも連携できるようになっていてなかなかの完成度でしたが、実は試験運用もきちんと成功させていて、オーダーがあれば年内には実用化できるということでした。

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韓国のBeylessの配送用バンはドローンとロボットの両方を活用できる

ドローン単体の性能に関わる技術としては、村田製作所のブースでは、磁界エネルギーを送受信するLFアンテナを利用した、高精度な自動着陸システムが展示されていました。コネクティビティ分野の技術紹介という位置付けで、会場ではポジション検出機能を搭載したドローンを使った着陸デモを公開。CESの会場内は電波が飛びまくっていてかなり条件が悪いのですが、コントローラーを使わず通信だけでほぼ指定した位置に着陸できていて、今後どのような使い方をされるのかが気になるところです。

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村田製作所は赤いマットから離陸したドローンをアンテナの中央に自動着陸させるシステムをデモで実演

その他にも会場では、あちこちでドローンのモックアップやイメージ写真があるブースがあり、ドローン市場全体としてはビジネスになることが見込まれているのだなぁと感じさせられました。もう一つのメイン会場であるベネチアンエキスポで、韓国のスタートアップを中心に新しいアイデアが紹介されていたのですが、そちらについてはまた次回にご紹介させていただきます。

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DJI Osmo Mobile 7シリーズ新登場。多機能トラッキングモジュールで日常撮影をもっと楽しく! [Reviews]Vol.88 https://www.drone.jp/column/20250218220256111261.html 111261 trend Tuesday, 18 February 2025 22:02:56 +09:00 DJIでおなじみのスマートフォン用ジンバルスタビライザー「Osmo Mobile」のフラッグシップモデル、Osmo Mobile 7シリーズがついに登場しました!

Osmo Mobile 7は、軽量&コンパクト化に使いやすさを重視したベーシックタイプ。一方Osmo Mobile 7Pは、多機能トラッキングモジュールと無線マイクアクセプターを内蔵、さらに三脚が追加され、使いやすさが大幅に向上しています。

まずはOsmo Mobile 7Pアイテムをチェック!

今回はOsmo Mobile 7Pに注目。Osmo Mobile 7Pは、Osmo Mobile 7の標準コンボに延長ロッドが付いていて、多機能トラッキングモジュールキットも付属しています。

モジュールとスマホを接続する短いUSB-Cケーブル(15cm)は、ケーブル内に針金のような素材が入っているのか形状記憶できるようになっています。こういった使いやすさに配慮した細かい工夫も嬉しいポイントです。

※上記の画像には入っていませんが、もちろんUSB-C充電ケーブル(50cm)もあり。

さらに使いやすさを重視した、新機能

側面ホイールで、補助光の色調と明るさを調整

多機能モジュールとしてプラスされた補助光は、側面ホイールまたは多機能モジュールのボタンを使用することで、4段階の色温度と4段階の明るさを調整。雨の日や夜間など暗い環境での撮影や、自撮りのライティングとして活用できます。

スマホ充電で、バッテリー切れも心配なし

多機能トラッキングモジュールを使用してケーブルでスマホに接続し、ボタンをダブルクリックすると充電される仕組みになっています。

ライブ配信や屋外での長時間の撮影シーンでも、スマホのバッテリー切れを心配する必要がなく、ポータブルバッテリー代わりにもなってくれる、頼り甲斐のあるOsmo Mobileに成長しました笑。

ワンステップで展開、折りたたみやすく

それから、前世代よりも簡単にジンバルが回り、スピーディに撮影できるようになりました。電源をOFFにするときは、電源ボタンを押すとジンバルが折りたたみに適した位置に戻ってくれるので、ワンステップで折りたためます。

ポケットやバッグに収納しておいて、思い立ったら素早く起動して、決定的瞬間を逃さずとらえることができるようになった点は、ユーザー目線で改良してくれたことが想像できます。

ひとりでも”撮れ高抜群”!相方のごとく頼れるガジェット

ここからは実際に撮影した動画や静止画とともに、Osmo Mobile 7シリーズの進化と楽しみ方を紹介していきます。

著者は2匹のワンコと独り暮らし。公園でのお散歩も何かと荷物やリードなどで手がふさがって、撮影するモチベーションはないのが現状。そんな私でも、日常の何気ないひとときをいかに楽しく撮れるかをテーマにOsmo Mobile 7Pを活用してみました。

延長ロッドで低角度アングル、トラッキングでラクラク撮影

https://youtu.be/Yk_4f1BLRIE

Osmo Mobile 7Pに内蔵する延長ロッドは、友人との自撮りに最適なのはいうまでもなく、自撮りをしない私の場合は、目線が果てしなく低い我が子であるミニチュア・ダックスフントを低角度で捉えるのに大いに役立ちました。

さらにDJI Mimoアプリで撮影すると、トラッキング7.0機能が発揮されるため、スマホ画面を見なくてもワンコを追従。いちいちスマホ画面を見なくても、しっかりわんこを画角の中に収めてくれるので、腰が痛くならず助かりました笑。

多機能追跡モジュールで、広範囲の移動撮影ができる

https://youtu.be/ls6Q0n1aWQU

平らな地面に内蔵の三脚を置いて、手を開いて「数字5」というふうにスマホに合図をしたら録画スタート、多機能追跡モジュールで対象物が動いたり距離が離れたりしてもフォローし続けます。まるで透明人間(?)か相棒の誰かに撮ってもらっているかのような感覚に。

「サク、サク」ワンコASMRに挑戦!

https://youtu.be/k9G-6cUqoyA

Osmo Mobile 7Pの多機能追跡モジュールをType-Cケーブルを使ってスマホと接続すると、DJI Mic Miniのトランスミッターでクリアな音声収録が可能に。スマホでのVlog撮影がいとも簡単にできるのは感動的!

ということで、ワンコのハーネスにマイクを装着して、ドッグフードやおやつ、サクサクしそうな大根を食べさせてみると…。ぜひ動画は音声をONにしてご視聴あれ!

直感的にできちゃう!DJI Mimoアプリで動画作成

https://youtu.be/RF2MnIhkxbs

ドローン空撮用アプリ「DJI Fly」と同様に、写真や動画の可能性を広げる直感的でパワフルな編集機能を搭載した統合型アプリ「DJI Mimo」も、動画編集初心者にとってはありがたいツールです。マニュアルを読んだりしなくても、直感的で使いやすいタイムラインを使って、容易に映像を編集できます。

シーンに合わせて無料で音楽を選べて、テキストも入れられる。Instagramのストーリーズと同じ感覚で編集できるのは、たまにしか動画編集作業をやらない初心者にとっては大いに使い倒せるアプリといえます。

コンパクト性と頼れる安心感で、日常撮影をもっと楽しく!

今回、公園でのお散歩にOsmo Mobile 7Pを持っていって実感したのは、延長ロッドと三脚が内蔵されているコンパクト性が、外出先でも気軽に撮影しようというモチベーションを上げてくれるということ。

さらに、アクティブトラックという追従機能で動きのあるシーンもしっかりキャッチしてくれる頼りがいのある安心感は、ひとり撮影のストレスを払拭してくれました。

ひとりワンコ連れでもコーヒー片手に撮影できちゃう、まさに”オールインワン”なガジェットを、ぜひあなたの「相棒」としていかがでしょうか?

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ドローンによる山火事対応に取り組むオーストラリア政府[小林啓倫のドローン最前線] Vol.86 https://www.drone.jp/column/20250218140937111294.html 111294 trend Tuesday, 18 February 2025 14:09:37 +09:00 オーストラリア連邦政府が、2024年12月に発表した山火事の管理における遠隔操縦航空機システム(RPAS)技術の活用に向けたロードマップについて解説する

オーストラリア政府のロードマップ

今年1月に発生したロサンゼルスの山火事は、2月に入ってようやく鎮圧が宣言された。しかし大規模な山火事はこれまでも繰り返し発生しており、他の国々でも大きな問題となりつつある。

たとえば今回取り上げるオーストラリアでは、2019~2020年の「ブラックサマー」と呼ばれる大規模森林火災により、広範囲に甚大な被害が及んだ。​またその後も山火事は続いており、何らかの対策を講じることが求められている。

そんな中オーストラリア連邦政府は、2024年12月、山火事の管理における遠隔操縦航空機システム(RPAS)技術の活用に向けたロードマップを発表した。

この中でオーストラリア政府は、「山火事は、毎年オーストラリアで計り知れない環境的、社会的、経済的被害をもたらしている」として、その対策にPRAS技術が活用できると指摘。従来の火災対策では、発火地点の発見に時間がかかり、特に人里離れた場所で発生した火災は数時間から数日間気付かれないことも多いという。

逆に火災が小規模なうちに発見・消火できれば、被害が拡大することを抑えられるが、現状の手法では難しい局面も多く、新たなアプローチが求められているとしている。

そこでPRAS技術の登場というわけだ。ロードマップでは、災害発生の前・最中・後の包括的なインテリジェンス、監視・偵察(ISR)のサポート、遠隔地やインフラストラクチャの損傷後の通信の提供、災害時および災害後の広範囲にわたる標的を絞ったロジスティックサポートを提供するためのスケーラブルな輸送機能など、幅広い用途が示されており、この技術が緊急対応セクター全体にわたって変革をもたらす可能性を秘めているとの認識を示している。

こうした山火事対応には、局所的な状況認識のための小型クワッドローター、発火の早期発見と活発な火災の監視を可能にする監視飛行用のドローン、消火活動をサポートする車両、各種のロジスティックサポートを提供するための大型車両など、あらゆる範囲のRPAS技術が含まれている。複数種類のドローンや車両を組み合わせて、多層的な運用を行うことを目指しているのが、このロードマップの特徴のひとつと言えるだろう。

多層的ドローン運用による火災対策

オーストラリア政府が目指しているのは、各種ドローンと車両を組み合わせて、火災の早期発見から初期消火までを効率的に行おうとする試みだ。

たとえばある乾燥した日、雷雲が発生し、遠隔地で落雷による発火の恐れがある状況が発生したとしよう。従来であれば、夜間の監視や初期消火は困難だった、しかし新たなシステムでは、まず小型のドローン群が雷雲に追随して飛行し、落雷による小さな火の発生を夜通し監視する。そして火の手が上がり始めれば、そこへ大型ドローンが急行し、消火剤を投下して延焼を食い止める。

​小型ドローンは引き続き炎の広がりを監視しつつリアルタイムでデータを消防隊に送り、夜が明ける頃には人間の消防隊員が正確な現場情報を得た上で出動、強風が吹き始める前に小火を制圧できる。​

搭載されたディスペンサーユニットから焼夷弾を発射する小型ドローン(ロードマップより抜粋)

このように多層的ドローン運用では、異なるサイズや機能を持つ複数種類のドローンが、それぞれの特徴を活かし、かつ連携させて山火事対策にあたる。小型ドローンは軽量で機動性が高く、カメラや赤外線センサーを搭載して広範囲を監視したり、火種や煙を素早く検知したりする役割を担う。

一方、大型ドローンは長時間の飛行や重い荷物の運搬が可能で、水や消火剤を積載して火点に投下することで初期消火を行うことができる。これら大小のドローンが通信回線によって結ばれ、互いに位置や状況を共有しつつ、人間のオペレーターの監督下で自律飛行を行うことになる。

前述のように、オーストラリアの山火事の場合、人里離れた場所で火災が発生し、それが長期にわたって気付かれないことも多い。しかし多層的ドローン運用を実現することで、「早期発見」と「初期対応」をシームレスに繋ぐことができる。

また遠隔地での落雷火災のように、人間の目が行き届かない状況でも、小型ドローン群による24時間体制の監視網を空中に張り巡らせることで、火が小さいうちに見つけ出すことができるという。そして見つけた火災を、大型ドローンによる無人の迅速な初期消火で抑え込むことで、人的被害のリスクを冒すことなく封じ込めるわけだ。​

この間もドローンからは刻一刻と状況データが送られてくるため、地上の消防隊はどこに火が残っているか、延焼範囲はどこまでかといった精密な情報を把握した上で対応できる。

オーストラリア政府はロードマップの中で、山火事管理はRPAS技術を進化させるための理想的なテストの場であり、「あらゆるハザード」に対応する、緊急対応セクターの全体をサポートする技術になるだろうとの見通しを示している。オーストラリアの山火事で鍛えられた技術が、世界各国で多くの命を救うことになるかもしれない。

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記憶を紡ぐ空撮の旅 ~2025年、日月潭からの出発~[田路昌也の中国・香港ドローン便り]Vol.48 https://www.drone.jp/column/20250124101951109069.html 109069 trend Friday, 24 January 2025 10:19:51 +09:00 2024年のドローンと共に記憶を紡ぐ旅を振り返りながら、2025年は台湾・日月潭の空撮を皮切りに、風景を記録する旅に出発しました

朝靄に包まれた日月潭の湖面に、冬の静けさが漂っていました。1月15日の朝、午前5時半、まだ暗い中でドローンの準備を整えながら、私は2025年最初の海外撮影への思いを巡らせていました。約1時間後に迎える日の出に向けて、この神秘的な風景を記録に残したい。その思いと共に、機材の最終確認を行っていました。

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日月潭湖面

記録を重ねた2024年の軌跡

2024年は、ドローンと共に様々な記憶を紡ぐ旅ができました。長く続いたコロナ禍を経て、ようやく海外での撮影が当たり前になった時期でもあります。

実家のある兵庫では、地元のドローン仲間に案内していただいた夫婦桜での撮影、阿蘇の広大な草原での飛行、中国の雄大な山々の空撮、そしてヨーロッパとアジアの境界を流れるボスポラス海峡の朝日など、それぞれの土地で印象的な風景を撮影できました。

特にボスポラス海峡での撮影は忘れられない体験となりました。朝日に輝く海面が二つの大陸を分かつ様子は、まるで悠久の歴史が目の前で展開されているかのようでした。文明の交差点を空から見下ろすその瞬間、風景を記録することの意味を、改めて考えさせられました。

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ボスポラス海峡

記憶の重さを知った瞬間

2024年1月1日に発生した能登半島地震から、早くも1年が経ちました。あの時、多くの風景が一瞬にして変わってしまったことは、私たちに記録を残すことの大切さを痛感させる出来事となりました。

実は地震の数カ月前、私は能登半島を訪れて空撮を行っていました。日本海に沿って続く美しい海岸線、のどかな田園風景。その時に収めた映像は、今では土地の大切な記憶を留める記録となってしまいました。

また、以前のコラムでも触れた中国深圳と香港の国境周辺でも、大きな変化が予定されています。深圳側はすでにこの20年ほどで近代的な高層ビル群へと変貌を遂げましたが、香港側には今でも広大な養殖池が広がっています。 しかし、この香港側でも大規模な再開発が決まり、のどかな水辺の風景は近い将来、新しい街並みへと生まれ変わるでしょう。時には自然により、時には人の手によって、私たちの目にする景色は刻一刻と移り変わっていくのです。

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馬草壟夜景

空から見つめる風景の記録

都市化や開発は、時代の流れとして避けられないものです。その中で、写真や動画による記録の重要性を改めて強く感じています。特にドローンによる空撮は、広い範囲を一度に収めることができ、その場所の全体像や周辺との関係性まで含めて、残すことができる特別な視点を持っています。一枚一枚の写真や映像が、その場所の持つ物語を伝えてくれるような気がします。 そんな思いを胸に、今回は、日月潭での撮影を行いました。

湖面に浮かぶ朝の風景

台湾最大の淡水湖である日月潭は、標高700メートルを超える高地に位置しています。周囲の山々に囲まれた独特の景観は、かつてこの地に住む邵族の人々の暮らしの中心として、今でも大切に守られています。

3日間の滞在中、天候の関係で実際にドローンを飛ばせたのは初日と最終日の朝だけでした。湿度の高い環境での撮影は機材管理に細心の注意が必要で、特に朝靄の中での飛行は常に機体の位置を把握し、安全な高度を維持することが欠かせません。それでも朝日とともに挑戦した撮影では、期待以上の映像が撮れました。

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日月潭養殖

特に印象的だったのは慈恩塔の周辺です。パノラマ撮影を試みることで、朝靄に包まれた塔の姿と、湖面に浮かぶ船の風景を一枚の写真に収めることができました。水面に映る光、立ち込める靄、そして人々の営みを感じさせる小舟。この土地の持つ多くの表情を一つの画角に切り取ることができたと思います。

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慈恩塔パノラマ

その朝の撮影で、もう一つの思いがけない交流に恵まれました。慈恩塔での撮影を終えた頃、DJI Air3を手にしたカップルと出会ったのです。

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台湾ドローンユーザー

台湾では、これまでドローンユーザーと接する機会が少なかったので、思わず声をかけてしまいました。所有ドローンの話で盛り上がり、その場でFacebookの交換をすることに。香港に戻ってからもお互いの撮影データを共有し合ったりと、これからも情報交換していきたいと思っています。

風景の記録は、時として人と人とを繋ぐきっかけにもなるのだと、この出会いを通じて感じました。言葉の壁を越えて、同じ風景の魅力を共有できる。それもまた、ドローン撮影の持つ素晴らしい側面の一つかもしれません。

未来へと紡ぐ私たちの記憶

風景を記録し、記憶として残すということは、単なる美しさの追求以上の意味を持つと考えています。それは、その土地の歴史であり、人々の暮らしの証でもあります。時として、その記録は予期せぬ形で価値を持つことがあります。

ふと思い返すのは、まだドローンを持っていなかった頃の旅の記憶です。アンコール・ワットの荘厳な伽藍、ミャンマーのバガンに広がる数千の仏塔群、ハロン湾に浮かぶ奇岩群の間を船で巡った風景。当時は限られた視点でしか捉えられなかったそれらの場所を、今度は空からも記録に残したい。そんな思いが日に日に強くなっています。

確かに、ドローン規制は年々厳しくなっています。10年前なら自由に飛ばせた場所でも、今では簡単には飛行許可が下りないケースも増えています。その一方で、ドローン技術の進化により、より安全に、そしてより美しい映像を撮影できるようになりました。2025年に入ってすぐ、DJIから新型の小型機「DJI Flip」が発売されました。私のメイン機である「DJI Mini 4 Pro」と、これからの旅でどちらを持っていくことになるのか。新しい可能性への期待も膨らみます。

だからこそ、今この瞬間に目の前にある風景を、できる限り丁寧に記録し、未来に伝えていきたい。2025年は、そんな思いを持って世界の風景と向き合っていこうと思います。

それが、ドローンというツールを持つ撮影者としての、新しい使命なのかもしれません。そして、その記録の一つ一つが、未来の誰かにとって大切な風景の記憶となることを願っています。

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カリフォルニア山火事、ドローン活躍とその障害[小林啓倫のドローン最前線]Vol.85 https://www.drone.jp/column/20250123101748109002.html 109002 trend Thursday, 23 January 2025 10:17:48 +09:00 カリフォルニア州で頻発する山火事において、ドローンがで活躍を見せる一方で、無許可飛行による消火活動の妨害や航空機との衝突事故も発生している。ドローンがもたらす可能性と規制の必要性について考える

カリフォルニア州の山火事に投入されるドローン

近年、米国のカリフォルニア州では気候変動や土地管理の不備、その他の人為的な要因などが重なり、山火事が頻発・激甚化している。今年1月7日から発生し、甚大な被害をもたらしている山火事はその際たる例だ。

こうした危機的状況を受け、ロサンゼルスを含む各地の消防当局や関連機関は、山火事対策の一環としてドローンやAIの活用を進めている。検討や実験の段階ではなく、実際の山火事現場において、ドローンが炎の近くまで安全に接近して情報を収集したり、AIを使って膨大な火災関連データを高速で分析したりする事例が生まれているのだ。こうした先端技術の導入は、今後の消防活動のあり方を変えるものとして期待されている。

たとえば2018年11月8日にカリフォルニア州北部で発生した山火事「キャンプファイア」では、16の緊急対応機関が協力し、ドローンを用いて被災地の広範なマッピングを実施している。この際、計518回ものドローンのフライトが行われたそうだ。

また2021年7月から8月にかけて発生した大規模火災「ディクシー・ファイア」では、ドローンに取り付けられた「ドラゴン・エッグ」と呼ばれる球体(過マンガン酸カリウムで作られた物体で、グリコールを注入することで炎が噴き出す)を投下し、あえて燃えていない地域に火をつけて延焼を防ぐ「バックファイア」の手法が実施された

さらに赤外線カメラなどを搭載したドローンが、山林や建造物に潜むホットスポットを特定し、消防隊に貴重な情報を迅速かつ安全に提供するという取り組みも行われている

これらはまさに、ドローンが山火事や大規模火災への対応に大きく貢献している好例と言えるが、一方でその限界や問題も明らかになっている。

たとえば今回のロサンゼルスの火災では、付近に非常に強い風が吹いており(それがまさに深刻な山火事を引き起こす一因だ)、ドローン使用が制限されているとの報道がある。

そしてより深刻なのが、当局やメディアなど公的な機関によるドローン活用とは別に、無許可で使用されるドローンが引き起こす問題だ。

無許可ドローンが引き起こす問題

ロサンゼルスの山火事では、非常事態宣言下にある火災現場付近で、ドローンの飛行禁止区域(TFR:Temporary Flight Restriction)が設定されている。にもかかわらず、一部の個人がドローンを勝手に飛行させる行為が続き、問題となっている。

報道によれば、2025年1月15日現在で既に3名の逮捕者が出ている。

また別の報道では、今回の山火事が発生してから、48機もの私的所有のドローンが規制区域内で飛行していたことが判明している。

さらには消防機関が運用する、山火事の消火支援を行う大型航空機「スーパー・スクーパー」とドローンの衝突事故も発生。スーパー・クーパーはカナダから派遣されたもので、低空飛行しながら水を収集・散布する能力を持ち、1,600ガロンの水をわずか5分で補給可能だ。しかし、この事故で主翼にこぶし大の穴があき、飛行不能となったため、同機による人命救助の機会が失われることとなった。

たとえ衝突事故が起きなくても、ドローンが飛行禁止空域に侵入するだけで大きな問題となる。消防当局の航空機が上空で消火活動や情報収集にあたる際、もし付近に民間ドローンが飛んでいると、衝突リスクを回避するために消火活動や救助作業を中断せざるを得なくなるからだ。

こうした無秩序な飛行が続くと、消防の中核を担う航空支援が停止し、消火活動全体の効果が大幅に削がれてしまう危険がある。

もちろんこうした違反行為に対して、当局が手をこまねいて見ているわけではない。米FAA(連邦航空局)によれば、飛行制限違反は1年の懲役や最大7.5万ドルの罰金が科される可能性がある。にもかかわらず違反者が相次ぐのは、そう、映像配信者の存在が一因となっている。法を犯しても「バズる」動画が取りたいのだ。

実際、YouTubeを始めとする各種の映像共有サイトやSNS等では、ドローンにより撮影したものと思われる、ロサンゼルスの山火事に関連する映像が投稿されているのを確認できる。

上掲の映像は報道機関により、正式な許可を得てドローンを飛行させ撮影されたものだが、こうした「衝撃的な」映像を取りたいという欲求が違反者を生むのだろう。だからといって、消火活動、ひいては人命救助作業を妨害する行為は絶対に許されない。

ロサンゼルスの山火事は、ドローンが山火事対策において大きな威力を発揮し得ることを再確認させると同時に、いくら法律で規制しても、無許可飛行は防げずに現場に致命的な障害をもたらすという教訓を突きつけた。

今後は一層、合法かつ安全な運用を推進するために、技術的なイノベーションと法規制・モラル教育の充実が不可欠となる。今回の事例は、それに向けての大きな教訓をもたらしてくれるだろう。

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ドローン技術の現在地点[春原久徳のドローントレンドウォッチング]Vol.86 https://www.drone.jp/column/20250121184251108884.html 108884 trend Tuesday, 21 January 2025 18:42:51 +09:00 ドローンの技術について、その現在の状況に関して記してみたい

ドローン技術の従来からある課題

ドローンの技術は以前より以下の課題があった。

  • ・航行時間
  • ・衝突・落下防止
  • ・電波の長距離伝達と安定性
  • ・非GPS環境下での自己位置測位と安定

ドローンの航行時間は、基本的に機体の重さとバッテリーのバランスで決まってくる。大きく進歩するものでなく、大抵が20分から50分程度の範囲で推移してきた。これまで、ドローンのバッテリーはリチウム電池が専らで、その調達先としては中国が強い。技術上の課題もあるが、調達に絡む課題のほうが大きくなってきている。その中で、小型の全固体電池が現れてきているが、どれだけコストが下がり、入手しやすくなるかはこれからだ。

衝突・落下防止に関しては、2次元や3次元のLiDARが小型軽量化し、コストも安くなったことから、だいぶ実装しやすくなった。電線などの回避は難しい部分が残っているが、一定の大きさの障害物の回避は可能になってきている。それでも、国産機の中では標準的に実装している機体はまだ多くはないが。

電波の長距離伝達と安定性に関しては、LTEの上空利用ということで期待されたが、ドローンを使う地方においてはLTEが繋がらない地域も多い。また、繋がったとしても不安定であり、現状も長距離伝達に関しては課題が残っている分野の一つだ。

また、LTEの月の料金もいまだ49,800円と高価なまま変わらない。今後、スターリンクなどの衛星通信のデバイスやアンテナが小型になり、移動体に関しても有効ということになれば活用が広がってくるだろう。

また、意外とドローンの様々な通信とその用途に関してきちんと通信制御を行ってくれるデバイスも不在で、こういった通信制御デバイスも重要なものとなってくるだろう。

非GPS環境下での自己位置測位と安定に関しては、室内空間でのドローン利用の拡がりの中で、その精度や使い勝手が向上してきている。 詳しくは以下のページを参照。

https://www.drone.jp/column/2023082419023371330.html

こういった技術をGPS空間と非GPS空間を行き交うような、例えば、橋梁の下といったところで使うケースも増えてきている。(行き交う際に実際の緯度経度と合わせるとき、航行が不安定になるといった不具合もあったが、これもだいぶ解消してきている。)

こういった既存の課題に関しては、だいぶ進んできている部分も多いのではないかと思う。

現状の技術課題の方向性

現状の技術課題の方向性において、重要になってきているのは実証実験から実運用に向けての「安定性」「安全性」といった部分である。また、ウクライナ戦争以降、ドローンのポジションは世界的にも大きく変化したが、その中で技術課題としても上がってきているのは、「耐妨害性」といったポイントだ。

そして、ChatGPTといった生成AIが急速に進んできている中では、AIの活用というのも大きなポイントとなっている。

実運用(安定運用・安全運用)に向けての技術課題の考察の前に、機体の故障・事故の要因分析をしてみたい。

機体の故障・事故の要因は、メーカー要因・ユーザー要因・自然要因・経年変化要因・妨害要因といった5つに分かれる。 そして、各々の内容に関しては、以下の表のような内容になってくる。

メーカー要因 ユーザー要因 自然要因 経年変化要因 妨害要因
モーター不良 操作ミス GPSエラー バッテリー劣化 GPS妨害
バッテリー不良 操縦ミス 通信エラー モーター劣化 通信妨害
機体制御ボード不良 航路ミス 機体歪み ハッキング
通信不良 扱い管理ミス ネジゆるみ 撃墜
その他不良 扱い不注意
調整不足 点検見落とし
機体制御バグ
GCSバグ

自動運転の車も同様であるが、こういった自律自動移動ロボットにおいて、現在、事故が起こったときに、その事故の責任は機体メーカー(メーカー要因)、機体所有者(経年変化要因)、運用ユーザー(ユーザー要因、自然要因、妨害要因)といった形に分かれている。(現在、ドローンでリースなどを掛けにくいのは、リース会社は機体所有者として事故の責任を負いにくいといった背景もある。)

現在、運用(安定・安全運用)というステージに入る中で、技術課題として、事故が起きない、少なくとも起きにくい対策が重要になってきているのだ。

現状の技術課題のポイント

機体メーカーに関しては、まずは揚力などに関しても余裕を持った機体を設計し製造することだろう。そして、チューニングも重要だ。時折、国産機などにおいては、モーターのバランスや機体重心、振動の振幅といった部分が悪い機体も多く、出荷の際には、そういった揚力や振動、チューニングの機体ログの値などもユーザーに示すことも重要だろう。

そして、経年変化も含めた機体の故障などの要因を防ぐためには、飛行終了後の機体ログの簡易解析による異常検知(例えば、DOP SUITEなど)や飛行前の機体診断ソフトの提供なども必要だろう。(DJIなどには一部実装されているし、ArdupilotもPreArmチェックで、そういった機能を組み込める仕組みになっている。)

https://www.drone.jp/column/2024042309582686711.html

ユーザー要因に関しては、操作ミスや操縦ミスをしても事故にならないような対策(衝突回避などの装置の実装やフェイルセーフなど)が必要だ。 (現状でも損害保険会社は機体の動産保険の事故率の多さに苦慮しているが、今後、こういった対策をしている機体とそうでない機体の様々な差というものが生じる可能性がある。)

また、Ground Control Station(GCS)を始めとした地上局側のアプリケーションも使い勝手がよく、またミスをしにくく、ミスをした場合にはアラートが出るといった形でのソフトウェア実装も必要になってくるだろう。この辺に関しては、ChatGPTといった生成AIを組み込んでいくことも効果が高いだろう。

点検に関しては、先に示した飛行終了後の機体ログの解析、飛行前の機体診断ソフトも非常に効果的であろう。

自然要因についても、雨に関しては機体全体のケーシングや各デバイスのハードウェア対策が必要になってくるが、その他に関しては、フェイルセーフなどの対策の技術が進んできている。強風が長く続く環境では限界もあるが、急な強風に対しての機体制御は、その技術も進んできている。

また、妨害要因とも関連するが、通信やGPSのエラーに関しての対策技術も昨年ぐらいから非常に進んできている。

経年変化要因に関しては、ユーザー要因で示した飛行終了後の機体ログの解析、飛行前の機体診断ソフトが有効だろう。

妨害要因に関しても、自然要因で示した通信やGPSのエラーに関しての対策技術が、妨害にも有効になってくる。ハッキングなどの対策については、今後インターネットにつながるシチュエーションの増加が想定されるため、今までスマートフォンやPCで行ってきたような対策をドローンに実装することが急務になってくるだろう。

電磁波などの電子銃などの対策はいまだに困難な点も多いが、フライトコントローラーなどの電子部品に対して電磁シールドの対策を行うようなものは防衛関連のドローンの対策としては出てきている。

これからの機体選定

ドローンの活用が進み、運用局面を迎えるにあたり、今までの「何がドローンでできるのか」といった目線から安定・安全運用へと、ユーザーの目線は確実に移ってきている。

ユーザーは故障や事故の軽減や使い勝手といった観点からも、より安定的で安全性の高い機体を選定していくことが重要となってくる。

リース会社なども上に示したようなログ解析や診断ソフトにおける機体所有者の責任をクリア(経年変化も含めた異常がない機体)した形で、ユーザーに提供していく道を探っていくことが重要だ。

そして、機体メーカーは、前回このコラムで書いたようなArducopterの最新バージョンのファームウェアなどを参考にしながら、まずは上記に示したような技術が既に実装可能な技術となっていることを理解することが重要だ。

https://www.drone.jp/column/20241223134435106882.html

こういった理解を深めるとともに、ユーザーニーズを捉え、必要な機能をきちんと実装していき、より安定性・安全性の高い機体を提供していくことが必須となってくるし、そこが今後の差別化に繋がってくるだろう。

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ドローン、CES 2025で再び存在感。CESで垣間見た軍事転用の現実と未来 [CES 2025] https://www.drone.jp/special/20250117180930108579.html 108579 trend Friday, 17 January 2025 18:09:30 +09:00 CESを振り返ると、2025年の展示会では再びドローンが存在感を示していることに気づく。ウクライナのブースでは、実戦で培われたドローンの技術が披露されるなど、世界最大のテクノロジー見本市が、軍事と隣り合わせの現実を映し出す様子をレポート

CESにおけるドローンの進化を振り返ってみよう。

2015〜2017年頃のCESでは中国のDJI、フランスのParrot社がドローンを積極的に展示していた。ラスベガスのコンベンションセンター会場の中央ではドローン飛行のためのネットステージが準備され、ドローンの試運転を楽しめたものだ。その後、水中ドローンや陸上ドローンなども登場し、CESはドローンの進化を見るために最適なテクノロジー見本市だった時代もあった。

だが、Parrotが後退し、HUAWEIの締め出しから始まる米国の中国企業規制を軸に、DJIはじめ中国系のドローンはCESから姿を消した。コロナ以降のCESではドローンは存在感がとても薄いものとなった。

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そのドローンが、存在感を再び示したCES 2025

ヴェネチアンエキスポの2階にあるグローバルパビリオンの中央に構えられたウクライナブースは大小様々なドローンを展示していた。ウクライナでは戦争が始まってからドローンの会社が増え、現在では700社がドローン開発をしていると言う。

コンパクトのものから大型まで展示していた。実戦で活用している、その実力を展示し、他国/企業に購入してもらうための展示だ。偶然かもしれないがドローンの紹介をするウクライナのブーススタッフは女性が多かった。

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展示社の一社、SKYFALLでもらったパンフレットは開いた見開きにはウクライナ国防省の写真が掲載されていたり、ページを進めると米国や英国、EUなどの要人達もSKYFALLを訪れていると記載されている。軍事的であり政治的なパンフレットだ。

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少し感傷的な話を入れる。ロシアの侵攻直後の2023年のCESでもウクライナは展示をしていた。ただドローンではない。領土を奪われる喪失、祖国の面影をキャンドルとして残そうとするものだった。コーヒーの香り、花の香りなど自分たちの祖国の思い出を香りに詰めるプロダクトを紹介していた。

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それが2年たった2025年、感傷的な雰囲気はブースに全くない。そこにあるのは現実に向き合い、実戦で培ったドローンのナレッジを紹介するウクライナがそこにはあった。もちろんブースに立っている人は2年前と違う。ただ、2年前の優しさや感情に訴えかけてくる素振りは全く消え、自国ウクライナのドローンの性能を淡々と語っている現実を紹介する勇ましい姿がそこにはあった。

今、世界各地で軍事的な強化が叫ばれている。ウクライナブースでは実績を上げているドローンの性能を聞き、ソリューションを購買する動きがあったと思われる。

各国のドローンソリューション

ウクライナ以外にはフレンチテック「YellowScan」がLiDAR 3Dマッピングソリューションドローンを紹介していた。また、「母艦」としての車と、フライングカーのドッキングが話題の「XPENG AEROHT」も展示されていた。サイバートラック風の車から飛び出るフライングカーはさながら移動式サンダーバード基地とも言える。トヨタやデルタのセッションではエアタクシーの「Joby」の可能性が言及されていた。

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話はドローンから逸れるが、CESのスタートアップが集まるエリアにEureka Parkというものがある。そこに米国軍(US Army)が出展していた。世界各国のスタートアップが集まる場所で良いソリューションは軍事的にも採用する動きもあるのだろう。軍こそ最新鋭のテクノロジーを欲しているところである。そのことは頭ではわかっていつつも、ウクライナや米国軍の存在に、世界最大級のテクノロジーの祭典は、軍事面とも隣り合わせのソリューションが展示されていることにも気付かされるCESだった。

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CES 2025

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DJI Flipレビュー。お手軽・安心・高画質のオールインワン小型空撮ドローン誕生![Reviews] Vol.87 https://www.drone.jp/column/20250114220139108169.html 108169 trend Tuesday, 14 January 2025 22:01:39 +09:00 新たな小型ドローンラインナップ「DJI Neo」をリリースしたばかりのDJIですが、さらに新たな小型空撮ドローン「DJI Flip」をリリースしました。Neoのような “手軽さ” や “安心感” とDJI Mini 4 Proの “高画質な” 空撮を両立したオールインワン空撮ドローンをいちはやく手に入れたのでレビューしていきます。

オールインワン小型空撮ドローンDJI Flipの概要

DJIから、またもや新しいラインナップとして誕生したDJI Flip。筆者が注目したDJI Flipの特徴をまとめると下記のとおりです。

  • 安全&安心な「折りたたみ式全面保護プロペラガード」
  • 安定の高画質「1/1.3 インチCOMSセンサー」&「デュアルネイティブISO」
  • 明るいところから暗いところまで豊かな表現力の「4K / 60fps HDR動画」
  • 専属カメラマンがいるかのような「AIトラッキング」
  • ゆっくりと時間をかけて撮影できる「最大飛行時間31分」

https://www.drone.jp/news/20250114220056108037.html

DJIの製品ラインナップのポジションとしてはDJI Mini 4 ProとDJI Neoの中間くらいになるのでしょうか。

スペックを比較してみると、ちょうど小型&高画質なDJI Mini 4 Proの特徴(カメラはほぼ同スペック)とDJI Neo の手軽さの特徴をあわせ持った仕様になっています。

DJI Flip機体チェック

今回のレビューではFly More Combo(RC2付属)を手に入れたので同梱物から見ていきたいと思います。

DJI Flip Fly More Comboには、機体・モニター一体型送信機(DJI RC2)のほか、予備バッテリー2本や充電ハブも付属します。DJI Air 3SのFly More Comboで同梱されていたNDフィルターは今回は別売りです。ただ、レビュー用に手元にありますのでレビュー内では後ほどご紹介したいと思います。

DJI_Flip_reviews_01
機体・送信機(RC2)・予備バッテリー2本・充電ハブ・USB-Cケーブル・予備プロペラ3セットやその他一式が収納できるショルダーバッグがセットになっている

DJI Flipの機体デザインも細かく見ていきたいと思います。やはりまず目に止まるのは独特かつ安心なプロペラガード一体型デザイン。しかも折りたたみ時には一輪車のように4つのプロペラ&ガードをひとつにまとめることができるコンパクトデザインとなっています。

被写体や障害物の近くを飛ぶ際にはプロペラガードは付けたいものの、どうしても大きくなってしまったり別途持っていくのが面倒だったりしますが、DJI Flipならその問題を一気に解決することができます。

ちょっとレトロフューチャー感もあるDJI Flipの外観デザイン
真上から見ると4つの円が四角い機体本体にくっついたようなデザインがとても印象的
シンプルな機体後部。機体本体はプロペラガードの上に乗っかるようなデザインになっている
折りたたんだ状態。4つのプロペラとプロペラガードがひとつの軸線上に集まりコンパクトに収納できる
DJI Mini 4 ProやDJI NeoとDJI Flipの大きさの比較。DJI Mini 4 Proよりひと回り小さく、DJI Neoよりもふた回りほど大きい

安全なデザインはほかにも。機体全面の大きな黒いエリアが「3D赤外線検知システム」です。ただ、検知範囲も水平・垂直60°と、あくまでも前方の障害物の検知を目的としているため、側面や後方の障害物検知には対応していませんのでご注意ください。

また、測定範囲は0.3〜8mとなっているので、近距離の障害物に対して有効なシステムとなっており、昨年10月にデビューしたDJI Air 3Sに搭載されているLiDARとは少々違う仕様(DJI Air 3Sは測定範囲0.5〜18m)になっています。

3D赤外線検知システムによって全面の障害物への万が一の衝突を避ける。検知後の機体の動きも「ブレーキ」と「迂回」をあらかじめ設定することができる

カメラは3軸メカニカルジンバルを装備。DJI Neoでは1軸ジンバルでしたので、画質劣化なく安定した映像を撮影することが可能です。小型カメラながら画質を決定づけるセンサー部分は1/1.3インチ(Neoは1/2インチ)なので、カメラ周りはDJI NeoというよりもDJI Mini 4 Proに近いスペックを持っています。

1/1.3インチセンサーで最大150Mbps(データ量は多いが圧縮率が低く高画質な映像、Neoはその約半分の最大75Mbps)の4k映像を撮影できる小型カメラを搭載

NDフィルターも別売りでラインナップ。絞り(F値)がF1.7(数字が小さいほど明るい)で固定のレンズとなっているため、映像にこだわった明るさの調整にはNDフィルターが必須です。NDフィルターはND16 / ND64 / ND256の3種類がセットになっており、装着はレンズ周りのくぼみにはめ込むだけでOKです。

DJI Flip専用のNDフィルター。F1.7固定のレンズのFlipには必須といえるアイテムで、明るすぎる画面を適正な明るさに調整するのに利用する。シャッタースピードを速くしても画面を暗くすることはできるが、映像の動きがパラついたり、画面がざらついた画質になりがちなためNDフィルターで調整したほうが映像が滑らかかつ高画質な状態で調整できる
NDフィルターをレンズに装着したところ。くぼみにはめ込むだけなので手軽。しかもしっかりとはまるので抜け落ちるような心配もなさそうだ

機体下面にはビジョンセンサー1つと赤外線センサー1組が備えられています。この機体下面のセンサー類がDJIならではの低空やGNSSが入らない屋内などでの安定したホバリングを実現しています。

低空飛行時やGPS等のGNSSが取得できない屋内などで機体の水平位置や高度を安定させるためのセンサーが機体下面に装備されている。こちらの仕様はDJI Neoに近いようだ
DJI Neo(左)とDJI Mini 4 Pro(右)の機体下面のセンサー。DJI FlipはDJI Neoのセンサーを踏襲しているようだ

機体右側面には電源インジケーター&電源ボタン、左側面にはDJI Neoにも搭載されていたクイックショットのメニューボタンとMicroSDスロット、USB-Cスロットがあります。

NeoではオミットされたMicroSDカードスロットはDJI Flipでは採用されている(左)。空撮をたくさん楽しみたい…と考えると嬉しいポイントだ

バッテリーは軽量コンパクトなものを機体上面にはめ込むタイプです。飛行時間は最大31分の長時間飛行を実現します。バッテリーはボディデザインの一部を担っていますので、機体識別表示はバッテリーを避けて貼り付ける必要があります(取り外すバッテリーや折れやすいアームなどではなく機体本体に表示することが義務付けられています)。

バッテリーは機体上部からはめ込むタイプ

また、バッテリーは充電ハブで最大2本同時充電することができます(65W入力時)。2個のバッテリーを0%から100%に充電するのに必要な時間は約70分ですので、PD対応USB充電器やモバイルバッテリーがあるととても便利です。

パラレル充電ハブは入力W数(65W)によって2本同時充電もできる。45Wでは1本のみの充電となるので注意が必要
USB充電器の「出力(OUTPUT)」を確認して65W以上を用意すると充電がはやい(2本同時充電可能)

スペック比較表

機体

DJI Mini 4 Pro DJI Flip DJI Neo
機体重量 249g 249g 135g
サイズ(長さ×幅×高さ) 折りたたんだ状態:148×94×64mm
展開時:298×373×101mm
折りたたんだ状態:136×62×165mm
展開時:233×280×79mm
130×157×48.5mm
最大上昇速度 5m/s(Sモード)
5m/s(Nモード)
3m/s(Cモード)
5m/s(Sモード)
5m/s(Nモード)
2m/s(Cモード)
3m/s(Sモード)
2m/s(Nモード)
0.5m/s(Cモード)
最大降下速度 5m/s(Sモード)
5m/s(Nモード)
3m/s(Cモード)
5m/s(Sモード)
5m/s(Nモード)
1.5m/s(Cモード)
2m/s(Sモード)
2m/s(Nモード)
0.5m/s(Cモード)
最大水平速度 16m/s(Sモード)
12m/s(Nモード)
12m/s(Cモード)
12m/s(Sモード) 16m/s(Sモード)
8m/s(Nモード)
6m/s(Cモード)
最大飛行時間 34分(インテリジェント フライトバッテリー)
45分(インテリジェント フライトバッテリー Plus)
31分 17分
最大風圧抵抗 10.7m/s 10.7m/s 8m/s
検知タイプ 全方向デュアルビジョンシステム、機体底部にある3D赤外線センサーで補助的に使用 下方:ビジョンセンサー1つと赤外線センサー1つ
前方:‌3D赤外線検知システム
下方ビジュアルポジショニング
GNSS GPS + Galileo + BeiDou GPS + Galileo + BeiDou GPS + Galileo + BeiDou
内部ストレージ 2GB 2GB 22GB(MicroSDスロットはなし)

カメラ

DJI Mini 4 Pro DJI Flip DJI Neo
イメージセンサー 1/1.3インチ 1/1.3インチ 1/2インチ
レンズ FOV:82.1°
焦点距離(35mm判換算):24mm
絞り:f/1.7
フォーカス:1 m〜∞
FOV:82.1°
焦点距離(35mm判換算):24mm
絞り:f/1.7
フォーカス:1 m〜∞
FOV:117.6°
焦点距離(35mm判換算):14mm
絞り:f/2.8
フォーカス調整:0.6m〜∞
ISO感度 動画
ノーマル、スローモーション:
ノーマル:100~6400
D-Log M:100~1600
HLG:100~1600

ナイトモード
ノーマル:100~12800

写真
12 MP:100~6400
48 MP:100~3200
動画
ノーマル:100~6400
D-Log M:100~1600

写真
12 MP:100~6400
48 MP:100~3200

※デュアルネイティブIOS
オート:100~6400
マニュアル:100~6400
静止画最大サイズ 48MP 写真(8064×6048px) 48MP 写真(8064×6048px) 12MP 写真
4000×3000(4∶3)
4000×2256(16∶9)
写真フォーマット JPEG/DNG(RAW) JPEG/DNG(RAW) JPEG
動画解像度 H.264/H.265
4K:3840×2160(24/25/30/48/50/60/100fps)
FHD:1920×1080(24/25/30/48/50/60/100/200fps)
※縦向き撮影は解像度を保ったまま物理的にカメラ角度を変更
H.264/H.265
4K:3840×2160(24/25/30/48/50/60fps)
FHD:1920×1080(24/25/30/48/50/60/100fps)
2.7K縦向き撮影:1512×2688(24/25/30fps)
フルHD縦向き撮影:1080×1920(24/25/30fps)
EISオフ:
4K(4:3):3840×2880(30fps)
FHD(4:3):1440×1080(60/50/30fps)

EISオン:
4K(16:9):3840×216(30fps)
FHD(16:9):1920×1080(60/50/30fps)

縦向き撮影
FHD(9:16) 1080×1920(60/50/30fps)
動画フォーマット MP4 MP4 MP4
最大動画ビットレート 150 Mbps 150 Mbps 75 Mbps
カラーモード ノーマル / D-Log M / HLG ノーマル / D-Log M ノーマル
デジタルズーム 12MP写真:1〜3倍
4K動画:1〜3倍
フルHD動画:1〜4倍
12MP写真:1〜3倍
4K動画:1〜3倍
フルHD動画:1〜4倍
自動トラッキング 通常 AI トラッキング AI トラッキング

映像伝送

DJI Mini 4 Pro DJI Flip DJI Neo
映像伝送システム O4 O4 O4
ライブビュー品質 送信機:最大1080p/60fps 送信機:最大1080p/60fps 送信機 / Goggles 3:最大1080p/60fps
最大伝送距離 10km 8km 6km

バッテリー

DJI Mini 4 Pro DJI Flip DJI Neo
充電タイプ 3つのバッテリーを順番に充電 バッテリー2個を同時または順次充電 3つのバッテリーを同時に充電
充電時間 非公開
(5V / 3A、9V / 3A、12V / 3A)
機体に搭載時:約70分
※最大充電電力 30W

バッテリー充電ハブで1本充電:約45分
※最大充電電力 45W

バッテリー充電ハブで2本並列充電:約70分
※最大充電電力 65W
双方向充電ハブを使用する場合:約60分
※最大充電電力60W

機体を直接充電する場合:約50分
※最大充電電力15W

DJI Flipを長瀞へ持って行ってみた

筆者もDJI Neoを購入して空撮に持って行っていたのですが、飛ばしていて楽しい機体ではあるものの、「空撮」という意味では正直言うと、もう少し高画質な撮影を楽しみたい…というのが心の底にありました。DJI FlipならばDJI Neoの手軽さと安心感をそのままに、さらに高画質な空撮を楽しめそうです。

ということで、長瀞(埼玉県)という観光地にDJI Flipを持って行ってきました。隆起した結晶片岩が文字どおり岩が畳を敷き詰めたかの様に広がる"岩畳(いわだたみ)"や "赤壁"と呼ばれる絶壁が美しいところです。

https://youtu.be/9qjqbhAfZ4w
4K60fps、D-Log M、ND64フィルターを装着してカメラ設定を調整しながら撮影

ときおり3〜4m/sの風が吹く飛行環境でしたが、DJI Flipは機体を傾けながらも安定して飛行してくれました(もちろん映像は傾いたりブレたりしていない)。ミルフィーユのような結晶片岩がデコボコした陰影も立体感があり、赤壁の岩盤のディテールもしっかりと描写しています。加えて、当日は川の水もとても澄んでキレイだったのですが、そのようすもしっかりと映し出してくれました。

ただ、NDフィルターはND64を主に装着していたものの、当日の天気では少し画面が暗くなりすぎる感があり、かといってND16だと明るすぎる…というF値で微調整ができない難しさを感じました。ここは仕方がないところですね。

DJI FlipとDJI Mini 4 Pro&DJI Neoの画質比較

また、DJI Flip の映像だけではほんとうに高画質なのか、どれくらい高画質なのかわからないので、DJI NeoやDJI Mini 4 Proと同じ時間に同じ被写体で撮影比較をしてみました。

当然と言えば当然ですが、DJI FlipとDJI Neoでは画質がぜんぜん違います。DJI Flipでは鮮明で美しい岩肌も、DJI Neoではちょっと潰れた感じの不鮮明な映像になってしまいます。これは、同じ4K映像でもビットレートが低いことと、電子手ブレ補正が入っていることに起因するものと考えられます。

DJI Flip(左)とDJI Neo(右)の映像比較のキャプチャ画像。サイズを考えるとDJI Neoも大健闘だが、やはりDJI Flipに軍配が上がる

DJI Mini 4 ProとDJI Flip では、カメラスペックがほぼ同等なのでともに優劣つけがたいレベルの高画質映像です。ただ、カラーモードがNormalのときのDJI Mini 4 Proはちょっと白(ハイライト、いちばん明るいところ)が飛んでいるようです。これが、性能差なのか、機体のホバリング位置(撮影時間は全機体同じ)の影響なのかは定かではありませんが…。D-LogMで撮影したものは両機体ともに明るいところから暗いところまでの滑らかさなどに差は感じられない高画質映像でした。

DJI Flip とDJI Mini 4 Pro(DJI Neoも)同時にホバリングさせてほぼ同じ場所から同じ被写体を撮影したもの。EV0になるようにカメラ設定を調整して撮影したが、Mini 4 Pro のNormalはハイライトが少し飛んでしまっているように見える
https://youtu.be/dS9CQgUTHXQ

DJI Flipはスペック通り、高画質な映像に定評があるDJI Mini 4 Proと同等(以上?)の映像を撮影することができそうです。

DJI Flipの暗がりの撮影力

DJI Flip には「デュアルネイティブISO」が備わっています。通常、ISO感度は数値を上げるほど画面が明るくなりますが、センサー感度をデジタル的に増幅するためノイズが乗りやすくなるという特徴があります。

デュアルネイティブISOは、センサーが低ISO感度(明るいシーン向け)と高ISO感度(暗いシーン向け)の2つのISO感度を持つため、低照度でISO数値を高くしてもノイズが少ない画質を維持し、明るいシーンでも高画質を実現することができます。加えて、HDR(ハイダイナミックレンジ)の撮影もできるこの機体は、明暗差の大きなシーンでも暗いところから明るいところまでしっかりと美しく描写してくれる…はず、です。夕日のシーンで検証してみましょう。

太陽の中心のいちばん明るいところから周辺に広がるオレンジの光、そして上に行くに従って青く変わっていく空の色。とても美しいグラデーションが出ています。さらに夕日に照らされた岩場の陰影もとても立体感があり、影がつぶれていないことがわかります。手軽な小型空撮ドローンでここまで撮れるとは正直なところ驚きました。

https://youtu.be/LACjIHB0qqk
4K60fps、D-Log M、ND16フィルターを装着して撮影

高画質撮影だけじゃない!DJI Flipのお手軽撮影機能

DJI FlipにはDJI Neoにも搭載された "手のひら離陸"や「クイックショット」による自動撮影、被写体を常に画面に捉え続けながら飛行する「AIトラッキング」など、便利なお手軽撮影機能も引き継いでいます。ここがDJI Flipが単なる小型高画質ドローンではないところですね。

特に便利だったのは、折りたたんだ状態からプロペラガードを広げただけで電源が入ること。自撮りしたい場所にたどり着いて、機体をセッティングしたら自動的に電源が入る…というタイムロスの少なさ!ちなみに、バッテリーを差し替えてもすぐに自動的に電源が入るようになっています。

https://youtu.be/RnvZ9q_Nh-4
クイックショットの「ドローニー」で撮影。4K30fps、カメラ設定:オート

DJI Flipのよいところと気になるところ

DJI Flipをしばらく使ってみて気づいたのは…

《よいところ》
  • (1)DJI Miniよりミニサイズで同等(以上?)の高画質
  • (2)安心感抜群のプロペラガード&前方3D赤外線検知システム
  • (3)余裕の31分の飛行時間&充電がはやいパラレル充電ハブ

(1)は、もう今回のレビューでいちばん実感したところです。手軽に持ち歩ける Neo も良かったのですが、やはりもう少し高画質な撮影がしたかった…というところで DJI Flipは軽量で持ち運びドローンとして最適です。

(2)は、今回 "意外"にもいいな!と思った項目です。普段仕事で空撮をすることが多い筆者としては、プロペラガードを装着した空撮は特殊な撮影のとき(狭いところや演者が近いところなど)の飛行形態だったのですが、常にプロペラガードがついている状態が思いのほか安心感が高い飛行ができました。逆に、DJI Flip を飛ばし終えたあとに比較用にたまに飛ばしていたDJI Mini 4 Proのプロペラガードが装着されていない、プロペラむき出しの状態が少し「怖い」と感じるほどでした。

(3)は言うまでもなく…です。30分前後の飛行時間があると、バッテリー3本持っていれば大抵の撮影はできてしまいます。よほどハードに飛ばさなければ、モバイルバッテリーで充電などしながら1日飛ばしても問題ないくらいです。

《気になったところ》
  • (1)やっぱり明るさの微調整が難しい
  • (2)条件の悪い低空時は挙動に注意
  • (3)プロペラガードの過信は禁物&着陸場所に注意

(1)は、仕方のないところですが、シャッタースピードを最遅に設定して滑らかな動画を撮影したい…となるとシャッタースピード以外での明るさ調整が重要になります。DJI Flipは絞りが F1.7の明るい方向で固定なのでNDフィルターを利用することになるのですが、ND16/64/256とちょっと大雑把です(数字は透過率を表すので「ND16」は光量が1/16になるという意味)。

実際、季節にもよると思いますが、撮影をしていて、ND64だと暗いけどND16だと明るすぎる…という場面が多々ありました。ND32あたりがあるとおそらくちょうどよかったのだと思います(夏はND128があると便利かも?)。これはサードパーティなどからNDフィルターが出てくると解決するかもしれません。

(2)は、レビュー飛行していて気づいたのですが、薄暗い場所や水面に近い場所など通常ポジショニングカメラ(低空で水平位置を安定させる役割の機体下部のカメラセンサー)が精度が落ちやすい場所では、例外なく精度が落ちます(平時利用では問題なし)。

ある意味当たり前なのですが、DJI Mini 4 Proやその上のDJI Airシリーズなどはポジショニングカメラが大型&複眼でとても精度が高く、さらに暗がりでは下面LEDランプも灯火されて精度を維持するので、それに慣れてしまった筆者の悪い癖です。DJI Flipの下面センサー類はDJI Neo同等の簡易的なものになっていますので、そのことを忘れないようにすることが大切です。

また、機体に灯火(視認用LEDランプ等)が備わっていないため、夜間飛行の機体の要件を満たしていません。夜間飛行の飛行許可承認申請をする場合は代替手段を提示する必要になりますのでご注意ください。

(3)は、プロペラガード一体型のアームはロック機構がなく、障害物への当たり方が悪いと折りたたまれてしまいます。しかも、ジンバルはメカニカルな3軸ジンバルなので、ちょっとした1.5mくらいの高さからでも墜落は大きなダメージを受けかねません。DJI Neoはプロペラガードが固定の一体型、かつシンプルな1軸ジンバルなので多少の接触や低空からの墜落にも耐えうる構造をしていますが、その感覚でDJI Flipを扱わないように気をつける必要があります。

また、プロペラの位置が機体本体よりも下の地面スレスレにあるので、砂やほこりが舞いやすい場所で着陸するとモーターに砂が噛んで回らなくなることがあります。エアダスターなどで砂を取り除くなどしないと、モーターに過大な負荷がかかるなどして最悪破損してしまいますのでご注意ください。

以上が、DJI Flipをしばらく扱ってみての筆者の感想です。レビューでいろいろ飛ばす前は、気になったところに「まあまあ大きい(DJI FlipのショルダーバッグはDJI Mini 4 Pro のバッグより大きい)」を入れようと思ったのですが、実際にしばらく飛ばしたり持ち歩いたりしてみると、プロペラガードの大切さとそれを付けた状態でのDJI Flipのコンパクトさが身にしみてわかったのでやめました。それくらい、プロペラガードを付けて飛ばす安心感とそれがついた状態でも手軽に持ち運べる便利さに価値を感じました。

プロペラガードを装備したDJI Mavic 4 Proと DJI Flipのサイズ比較。プロペラガードを装着したDJI Mini 4 Proがかなり大きいのがわかる

DJI Flipが気になっている方は、ぜひ一度手にとってみてください。使ってみると、想像以上に安心感があり、便利で楽しく高画質な空撮が楽しめるかと思います。

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2024年を振り返って ~ドローン撮影の旅と深センでの修理体験~[田路昌也の中国・香港ドローン便り]Vol.47 https://www.drone.jp/column/20241225095022106975.html 106975 trend Wednesday, 25 December 2024 09:50:22 +09:00 国内外での印象的なドローン撮影の機会に恵まれた2024年を振り返る

師走に入り、2024年もあとわずか。今年を振り返ると、国内外での印象的なドローン撮影の機会に恵まれた一年でした。コロナ禍で抑制されていた撮影の旅が、香港や中国はもちろん、日本各地、そしてトルコでの素晴らしい景色の空撮という形で実現できました。

印象に残る撮影地

特に印象深かったのは以下の3つのロケーション:

  • 九州・阿蘇:壮大な火山景観をドローンで捉えた撮影 阿蘇ドローン手形を活用し、雄大なカルデラの全貌を空から収めることができました。起伏に富んだ地形と広大な草原が織りなす景観は、空からこそ味わえる絶景でした。
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阿蘇の広大な景観を捉えた空撮写真。手前に広がる草原と遠くに連なる山々が印象的
  • 香川・高松:瀬戸内海を望む独特の都市景観 Flyersを使った簡単な飛行許可申請により、スムーズな撮影が実現。海と山が調和する高松ならではの景観を上空から捉えることができました。
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瀬戸内海を背景に、整然と並ぶ円形劇場の構造が美しい
  • トルコ:カッパドキアの奇岩群やボスポラス海峡の雄大な風景 長年の夢だったトルコ空撮。独特な地形と歴史的な街並みが織りなす風景は、まさに感動そのものでした。
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早朝のカッパドキアの街並み。奇岩群と建造物が溶け合う幻想的な風景

コロナ禍で旅行ができなかった頃、「いつか必ず、色んな場所でドローン撮影を」と夢見ていました。その願いが今年ようやく実現できました。香港や中国はもちろん、日本各地、そしてトルコでの撮影を通じて、地上からでは決して見ることのできない新しい視点での景色との出会いに恵まれたことは最高の思い出となりました。

深センDJI旗艦店での修理体験

年末といえば大掃除や後片付け。翌年になにか思い残したり、何かを引きずることのないよう、スッキリと新年を迎えたい―。 そんな思いから、今年唯一心に引っかかっていることを解決することにしました。

それは高松合宿でのマニュアル操作中に落下し、本体が一部破損したDJI Neoの件です。

tohzi_47_04
カメラ周辺とプロペラガードが痛々しい状態

これまでだましだまし使っていたのですが、最近では撮影時にカメラに黒点が表示されるようになってきました。いよいよ本格的な修理が必要な時期。年末のスッキリ計画第一弾として、以前DJI Mini 4 ProのLTEモジュールテストで訪れた深セン・南山の旗艦店に出向きました。

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DJI 深圳旗艦店の外観

修理の流れ

まず、ビル3階の修理サポート受付に機体を持ち込み、状況を説明。 残念ながら今回はDJI Care未加入(登録後48時間以内の加入期限を逃していた)だったため、破損状況の確認からスタートです。

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ビル3階にあるサポート受付

機体の確認作業は約1時間。中国の携帯番号を登録しておくことで、作業完了をSMSで知らせてくれるシステムが便利でした。待ち時間は近隣のXIAOMIやHONORショップで最新の端末や電気自動車を試乗体験できるので暇を持て余すことはありません。

tohzi_47_07
DJI深圳旗艦店の周辺

確認作業完了後、故障箇所リストと修理費用の見積もりを提示され、支払い完了後はリファービッシュ品との交換となりました。

内容を見ると、最も高額だったのはカメラモジュールの159人民元で、修理費用の合計は395人民元となりました。

微笑ましい再会

修理完了後、DJI Careへの加入を相談したところ、同じ建屋の1階 ショップエリアで可能とのこと。前回のLTEモジュールテストでお世話になったスタッフがいたので、彼に購入手続きとレジストレーションを依頼することにしました。

その際、前回のLTE検証の様子が掲載されたコラムのページを見せると、「URLが知りたい」と目を輝かせます。その場でDrone.jpを開いて確認した彼は、自分が掲載された記事を同僚スタッフに誇らしげに見せる姿が印象的でした。

プロフェッショナルな対応の中にも、喜びの表情を見せてくれたことで、深センでの修理は、予想以上に嬉しい思い出となりました。

新しい年に向けて

こうして2024年最後の課題も無事に解決し、すっきりとした気持ちで新年を迎える準備が整いました。今年は国内外の絶景との出会い、そして思いがけない心温まる交流と、ドローン撮影を通じて実り多き一年となりました。

今年も一年間、コラムを読んでくださった皆様に心より感謝申し上げます。来年も素晴らしいドローン撮影ライフを送れますように。皆様、良いお年をお迎えください。

参考リンク

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空飛ぶクルマと社会実装が進む産業向けドローンの市場を俯瞰できる機会に[Japan Drone / 次世代エアモビリティEXPO 2024 in 関西] https://www.drone.jp/special/20241224100431106852.html 106852 trend Tuesday, 24 December 2024 10:04:31 +09:00 2025年4月から開催される大阪・関西万博の目玉の一つである空飛ぶクルマとドローンが集まる展示会「Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2024 in 関西」が、12月18日、19日にかけて大阪・梅田で開催され、多くの参加者が会場に詰めかけた

txt:野々下裕子

開催まで110日を切った大阪・関西万博では、目玉の一つとして会場周辺において空飛ぶクルマのデモ飛行が実施されることが計画されている。当初予定していた周辺と会場を結ぶ商用運航は、機体の審査や飛行許可などの課題がクリアできず実現しなかったものの、実用化に向けた動きは継続している。

その機運をより一層盛り上げようと、12月18日、19日に大阪・梅田のナレッジキャピタル コングレコンベンションセンターで「Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2024 in 関西」が開催された。

空飛ぶクルマだけでなく、ドローンビジネス全般に関する幅広い展示や飛行デモも行われ、年末も押し迫る忙しい時期にもかかわらず、たくさんの参加者が会場に詰めかけていた。

会場が大阪梅田の中心地に近い好立地というのもあり初日からにぎわっていた

空飛ぶクルマ関連では、丸紅エアロスペースと連携して実装化を進めている英国Vertical AerospaceのeVTOL、国産eVTOLの開発を進めるスタートアップのテトラ・アビエーションがモックアップを展示。

ANAホールディングスとJoby Aviationはパネルとビデオで、実用に向けた試験飛行などが順調に進められていることが紹介されていた。

空飛ぶクルマに関する情報をモックアップや動画、資料で紹介

あわせて、関西エリアで進められている自治体のプロジェクトを紹介するコーナーが設けられ、複数の計画が現在進行中であることが紹介されていた。VRを使ったフライトシミュレーター体験コーナーもあり、国土交通省と経済産業省が事業化に向けてどのような調整や支援を行っているのかを紹介するパネル展示もあった。

VRシミュレーターの体験コーナー

白銀技研

大型の展示会場に比べるとやや狭い会場ということもあり、実機の持ち込みが難しい中で唯一展示されていた空飛ぶクルマが白銀技研の「Beedol」だ。今年6月に福島ロボットフィールドでの試験飛行機を成功させたばかりの1号機が展示されており、かなりインパクトがあった。

空飛ぶクルマとしては唯一の実機展示だった白銀技研の「Beedol」

https://www.drone.jp/news/2024062115555191246.html

会場では現在開発中の2号機の小型スケールモデルも展示。全長3.11m、全幅3.58m,高さ1.24mの本体は、ローターが付いた羽の部分を折りたたむことができ、幅が1.14mとほぼ半分の大きさになる。

開発は順調で、来年2月には本社がある岐阜県で試験飛行を実施することが計画されており、いよいよ人を乗せてテストすることも決まっている。

現在制作中の2号機は来年2月に人を乗せた試験飛行を予定している

代表取締役の西洋介氏は、次のようにコメントした。

白銀技研ではこれまで開発を少人数で進めてきましたが、1号機が成功したことで関心が高まり、少しずつ支援の動きも出てきています。

万博でのデモ飛行も視野に入れており、実現すればさらに注目度が高まりそうだ。

飛行機研究所

もう一つ実機の展示では、若手社会人を中心とした有志団体の飛行機研究所が、24時間連続飛行が可能な固定翼UAVを展示していた。

機体は手作業で製作されており、説明員のメンバーに話を聞いたところ、次のようにコメントした。

製作は具体的なビジネスやプロジェクトを目的としているわけではないものの、ソーラードローンは定点観測や調査、監視など、応用の範囲が広く企業での開発も進められており、関連技術の提供などで協力できればと考えています。

若手社会人の有志団体である飛行機研究所が手作りのソーラードローンを出展

ジャパン・インフラ・ウェイマーク

会場では水中・水上ドローンの展示もあった。ジャパン・インフラ・ウェイマークは自社で開発するカメラとソナーを搭載したボート型ドローンを出展。水面を全方向に移動でき、水深が浅くて狭いためボートや人力での点検が難しい場所や、高さが低い溝橋などで、点検を行う目的で運用を依頼されるケースが増えているという。

ドローンはニーズにあわせてカスタマイズし、水底の3Dデータを収集、管理できるシステムも自社で開発しており、これから本格的にビジネスとしての展開を目指している。

ジャパン・インフラ・ウェイマークでは水上ドローンとデータ管理システムを自社で製作、運用している

ジュピター

ドローンビジネスを活気づけるために不可欠といえるのが、ドローンパイロットの育成だ。ドローンスクールを運営するジュピターは、これまでに培ってきたノウハウをもとに、登録講習専用のドローンを2タイプを独自に開発し、今回初めて公開した。

限定解除25kgに対応した「J25」と、基本講習および限定解除に対応してオーバーライドも可能な「J500」があり、いずれもスクールや講習会向けにレンタルで貸し出す。

ジュピターは独自に開発した講習向けドローン2タイプを初公開(写真はJ500)

そうした開発技術を応用して、他にも審査判定ができる小型ドローンや、超狭所を空と陸の両方で4K 30fpsで撮影できるマイクロドローン「Co-eone20」もあわせて出展。

さらに、スクールの事務作業を大幅に軽減し一元管理し、修了審査の採点機能や監査資料の自動作成もできるオリジナルのシステムも開発しており、これらもあわせて全国のスクールや講習会向けに提供することを計画している。

空陸両用のマイクロドローン「Co-eone20」

他にもいろいろな機能と目的にあわせたドローンもたくさん展示されていて、どのブースも熱心に話をしている人たちが多いという印象であった。デモ飛行も複数の場所で行われており、DJI以外のドローンの存在や、新しい機体の進化を見てあらためて関心を持ったという声もあちこちで聞こえた。

会場ではデモ飛行もあちこちで行われていた(写真は超狭小空間点検ドローンIBIS2のデモの様子)

エアモビリティもさることながら、物流や農業、点検といった分野でドローンの活用が国内でもだいぶ広がっているものの、関係者以外でそうした情報を知る機会は少ない。

今回、コンパクトでもふらりと立ち寄れる場所を会場にしたことで、市場全体を俯瞰することができ、一般にも広く情報発信するという目的では成功したのではないか。万博ではさらに多くの人たちに空飛ぶクルマやドローンについても知ってもらい、ビジネスにつなげる機会になってほしいものだ。

ビジネスから都市計画、研究開発といったものからドローンショーやサッカーといったエンタメまで市場全体を俯瞰できる展示会になっていた
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Arducopterのメジャーアップデート[春原久徳のドローントレンドウォッチング]Vol.85 https://www.drone.jp/column/20241223134435106882.html 106882 trend Monday, 23 December 2024 13:44:35 +09:00 来年1月に、ArduPilotのマルチコプター用のファームウェアであるArducopterがメジャーアップデートする予定になっているので、その内容に関して記したい

ArduPilotの歴史

内容に入る前に、ArduPilotおよびArducopterのこれまでの流れを簡単に示す。 ArduPilotは当初、Dronecodeの中のメインのファームウェアとして位置づけられていた。

Dronecodeは無人航空機(ドローン)のソフトウェアをオープンソースで開発するためのプロジェクトで、2014年10月に発足した。既存のドローンに関するリソースを統合して大規模なオープンソースプラットフォームを構築することを目指していたものだ。

https://www.drone.jp/column/201608011330587433.html

しかし、3DRのハードウェア撤退を受けて、Dronecodeの方針が変わり、ArduPilotがGPL V3といったライセンスを採用していたこともあり、分裂した形となった。詳しくは以前詳しく書いている。

https://www.drone.jp/column/201610141310489594.html

https://www.drone.jp/column/2016112415024410155.html

ArduPilotの礎となったのは、2007年5月にChris Andersonが立ち上げたDIYDrones.comである。DIYDrones.comはLego mindstormsをベースに作られたドローンであった。

ArduPilotの歴史は、まさにドローンの歴史といってもよいほどだったが、Dronecodeとの分裂によって、新たな歴史が始まった。

それまでは、どちらかというと単独のファームウェアのバージョンというより、フライトコントローラーに紐づいたものであったし、そんな形で記載されていることが多かった。

2016年9月に ArduPilotがArduPilot Partnersグループを開始したが、その後すぐの10月に、独立したArduPilotは、Copter-3.4をリリースした。

そういった意味では、このCopter-3.4が記念すべきバージョンである。

そして、Copter-3.4には、フライトコード上で実行可能な衝突回避の機能が搭載された。(通常、こういった衝突回避はフライトコントローラー上に載せたコンパニオンコンピューター上で実行させるケースが多かった。現在でも複雑な回避はコンパニオンコンピューターで実行させるが、それでもこのフライトコード上で実行可能な衝突回避は画期的であったし、それは新生ArduPilotに相応しい内容であった)

2017年7月には、Copter-3.5がリリースされた。このバージョンでは、Tuningを自動で実施するAutotuneや画像のみを用いてカメラ位置姿勢と環境地図を逐次推定する手法であるVisual Odometryなどを使った室内などのGPSが受信できない空間でのナビゲーションのサポートが含まれている。(これも室内ドローンの強力なソリューションとして、ArduPilotのみが実装している機能だ。)

https://www.drone.jp/column/2023082419023371330.html

2018年10月には、Copter-3.6.0がリリースされ、ChibiOSのサポート、多く小さいサイズのフライトコントローラーのサポート、フォローモード(テレメトリーシステムを利用して別の車両を追従するモード)が実装された。

2019年12月には、Copter 4.0.0がリリースされ、プロポの拡張設定が可能なRCx_OPTIONサポートや、そして、大きな追加項目としてはLUAスクリプトサポートが実装された。このLuaスクリプトのサポートにより、フライトコードのソースコードを変更することなく、多くの機能を実装させることが可能になった。

2021年10月には、Coper4.1.0がリリースされ、AHRS/EKFの機能強化と修正が行われEKF3がデフォルトとなったほか、衝突回避の機能強化、多くの新しいフライトコントローラーや周辺機器の対応が追加された。

2022年5月には、Copter4.2.0がリリースされ、制御モードとフライトモードの強化などの既存機能の強化、Luaスクリプトの改善、パラシュートなどの安全性強化も追加されている。また、フライトコントローラーや周辺機器は続々と追加されている。

2022年10月には、Copter4.3.0がリリースされ、ここでもジンバルの機能強化を始めとした既存機能の強化、GPSエラーの際の30秒間の推測航行といった高度な安全性や妨害対策などの追加もなされている。

2023年8月には、Copter4.4.0がリリースされ、このあたりのバージョンは非常に多くの細かい機能強化が行われている。

2024年4月には、Copter4.5.0がリリースされ、これもCopter4.4.0と同様、非常に多くの細かい機能強化(特に安全性やジンバルカメラ、スクリプティング)が行われている。

ここに挙げたのはメジャーアップデートになるが、この間にもバグ修正や機能強化が細かいサイクルで行われている。また、開発者向けの様々なアイテムやツールも強化されている。

Arducopter4.6.0メジャーアップデート

来年1月にCopter4.6.0がリリースされる予定になっている。現在、世界各国のベーターテスター達がテストをし、フィードバックを返しているところだ。

新しいCopter4.6.0は、15の項目に分類されている。

  1. ボード固有の変更 各フライトコントローラー固有の内容に関しての変更が入っている。
  2. AHRS/EKF の機能強化と修正 位置推定機能であるEKFの機能強化と修正。
  3. ドライバーの機能強化とバグ修正 気圧計の改良、大気モデルやDRONE CANの強化が多く行われている。
  4. ネットワークの強化と修正 イーサネットに対して、完全にReadyとなっている。
  5. カメラとジンバルの強化 Siyiのバグ修正や機能強化が含まれる。
  6. ハーモニックノッチの強化 VTOLの開発が進んでいるため強化。
  7. コプター固有の機能強化とバグ修正 自動航行や大型機のチューニング性能の向上。
  8. TradHeli 固有の拡張機能 シングルヘリの自律化ニーズが増えている。
  9. 飛行機固有の機能強化とバグ修正 クワッドプレーンの固定翼に移行した後の機能強化。
  10. スクリプティングの機能強化 Luaスクリプトの便利なコマンドやアプレットの追加。
  11. GCS / mavlink関連の変更と修正 ミッションプランナーやQグランドコントロールなどで表示可能な内容の変更。
  12. ロギングの機能強化と修正 ログの項目内容の強化。
  13. ROS2 / DDS対応 コンパニオンコンピューターやロボット向けの対応強化。
  14. 安全関連の機能強化と修正 安全性が毎バージョンで強化されている。
  15. 開発者向けの修正と機能強化 開発者向け機能の強化。

今回のメジャーアップデートにより、エッジドローンとしてのイーサネットやCANの対応、ROS/DSSとの親和性、ChatGPTなどのAIとの連動などが強化されており、現状の様々なニーズに対応したドローンのファームウェアとしてArduPilotは最適なものになっている。

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GlobeXplore Pro、高精度なバーチャルロケハンを手軽に実現! [Reviews]Vol.89 大阪・関西万博で感じる空飛ぶクルマ&ドローンがあたり前になる社会[Drone Design]Vol.62 JSDII ドローン赤外線調査スクール「建築ドローンコース」プレ開校式開催 DJI、5月13日に新製品発表!Mavic 4シリーズか? PRODRONE、UNIDO支援のもと「ウクライナのグリーン産業復興プロジェクト」に採択される。愛知から地雷除去協力 SiFly Q12ドローン、約145kmの航続距離と耐久性でDJIに挑戦か!? NDAA準拠、高いセキュリティ性能
ドローンによるバスの運行管理[小林啓倫のドローン最前線]Vol.84 https://www.drone.jp/column/20241212095845105885.html 105885 trend Thursday, 12 December 2024 09:58:45 +09:00 都市部の問題を解決する技術として、注目されるドローンだが、ニューヨークではドローンを活用して、バスの運行管理を改善するという計画がスタートしている

MTAの計画

米ニューヨーク州のMTA(ニューヨーク市交通局)が、ドローンを活用して、バスの運行管理を改善するという計画をスタートしている。これは先月末に同局のバス部門から発表されたRFI(情報提供依頼書)によって明らかになったもので、その中でMTAは、12月18日までに関連情報を提供することを関係企業・組織に呼びかけている。

RFIで解説されている計画は、大きく分けて2つの仕組みから構成されている。まずは「バス位置情報の把握」だ。これはMTAの管轄内でドローンを定期的に飛行させ、バスの位置情報を収集するというもの。収集されたデータはリアルタイムで集中管理システムに送られ、バスの位置を正確に把握したマップが作成される。これにより、手動での車両確認作業を減らし、より正確で迅速な位置追跡を実現するという。またバス利用者の利便性を改善するために、彼らに利用しようとしているバスの位置情報を提供することも計画されている。

もうひとつは「バス路線の交通パターンの把握」だ。こちらはバス路線の上空を定期的に飛行させ、交通パターンや混雑状況を監視するというもの。また特定の区間や時間帯における混雑度、あるいは障害物(事故、工事など)の状況も把握するという。このデータもリアルタイムで集中管理システムに送られ、そこで交通状況を分析。渋滞状況に基づき、バス運行ルートや運行間隔を調整したり、混雑が予測されるエリアへの迂回ルート提案や運行計画の変更を支援するという。

またこれらと同時に、関連インフラに関する情報提供も呼びかけられており、具体的にはドローンの離着陸プラットフォーム、充電設備、データ送信のためのネットワークインフラ、管理者が情報を管理するためのシステム類などが挙げられている。

現在MTAでは、ニューヨーク市全域で約6000台のバスを運行しているそうだ。これらのバスは28箇所の車両基地(デポ)で管理され、日々約6万回の運行に使用されて、年間1億2千万マイル以上走行するという。そのためにMTAは、デポ内外の車両位置を正確に追跡する課題があり、その効率化のためにドローンを活用するというアイデアが生まれたわけだ。

RFIは文字通り情報提供の依頼であり、具体的な提案の募集ではなく、ドローンを用いたソリューションの可能性や業界の最新情報を収集するためのものだ。しかし得られた情報に基づいて実現のめどが立てば、実現に向けた開発がスタートすることになる。

なぜドローンを活用するのか

現時点で、MTAがバスの位置情報をまったく確認していないということではない。既に12年前から、MTA Bus Timeというシステムが稼働している。

これは上の映像でも解説されているように、バスの位置をGPSで把握し、その情報を中央管理システムに送信するというもの。その情報はバス利用者の携帯端末に送信されると共に、分析の上で、さまざまな運行管理や緊急対応に役立てられる。

しかしMTA Bus Timeには一定の制限がある。たとえばこのシステムでは、バスの位置を約30秒ごとに更新するため、バスの実際の位置と報告された位置の間にわずかな遅延が生じる可能性がある。さらに、ニューヨーク市の交通状況は非常に複雑で、バスの到着を予測することが困難なため、このシステムでは正確な到着時刻ではなく、主に位置情報に基づいた情報を提供している。MTA はドローン技術を統合することで、デポ内の車両・運行中の車両の両方に関する正確で最新の追跡を提供し、これらの課題に対処することを目指している。

しかしこの計画に対しては、批判も出ていることが報道されている。それによると、交通機関で働く人々が組織している労働組合からは、ドローンの導入が現場で働く監督者やディスパッチャー(運行管理者)の業務の代替につながり、最終的には人員削減が生じるのではないかと懸念している。またドローンが低コストな監視ツールとしての役割を果たす一方で、これまで培われてきたバスの状況監視や運行調整のスキルといった「現場での対応能力」が失われ、逆に運行トラブルが生じる可能性も指摘されている。

また労働組合は、MTAが過去に導入した技術プロジェクトがうまく機能しなかった事例を挙げ、新たな技術導入がまたもや失敗するのではないかと懸念している。

実はデポ内の車両の位置情報把握については、既に「Yard Tracker」というシステムが導入されているそうだ。しかしこのシステムは、バスの位置を正確に追跡できておらず、期待された成果を上げていないという。労働組合は、こうしたプロジェクトが不透明な契約のもとで進められている可能性を指摘し、MTAの予算管理に問題があるとも主張している。

ニューヨーク市については先日、NYPD(ニューヨーク市警察)が24時間体制で自律型ドローンを運用するという計画を開始している(関連記事)。都市部の問題解決のカギを握る技術として、ますます注目を集めるドローンだが、期待通りの効果をあげられるかどうか、今後の動向が注目されるところだ。

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GlobeXplore Pro、高精度なバーチャルロケハンを手軽に実現! [Reviews]Vol.89 大阪・関西万博で感じる空飛ぶクルマ&ドローンがあたり前になる社会[Drone Design]Vol.62 JSDII ドローン赤外線調査スクール「建築ドローンコース」プレ開校式開催 DJI、5月13日に新製品発表!Mavic 4シリーズか? PRODRONE、UNIDO支援のもと「ウクライナのグリーン産業復興プロジェクト」に採択される。愛知から地雷除去協力 SiFly Q12ドローン、約145kmの航続距離と耐久性でDJIに挑戦か!? NDAA準拠、高いセキュリティ性能
NASAの火星ドローン「Ingenuity」は、意外に大きくて華奢だった[Drone Design]Vol.58 https://www.drone.jp/column/20241126115419104383.html 104383 trend Tuesday, 26 November 2024 11:54:19 +09:00 米国フロリダ州にあるNASAのロケット打ち上げ施設の一つであるジョン・F・ケネディ宇宙センターには、一般に公開されているビジターコンプレックスがあり、火星探索をテーマにした施設では、約3年間にわたり歴史的な回数の火星ミッションを行った火星ドローンの「Ingenuity」が紹介されていました

米国東海岸の南に位置するフロリダ州には、米国航空宇宙局のNASAがロケットや人工衛星の打ち上げを行う施設の一つであるジョン・F・ケネディ宇宙センターがあります。1962年からアポロ計画のサターンロケットの発射などが行われ、スペースシャトルを最初に打ち上げた場所でもあります。現在も宇宙飛行計画を推進する施設として、隣接するケープカナベラル宇宙軍施設とあわせて、SpaceXのFalcon打ち上げなどが行われています。

オーランド国際空港から車で1時間ほどの距離にあるエリア内には、NASAによる宇宙ミッションの一般公開するビジターコンプレックスがあり、歴史的な資料から最新の宇宙計画まで、NASAの宇宙計画に関するあらゆるものを見ることができます。

日本からはなかなか遠い場所なのですが、運良く宇宙センターに近いオーランドでの取材があり、なんとか時間を作って訪れることができました。

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ケネディ宇宙センターの入口

広大な敷地内にはテーマごとに宇宙ミッションを紹介する施設が複数あり、実際に使用された設備や機材、資料などがたくさん展示されています。雰囲気としては科学博物館に近いものがありますが、ほとんどの施設が体験型になっていて、ただ見るだけでなく体全体で宇宙を感じられるものになっていました。

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広大な敷地内に1日ではとても周りきれないほどの膨大な数の展示がある

各施設内にはゲームのように楽しめるシミュレーターやアトラクションもたくさんあり、他にもIMAXシアターや体験センター、子供向けの遊園施設、もちろんレストランやおみやげ屋さんもあります。

たとえば、バスで未公開の施設を抜けた先にある巨大な格納庫を改造した展示エリアでは、迫力ある実物大のロケットを間近に見ることができ、本物の月の石を触ることもできます。感動的なのは、宇宙飛行士を乗せて宇宙を往復したスペースシャトルの実機が展示されていることで、触れるほどの距離にあるカナダアームにしばし時間を忘れて見とれていました。

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ビジターセンターではここにしかない"本物"が間近で見られる

訪れた日は平日でハリケーンの大きな被害が出た影響もあったためか、それほど混んではいなかったのですが、開門から閉館時間を過ぎるまで、食事をする時間も削りながら回ったものの、それでもまったく時間が足りないほどでした。

そうした中で興味深かったのは、最後の最後に駆け込みで入った火星探査をテーマにした施設「JORNEY TO MARS」でした。他の施設よりだいぶ小さくて古そうな建物でしたが、それもそのはずでNASAが最初の火星探査機Viking1号を打ち上げたのは1975年8月で、約1年後に火星着陸に成功しています。

その後も火星探査ミッションは続いており、施設の中ではそうした歴史を紹介する資料や2012年に着陸を成功させた火星探査ローバー「Curiosity」の展示があり、探索シミュレーションの体験コーナーなどもありました。

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火星探査ミッションの歴史を体験できる「JORNEY TO MARS」

数ある展示の中で個人的に最も目を引かれたのが、2020年7月30日に打ち上げられた探査ローバー「Perseverance」と一緒に、火星着陸を2021年2月18日に成功させた火星ドローン「Ingenuity」の展示です。

NASAでは火星ヘリコプターと呼ばれるIngenuityは、Perseveranceのお腹に取り付けられた状態で火星に着陸したあと無事に切り離され、他の惑星で動力制御による飛行を始めて行った航空機となりました。それから2024年1月18日にローターの破損でミッションを終了するまで約3年の間に、予定をはるかに超える72回のミッションを実現しています。

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火星探査ローバー「Perseverance」
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火星ドローン「Ingenuity」

Ingenuityはニュースや写真で見たことはありましたが、実物大モデルを見ると意外に大きく、構造はとてもシンプルで、特に足下は重力が地球の3分の1とはいえ、とても華奢だなぁという印象でした。ちなみに重さは約1.8kg、火星では約700gという計算になり、最高高度は約5m,飛行範囲は約300mという仕様になっています。

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Ingenuityのスペック

そんなIngenuityが火星でどのようなミッションを行ったのかについては、こちらの映像にまとめられています。不思議なことに実機のモデルを見たせいか、想像していた以上にがんばっていたんだなぁと感じるようになりました。

Ingenuityの火星ミッションをまとめた動画

NASAはIngenuityによって、地球とは異なる大気で飛行体をコントロールする方法を研究し、空中から見た火星の表面を画像で見ることができ、Perseveranceのガイド役として活用するのにも役立てられたとしています。

火星から送られた貴重な映像の中には、薄い大気の中で2層のローターがどう回転しているのかがわかるものもあり、次の探査機をデザインするのに重要な資料となりそうです。重力は異なるものの月でドローン飛ばすことがあれば、そこでもIngenuityの実績が活かされるかもしれません。

NASAが公開しているIngenuityのサイトでは本体のインタラクティブ3Dモデルやミッションの動画や画像、ポスターもダウンロードできるので、ぜひアクセスしてみてください。

NASAのIngenuity紹介サイト:
https://science.nasa.gov/mission/mars-2020-perseverance/ingenuity-mars-helicopter/

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GlobeXplore Pro、高精度なバーチャルロケハンを手軽に実現! [Reviews]Vol.89 大阪・関西万博で感じる空飛ぶクルマ&ドローンがあたり前になる社会[Drone Design]Vol.62 JSDII ドローン赤外線調査スクール「建築ドローンコース」プレ開校式開催 DJI、5月13日に新製品発表!Mavic 4シリーズか? PRODRONE、UNIDO支援のもと「ウクライナのグリーン産業復興プロジェクト」に採択される。愛知から地雷除去協力 SiFly Q12ドローン、約145kmの航続距離と耐久性でDJIに挑戦か!? NDAA準拠、高いセキュリティ性能
空からトルコの絶景を追って:ドローン撮影の成果報告[田路昌也の中国・香港ドローン便り]Vol.46 https://www.drone.jp/column/20241123091035104193.html 104193 trend Saturday, 23 November 2024 09:10:35 +09:00 トルコでドローン撮影して出会った、地上からは見ることのできない絶景の数々。さらに旅の感動を新しい視点で共有できるドローンの魅力を再発見

先月は、トルコでのドローン撮影に向けた準備として、飛行許可エリアの確認方法や撮影計画についてお伝えしました。そして今月は、実際にトルコの各地でドローンを飛ばした経験と、そこで得られた予想以上の成果についてご報告したいと思います。

入念な準備が実を結んで

事前の計画通り、カッパドキア、パムッカレ、サフランボル、クシャダス、イスタンブールの各地で、ドローンを飛ばすことができました。ツアー旅行だったため、1カ所での撮影時間は準備を含めて20~30分程度。その限られた時間の中でも、事前の準備のおかげで、ほぼ狙い通りの映像を収めることができました。

撮影機材

  • ドローン撮影:DJI Mini 4 Pro
  • 地上撮影:Leica M10 + Wide Angle Tri-Elmar/50mm Summilux

思いがけない感動との出会い

カッパドキアの朝

特に印象的だったのは、カッパドキアでの早朝撮影です。夜遅くにチェックインしたホテルは、朝になって初めてその立地の素晴らしさを知ることになりました。

ベランダからのドローニー撮影では、最初は私たち夫婦の姿だけが映っているのですが、ドローンが後退するにつれて、私たちが滞在していたホテルが、実は壮大な奇岩群の中に佇んでいたことが劇的に映し出されていきます。

朝日に染まるカッパドキアの奇岩群と街並み

サフランボルの発見

可愛らしい「街ねこ」との出会いをきっかけに、地上での撮影を楽しんでいました。その後、同じ場所をドローンで空撮してみると、その猫が暮らす街並み全体が、まるでおとぎ話のような赤茶色の屋根で統一された美しい景観を持っていることが分かりました。

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地上からの街並み
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世界遺産を悠々と歩く猫
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空から見た赤茶色の屋根が広がる街並み

リゾートの夕暮れ

エーゲ海に面したクシャダスのホテルでは、ベランダから沖に停泊する豪華客船のバックに沈む夕日までを一連の動きで収めたドローニーで、リゾート地ならではの開放感を撮影することができました。

ホテルから見える夕日

パムッカレの現実

考えさせられたのは、パムッカレが直面する現実でした。

地上からは美しい水景として写る石灰棚も、空からの撮影で見えてきたのは、水不足によりほんの一部にしか水がないという切実な問題でした。その現実をドローン映像で抑えておくことができたのは貴重な体験だったと感じています。

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空から見た石灰棚の全景
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地上から見る水の張った石灰棚

朝日に染まるボスポラス海峡

マジックアワーのボスポラス海峡を撮影するために一人早朝に撮影へ向かいました。アジアとヨーロッパを分かつ海峡に朝日が昇り、街全体がゴールデンアワーの光に包まれていく様子を収めることができました。

船舶のシルエットと、色づく空と海面のグラデーションに見とれていたとき、妻から「早く戻ってこい!」という電話が。この光景を見ていた私は、後ろ髪を引かれる思いでホテルに戻るしかありませんでした。

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朝日に染まるボスポラス海峡のパノラマ 左がアジア、右がヨーロッパ

家族との新たな発見

これまで私のドローン趣味に対して、妻は「また新しいおもちゃ?」と冷ややかな反応で、特に興味を示すこともありませんでした。しかし、カッパドキアでの早朝の映像を見せたとき、その反応は一変しました。

「私たちのホテル、こんな絶景の中にあったの!?」という素直な驚きの声。

その後は、撮影のたびに隣で画面を覗き込み、地上からは見えない景色に感動してくれるようになりました。

ツアー参加者の方々にも映像をお見せすると、「こんな角度から見たことない!」「素晴らしい!」と驚きの声が。思いがけず、ドローンが旅の仲間との交流を深めるきっかけにもなりました。

新たな可能性を見つめて

今回の旅行を通じて、ドローンには「新しい視点での感動」を記録し、共有する力があることを改めて実感しました。地上からは決して見ることのできない風景との出会い。そして何より、その感動を大切な人たちと分かち合える喜び。

妻も「次はどこで飛ばすの?」と前向きになってくれて(散財も許してくれそうで)嬉しい限りです。

皆さんも、ぜひ大切な人と一緒にドローン撮影を楽しんでみてはいかがでしょうか。その感動は、きっと期待以上のものになるはずです。

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GlobeXplore Pro、高精度なバーチャルロケハンを手軽に実現! [Reviews]Vol.89 大阪・関西万博で感じる空飛ぶクルマ&ドローンがあたり前になる社会[Drone Design]Vol.62 JSDII ドローン赤外線調査スクール「建築ドローンコース」プレ開校式開催 DJI、5月13日に新製品発表!Mavic 4シリーズか? PRODRONE、UNIDO支援のもと「ウクライナのグリーン産業復興プロジェクト」に採択される。愛知から地雷除去協力 SiFly Q12ドローン、約145kmの航続距離と耐久性でDJIに挑戦か!? NDAA準拠、高いセキュリティ性能
大林組とKDDIスマートドローン、ドローンポート「DJI Dock 2」を活用し能登半島で道路工事の作業効率化を推進 https://www.drone.jp/special/20241120120205102955.html 102955 trend Wednesday, 20 November 2024 12:02:05 +09:00 遠隔操作が可能なドローンポート「DJI Dock 2」を活用し、工事現場の自動撮影や測量計算の自動化を実現することで、業務の効率化を図った。今回は、この取り組みを管轄する大林組と、ドローンの遠隔運用を担当するKDDIスマートドローンに話を伺った。

石川県の能登半島の道路では、2024年1月1日に発生した能登半島地震からの啓開工事が続く。啓開工事とは被災した道路に、瓦礫などの撤去や段差の修正といった必要最低限の補修を施し、緊急車両などを通行可能にする作業だ。啓開工事が済んだあと、応急復旧、本復旧へと工事が進む。

大林組とKDDIスマートドローンでは啓開工事の日々の作業進捗状況を確認するため、ドローンポート「DJI Dock 2」を利用したドローンの自動運航を活用している。どのようなデータを取得しているのか、作業の効率化がどの程度実現しているのかチェックするため、現地を訪れた。

能登半島では地震からほどなく1年を迎える2024年11月現在でも、その影響により各地で道路が崩落・分断した状況が続いている。また道路によっては、2024年9月21日に発生した能登豪雨によって追加でダメージを負ったケースもある。

いまもなお厳しい状況に置かれているが、道路を再び通れるようにするための作業は、人々の安全な移動のために日々実施されている。

国道249号は石川県七尾市を起点に能登半島の外周に沿ってぐるっと回り、金沢市に至る。輪島市と珠洲市を結ぶ重要な道路でもあるが地震で大きな被害を受け、2つの市の間では、現在8箇所ほどで啓開工事が行われている。

今回の取材で訪れた工事現場はそのうちの1箇所。金沢市内からは啓開・復旧工事が進む高速道路「のと里山海道」などを経由する約120kmの道のりを、自動車で2時間30分ほどかけて向かった。工事現場は全長3kmにおよび沿道に日本海を望む風光明媚な場所ではあるものの、地震により山が崩れて道を塞いでしまっている。

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金沢市から能登半島方面へ向かう「のと里山海道」はいまだ啓開・復旧工事が続く。工事箇所を迂回しながら進むため、加賀山橋ジャンクション以降は最高速度が40km/hに抑えられている

工事現場では山側にあった国道249号を海側に引き直す工事が行われていた。ショベルカーがもとの道路上に崩落した山を削り出し、その土砂を巨大なダンプカーに積載。ダンプカーは埋め立てが必要な海側のポイントへ土砂を運ぶ。この作業の繰り返しだ。複数のダンプカーがひっきりなしに行き交い、工事現場には砂埃が舞う。

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案内標識も傾いた状態に。痛ましい光景は能登半島を奥へ向かうほど増えていった

工事現場のほぼ中間地点であり日本海を見渡せる場所には、展望台が仮設されている。DJI Dock 2はその展望台に設置されていた。2024年9月11日の運用開始以来、月曜日から金曜日まで1日1回、午前の定時にDJI Dock 2から離陸した専用ドローン「Matrice 3D」は、工事現場の高さ120m程度の上空を、10~15分かけて飛行。7500万平方メートル=7500ヘクタール、東京ドーム約1600箇所分ほどの広さのある工事現場の上空に設定された航路上で、400枚ほどの写真を自動で撮影している。

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DJI Dock 2が設置されている工事現場。取材時は右側の山から土砂を切り出し、左奥へと運ぶ作業が行われていた
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ダンプカーやショベルカーの上空を飛行するMatrice 3D。通常は地上から120m程度上空を飛行し撮影する。この写真では撮影のためやや低い高度を飛行し、空撮用大型ドローンが追尾している

また、週に1度、定点観測として上空からパノラマ360°撮影を行い、復旧状況を視覚的に捉えるための資料作りに役立てている。

この撮影によって割り出せるのが、1日に山から切り出された土の量(土量)だ。定時に飛行することで得た当日と前日の土量データを比較し、差を算出する。従来はダンプカーが運んだ回数とその積載量の掛け合わせで土量を計算していた。

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工事現場で使用されていたダンプカーは定格積載質量24tのキャタピラー製「725」。エンジンは定格出力255kw(約340PS)

だがこの計算方法はあくまで概算のため、実際に運んだ土量とズレが生じる。運んだ回数が増えれば土量のズレも大きくなる。もし計算よりも実際に運んだ土量のほうが少なければ、想定よりも残土が多くなってしまい追加の運搬作業が発生するわけで、工期に影響を及ぼしかねない。工期を守るためには、正確な土量計算が必須だ。

ドローンを使用すれば高精度な土量の計算が可能だ。ドローンが撮影した写真から3D点群データを作成し、ソフトウェアによって土量を正確に算出する。現場を担当する大林組北陸支店奥能登災害復旧工事事務所の橋本貴斗氏は、従来までは運んだ土量を「手計算」で算出していたといい、ドローンの活躍ぶりを次のように評価する。

橋本氏:正確に土量を計算することは工期をコントロールするうえでとても重要で、ドローンの使用でそれが可能になっています。ドローンにはとても価値ある働きをしてもらっています。

KDDIスマートドローンはドローンで取得したデータを1枚のレポートにして毎日提供する。レポートには3Dモデルをキャプチャした画像と工事現場のエリアごとの差分をまとめている。同じくレポートされる工事出来高管理と合わせ、工事の進捗状況の確認や、今後の作業方針などの検討を行っている。

工事現場の管理をしながらドローンも運用するとなると、大林組の業務負担が増えそうだ。だが、DJI Dock 2はKDDIスマートドローンが大林組に貸し出し、設置から運用までKDDIスマートドローンが担当する。

といってもKDDIスマートドローンのスタッフが現場に常駐しているわけではなく、東京のKDDIスマートドローンのオフィスから遠隔管理している。つまりドローンが飛行する現場に担当者が不在なのだ。飛行の際には、操縦者が飛行する周辺の気象状況や、機体の具合をチェックする飛行前点検の実施が航空法で定められている。担当者がいないなかで、どのように対応しているのか。

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DJI Dock 2のカバーをフルオープンにした状態。Matrice 3Dを右斜め前から見ている。DJI Dock 2は内蔵バックアップバッテリーにより給電が途絶えても5時間以上稼働できる性能がある
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Matrice 3Dを左斜め後ろから見ている。カタログスペックでは、自動充電によって20%から90%まで32分で充電可能。DJI Dock 2のカバーを開いた状態の寸法は約1228×583×412mm(長さ×幅×高さ)

気象状況についてはDJI Dock 2に取り付けられた気象センサーのデータ、および現場に常駐する大林組のスタッフによる気象状況の報告をもとに、飛行可能かどうか判断する。機体点検はDJI Dock 2に取り付けられているカメラを使って映像でチェックし、Matrice 3Dが発信する各テレメトリー情報もあわせて確認のうえ、問題なければ飛行するという段取りを踏む。

機体性能としては風速8mまで飛行可能だが、実際に飛行するかどうかはDJI Dock 2に取り付けられた風速計の数値や現場に設置された吹き流しの流され具合などを見ながら判断する。

ちなみに、運用を始めてから業務として飛行しなかったのは、能登豪雨と、それに関連して発令された、許可のないドローンの飛行を禁止する緊急用務空域が設定されていた期間(9月29日~10月3日)を除いて、わずかだという。DJI Dock 2はIP55、Matrice 3DはIP54相当の防塵性・防水性に対応しているので、多少の雨であれば飛行可能だ。

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DJI Dock 2のカバーを閉じた状態。カバーを閉じた状態の寸法は約570×583×465 mm(長さ×幅×高さ)となる。重さは34kgとなり以前のモデルから約70%も軽くなった。

また、ドローンを肉眼で目視せず遠隔で管理するため、この飛行は目視外飛行にあたる。通常であれば機体を監視する補助者の設置が求められるが、工事現場という第三者の立ち入りを管理した場所のなかで飛行を完結させているため、省略可能となっている。

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Matrice 3Dの光学カメラは広角と望遠の2種類を装備。広角は35mm判換算で24mm相当。4/3型CMOSセンサーを備え、有効画素数は20メガピクセル。望遠カメラは1/2インチCMOSセンサーで有効画素数は12メガピクセル。35mm判換算で162mm相当のレンズとなっている。なお、赤外線カメラを搭載したMatrice 3TDもラインナップしている

KDDIスマートドローン プラットフォーム事業部の山崎颯氏は、次のようにコメントしている。

山崎氏:関係ない人がふらっと入ってこられる場所ではないので、遠隔からでも飛行させることが実現できています。

大林組としても普段の業務に加えてドローンの監視も求められると作業効率が下がるため、無人で運用できる体制は歓迎している。

映像やデータを活用し、ドローンの運用に関わるスタッフを常駐させることなく、毎日ドローンを飛行できる体制を整えられる。そしてドローンでしか収集できないデータを得られる。この2点がDJI Dock 2を導入する最大のメリットといえるのだ。

とはいえメンテナンスフリーで使用することはできないので、折を見てKDDIスマートドローンスタッフが現場を訪れポートや機体をチェックしてくれる。適切なサポートを受けられるのは心強い。

なお、KDDIスマートドローンでは2022年に自動充電ができるドローンポートとドローンを使った検証事業を行い、現場管理業務を80%削減できることを確認している。今回の工事現場における作業でも同程度の作業効率化ができるそうだ。

またドローンポートを使用しないで、ドローンを手動操縦で飛行させて測量した場合、スタッフの現場への移動や飛行準備、データの整理などで1日75分かかるという。DJI Dock 2を利用した自動運航によってこの時間が削減できることも確認済みだ。

それではDJI Dock 2が設置されている展望台周辺はどのようになっているのか。DJI Dock 2の運用には電源とインターネット回線が不可欠だ。まず、電源についてはどんな工事現場でも発電装置を置いている。

展望台にも電源が引き込まれており、そこから給電している。次に、インターネット回線は低軌道衛星通信・スターリンクを導入しており、展望台下にアンテナを設置。安定した通信環境が整えられている。

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工事現場に設置された展望台。吹き流しや地震検知計なども備えている
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スターリンクのアンテナは北の方角に向けて設置されている

展望台の上部には監視カメラが取り付けられている。もともとは展望台の状況をチェックするためのものだが、DJI Dock 2設置後は、ドローンが飛行する前に、周囲に障害物などがないか確認するためにも使用されるようになった。

ドローンポートを設置する際には何も新しい設備を一から導入する必要なく、あるもので対応することもできるのだ。

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画面奥に立てられているのが、展望台に設置された監視カメラ。展望台の土台となる鉄板とDJI Dock 2の間に木の板が挟まれていることがわかる

DJI Dock 2の設置場所については大林組とKDDIスマートドローンの間で話し合いがもたれた。もともと展望台は見学者が工事現場を一望できるように、砂浜から約10mの高さで建てられた。ドローンポートも高いところにあったほうがよいだろうと考えられて、ここに置かれたという。ちなみに、展望台には「UAVポート」という看板も立てられている。

https://youtu.be/IScf477RIq4
離陸のコマンドがDJI Dock 2に送信されると、「ピーピー」という警告音とともにカバーがオープン。その間にDJIの機体でおなじみの「テレレ」のサウンドともにドローンの電源が入る。カバーが開放されたあと、プロペラが回転し勢いよく離陸する。警告音が鳴りはじめてから離陸するまでの時間はおおむね50秒程度
https://youtu.be/_ZCZOIpVXKk
Matrice 3DがDJI Dock 2に戻ってくると、筐体が開いてドローンを格納する

ところが、展望台は鉄板で組み上げられている。鉄板はドローンにとって曲者で、自機の位置を計測するのに欠かせないコンパス機能に影響を与えるおそれがあるといわれる。鉄板と機体の間にはDJI Dock 2があるとはいえ、やや心配になる場所だ。そこでKDDIスマートドローンからの申し出で鉄板とDJI Dock 2の間に木の板を挟みこみ、鉄板の影響を緩和させる方法が採用された。

ドローンの飛行が現場での作業に影響を与えているかというと、もちろんそんなことはない。

橋本氏:現場の作業員はドローンが飛行していることをまったく意識していないですね。重機がぶつかるような高さで飛行しているわけではないですし、ストレスは一切ありません。

現場に余分な負担をかけず重要なデータを取得するドローンは、優秀なスタッフとして受け入れられているようだ。

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展望台を離陸したMatrice 3Dは機体の正面にある土砂の削り出し現場の方面へと飛行。削り出し現場よりさらに奥にある盛り土をする現場方面へも進出して写真撮影を行う

さて、地震による被害に追い打ちをかけるように発生した能登豪雨は、今回取材した工事現場でも盛り土が流出するなどの被害を与えている。だがMatrice 3Dで流出箇所を測量し、雨が降る前後で増減した土砂から具体的な流出量が算出できた。

橋本氏:豪雨で流出してしまった分は、ドローンがなければ概算でしか流出量を算出できなかったです。その点、ドローンでしっかりとデータを出してもらえたのは本当に助かりました。

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事務所に設置されているモニターでは、工事現場の3Dモデルが表示されている。緑色で表示されている部分は盛り土が施されている箇所になる

5mほどの深い谷ができ、人が立ち入るのが危険と思われる被災箇所もある。二次災害のおそれがあり、早めに対処したいが容易に近づけない。そこでMatrice 3Dを手動飛行させデータを取得することになり、取材当日に現地入りしていたKDDIスマートドローンスタッフが対応した。日常的にドローンを使用していれば、イレギュラーな事態が発生したときにも必要なデータが集められる。

能登豪雨に伴う緊急用務空域が発令されていた際には、石川県からの要請を受け、石川県災害対策本部と国土交通省航空局と事前調整したうえで、情報収集のため飛行した。

また、離陸時には展望台に設置された監視カメラで飛行空域にヘリコプターが侵入していないか確認したというのは、災害発生時らしいチェックポイントといえるだろう。

山崎氏:ドローンポートは災害時の状況確認の手段として自治体からも関心をいただいています。しかし、災害時のためだけにドローンポートを置いておくのはコスパが悪い、今回は日常的にドローンポートを活用していたからこそ実現できた運用だったと思います。

今後ドローンポート導入事業者は、自治体とポートを活用した災害対応で提携することも求められるかもしれない。

現場の作業効率を劇的に向上できるドローンポート。その中でもDJI Dock 2を推薦する理由を橋本氏はこのように語る。

橋本氏:撮影された写真、ライブ映像がすぐに見られ、クラウドサービスが充実していることも助かります。通信状況がしっかり確保できて、座標をきちんと拾えたらすぐに利用し始められます。我々の準備はそれほどないので、導入障壁がとても低いサービスだと思います。そして導入するだけで終わりではなく、アフターサービスも手厚くしてもらっているので、おすすめのサービスです。

https://youtu.be/knolfXgGkIc
ドローンの飛行経路やライブ映像を確認するモニターが設置されている。どの位置を飛行しているかひと目でわかる
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モニターには工事の進捗率なども表示可能。収集データを見ながら次の作業手順を打ち合わせるといったこともできる

山崎氏も導入のメリットをアピールする。

山崎氏:ドローンが建設現場で使われるケースは増えてきていると思いますが、ポート付きのドローンをゼロから導入するというのは、設置や使用方法の勝手がわからず、障壁が高いと思います。導入に関する作業は弊社ですべて対応可能です。ポートを設置して通信がつながった瞬間から使えるので、ぜひ1現場に1台、導入を検討してほしいですね。

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左からKDDIスマートドローンの山崎氏、DJI Dock 2の運用に携わるKDDIスマートドローンオペレーション事業部の原田誠也氏、大林組の橋本氏

KDDIスマートドローンは2024年11月18日より、ドローンポートの導入から運用までを一気通貫で提供する遠隔運航サービスの提供を開始している。日々の進捗状況のチェックが欠かせない現場においては、導入を積極的に検討してみてはいかがだろうか。

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日本のドローン関連ビジネスの現実[春原久徳のドローントレンドウォッチング]Vol.84 https://www.drone.jp/column/20241119082906103808.html 103808 trend Tuesday, 19 November 2024 08:29:06 +09:00 ソニーのドローン「Airpeak S1」が2025年3月末での販売終了から、国内のドローンビジネスの安定成長を考える

今月、ソニーのAirpeak S1が2025年3月末で販売終了というニュースが流れてきた。

https://www.drone.jp/news/20241105104234102496.html

一部のメディアに対し、ソニーは「ドローン事業撤退」ではないというコメントを出しているが、次のモデルの計画が出されないままに、現行モデルの販売終了は事実上、機体本体の事業の大幅見直しということであろう。

CES2021で華やかに発表し、2021年の年末から販売になり、3年間で販売終了ということになった。3年間での事業計画上の販売見込み台数が大きく及ばなかったということだろう。

ドローン関連ビジネスの区分け

ドローン関連ビジネスにおいては、筆者が2016年から執筆している「ドローンビジネス調査報告書」(インプレス)でも、機体本体関連、サービス関連、その他周辺サービスの3つで構成し、その市場規模を算出している。

日本のドローン機体メーカーの状況

機体本体関連は、機体メーカーと機体メーカーに部品を提供したり、場合によっては製造委託を受けたりしている企業がそこに含まれているが、やはり中心になるのは機体メーカーであろう。

国内の機体メーカーのビジネス状況を把握するために重要な指標は日本での出荷台数になるだろう。

これは以下のコラムでも書いたように、現状では年間5万3千台のドローンが出荷されており(正確にいうと機体登録をされており)、その内、35,000台程度がDJI、DJI以外の海外機体メーカーが5,000台程度、国産メーカーおよび研究開発などの自作機が10,000台程度となっている。

https://www.drone.jp/column/2024052114164888450.html

日本の機体メーカーのビジネスを理解するために、もう少し内訳をみてみたい。その参考になるのは、日本で1番最初に株式上場をしたACSLの財務報告書となる。 (必ずしもどのメーカーもこの通りではないが、近い形態になっていることが想像される。)

以下の表は、ACSLの決算説明資料ベースに筆者が作成した。

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※21年3月期第3四半期以降は連結財務諸表における数値、それ以前の四半期については単体財務諸表における数値FY21/03までの決算期は4月から翌年3月まで。
FY21/12は4月~12月の変則決算。FY22/12以降の決算期は1月~12月

今回の四半期決算の数字を元に作成しているが、以前に発表された資料によると、FY17は売上156百万円、FY18は売上370百万円ということなので、ACSLは2018年12月に上場しているが、売上は偏りがあるが、今期は過去最高の売上高になりそうだ。 (このうち、今期の17億円はインドパートナー企業に対して地上走行ロボットの調達・供給を行うプロジェクトということで、必ずしも現在のACSLの事業に直結しておらず、来年度も継続するかに関しては不透明であり、この数字を除くとFY24は390百万円ということでFY18と同程度の水準になっているのは気になるところだ。)

もう少し詳細をブレークダウンしてみよう。 内容を大きく分けると、実証実験、プラットフォーム機体(PF2など)・SOTEN・その他用途特化型機体、その他に分かれている。いわば、実証実験、機体販売、その他の項目に分かれている。 その割合をグラフに示したのは以下となる。

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2018年末の上場までにおいては、実証実験と機体の売上が入れ違いになるような形であったが、FY20以降実証実験の割合が大きくなった。これはこの頃から政府が中国機排除の姿勢を打ち出すとともに、国産化の流れが起き、ACSLが上場などに伴う知名度や信頼性の向上により、ドローンユーザー企業やサービス企業において、ACSL機体の評価といったところに繋がったからだと推測される。

しかし、その実証実験の流れがその後の機体販売(特にプラットフォーム機体)につながっていっていないのは、実証実験の結果、運用導入に至っていないということだろう。

また、FY21のその他を占めるのは、NEDOの国プロ3億円程度(SOTENのプロジェクト)となっており、その国プロの支援によりSOTENが2021年12月から販売開始されており、翌FY22にはSOTENが645台納品される形で機体販売の売上が上がっている。しかし、このSOTENもFY23は101台、FY24は51台(予測)とその後定着していない。 (その他にも、色々とこの財務報告の数字から伺い知ることが出来る。例えば、実証実験の1件当たりの平均は591万円程度だったり、プラットフォーム機体の平均単価は344万円程度だったり、SOTENの平均単価は156万円程度だったり。)

そして、ACSLのFY19からFY24に至るまでの営業利益は以下の通りだ。

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日本でのドローン関連の上場一番手のACSLでさえ、この数字の推移は日本のドローン機体メーカーの厳しさを表している。

上場し公表されているACSLの数字を分析してみた。必ずしも、ACSLとは一致していない部分も多いとは思うが、日本のドローン機体メーカーの状況を鑑みることは可能だ。

まず、多くの機体メーカーの内容の分類としては、ACSLと同様に、実証実験、機体販売、その他の項目と分かれている。

実証実験やその他(国プロなど)は単年度(もしくは3年程度)のもので売上として定着していくものではない。機体メーカーとしては機体販売の売上をきちんと伸ばしていく必要がある。 当然、DJIや海外機体に関しては、この機体販売の数字が日本においては中心となっている。

日本の機体メーカーは以下の農薬散布機体を中心に展開しているメーカーを除けば、機体販売でなく、実証実験やその他(国プロなど)を中心に売上をたてている企業が大半だ。

日本の農薬散布機体メーカー:ヤマハ、MAZEX、ROBOTIX JAPAN、NTT e-Drone これ以外の機体メーカーは、年間100台の台数に大半は至っていない。

仮に1台単価が200万円だとした場合、100台で年間売上2億円となり、この後、中国DJI以外のインド、台湾、韓国(場合によってはウクライナ)といった海外製の機体メーカーの台頭が著しい環境の中、恐らく機体メーカーとしての存続は、この程度の台数では開発リソースや仕入れコストの関係で難しいだろう。(最低でも1,000台、年間20億円程度がボーダーラインとなってくるだろう。)

日本の機体メーカーの状況がこんな中で、そこで採用される部品に関しては、これ以上の厳しい状況となっている。 (もっと単価が低いこともあり、販売数は年間1,000どころか、年間10,000でも足りず、年間100,000ぐらいをミニマムの数字に掲げている部品も多い。)

これは日本のマーケットだけでなく、海外マーケットに目を向ける必要がある。 (しかし、この部品の世界においても、現状は中国が強い市場だ。特にバッテリー、モーター、カメラ、ジンバル、フライトコントローラーなどは中国が圧倒的に強い。)

日本のドローンサービス関連の状況

ドローンのサービス関連に関しては、大きくは2つに分かれる。オペレーションサービスとアプリケーション・ソリューションサービスだ。

そして、その内容も機体メーカーと似た形になり、実証実験、アプリケーション・ソリューション販売、その他の項目と分かれている。

オペレーションサービスは実証実験などの時に採用されるケースが多く(1日1人あたり10~30万円程度のケースが多い)、実際に日常的な運用が始まると、こういったオペレーションコストをかけることは出来ないため、内製化していく形となる。

また、ドローンサービス関連においても、機体メーカーと同様で、実証実験やその他(国プロなど)は売上として定着していくものではなく、アプリケーション・ソリューション販売の売上をきちんと伸ばしていく必要がある。

多くのドローン利用のシーンにおいて、既に実用化しているシーンは以下に示しているが、まだまだドローンの利用可能性は大きいものの、多くは実証実験や進んでいても運用検証といったステージにある。

既に実用化 ()内は使用機体

  • 農薬散布(DJI/クボタ、ヤマハ、MAZEX、ROBOTIX JAPAN、NTT e-Droneなど)
  • 屋根点検(主にDJI)
  • 太陽光パネル点検(主にDJI)
  • 一部インフラ点検(DJI、Skydioなど)
  • 土木測量(工事進捗)(主にDJI)
  • レーザー測量(DJI、国産機体など)

ここに挙げたように既に実用化されている分野においても、その使用機体はDJIとなっている。 また、それ以外、物流ドローンに関しては、採算性の検証が終わっておらず実用化に苦戦しており、最近ニュースで見る機会の多い防災ドローンも、何か事態が起こったときにテンポラリーに予算がつく形となっており、実装まで至っていない。

ドローンビジネスを立ち上げていくために

2015年以降、国プロという形で政府や自治体はドローン活用を拡げていくための予算措置を多く行ってきた。黎明期において、その予算措置があったために動き出したものもあったが、かなり多くの部分が、実証実験を実施し報告書の提出の後は雲散霧消してしまったものも多い。それは当事者としての反省もある。

今までの予算措置の中で、効果のあったものをいくつか挙げながら、今後の参考にしていきたい。
一つが、i-Constructionである。i-Constructionはこのコラムの2016年Vol.06で取り上げた。

https://www.drone.jp/column/201601131904313904.html

i-Constructionそのものがどのくらい当初の目的に沿う効果が出ているのかは不明ではあるが、この取り組みの中で、道路工事などの土木の現場において、ドローンでデータを撮る習慣が形成されていったことは現在の土木測量や工事進捗といった分野での実用化に結び付いている。

ここでの重要なポイントはドローンの活用の結果に対しての支援ということだろう。これは2017年4月1日に施行された改正FIT法により義務化された50kW以上の太陽光発電の保守点検・維持管理も同様だろう。

これは例えば、インフラ点検であったり、洪水や地震の危険区域のデータであったり、農地データであったり、山林データであったり、各種DXの動きと合わせ、このデータを取得の義務化といった部分に当初、補助金や助成金を入れるという形で定着を図ることで、実用化につなげていくことができるだろう。

もう一つが、農薬散布機にあったような購入の補助金・助成金である。これは当初、農家だけが利用可能であったが、現在では農家以外の散布事業者なども利用可能になっている。

これも実用検証を行っている分野においては、導入推進にむけての効果が期待される。

また、運用局面における安全性の向上のためには、後回しにされやすいセキュリティ対策や運用管理やメインテナンスといった部分に関しても、一定の運用安定性が確保される間は、こういった支援があるとよいだろう。

各ドローン関連企業は、自省も込めて、補助金や助成金に頼らない経営体制を築いていくためのステップを着実に踏んでいく必要があるだろう。

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航空業界では、航空機の機体稼働率が極めて重要な指標のひとつとなっている。航空機は客や貨物をのせて飛んでいれば利益を生み出すが、地上で待機している間は、コスト(保管費用やメンテナンス費用)だけがかかるだけの存在だからだ。

そのため航空業界では、機体稼働率を上げるためにさまざまな工夫を行っている。たとえばGE社は10年以上前から、航空機の機体に大量のセンサーを設置し、飛行中もデータを収集して機体の状態を把握。

それに基づいて、機体の潜在的なリスクをいち早く察知したり、予防的なメンテナンスを適時実施したりできるようにするというサービスを提供している。

GE社が提供する機体管理システム

こうしたデータ収集・分析は現在、多くの航空機において実施されるようになっているが、それが直接的な形で機体を頑丈にしてくれるわけではない。しかし機体の状態を監視し、いつ整備作業を実施するのが望ましいかを的確に掴むことで、ターンアラウンドタイム(空港での整備やスケジュール調整などにより航空機が一定時間地上にとどまる時間)を短くできるわけだ。

一方のドローンも、特に航空業界における旅客機や輸送機のように、商業利用される機体については、同様の問題が発生する。ドローン運用から利益を生むには機体稼働率を上げなければならないが、かといってドローンをずっと使い続けるわけにはいかない。

たとえばDJIは、Matrice 200シリーズなどのエンタープライズ向けドローンに対して、飛行時間等に基づいたメンテナンスサイクルを推奨している。その整備プログラムを見ると、機体の稼働開始からおよそ6カ月、あるいは飛行時間の合計が200時間に達するごとに、整備を実施するようになっている。特に稼働開始から18カ月/飛行時間合計が600時間に達した際の「プレミアム」メンテナンスでは、ハードウェアの点検、ファームウェアのアップグレード、外部クリーニング、モーターを含む各種部品の交換を行うとしている。

しかしこのメンテナンスサイクルは、あくまでDJIがこれまで蓄積されたノウハウに基づいて算出したものであり、確かに有益ではあるが個々の機体の状況に即したものではない。ドローンも航空機のような、データ収集と分析に基づく機体管理ができないものだろうか。

ドローンの「神経」となる光ファイバー

まさにその研究を行っているのが、英サウサンプトン大学の研究者らだ。同大学が先月発表したプレスリリースによると、研究者らは光ファイバーを使用して、ドローンに「神経」を張り巡らせるという技術に取り組んでいる。

サウサンプトン大学が公開した動画

このシステムは、生物の神経を模倣した光ファイバーを使用し、ドローンの機体に関するリアルタイムデータを収集・送信する。光ファイバーを使用する方式により、従来の電子的なモニタリングシステムで発生していた、無線による干渉という問題を解決できるという。主任研究者のクリス・ホームズ博士は、「これはドローンのための一種の神経系であり、電気ではなく光を使って情報をリアルタイムで送信することで、電子システムが直面する無線干渉の問題を回避できる」と述べている。

同システムは「光スペックル」という技術を使用し、ドローン構造内で検出された応力とひずみに基づいて特定の画像を取得。この画像はAIアルゴリズムによって解釈され、ドローン全体の健全性を評価し、潜在的な問題の早期発見を可能にする。

ホームズ博士は、「このスペックルシステムはドローンにかかる応力とひずみを追跡し、ドローンを頻繁に着陸させて点検することなしに、地上クルーが問題を早期に発見できるようにする」と説明している。

こうして点検頻度の削減することで、ドローンをより長時間運用できるようになる。またリアルタイムモニタリングにより、潜在的な問題を早期に特定でき、ドローンの安全性と運用効率が向上する。その結果、ドローンの全体的な運用コストが削減されるとされている。

この神経系システム」は、学部生が開発したドローンに実際に搭載され、正常に機能することが確認された。研究チームは2025年までにこの技術を商業化することを目指しており、運輸・物流セクターを始めとした、さまざまな産業での応用が期待されている。

冒頭で紹介したGE社の機体管理システムのような、航空機の状態をリアルタイムに把握して整備に役立てるという技術およびサービスは、既に現実のソリューションとして航空業界で市場を確立している。

ドローンについても、先ほどのDJIのように独自のメンテナンスサービスを提供している企業が登場しており、これから大きな市場を形成することだろう。サウサンプトン大学が開発したようなリアルタイムデータ収集システムは、今後スタンダードな技術として定着していくかもしれない。

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