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国と自治体によるルール整備と成果創出でドローン産業の飛躍を目指す:後編 [第1回ドローンサミット]

国と自治体によるルール整備と成果創出でドローン産業の飛躍を目指す:後編 [第1回ドローンサミット]
最初の開催地に選ばれた兵庫県の斎藤元彦知事があいさつを述べた

2022年9月1日(木)から2日(金)に神戸ポートアイランドで開催された「第1回ドローンサミット」のプログラムから、初日のシンポジウムと2日目のデモンストレーションの内容を紹介する(関連記事:初公開の機体多数、幅広い用途のラインナップ:前編 [第1回ドローンサミット])。

初日のシンポジウム

本サミットはドローンの社会実装に必要な事業の形成と社会受容の拡大において、自治体の役割が重要になることからその取り組みを全国に発信すると共に相互連携の強化を目的としている。ドローンの製造技術や機体性能といったハード面の紹介をメインとする既存の展示会に比べ、利活用の事例やサービス内容などのソフト面の紹介に力が入れられている。初日に行われたシンポジウムは、国と自治体から関係者が多数出席し、各地域でのドローン戦略や実証実験、プロジェクトなどが、国内外の業界動向とあわせて紹介された。

最初に第1回目の開催地に選ばれた兵庫県知事の斎藤元彦氏があいさつし、「ドローンは社会課題解決につながる次世代ビジネスであり、実装による便利で豊かな暮らしを一人でも多く感じてもらえるよう、思いもよらない活用も含めて関西全体で取り組みを進めたい」と述べた。

続いて共催者の経済産業省と国土交通省の両政務官からは、有人地帯における目視外飛行のレベル4や高密度化する空域の運行管理技術において、安心安全を重視したルールづくりを進めていることを紹介。ドローン議連(無人航空機普及利用促進議員連盟)に参加する衆参両院の議員もあいさつを行い、国民視点でのドローン活用に向けた支援に国として力を入れていくことを強調した。

基調講演1

基調講演は最初に、兵庫県のドローン先行的利活用事業のアドバイザーでもある東京大学 名誉教授・未来ビジョン研究センター特任教授の鈴木真二氏が、「ドローンの各国法制度の動向と将来像」と題し、市場の現状や今後の動きを解説した。

ドローンサービス市場はこの10年で約30倍に急成長した一方で、事故や事件の問題も浮上している。とはいえ全体では積極的利用に向けた航空法改正の動きにあり、欧州はEASA(欧州航空安全機構)、米国はFAA(連邦航空局)、日本では国土交通省が中心となり法整備を行っている。安全に関してはリスクをゼロにするのではなく、許容できないものを無くそうという考え方で制度設計が進められている。空撮や輸送などユースケースに応じた制度設計も行われ、ルールづくりではユーザ視点からシステムを考えるConOps(Concept of operations)の考え方が取り入れられている。

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2つの基調講演が行われた

今年12月にレベル4の解禁を予定している日本では、NEDO DRESSプロジェクト(Drones and Robots for Ecologically Sustainable Societies project)を延長する形で、無人航空機の第2種認証に対応した証明手法の事例を検討するワーキンググループが設置されている。人の頭上を飛ぶドローンに対し、自動車の車両登録や車検と同じような制度の導入を予定しているが、リスクを事前に評価して許容できる範囲に抑えようとしているという。

今後の課題としては、小型無人機の事業者の提議と認証のあり方を整備し、ドローンの安全管理をできるかが重要になる。日本では福島RTFとDSPA(一般社団法人 ドローンサービス推進協議会)でドローンサービスJISの制定を進めており、国際的な整合性も検討するとしている。

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基調講演2

続いて、千葉大学名誉教授の野波健蔵氏が「世界と日本のドローン産業動向」と題し、5年間かけて行っている調査の結果などを紹介した。世界42カ国のうち5社以上のドローンメーカーを有する国のランキングにおいて日本は5位だが、最近では技術的に韓国に追い上げられており、2年前からドローンブームにあるインドに比べてもやや発展が遅れているのではないかとの指摘があった。

空飛ぶクルマも世界ではニーズが明確になり、実装も含めて開発が進んでいるが、ここでも日本は追いついていないとしている。その理由としてはあくまでも私見としつつ、世界では40代以下の若いエンジニアが世界で活躍し、企業も積極的に採用しているのに対し、日本は人材が集まらず海外メーカーに務めることが多い点を挙げている。また、投資額も世界に比べて日本は1ケタ少なく、リソース不足の問題は大きいだろうと述べた。

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国と各自治体の取り組み

シンポジウムの後半では、内閣官房小型無人機等対策推進室などによる国の取り組みと、各自治体での実証実験や関連プロジェクトが紹介された。次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト(ReAMoプロジェクト)は今年度23.9億円の予算が付いており、全国で先行実証3カ所と10地域のコンソーシアムが地域実証事業に参加している。

兵庫県は神戸市とNIRO(新産業創造研究機構)との連携により、全国に先駆けて県内外を対象にドローンの先行的な利活用を支援するプロジェクト「DRONE HYOGO」を令和元年度から実施している。これまでに鳥獣害調査では全国初となるドローンを用いたレベル3飛行の実施や、電動固定翼ドローンによる大気汚染モニタリングなどを行っており、令和4年度の採択事業は展示会場での紹介とあわせて一部が2日目のデモンストレーションで公開された。

令和4年度採択事業のデモンストレーション

その一つ、新潟市を拠点とするTOMPLAは神戸港を横断するドローンデリバリーを検証しており、2023年のビジネス開始に向けて10月から期間限定でサービスの実施を予定している。ハーバーランドのスターバックスからポートアイランドまでアイスコーヒーを届けるデモ飛行では、商品を載せたドローンが自動で高度を取り、徐々に高度を下げながら数分で目的地へ商品を届けた。

やや海風がある中でも中身をこぼさず、氷が溶けないうちに商品を運ぶことができたことに、参加者からは高い関心を集めていた。また、同社は将来的にドローンの定期便と荷物を受け取るポストの設置なども計画していることを発表していた。

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日本化薬は自動車のエアバッグ向けの技術を応用し、すでに発売中のドローン用パラシュートと開発中のエアバック装置を組み合わせた、人口集中地区での社会実装を促進する事業を進めている。パラシュートシステム「PS CA12-01」は本体1kgで、最大積載量25kgのドローンが30m以上の高さから落下した場合に毎秒6m程度に速度を落とすことができる。

PRODRONEと連携して開発中のエアバッグは1m四方で高さは40cm、バッテリーでファンを動かし5秒以内に展開する。メディア初公開のデモでは、強制的にドローンのローターをストップさせると落下を検知してパラシュートとエアバッグが自動で開き、予定したエリア内に落下させることができた。着地後に風にあおられて機体がひっくりかえったがローターなどに大きな損傷はなく、今後はパラシュートの切り離しなど細かい機能調整を重ねるとしている。

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さらに、令和3年度のプロジェクト参加の実績を元に新しい機体を開発中の新明和工業が、水上で離発着を行う固定翼型無人航空機「XU-M」を初公開し、デモ飛行を成功させた。

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自治体の取り組み

続いて、神戸市、北海道、福島県、三重県、長崎県、山梨県小菅村、愛知県豊川市・新城市から、それぞれの取り組みが紹介された。

神戸市は2年前から消防局でドローンの活用を始めており、赤外線カメラを使用した早期情報取得や山岳救助を行っている。北海道は実証実験フィールドとしての活用を後押しするため、「ほっかいどうドローンワンストップ窓口」を立ち上げている。福島県はロボットテストフィールドを核にドローン産業振興を進めており、三重県はドローン物流の事業化と定着に向けた調査事業などを行っている。

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神戸市消防局では2年前からドローンを活用している

長崎県は離島や半島が多い地域性にあわせて先端技術の実証実験を積極的に行っており、定期便が廃止された2つの空港を実証フィールドとして提供する体制を整えている。山梨県小菅村はSky Hubらと協力した新スマート物流を開始しており、配送地域を広げるために電波通信や騒音の課題解決やマルチタスク化に取り組む。愛知県豊川市と新城市を縦断する豊川を実証フィールドにする東三河ドローン・リバー構想は、災害対策システムの構築を官民連携で進めている。

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長崎県は使用されていない空港を実証フィールドに提供する
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東三河ドローン・リバー構想は河川域での災害対策システムの構築を目指す

パネルディスカッション

登壇者が参加するパネルディスカッションでは、ドローン経済の活性には、民間のアイデアを自治体がフィールドの提供や連携先の紹介などでスピード感ある支援を行い、チャレンジすることで失敗も含めた知見を蓄積することが大事だという意見が出された。日本でドローンを産業にするには自治体がメインプレイヤーになるしかなく、全国で連携を深める機会として本サミットを今後も継続開催することを期待したいというコメントでシンポジウムは締め括られた。

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