アンチドローン・カウンタードローンとは?
まずアンチドローンとカウンタードローンの違いだが、あまり明確なものではないが、アンチドローンがより包括的な概念で、ドローンによる脅威から防御するためのセキュリティ全般を指し、カウンタードローンはその中の具体的な技術やシステムとなり、不審なドローンの侵入や脅威を排除するためのシステムを指すことが一般的である。
- Advertisement -
現在、特に防衛や警備の観点においては、総合的な対策—対処するドローンの目標、その対処の方向性や使用するシステム、そして、その配備計画や設営計画など—こういった全般的なものがアンチドローンという概念となっており、この中の具体的なシステムや製品がカウンタードローンということになるだろう。
このコラムにおいては、主にカウンタードローン-個別の技術に関して、記したい。
カウンタードローンの役割と技術
役割は言うまでもないが、ドローンの脅威を排除することであるが、この「脅威の排除」といっても、様々な観点がある。それは脅威となるドローンの目的や機能/性能などに応じて、その対処が異なってくるからだ。それは例えば、偵察などで使われているドローンと爆弾などを搭載しているドローンによっても、対処が異なってくることからも理解できるであろう。(その対処するドローンの種類や目的、性能/機能に応じて、作戦を立案する行為がアンチドローンの戦略ということになる)
- Advertisement -
その目的に応じて、個々の違いは出てくるが、全般的にはカウンタードローンのシステムのステップは以下のプロセスとなる。
- 検知:センサーなどの検知装置がドローンを検知し、その情報を収集
- 追尾:検知したドローンの軌跡を継続的に追跡し、行動パターンを分析
- 識別:敵対するものかの認識だけでなく、ドローンの種類や用途など判明し、脅威度を評価
- 対処:脅威と判断したドローンに対して、無力化・排除などの対抗措置を実施
検知に関して、レーダー、電気光学センサー、無線周波数(RF)方向ファインダー、音響検知などのセンサーを利用して検知する。
レーダー:
レーダーは、長距離カバレッジを提供する人気のあるレガシー検出技術である。 主に軍事や航空で使用されていた古いレガシーシステムは、より大きな航空機を検出することができるが、ドローンはサイズが小さいため、検出できないケースも多い。より近代的なアンチドローンレーダーシステムは、電子スキャンアレイ(ESA)やマイクロドップラーなどの高度な技術を使用しているが、小型ドローンと鳥などの他の飛行物体を常に区別して偽陽性を生成するわけではない。
レーダーはまた、雨や霧の多い環境での検出が限られているため、天候の影響を受ける。適切な動作を最適化するためには視界がはっきりしていることが必要となる。
さらに、レーダーは屈折および反射に敏感で、これは、レーダーによって受信される同じオブジェクトから発信される異なる方向からの複数の信号をもたらす可能性がある。 これは、同じような屈折や反射を生み出す可能性の高い建物がある都市環境では非常に認識が難しいケースも多い。
- Advertisement -
電気光学センサー:
電気光学センサーはドローンの識別に使用されるが、通常はレーダーなどの他の検出および追跡システムによってトリガーされる。 レーダーと組み合わせることにより、誤検知の数を減らすための検証技術として使用される場合が多い。これらのセンサーは、高度な電気光学赤外線画像(EO/IR)カメラを使用して、視覚的および温度関連の識別子に基づいてドローンを識別し、検出された物体が実際にドローンであることを検出する。
EO/IRソリューションの最大の欠点は、明確で直接的な視線が必要であるため、密集した、混雑した、または都市環境では必ずしも利用できないことだ。 暗闇、霧、雨もまた、EO/IR検出ソリューションの有効性を妨げる可能性があり、さらに、検出精度を高めるためには画像がドローンのものであるか否かを決定するためにリアルタイムでの人間の介入を必要とするため、継続的な人員配置リソースが必要となる。(この辺は日進月歩でAIが進んできているところではあるが)
RF:
RF方向ファインダーは、センサーを利用してドローンを検出及び追跡する。RF方向ファインダーは、様々な周波数帯の信号の中で、該当するドローンで使っている周波数帯を分類するために、ドローン制御信号プロファイルのライブラリの中で一致させることができる共通の周波数帯域を監視し、これらの信号が発している方向や距離を推定することができる。
複数のファインダーからの測定値を合わせることにより、ドローンの位置を絞り込むことができ、追跡や検出が可能となる。しかし、方向ファインダーは検出といくつかの限られた追跡にのみに制限され、識別することはできない。特定の機体を特定したり、ドローンの最も正確なリアルタイムの位置を提供したりすることができないケースが多い。
さらに、都市や複雑な地形では、建物や山のような物体からの通信の反射のために方向検出器が間違った方向を指す可能性もある。
ドローンのおおよその位置を決定するには、複数の方向ファインダーが必要となっており、展開スキーム及びドローン飛行領域に応じて、様々な精度レベルを有する複数のセンサーの複雑な展開が必要となっている。
音響検知:
名前が示すように、音響検出システムはドローンとその発する音のサウンドシグネチャーに依存している。音響センサーは、ドローンが生成する音とドローンのサウンドシグネチャーをライブラリ上で一致させることができる。機動性があり、配備も簡単ではあるが、この技術の限界はかなり明白で、使用が求められるシーン-空港、犯罪現場、戦場など、実環境の多くは騒々しい傾向がある。また、ドローンの進化により生成する音が静かになっており、音響ソリューションの使用は不安定さが増している。
追尾に関して、上記のいずれかの方法、もしくは複合した方法で検知したドローンをその検知を継続していく技術となる。これはその検知した方法にて、継続してドローンを追いかけられることが出来るかということになるが、これもその各々のセンサーによって得手不得手がある。基本的には、まず検知したドローンの位置情報をGPSから取得してリアルタイムで追跡する形となっており、視界が確保できれば、カメラで追い続ける場合もあるが、必ずしも視界が確保できるケースばかりではなく、上記のセンサーを組み合わせる形で追跡を行う。
認識に関して、検知・追尾しているドローンが正規ドローンと不正ドローン(悪意あるもの)を認識する技術となる。これはドローンの固有の通信識別子(登録記号など)を抽出して実施するが、これはこういったIDの仕組みがその地域において、確立していることが条件となる。(日本において、リモートIDの仕組みを確立しようとしているが、現状は経過期間でもあり、必ずしもリモートIDがすべて搭載されているわけではない)
業務活用のシーンにおいては、正規と不正規が空域で入り混じる可能性があるが、戦時の空間においては、必ずしもその識別が必要ないケースも多く、次の対処(無力化・排除)のステップに進むことになる。(戦時空間以外でも、この認識フェーズは難しい部分もあり、重要地域や首脳会談が実施される地域においては、ドローンの飛行侵入禁止という施策をとり、この認識フェーズを必要としない環境を作ることが多い)
無力化に関して、無線周波数(RF)妨害装置、キネティックソリューション、レーザー、電磁パルス(EMP)/高出力マイクロ波(HPM)、GNSSスプーフィング、RFベースのサイバーテイクオーバーなどがある。
無線周波数(RF)妨害装置(RFジャマー):
大量のRFエネルギーバーストを発射し、管制官からの信号を隠蔽することで、ドローンが指示を受信できないようにする装置だ。この技術は比較的安価で操作も簡単で、同じRFバンドで運用されている周辺地域内のすべてのドローンを一時的に無力化するといった、望ましい効果が得られる可能性がある。
効果的な利点があるにもかかわらず、いくつかの重大な欠点も伴う。それは、発生するRFノイズ干渉は近隣の通信システムに支障をきたす可能性があり、通信の完全性が最優先される多くの繊細な環境において、この緩和技術は問題となる。また、この干渉によって、付近で飛行する許可を得た味方ドローンが意図せず停止してしまう可能性もある。
キネティックソリューション:
このソリューションは、発射体などの物理的な介入によってドローンの飛行を停止させるもので、サイズ、携帯性、操作性、コスト、そして特定のドローンの種類に対する機能など、多岐にわたる。一方で、このソリューションは一般的にドローンを空から落下させることを目的としており、深刻な巻き添え被害や人的被害を引き起こすリスクを伴う。これらのソリューションで使用される発射体は、意図しない物体に誤って衝突し、特に空港や重要インフラなどの機密性の高い環境においてリスクをもたらす可能性がある。
これらのソリューションには関連する利点と欠点があり、実装前に考慮することが重要だ。
ドローンを倒すドローン(ネット牽引、衝突、ネット投射、投射物):
ドローンキリングドローンは、ネットで不正な標的を捕獲し、制御された着陸地点まで牽引することができる。また、このカテゴリには、敵対的なドローンに体当たりしたり、別のネットや発射物を発射して無力化したりするように設計されたドローンも含まれるが、予測不能な飛行をするドローンに対して、これらの戦術で精度を達成することは困難だ。
この方法で敵対的なドローンと交戦することは、空中での「ドッグファイト」に似ている。つまり、ドローンを撃墜するドローンは標的を追跡しなければならなく、大きな困難を伴います。さらに、この方法は、落下するドローンや飛翔物による巻き添え被害をもたらす可能性がある。
インテリジェントシューター:
インテリジェントシューターは、近くのドローンに対して正確な射撃を可能にするライフル搭載型システムを搭載している。特殊なスコープが射撃前に軌道を計算するため、他の方法と比較して命中率が大幅に向上している。
この技術の有効範囲は250m程度となるが、ドローンは高速で飛行するため、対応時間はわずか数秒しかなく、その有効範囲を超えた場合には使うことができない。
レーザー:
レーザーシステムは、強力な光線を放射することで、ドローンの構造や電子機器を破壊することが可能だ。レーザーは、幅広い種類のドローンに効果を発揮し、空中の脅威を無力化する強力なソリューションとなる。しかし、その運用には特定の欠点があります。レーザーは標的に直接照射する必要があり、その強力なエネルギーはドローンを粉々に燃やすだけでなく、あらゆる情報も破壊し、データ復旧の機会も難しくする。さらに、破壊プロセスによってドローンの破片が落下し、巻き添え被害のリスクが生じる可能性があり、また建物やその他の飛行物体といった環境障害物も、特に人口密集地域や敏感な環境においては、レーザーの使用を困難にする要因となる。
電磁パルス(EMP)/高出力マイクロ波(HPM):
EMPおよびHPM技術は、放射線と強力な電波を利用し、高出力のエネルギーバーストを発生させるものだ。
EMPとHPMは無差別に作用し、甚大な付随被害を引き起こす可能性があり、内部回路を損傷して近くの電子機器やコンピューターを動作不能にする可能性がある。そのため、その広範囲かつ破壊的な影響を考えると、EMPとHPMはしばしば最後の手段として考えられている。
GNSSスプーフィング:
全地球航法衛星システム(GNSS)スプーフィングは、特定のエリア内でGPSなどの偽のGNSS信号を発信するものだ。GNSS受信機がこのスプーフィングされた信号を受信すると、位置を誤ってしまうことが起きる。ドローンの認識位置を間違った形で制御することで、ドローンを間違った経路に誘導し、事前にプログラムされた飛行計画に従った飛行や帰還を阻止できることが可能となる。
この方法は、環境を混乱させ、通信の継続性に影響を与えるという点では、そのエリア内のすべてのナビゲーションデバイスが偽装されたGNSS信号を受信し、誤った位置情報となってしまうリスクがある。
RFサイバーテイクオーバー:
RFベースのサイバーテイクオーバーは、妨害や破壊を伴わないアプローチであり、正確で短い信号を送信することで敵対的なドローンの制御権を奪取する方法だ。この技術は、操縦者のリモートコントローラーとドローン間のRF通信に焦点を絞り、効果的に介入してドローンの制御権を奪取する。制御権を奪取すると、ドローンを所定の経路に沿って安全な着陸地点まで誘導可能となっている。
また、短くターゲットを絞った送信といった仕組みのため、不正なドローンの群れに対しても、それぞれの周波数と送信パターン内で迅速に対処することで対抗できる可能性がある。ただし、この方法は非常に高度であり、対応できるドローンが限られてしまう。
カウンタードローンのその影響
現在もなお様々な地域での戦争や紛争において、その手段の中心がドローンとなっているケースも多く、その敵対するドローンに対するカウンタードローンの技術は進んでいる。一方でドローン自体もそのカウンタードローン対策に対応したドローンの開発も進んできており、その双方の技術がいたちごっこにもなってきている。
こういった環境下においての民間での大きな問題はこういったカウンタードローンの技術の機器が手に入りやすくなってきているということだろう。
そのことにより、悪意ある第三者の元にも、こういった機器が手に入りやすくなっていることを示している。現在、様々な分野でドローンの活用が進んできているが、そんな中で悪意ある第三者の妨害といったリスクも様々な理由で増えてきている。こういったリスクの軽減のためにも、民間のドローンに対しても、一定水準のカウンタードローンの対応も求められてきており、対策が継続していくという点においても、ドローンシステムそのものも、対抗技術の柔軟性を高めていく工夫も必要となってきている。