Airpeak S1の概要
国内外で注目を集めるSonyが開発したハイエンド空撮機 Airpeak S1。世界的な半導体不足の影響もあり当初の予定よりも少々遅れたが11月16日に販売を開始しました。Airpeak S1は、Sonyのフルサイズミラーレス一眼・αシリーズやFX3を搭載できる世界最小クラスの機体であり、機敏な運動性能、Webアプリケーションと連動した自動航行や機体情報管理など注目のポイントはいくつもあります。今回は筆者が体験会に参加させていただき実際に操縦した印象などをまとめたいと思います。
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圧倒的な運動性能と飛行の必要性に応じたセッティングが可能なソフトウェア
Airpeak S1のモーター対角は644.6mm。これは、対角寸法605mmのDJI Inspire 2とほぼ同等と考えてよいかと思います(もちろん「高さ」はAirpeak S1が526.8mmと高くなります)が、操縦しての第一印象は機敏かつ、制動もしっかりとしている…というものでした。大きさの割にとても良く動き、そして止まります。これは高価なカメラを積んで撮影飛行するなかでとても大きな安心につながるのではないでしょうか。しばらく操縦させていただく中で、下記の点が優れていると感じました。
「オンコース」の操縦しやすさ
Airpeak S1独自機能と言ってもいい「オンコース」。設定をONにすると、機体を旋回させるときに操縦者の思ったとおりに(まるでゲーム内で動かしているように)飛ばすことができます。
通常、機体を旋回させるときには遠心力によってドリフト(外側に滑る現象)が発生します。これを抑制するために、操縦者はラダー(回転)で機体の向きを変えつつエルロン(水平移動)を並行して旋回内側に入れて旋回します。Airpeak S1の「オンコース」はこのエルロンの入力を自動でしてくれるという機能で、操縦者はラダーの操作だけでドリフトを抑制した旋回が可能になるため、より簡単に自分がイメージした飛行ラインに機体を乗せることができ=撮影に専念することができます。
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バッテリーパックを除いても機体重量3.1kgになる機体が高速で旋回するとその遠心力も大きなものになります。実際、「オンコース」をON設定で操縦していて楽だった機体操縦も、設定をOFFにして操縦してみるとそれなりにドリフトして旋回しました。まだ操縦に慣れていない機体でもあるせいか、少し気を使いながら旋回しないとならない感じです。設定のON / OFFで別の機体を操縦しているかのような操縦感覚の違いは「オンコース」が飛行安定性に大きく機能している証拠とも言えるでしょう。
飛行スピードと小回りの効く旋回性能
何よりもAirpeak S1の特長と言えるのは、俊敏な運動性能です。最高速度90km/h(25m/s)にもなる運動性能は、プロペラやモーター、ESC(スピードコントローラー)などの飛行に直接影響する部分を独自開発したためと言います。テスト的に少し乱暴に操縦してみた感じだと、機体サイズの割に初速が速いのでキビキビ動く感じでした。機体斜角の設定にも寄りますが、初速⇒最高速までの時間も短い(0⇒80km/hまで約3.5秒、ペイロードなし時)ので、自動車などを被写体にした追い撮りも楽に対応できそうです。もちろん、飛行モードを選択することができますので、精密に飛行させたいとき、速度を出して撮影したいときなどシチュエーションに合わせてセッティング可能です。
また、旋回スピードの速さも注目したいところです。最大180°/s でラダーさせることができるので、旋回させる際にとても半径を小さくすることもできます。
各項目調整可能な専用飛行アプリケーションAirpeak Flight
個人的にとても利便性を感じたのは飛行アプリケーション「Airpeak Flight」の細かい設定項目です。最大速度、最大傾斜角度、ブレーキ、方向を限定した障害物検知センサーのON/OFFなど、項目を分けて設定することができます。例えば、最大速度2m/s+最大傾斜角度25°(最低)…と設定すると、ひじょうにゆっくりと一定のスピードで飛行させることがいとも簡単にできてしまいました。
プロペラの回転で揚力や推力を得ている回転翼型ドローンはスピードを出すと安定しますが、逆に低速だと不安定になりがちで、また、一定のスピードに保つには神経を使います。しかし、被写体に近い、低空飛行、狭い場所の飛行など撮影をしていると意外と低速&一定のスピードで飛行させる機会が多いものです。Airpeak Flight では、最大速度は1m/s単位、最大傾斜角度は25〜55°で1°単位で設定できますので、撮影シチュエーションに応じて自分好みの機体の動きにセッティングが可能です。ベストなセッティングは飛ばしながら微調整する必要がありましたが、バッチリ決まると操縦難易度が格段に下がり、撮影にさらに集中できました。
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充実の自動航行機能!使い方次第で大きな可能性も
Webアプリケーション「Airpeak Base」で自動航行の飛行プランを作成することができます。映像編集ソフトのようなインターフェイスで、タイムラインに沿って機体の位置(緯度・経度・高度)を指定したり、ジンバルの向きや動画・静止画の撮影タイミングを指定したりすることができます。
また、飛行軌道は直線的なものだけでなく、滑らかな曲線ルートの設定が可能です。Adobe Illustratorでも扱う「ベジェ曲線」によって曲線を描くことができます。この滑らかの曲線ルートの自動航行はとても可能性を感じます。従来の直線的なウェイポイントを活用した自動航行では(映像作品的な)空撮で使いにくかったのですが、曲線的に飛ぶことができればと利用場面が広がりそうです。実際の曲線的な動きを記録したキャプチャ映像がありますのでご覧ください。人間の操縦者が操縦したような滑らかな飛行をしています。
曲線的な自動航行のキャプチャ画面。人が操縦したかのような滑らかな飛行を実現している
さらに、Airpeak S1の自動航行機能には、一度飛行したルートを記憶させて飛行する「再現飛行」もあります。例えば、2オペレーション(機体操縦とカメラ操作を別々の人で行う撮影)ができない状況などで、一度目の飛行では飛行ルートを記憶させ、2度目の飛行でカメラワークをするという一人で2オペレーションも可能です。こちらの機能は試せなかったのですが、観光企画をドローンで実施している筆者としてはとても興味がある機能です。観光地で飛行ルートを予め設定し、一般観光客がカメラオペレーションだけ自分で行って自分が見たい景色を空から見る…などの企画も実施できそうです。
Sony開発1号機としては完成度が高いAirpeak S1!改善してほしい点もちらほら…
とても完成度が高く、独自機能も盛り込んだAirpeak S1ですが、もうちょっと改善してほしい点もちらほら。
まずは、多くの方が懸念しているバッテリー問題。カメラ搭載時で約12分という飛行時間はやはり短いかもしれません。ただ、大容量バッテリーも開発中とのことで、そのあたりは時間が解決してくれるはず。
また、意外とネックだと感じたのは収納問題です。それなりに大きな機体になりますが、なかなかコンパクトな収納が難しい。実際に購入したユーザーを見るとオリジナルでケースを用意してそれぞれ工夫している模様。このあたり、公式でコンパクト収納可能なケースも販売してくれるとありがたく思います。
とはいえ、とても魅力がつまったSony Airpaek S1。カメラメーカーSonyが主要部分を市販部品では目指した性能を実現できない、と自社開発した意味はとても大きいと思います。それだけクオリティを追求した機体が実際に完成していました。購入を迷っている方にこの記事が参考になれば幸いです。