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Vol.30 国家資格制度を見据えた操縦技術を考える[シュウ・コバヤシのDRONE MANIA]

Vol.30 国家資格制度を見据えた操縦技術を考える[シュウ・コバヤシのDRONE MANIA]

ドローンの国家資格

レベル4の飛行実現に向けた、ドローンの操縦免許の国家資格がこれから始まります。私もJUIDAのドローンスクール講師をやっておりますので、このお題はかなり重要なものになります。いままでも操縦技術はある程度の基準がありましたが、はっきり言って、団体や各スクールによって基準がバラバラでした。簡単すぎるものから、それは必要なのか疑問なレベルで難しいものまでありました。 本来なら7月末には詳細が発表されるはずでしたが、8月末まで延期されました。もっと延期されるのでは?なんていう噂まで出るほど、調整に難航しているようです。

そんな7月25日に、「『航空法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係告示及び通達の制定について』に対する意見の募集について」というパブリックコメントの募集が始まりました。

パブリックコメント制度とは

「国の行政機関は、政策を実施していくうえで、さまざまな政令や省令などを定めます。これら政令や省令等を決めようとする際に、あらかじめその案を公表し、広く国民の皆様から意見、情報を募集する手続が、パブリック・コメント制度(意見公募手続)です。」 とのことです(出典:デジタル庁「パブリック・コメント制度について」)。つまり、これから決めることをちょっと先出しして、意見を求めているわけです。ドローン関係でも今まで何回かありました。意見は通ったとは思えない言い訳みたいな回答が多いので、いや、今はパブリックコメント制度への愚痴はやめておきましょう。

今回のパブリックコメントで、まだ「案」の状態ですが、実技試験の概要がありますので、それをもとに求められる操縦技術がどのくらいなのかを見ていきましょう。

今まで必要とされていた操縦技術

現在行われているドローンスクールの操縦技術ですが、要件としては、国交省に許可申請を得る際の審査要領や飛行マニュアルに基づいているところがあります。

まずは「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」を見てみましょう(令和4年6月10日版)。「4-2 無人航空機の飛行経歴並びに無人航空機を飛行させるために必要な知識及び能力」という項目から一部抜粋します。

GPS(Global Positioning System)等による位置の安定機能を使用することなく、次に掲げる能力を有すること。

ア)安定した離陸及び着陸ができること。

イ)安定して次に掲げる飛行ができること。

  • 上昇
  • 一定位置、高度を維持したホバリング(回転翼航空機に限る。)
  • ホバリング状態から機首の方向を 90°回転(回転翼航空機に限る。)
  • 前後移動
  • 水平方向の飛行(左右移動又は左右旋回)
  • 下降

このような記載があります。省略しましたが、10時間以上の飛行経験があることが前提です。簡単にまとめると、GPSやビジョンポジションシステムを使わない、いわゆるATTIモードを使用して基本的な飛行ができれば良いという内容です。そんなに難しくなく、向かい合わせの対面操縦もなく、横向きの移動もないです。

では次に、国土交通省航空局標準マニュアル2(令和4年6月20日版)を見てみましょう。「2.無人航空機を飛行させる者の訓練及び遵守事項」の中を一部抜粋します。

2-1 基本的な操縦技量の習得

  • 離着陸操縦者から3m離れた位置で、3mの高さまで離陸し、指定の範囲内に着陸すること。この飛行を5回連続して安定して行うことができること。
  • ホバリング飛行させる者の目線の高さにおいて、一定時間の間、ホバリングにより指定された範囲内(半径1mの範囲内)にとどまることができること。
  • 左右方向の移動指定された離陸地点から、左右方向に20m離れた着陸地点に移動し、着陸することができること。この飛行を5回連続して安定して行うことができること。
  • 前後方向の移動指定された離陸地点から、前後方向に20m離れた着陸地点に移動し、着陸することができること。
  • この飛行を5回連続して安定して行うことができること。
  • 水平面内での飛行一定の高さを維持したまま、指定された地点を順番に移動することができること。この飛行を5回連続して安定して行うことができること。

2-2 業務を実施するために必要な操縦技量の習得

  • 対面飛行
    対面飛行により、左右方向の移動、前後方向の移動、水平面内での飛行を円滑に実施できるようにすること。
  • 飛行の組み合せ
    操縦者から10m離れた地点で、水平飛行と上昇・下降を組み合わせて飛行を5回連続して安定して行うことができること。
  • 8の字飛行
    8の字飛行を5回連続して安定して行うことができること。

ここでも10時間以上の飛行経験が前提ですが、GPSやビジョンポジションシステムを使うなとは書いてないのです。ですが、20m先への着陸や、8の字は意外と慣れないとできない動きです。そもそも、審査要領と飛行マニュアルが統一されていないのです。基準が曖昧ですよね。

ではドローンスクールではどうかといいますと、テストの項目を抜粋します。

GPSやビジョンポジションシステムを使用せず

  • 離陸、着陸
  • ホバリング(正面、右向き、左向き)
  • 前後、左右移動
  • 右向きの移動、左向きの移動

その他にも講習ではAモードの対面ホバリング、GPSを使ってのノーズインサークルや高低差のある移動なども行っています。ほとんどが、GPS等の安定機能を使わないAモードでの操縦になります。

無人航空機操縦士実地試験

それではパブリックコメントにあった資料から内容を見てみましょう。人口集中地区上空の目視外飛行を含むか含まないかで、一等と二等に分かれておりますが、含まない二等の簡単な方から抜粋します。

正常時の基本飛行

スクエア飛行

  1. GNSS ON、ビジョンセンサーONの状態で機首を前方にむけて離陸を行い、高度3.5メートルまで上昇し、5秒間ホバリングを行う。
  2. 試験員が口述で指示する飛行経路及び手順で直線上に飛行する。機体の機首は常に進行方向を向いた状態で移動をする。
  3. 移動完了後、着陸を行う

Vol.30 これからの操縦技術[シュウ・コバヤシのDRONE MANIA]

8の字飛行

  1. GNSSON、ビジョンセンサーONの状態で機首を前方に向けて離陸を行い、高度1.5メートルまで上昇し、5秒間ホバリングを行う。
  2. 機体の機首を進行方向に向けた状態での8の字飛行を、連続して二周行う。
  3. 8の字飛行完了後、着陸を行う。円直径は約5メートルとする。

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異常事態における飛行

  1. GNSSOFF、ビジョンセンサーOFFの状態で機首を前方に向けて離陸を行い、高度3.5メートルまで上昇し、5秒間ホバリングを行う。
  2. 試験員が口述で指示する飛行経路及び手順で直線上に飛行する。機体の機首は常に前方を向いた状態で側方への移動を行い続ける。
  3. 試験員からの緊急着陸を行う旨の口述指示があり次第、最短の飛行経路で指定された緊急着陸地点に着陸を行う。
Vol.30 これからの操縦技術[シュウ・コバヤシのDRONE MANIA]
※上記図版3点は、二等無人航空機操縦士実地試験実施細則 回転翼航空機(マルチローター)より引用

以上はあくまで「案」なので、これから変更される可能性もあります。ですが、方向性としては参考になると思います。この他にも昼間飛行の限定変更、目視内飛行の限定変更、最大離陸重量25kg未満の限定変更、がありますが、全てに共通するのはGPS等を使わない飛行(ATTIモード)は異常事態の時のみです。私の感覚としては、簡単だなと感じました。

今後の操縦技術

今の所、GPS等がなくても飛ばせるという要件は薄くなってきているようです。ただ、これで良いと思います。なぜなら最近のドローンは性能が上がり、GPSが途切れたとしても、ビジョンポジションが働き、昔に比べてAモードを使う機会が減ったからです。注釈が必要ですね、「DJI製のドローンを飛ばしている限りは」ですね。実際に、ここ最近屋外でAモードになったことがありません。

飛行技術がなくても良いというわけではありませんが、その比重は変わってきているのではないかと思います。8の字も慣れないと難しいのですが、Mavic3のように自動的にロールを入れてくれる機種と、入れてくれない機種では難易度が変わります。ノーズインサークルなど撮影で必要な飛行方法もありますが、ポイントオブインタレストやアクティブトラックを使うことで、難易度は下がっています。

それよりも、機体の知識や運用方法のほうが重要です。どうしてもドローン歴が長くなると、自分の技術を売りにしたくなり、そこでマウントを取りたくなるおじさんが出没します。その調整で国家資格の内容も調整に手こずっているのかな?と邪推しております。ちなみに、一等の方はGPSなどなしが基本です。それはそうでないと、と思います。 そこで問題なのは最近のDJIの機体はGPSどころかビジョンポジションさえもオフにできないので、そのあたりお願いいたします。DJIさん、お願いしますよ。

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