今年の1月からこの「Drone」サイトでは、メニューが広がり、"Space"も加わった。
ここには宇宙関連のニュースが掲載されている。
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宇宙関連のビジネスもPwCコンサルティングによると、グローバルで約40兆円(2020年時点)と試算されており、今後も大きく成長する見込みだという。
宇宙ビジネスにおける事業領域
同じくPwCコンサルティングのレポートによると、「バリューチェーン(アップストリーム、ミッドストリーム、ダウンストリーム)」と、「事業エリア(地上、準軌道・成層圏、軌道上、深宇宙)」の2軸により分類されるという。
バリューチェーン
- 「アップストリーム」:主にロケット・宇宙インフラ(人工衛星など)の製造・開発や打ち上げサービスが含まれる。
- 「ミッドストリーム」:主に衛星の管制・運用、地上局など地上設備~衛星間のデータの送受信・保存が含まれる。
- 「ダウンストリーム」:主に宇宙インフラの活用や宇宙関連のエンドユーザー向けサービスが含まれる。
事業エリア
- 「地上」:ロケットや衛星など宇宙インフラに関する部品供給・製造・開発および地上局など衛星運用や衛星とのデータをやりとりするための地上設備といった、地上で提供されるサービスが含まれる。
- 「準軌道・成層圏」:準軌道宇宙旅行など準軌道上で提供されるサービスが含まれる。
- 「軌道上」:衛星または国際宇宙ステーション(ISS)を活用したデブリ(破片等軌道上にある不要な人工物体)除去やR&Dなど、LEO(Low Earth Orbit)や
GEO(Geostationary Orbit)などの地球軌道上で提供されるサービスが含まれる。 - 「深宇宙」:月や火星、小惑星の宇宙開発・探査や宇宙旅行など、地球を離れた深宇宙で提供されるサービスが含まれる。
これまで政府系機関や大手企業が主導して取り組んできた事業領域は、ロケットや衛星の製造・開発、ならびに打ち上げ・軌道投入サービス、衛星運用や地上局運用、宇宙開発・探査などアップストリーム~ミドルストリームが中心だった。
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それが、昨今の世界中で宇宙ビジネスに関して、スタートアップが参入し、様々な領域で新たなビジネスが動き始めている。
その中では、イーロンマスクの「スペースX」やホリエモンの「インターステラテクノロジズ」を想起する人は多いと思うが、実際の宇宙ビジネスの大半は、こういった"アップストリーム"の領域ではなく、宇宙を利活用する"ダウンストリーム"が盛り上がり、宇宙ビジネスの事業領域は拡大している。
その背景には、「CubeSat(数キログラム程度の小型人工衛星)」に代表されるような衛星の小型化が進んだことにより、衛星開発期間も短縮され、圧倒的に安価なコストでの衛星製造が可能になり、それにより製造・開発・打ち上げコストが劇的に低減されたことから、数多くの衛星が軌道上に打ち上げられるようになった。欧米には1社だけで1,000機以上の小型衛星を自社ロケットで打ち上げている企業も出てきている。
国連宇宙部がOuter Space Object Indexというサイトで、過去に打ち上げられた人工物体のカタログを公開しているが、2023年5月時点で15,478機を超える登録となっている。
既に宇宙空間を15,000機超の衛星が稼働しているが、その衛星を使ったビジネスが本格化してきているのだ。
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衛星リモートセンシング市場
そのダウンストリームのサービスの中には、位置情報(GPSやみちびきなど)、通信・放送(Starlink、CS/BSなど)もあるが、そのビジネスとしての中心をなすのが、リモートセンシングである。
EU Agency for the Space Programme(EUSPA)が2022年に公開したレポート「EUSPA EO and GNSSMarket Report」によると、衛星リモートセンシングの市場規模は2021年時点で約28億ユーロ(約4200億円)であり、2031年には55億ユーロ(約8,250億円)超へと倍増すると予測されている。
セグメント別では、特に保険・金融分野での市場成長が見込まれている。また、国内外において衛星リモートセンシング市場における有力なプレーヤーが現れており、大型の資金調達・IPOに相次いで成功している。
衛星リモートセンシングの基礎と活用
衛星画像には、代表的なものとして光学画像とSAR(Synthetic Aperture Radar)画像の二種類があり、それぞれセンシング方法および特徴が異なる。
まず、光学画像とは、太陽光の反射光(可視~近赤外帯)をとらえたものであり、そのアウトプットは写真のような見た目となるため、直感的にわかりやすく扱いやすいデータとなる。
しかし、太陽光の反射光を観測するため、雲がかかっている場合や夜間などには観測ができないといった制限もある。
光学画像の活用例としては、古くからあるが気象状態の把握(多くは専門の気象衛星によって行われる)や農業での作物の生育状況のモニタリング、災害の前後での災害状況の変化などがある。
SAR画像とは、衛星自らが発した電波の反射波をとらえたものであり、そのアウトプットは直感的には分かりづらいデータとなっている。
一方で、観測に利用する電波は衛星自らが発するものであり、雲も透過することができるため、光学画像のような観測条件の制限はない。また、反射波の位相変化を観測することで地表面の微小変化をとらえることができる。
SAR画像の活用例としては、地盤沈下、森林伐採監視、船舶監視などがある。
リモートセンシングの現況~農作物の生育状況の把握という観点を中心に
この光学画像であれ、SAR画像であれ、ここ数年で衛星リモートセンシングが急速に拡大しているのは、先に記した多くの衛星が稼働する中での取得コストが劇的に下がってきていることに寄る。
まだ、光学画像に比べて、SAR画像は高価となっている。また、解像度や取得周期、取得までの日数などによって、コストは大きく変わってくる。
衛星リモートセンシングの黎明期の活用は、先物取引における農作物の生育状態の把握による出来高予測だったが、それはコストが高かったため、こういった金融に絡めての利用となっていた。
その後、2015年ぐらいから、ドローン(固定翼やマルチコプター)でのリモートセンシングの取組みが、農作物の生育状態(特に生育むらや病害虫など)の把握の取組みがされてきた。特に北米などにおいては、農業経営の観点から、その活用が進められてきていた。
農作物の生育状況の把握という観点で、昨年より劇的に環境が変わってきているのは、ロシアのウクライナ侵攻による穀物の供給不安である。これにより、小麦やとうもろこしなどの穀物が圧倒的に不足している。それまでも途上国を中心とした人口増加や気候変動によってそのリスクは懸念されていたし、一部は顕在化していたが、それが全面的に明るみに出た。各国の食糧安全保障の観点からも、それは深刻化している部分があるし、また、グローバルの食品産業といった点からも、その奪い合いの競争は激しくなっている。
その中で、各国も各食品産業企業も知りたいのは、どこでどんな作物がどのぐらい作られていて、今年の収穫はどのぐらいになるか、また、収穫時期はどうかといった農作物のサプライチェーンの情報である。
この情報取得合戦のツールとして、リモートセンシングが使われている。ここで衛星リモートセンシングとドローンでのリモートセンシングに関しての棲み分けが発生してきている。
衛星で大きくつかみ(作付け面積や全体状況の把握)、ドローンで細かい部分を補正する(今年の収量や収穫時期など)といった形だ。海外、特に北米では売り手(農家)が強い立場にあるため、自分でドローンによるリモートセンシングを行い、そのデータを有償で買い手(農作物の仲買や食品加工会社、大手のスーパーやチェーンのレストランなど)に売るといった動きも始まっている。
また、この動きと重ねて、SDGsの観点から、減化学肥料や減農薬の取組みも加速しており、ますます農作物そのものだけでなく、その情報の価値が上がってきている。その動きを捉え、大きく動き出しているのが、マイクロソフトとグーグルだ。
マイクロソフトのソリューションは「AI for EARTH」である。
「Cloud Agronomics」
"Cloud Agronomics は、リモート センシング技術と AI を使用して、農作物や土壌に関する洞察を生産者に提供します。そして、温室効果ガスの排出量を削減して持続可能な食料生産を促進するための、予防的分析の新しい波をリードしています。"
(https://www.microsoft.com/ja-jp/ai/ai-for-earth-cloud-agronomicsより引用)
グーグルのソリューションは「Google Earth Engine」である。
「Google Earth Engine」
"Google Earth Engine は、地球の様子を衛星画像によって可視化、分析できるクラウドベースの地理空間分析プラットフォームです。多くの科学者や非営利機関が、リモート センシング調査、伝染病流行の予測、天然資源の管理などで Earth Engine を利用しています。"
(https://www.google.com/intl/ja_in/earth/education/tools/google-earth-engine/より引用)
どちらのソリューションも、ChatGPTで賑わうAI技術の画像解析での利用とリモートセンシングと合わせ、より分析力を高めようとしている。
地球をどう捉えるかの新たなプラットフォームの戦いは既に始まっている。