
ドローンエンジニア養成塾は2020年7月19日、1期から8期の卒業生ならびに当日修了を迎えた9期生、塾長のランディ・マッケィ氏が自作機などの開発成果を発表するデモイベントを開催した。
ドローンエンジニア養成塾は、ArduPilotをベースにしたドローンソフトウェアエンジニアの人財育成を目指し、ドローン・ジャパンとJapanDronesが協働事業として2016年に開講した。

ArduPilotの魅力の1つは、ドローンのオープンソースのソフトウェアで、マルチコプターのみならず固定翼機やVTOL、ローバー、ボートなど、多様な形状や大きさのドローンに対応している点だ。
また、ArduPilotは、ドローンエンジニアのグローバルコミュニティとしても機能しているのだが、日本人には英語の壁が高かったため、春原氏らが「オープンソースのコミュニティを、日本語かつ塾形式で、日本国内で展開したい」とランディ氏に相談し、塾長を快く引き受けてもらい開講したそうだ。
春原氏は、「ドローンエンジニア塾の卒業生は、9期で300名以上となり、様々な広がりを見せている。近く、空・陸・水上の様々な領域に対応した機体を使ったドローントライアスロンを開催したい」と挨拶した。

また、ドローンエンジニア養成塾の塾長であり、ArduPilotの中核となる世界でも指折りのエンジニアであるランディ・マッケィ氏は、ArduPilotの技術とグローバルにおける活用の最新動向を紹介した。
ランディ氏は、Intel T265 3D Cameraを用いた非GPS環境下における自己位置推定では、屋内の想定した位置でピタリと止まるようになったことや、Intel D435 Depth Cameraを用いた障害物回避では、オブジェクトの奥行きを検知して3次元で回避経路をとれる可能性などについて解説した。
また、ArduPilotがLuaScriptにも対応し、従来よりも簡単に開発できるようになったことも紹介。「これにより、カメラやサーボの挙動などの細かい制御機能を開発するハードルが下がった」と説明した。

このような中、日本国内でもドローンエンジニア養成塾の卒業生・在校生の活躍により、多様な機体開発の可能性が具現化されている。発表会当日は、ボートによる海洋ゴミ回収プロジェクトや、離島物資輸送や緊急物資搬送用のドローン、パロット社DiscoのArduPilot化など、合計11組の取組がお披露目された。



デモでは、ハプニングを参加者の連携プレーで乗り切る一幕もあった。4期卒業生で現在はドローンエンジニア塾講師を務める、アイ・ロボティクスの我田友史氏は、マルチコプターとローバーを2台同時に制御する仕組みを披露した。実はこのデモの最中、ローバーが動かないハプニングが発生したのだが、自身のデモに成功していた高山誠一氏が、自作の無人自動散水車両を“緊急貸し出し”。
我田氏がその場で、高山氏のローバーを自身のプログラムにすぐ接続し直して、2台同時制御プログラムのお披露目に成功した。5期卒業生の高山氏は、高山ドローンリサーチ代表取締役で、ドローンエンジニア塾講師として我田氏とともにコース1を担当している。

このほか、2期卒業生でドローンエンジニア養成塾講師陣のリーダーも務める川村剛氏は、「ウェブ版ミッションプランナー」を発表した。ウェブインターフェースでやりとりできるGCS(Ground Control System)があれば、タブレットでも操作でき、現場でPCを持ち歩く負荷軽減できる。将来的には遠隔地からの機体管理も視野に入れる。

最後に、塾長のランディ氏が、ローバーの衝突回避技術や、Intel RealSenseトラッキングカメラT265を用いた非GPS環境下における自己位置推定技術の実演を行い、デモを締めくくった。

ArduPilotは多様な機体を開発できるばかりか、ロボットの制御システムを構築するコスト削減や工期短縮を図れる、いま注目の技術だ。日本国内のArduPilotコミュニティとして確実に機能しつつあるドローンエンジニア養成塾では、オンラインでの情報共有や技術的な相互サポートも活発で、今後も同塾から多様な機体が誕生することが期待される。今秋には節目となる第10期も開講予定で、7月中には募集を開始するとのことだ。
