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[ドローン実証実験レポート]Vol.02 ANA、五島市の離島間で「ドローンによる処方薬配送」

[ドローン実証実験レポート]Vol.02 ANA、五島市の離島間で「ドローンによる処方薬配送」

ANAホールディングス株式会社(以下:ANAHD)は、2020年11月5日、五島市にある福江島と嵯峨島の間でドローンを飛行させ、遠隔診療・遠隔服薬指導によって処方された薬を届けるという実証実験を実施した。使用した機体はACSL社製「PF-2」。福江島を飛び立ったドローンは高度約30mの低高度を約10分間自動航行して、嵯峨島港のランディングポイントに着陸。数秒で処方薬を格納した荷物を自動で降ろし、またすぐに離陸して福江島へ帰還した。

ドローン飛行ルート

国交省「スマートアイランド事業」の一環

五島市は2020年9月、国土交通省による「令和2年度 スマートアイランド推進実証調査」の実施地域に採択されており、同実証はこの一環として行われた。協議会構成員は、長崎大学大学院医師薬学総合研究科、ANAHD、NTTドコモ九州支社、五島市。協力事業者は、アバターロボット「newme」を提供するavatarin、物流ドローン機体を提供する自律制御システム研究所、風況情報のモニタリングではメトロウェザーとNTTコミュニケーションズが参画した。

ANAHD デジタル・デザイン・ラボ チーフディレクター 久保哲也氏が挨拶する様子

「離島にICTやドローンなどの新技術の実装を図る」としてスマートアイランド事業が進められるなか、五島市は遠隔診療とドローンによる処方薬配送に取り組んだ。遠隔診療では、アバターロボットを活用して、医師が患者の表情や患部を見ながら診察を行う実証を、2020年10月から2021年2月まで約4か月間実施する。

実施場所の嵯峨島(さがのしま)は、人口106名の二次離島。島内にある診療所には医師が常駐していないため、診察を受けるためには福江島から週に1回、医師が出張してくるのを待つか、船とバスを乗り継ぎ“1日がかり”で受診するかのいずれかである。ちなみに、福江島への定期船は1日に3~4便で、海が荒れれば欠航になる。

当日は快晴で風も穏やかだった

こうした医療事情を鑑みて、またコロナ影響下で遠隔診療条件が時限的・特例的に緩和された措置を受けて、今回の遠隔診療実証実験が実現した。ドローンによる処方薬配送の実証は、2020年11月2日から6日に実施。短期間ではあったが、遠隔診療と組み合わせて一気通貫した遠隔医療サービス提供のあり方を示せた点では非常に有意義な実証となった。

遠隔診療からドローン配送を「パッケージに」

嵯峨島港から徒歩2~3分にある嵯峨島診療所

今回の実証実験が画期的だったのは、遠隔診療からドローンによる処方薬配送を「パッケージにした」点だ。患者はまず、予約した時間に嵯峨島診療所を訪れる。ここには看護師が常駐しており、アバターロボットnewmeを使った診察を看護師がサポートした。

遠隔診療が終わったあとは、調剤師と対面した。医師と調剤師は別々の場所にいても、1台のnewmeに変わるがわるアバターインできる。遠隔で服薬指導をしたり、最近の体調を尋ねたりした。

医師がアバターインした様子

調剤師がアバターインした様子

次に、ドローンによる処方薬配送が行われた。福江島から自動航行でドローンが薬を運び、看護師が薬を受け取ったのち、患者に渡して一緒に中身を確認した。

ドローンが嵯峨島港に到着した様子

自動で荷物を降ろして再離陸する様子

看護師が荷物を受け取る様子

処方薬を受け渡す様子

ドローン配送実証実験では、メトロウェザーが開発したドップラーライダーとNTTコミュニケーションズが提供したクラウド等を活用した、リアルタイム風況情報の可視化も試みた。今後は、風況データの収集・蓄積により、上空風況のリアルタイム把握や風況予測の精度を上げて、実際のフライトに役立てていく方針だという。

ドップラーライダーは現状、羽田・成田・関空の3空港に数億円の機器が設置されているそうで、同社では微弱なレーザーでも捕捉できる技術を開発することで小型化・低価格化に成功している。1機で半径16kmまで風況データを取得できるといい、上空の風況把握が課題であったドローン配送における活用が期待される。

メトロウェザーのドップラーライダー

アバターロボットとドローン配送を組み合わせた実証は、ほぼスケジュール通りに完了した。現在は“プロ”がミスなく運用しているオペレーションを、今後いかに現地に移管していくか。ドローンの社会実装にあたっては、現地でのコーディネーターや推進役の存在がますます重要になるのではないだろうか。

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