このコラムで今年最後となるが、2021年もドローン界隈は様々な動きがあった。
ドローンへの関わり方によって、進捗度合いも異なってきていると思う。
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2021年を振り返る
ドローン関連のニュースとしては、やはり来年度のLevel4(人口集中地区での目視外飛行)の解禁に向けての制度設計の概要が打ち出されてきているが、機体登録、機体認証などや操縦資格といったことに関するものが注目を集めていた。
そのLevel4解禁に伴い、ドローンでの関連ビジネスが飛躍的に伸びていくのかという観点でいえば、やはり真っ直ぐには結び付いていかないように感じる。それはやはりドローンのビジネス展開という点でいえば、その中心は人口集中地区以外の地域であり、やはり必要不可欠な領域となってきているのは点検や測量、広域調査といった領域だからだ。
しかし、Level4解禁により、国がロードマップとして描いていたドローンの法制度上の目標は一旦クリアし、その中でよりどういった形で、ドローンの活用に結び付けていけばいいかということに集中していくことが出来るという点では前向きに捉えるべきであろう。
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また、日本において、ドローンのニュースとして、取り上げられる機会が多いのはドローンによる物流のニュースである。
前回のコラム「ドローンのサービスプロバイダー」でも記したが、ワールドワイドにおいてもドローン物流でうまくいっているのは、Ziplineのみで、その他は模索をしている。
日本では特に今回のLevel4へのロードマップの中でドローン物流は非常に意識をしていた領域の一つである。
制度としてのLevel4が仕上がる中で、このドローン物流はビジネスとして回るものになっていくのか、もしくは、地域インフラとしての手段として適切であるかどうかといったことを、リアルに検証していくことが重要だろう。
海外の事例をみても、そこの一番の近いところにあるのは薬や血清などの搬送にあるだろう(重量が軽く、単価や付加価値が高い)。
しかし、日本においては、どんな地域であっても比較的道路が整備してあることを考えると、陸上での自律走行車(自律カートのようなもの)とのコンビネーションは考慮にいれて考えることは重要だ。
ドローンの業界自体は今まで国プロといわれるような様々な国や自治体のプロジェクトの恩恵を受けてきた。ドローン物流などもそういったものが背景になければ実証実験を進めることも難しかっただろう。
その他でも点検や農業、防災などの分野で多くの「国プロ」が走っていたし、今も走っている。
しかし、ドローン業界自体として意識したほうがいいのは、国としてのその軸足は同じドローンカテゴリーと捉えられている「空飛ぶクルマ」にシフトしてきているということだ。
これからの国としての制度設計の中心は「空飛ぶクルマ」に移っていくだろう。
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「空飛ぶクルマ」の制度設計は「ドローン」よりもはるかにハードルも高く、それだけ各省庁での仕事が多くなるということでその制度設計のためにも予算が使われていくということだ。
それ自体の是非はここではコメントしないが、いずれにせよ、「空飛ぶクルマ」のビジネスの構図はこれまでのドローンとは異なり、モビリティといわれる領域になってくる。おそらくは多くのドローン関連事業者にとっては関係性が薄い分野となるだろう。
これからは、より民間の中できちんとどうしたらビジネスを回していけるのかということを念頭に置いて、ドローン関連の事業者は経営計画を再度作り上げていくことが必須となっていく。
この年末年始の中で、情報収集し、ビジネスを再構築していくことをじっくりと考え、年明けにはそのアクションにつなげていくことが重要だろう。
個人的にはこういったある種の変化点においては、やはり海外の動きをウォッチするということが多い。
前回のコラムもそういった意味において、世界のTOP3のサービスプロバイダーがどんなビジネスモデルなのかを把握してみたかったということもある。
年末年始でのドローンのビジネスパズルの破片として、参考になるのは、米国の動きだろう。
これも以前のコラム「新しいステージに入ったドローン産業」にも記したが、米国において、ドローンのプラットフォームがPX4で固まりつつある。
PX4はDronecodeといったオープンソース陣営において、2016年分裂が起こった際にその中心に返り咲いたフライトコードである。
その分裂を簡単に説明すると、それまでDronecodeのメインのフライトコードであったArdupilotがGPLv3であったため、Ardupilotの内部機能として、知財のあるソフトウェアを組み込む際には、ソフトウェアのソースコードを開示しなければならないということが、大手企業を中心とした知財を持った企業にとっては問題となり、そういった制約を持たないBSDライセンスであるPX4に乗り換えたということだ。
その詳しい経緯は以前のコラム「Dronecodeの変節」参照。
2016年以降、Ardupilotの着実な機能向上や安定性向上に比べて、PX4は2018年ぐらいまではあまり表に出てくるケースが少なかった。
Pixhawkの生みの親でPX4設立者であるLorenz Meier氏と、カリフォルニア大学バークレー校のMBA取得者でシリコンバレー出身のドローン業界のベテランSatori氏によって共同設立されたAuterionの登場とともに、急速に北米を中心に動き出した。
特に2019年にアメリカ国防省が積極的にPX4を採用することにより、DJIへの対抗ということもあり、一気にPX4が米国においてデファクトスタンダード化した。
筆者の元にも、Ardupilotの開発支援を行っていることもあり、PX4の問い合わせも増えてきているが、全体のストラクチャーというものは同様ではあるが、中身に関してはまったく別物となっている。
PX4の特徴としては、マルチコプターの基本機体制御に関しては、そのライセンス管理という点においても充実しており、また、Auterionを中心として企業が機体管理をするためのサービスやツールは充実してきている。一方、応用的な機体制御(例えば、室内航行などの機体制御)に関しては、各機体メーカーが独自で作っており、その技術が開示されていない。
PX4は機体開発のため、より高度なソフトウェアエンジニアを多く必要とするということがある。(よりコストがかかるということもあり、大手企業か、もしくは、より綿密な事業計画が必要となってくるだろう)
米国のドローン産業の動きとしては、そのPX4というプラットフォームの中で、様々なサービスが作られ始めている。
PCにおいて、Windowsというプラットフォームがデファクトになることで様々なソフトウェアが開発されたという流れとよく似ている。
そして、米国においても、日本とほぼ同時期に始まったドローンでのLTEサービスにより様々な動きが加速化している。
これはまさにPCがインターネットに繋がったときのネットバブルに似た動きである。
これにより、米国において、今まで世界を先行してきたITやネット産業の流れに、ドローンが完全に組み込まれたことを意味している。
そういった点において、日本は遅れを取り始めている。
米国において、ドローン活用の中心にある領域は工事進捗であった。
3DロボティックスがSOLOでDJIのPhantomにコテンパンにやられてハードウェア事業から撤退したにも関わらず、この工事進捗のソリューション「Site Scan」で見事に復活したことでもわかるであろう。
同様に農業分野においても、ドローンによるリモートセンシングが既に農業産業全体の中において定着化するとともに、SDGsの流れの中で、農地の価値基準ということでフィンテックの手法と相まって、農地の証券化といった動きもドローンやその他の自律移動ロボットからのデータ取得によって、活発化してきている。
日本と米国のドローンに対する大きな相違点は、日本においては物流や農薬散布といった作業代替としての役割が中心だったのに対して、米国においてはデータを取得するエッジであるということがいつでも中心であったということだ。
そのデータ取得という観点でみれば、その端末がインターネットにつながるということは、明らかに新しい世界がそこで形成されるということが想像できるのだろう。
米国がお祭り騒ぎといっていいほどにドローン業界が既存の大手ITやネット企業を巻き込みながら進んでいるのはある種当たり前のように思えてくる。
日本において、何かこの熱を感じられないのは、明らかに感度が落ちてきており、日本の長い停滞とも関係があることだろう。
しかし、まだ、米国でも動き始めたばかりであり、日本もまだまだ追いついていくことは可能だ。
(少なくとも法律や制度上の要件は異ならないし、逆に日本のほうが環境は良いくらいだ)
来年まずドローン関連企業が意識するべきは、このドローンのインターネットへの接続、つまり、ドローンの上空LTE利用である。
その詳しい内容は前々回のコラム「本格開始されたLTEの上空利用サービス」で触れた。
来年の1月6日にまず皮切りとして、君津のDDFFで「LTEドローン飛行体験会」が実施される。
まずはこういった体験会などに参加し、インターネットオンラインのドローンを実感し、様々なアイデアの中、サービスを生み出していって、ドローン産業をより活発化してもらいたい。