12月5日からレベル4(有人地帯の目視外飛行)での飛行に向けた新たな制度(航空法改正)が開始された。大きく分けると、以下の2つの制度となる。
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- 機体の安全性に関する認証制度(機体認証)
- 操縦者の技能に関する証明制度(操縦資格)
「操縦資格」に関しては、興味のある人や関係する人も多いため、様々な解説がされている。
このDRONEサイトのコラム欄でも、田口さんが分かりやすい説明をしているので、そちらを参照いただくとよいだろう。
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一方、「機体認証」に関しては、主に機体メーカーが係るものとなっており、解説を見かけることが少ない。この「機体認証」は結構複雑であり、分かりにくい部分や曖昧な部分も残しているが、紐解いてみたい。
飛行カテゴリー
まずは「操縦資格」とも連動する飛行カテゴリー決定のフロー図を理解する必要がある。それが以下のフロー図だ。このYes、Noに従って、カテゴリーが決まり、それに伴う「機体認証」や「操縦資格」、各種申請/許可の必要内容が決まってくる。
対象ドローンは100g以上。「特定飛行」は飛行する空域と飛行方法に分かれる(これは多くの人には馴染みの内容だろう)
飛行する空域
空港等の周辺、人口集中地区(DID)の上空、緊急用務空域(災害時など)、150m以上の上空。
人口集中地区および空港等の周辺区域の確認(国土地理院 地理院地図)
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飛行方法
- 夜間での飛行、目視外での飛行、人または物件と距離を確保できない飛行(30m未満)、イベント上空での飛行、危険物の輸送、物件の投下
カテゴリー
「カテゴリーⅠ」特定飛行に該当しない飛行。航空法上の飛行許可・承認手続きは不要。
「カテゴリーII」特定飛行のうち、無人航空機の飛行経路下において立入管理措置を講じたうえで行う飛行。(=第三者の上空を飛行しない)
- 「カテゴリーIIA飛行」特定飛行のうち空港等周辺、150m以上の上空、催し場所上空、危険物輸送及び物件投下に係る飛行並びに最大離陸重量25kg以上の無人航空機の飛行で、この場合立入管理措置を講じた上で、無人航空機操縦士の技能証明や機体認証の有無を問わず、個別に許可・承認を受ける必要がある。
- 「カテゴリーIIB飛行」特定飛行のうち、DID上空、夜間、目視外、人又は物件から30mの距離を取らない飛行であって、飛行させる無人航空機の最大離陸重量が25kg未満の場合については、立入管理措置を講じた上で、無人航空機操縦士の技能証明を受けた者が機体認証を受けた無人航空機を飛行させる場合、飛行マニュアルの作成等無人航空機の飛行の安全を確保するために必要な措置を講じることにより、許可・承認を不要とすることができる。
「カテゴリーIII」特定飛行のうち、無人航空機の飛行経路下において立入管理措置を講じないで行う飛行。(=第三者の上空で特定飛行を行う)
レベル4飛行(有人地帯における目視外飛行)でのカテゴリーIII飛行に関しては、一等無人航空機操縦士の技能証明を受けた者が第一種機体認証を受けた無人航空機を飛行させる場合のみとなり、飛行の形態に応じたリスク評価結果に基づく飛行マニュアルの作成を含め、運航の管理が適切に行われていることを確認して許可・承認を受けた場合に限る。
立入管理措置とは、無人航空機の飛行経路下において、第三者(無人航空機を飛行させる者及びこれを補助する者以外の者)の立入りを制限することを指す。
12月5日以前においては、「カテゴリーⅠ」および「カテゴリーII」の飛行に関して、ケースによって、申請・許可を得ることで飛行が可能であったし、また、12月5日以降もこの「カテゴリーⅠ」および「カテゴリーII」の場合は、変更はないので、操縦資格や機体認証を必ずしも必要としない。(上にもあるように「カテゴリーIIB」のケースにおいて、操縦資格や機体認証がある場合、申請許可・承認が不要となる)
今回の制度によっての変更点は、操縦資格者および機体認証取得機の場合、立入管理措置が不要になる点と今まで事実上許可が下りなかった人口集中地区での目視外飛行が可能になったという点となる。
逆を返すと、上記の飛行を求めないケースに関しては、今まで通り操縦資格や機体認証は必ずしも必要としておらず、現状のドローン活用のほとんどのシーンにおいては、新しい制度は必須ではないということを改めて認識しておく必要があるだろう(制度が始まり、「操縦資格や機体認証が必須となる」といったことがスクールの勧誘などに見られたり、活用ユーザーの内規に記載されたりするケースが見受けられるが、正しい認識の上、適正な形で法令順守に努めてほしい)。
機体認証
上記にあるような立入管理措置を不要にしたいシーンや人口集中地区での目視外飛行を求める場合には、操縦資格とともに、機体認証された機体が必要になる。
機体認証には第一種と第二種がある。
第一種:レベル4飛行相当となり、その中でも人口密度の高いエリアでの飛行と人口密度の低いエリアでの飛行に分かれている。
第二種:レベル4以外の飛行となり、機体の重量によって、以下のように区分されている。
- 100g以上4kg未満
- 4kg以上25kg未満
- 25kg以上
- 25kg以上+リスク高
必ずしも一般化しているわけではないが、この制度上、4kg未満を小型、4kg以上25kg未満を中型、25kg以上を大型としたい。
機体認証の流れ
機体認証の流れは、以下の流れとなっている。
型式認証は量産機以外、必ずしも必要としないが、型式認証を経由しない機体認証であってもほぼ同様の書類やプロセスを経由するため、型式認証を取得するケースが現実的であろう。
認証に関する大枠としては、設計(開発時に実機で検証)、製造過程(製品の均一性を審査)、現状機体検査に分かれており、型式認証は設計・製造過程の認証となる。機体認証に関しては、この設計・製造過程に加えて、現状機体検査が付加される。
型式認証を取得した場合には、同じ設計および製造過程の場合には、機体認証時に設計・製造過程の認証は省略できる。自作機などの機体認証の場合には、機体ごとに設計・製造過程の認証が必要となり、そのコストや手間を考えた場合には実際上は合わないだろう。
事前調整・申請前準備
事前調整や申請前準備に関して任意であり、義務ではないとしているが、この事前調整のプロセスにおいて、検査者は「機体認証取得までの想定スケジュールや登録検査機関においてマンパワーの観点等から検査を実施できそうかの見込みの確認」を行うということなので、実際は必須となってくるだろう。
<事前調整で必要な情報の例>
- 会社の概要(一般的な概要、ドローンに関する実績、型式認証の経験等)
- 型式認証を取得しようとする機体の概要(三面図、機能、特色等)
- 設計のコンセプト(何にどう使うのか、いわゆるCONOPS<Concept of Operations(機体構想)>案)
- 機体の開発スケジュール(設計開発に加え、申請後の進め方等)
また、特に新規の型式認証申請にあたっては、以下の情報を整えておくことが重要だろう。
- 適用基準及び適合性証明計画の原案
ⅰ サーキュラー No.8-001「無人航空機の型式認証等における安全基準及び均一性基準に対する検査要領」に定める安全基準に対する適用可否一覧及び本サーキュラー5-1-3 1)項で求める各基準に対する解析又は実証の選択を含む適合性証明計画の案
※サーキュラーって?
行政上の用語で、今回の場合、航空法その他関連法令(以下「法令」という)に基づき発行された通達等を示す(航空法の場合、航空機、装備品等の安全基準、環境基準及びこれらに関係すると認められるものとなっている)
検査者との調整の上、航空局は主に以下の項目の確認を行う。これは申請以降、適切にプロセスが進んでいくことを目的としている。
観点1:計画の実現性
- 申請のスケジュール概要
- 機体概要
- 型式認証取得までのスケジュール及びマイルストーン
- 型式認証取得に向けた準備状況(基準の入手状況等)
- 製造管理体制の説明
- 型式認証の経験
- 検査者との連絡体制
- 型式認証を円滑に進めるための重要な問題(課題)
- 調整の記録
観点2:適用基準の検討
- 適用基準の設定計画、適用基準及び適合性証明計画の原案
- 技術要素
- 基準に対する適用可否
観点3:申請書(案)の精査
- 型式認証申請書案
申請
申請後に機体製造を行う場合には以下の書類を準備し、申請時に既に機体製造が終わっている際はその結果を提出する。
- 設計計画書
- [設計関係]設計書/図面目録/設計図面/部品表等
- [製造関係]製造計画書/均一性が確保されることを証する書類等
以下、詳細となる。
設計計画書
- 検査者が実際の検査を行う前に申請に係る型式の無人航空機の設計の概略を知ることを目的としたもの
- 設計の概略(CONOPS)については申請時点では案レベルでの提出でOK
- 推進系統や性能、主要装備品の概略を記載
[設計関係]
- 設計書
- 適用基準への適合を示すための説明、その根拠となる諸計算、その他関連事項を記述した資料
- 個々の装備品や部品毎に、求めるものではなく、全機レベルでのものを提出
- 申請者の社内検討用に作成された設計書または諸計算書がある場合は、その書類をベースに作成し、提出
ソフトウェアを特定するための情報は設計書、設計図面、部品表のいずれかへの記載が必要
- 図面目録
- 型式認証を取得する無人航空機の型式仕様を管理するために必要な図面を一元管理するリスト
- 設計図面
- 申請者において最低限三面図レベルのものの提出が必要
- 設計図面が3次元データの場合は、三面図形式に印刷して、提出
- 個別部品の図面があれば、検査者と申請者との相互理解の観点から提出することが望ましい
- 部品表
- 無人航空機の型式を構成する全ての装備品及び一部の部品(検査要領第II部安全基準のセクション135の証明で特定されるフライトエッセンシャルパーツに相当するもの。)について、装備品/部品の名称、品番、製造者名、数量等を記載。なお、これらには、無人航空機の使用者が運用方式等に応じて任意に装着する装備品/部品を含む
- 記載する部品の単位は設計者が図面等で要求する単位。例えば、図面でモーターの品番が要求されている場合、モーター内部の構成部品まで記載する必要はない
- 仕様書
- 無人航空機の形態を特定するための仕様をまとめた資料となる。設計概念書(CONOPS)で同様の記載もされるので、「設計概念書(CONOPS)に記載のとおり」と記載することにより、当該文書の記載を簡略化することも可能
- 現在各社で発行されている取扱説明書に記載の仕様一覧に近いもの
- 無人航空機飛行規程
- 申請する型式に関し、安全基準セクション200に基づき作成
- 航空局承認対象1と承認対象外2~5を分けて記載
1.無人航空機運用限界
2.無人航空機の運用手順
3.性能情報
4.搭載情報
5.設計、運用又は取扱いによる安全な運用に必要なその他の情報 - 航空局承認対象頁については、飛行試験等で証明された事項が記載されるため、変更する場合は型式認証変更の手続きが必要
- 無人航空機整備手順書
- 申請する型式の無人航空機等に対する点検及び整備を行うための手順書(ICA)と更新検査等の方法を記した書類の二種類から構成
- ICAについては、安全基準のセクション205に基づき作成
- 更新検査等の方法を記した書類については無人航空機安全課長通達に記載要領がまとめられているため、そちらを参照
- 無人航空機の重量及び重心位置の算出に必要な事項を記載した書類
- 「無人航空機の自重及び重心位置」、「装備品等の名称、重量及び重心位置」、「発動機(発動発電機を含む。)が搭載された無人航空機にあっては、燃料タンクの使用可能量及び重心位置」を記載。計算による算出又は実機の計測でも可能
[製造関係]
- 製造計画書
- 型式認証を取得しようとする主要構成品、製造場所、主要な委託先、試験供試機の製造計画、関連手順、規定類、作業フロー等を明らかにするために作成するもの
- 検査者は製造計画書で当該無人航空機の製造等に関する内容を把握し、何を、いつ、どこで、どの様に製造過程検査を実施するのかを検討し、申請者と調整。この目的の一つに、適切な製造過程の検査を実施するために、申請段階から実際の作業に立ち会わなければ設計データが具現化されることができない工程の有無等を確認することにある
(注釈)製造計画書の提出時期が、原則、試験供試機の製造着手前となっている理由は、上記の様な調整・検討を行い、実施しなければならない製造過程の検査が実施不可能となること又は当該試験機が設計データを具現化していることが証明できず、手戻りが発生し、認証のスケジュール全体に与えるリスクを最小限にすることを目的にしている。
- 型式認証を取得するために受験する必要がある製造過程検査に応じるため、当該型式に係る無人航空機について、以下の事項について、文書化、当該文書の提出及び検査者への説明が必要
- 無人航空機の主な製造場所
- 当該無人航空機の主な構成品等の製造場所
- 製造等業務に関する主要製造者名(購入先、委託先等を含む)
- 材料、部品の調達・購入から、出荷に至るまでの製造工程の概要
- 製造過程に用いる手順書、検査記録、その他製造過程に適用する製造方法
(例)加工や組立をどの様に実施しているのか
(例)どの様な検査を実施しているのか - 管理の方法及び体制に係る規定等であって、図面に規定しないもの
(例)自社の品質管理体制に関する社内標準体系図
- 型式の均一性が確保されることを証する書類
- 型式の均一性が確保されることを証する書類として、型式認証を取得しようとする型式の無人航空機の製造等業務に係る品質管理及び品質管理体制を製造管理要領として文書化
- 品質管理及び品質管理体制は、均一性基準に適合していることも求めている。そのため、製造管理要領は均一性基準を満足する内容であることも必要
- 作成した製造管理要領が、均一性基準を満足しているかどうかについては、作成者によって確認され、検査者に提出及び説明をする必要がある
- 検査者は提出された製造管理要領と申請者からの説明にて、製造等業務が均一性基準を満足する品質管理及び品質管理体制で実施される準備が整っていることを書類検査として確認
- 製造管理要領の記載内容が均一性基準に適合していることをチェックシート等で整理/確認すれば、作成時の確認と検査者への説明の両方に使用することが可能
- その他参考事項を記載した書類
- 申請者はその他参考事項を記載した書類として、「安全性を確保するための管理の計画」を作成
- 「安全性を確保するための管理の計画」は航空局が確認。申請者は型式認証を取得するまでの間に以下の情報を盛り込んだ計画書を航空局に提出
1.型式認証等の取得者の責任
2.設計者名及び製造者名、型式名、製造番号
3.社内の責任部署及び担当
4.無人航空機等の使用(運航)者を管理する方法
5.定期的な運航状況の収集方法(故障、不具合及び欠陥の発生を含む)
6.他型式機の事故、インシデント情報等の収集方法
7.5)及び6)で得られた情報の分析及び評価フロー、責任部署、型式認証形態への反映方法等(品質管理及び品質保証体制も含む)
8.航空局への報告
9.その他検査者が必要とした事項
初回審査会
初回審査会(又は申請後の調整)では、以下の点について、申請者と検査者の間で協議し、見通しを立てていく。
- 設計概念書(CONOPS)の案
- 適用基準(安全基準と均一性基準)
- 特別な要件設定の要否
- 基準への適合をどう証明するかに関する計画(適合性証明計画:CP)
- 機体を製造する体制と手法に関する事項(製造計画書)
- 製造機の均一性確保に関する事項(製造管理要領)
特に、適用基準のうち安全基準はサーキュラー8‒001第II部表1から、以下の項目のどの基準への適合を示す必要があるのか、確認する。
これは第一種、第二種(4kg未満、4kg以上25kg未満、25kg以上という機体重量と飛行条件)によって適用項目が異なる。
この基準への適合が型式認証のための具体的な内容となる。
- 001 設計概念書(CONOPS)
- 005 定義
- 100 無人航空機に係る信号の監視と送信
- 105 無人航空機の安全な運用に必要な関連システム
- 110 ソフトウェア
- 115 サイバーセキュリティ
- 120 緊急時の対応計画
- 125 雷
- 130 悪天候
- 135 重要な部品(フライトエッセンシャルパーツ)
- 140 その他必要となる設計及び構成
- 200 無人航空機飛行規程
- 205 ICA
- 300 耐久性及び信頼性
- 305 起こり得る故障
- 310 能力及び機能
- 315 疲労試験
- 320 制限の検証
適合性証明計画・設計の検査
- 機体の製造に着手するためには、準備した以下の事項が合意に至っていることが必要
- 設計概念書(CONOPS)の案
- 適用基準(安全基準と均一性基準)
- 特別な要件設定の要否
- 基準への適合をどう証明するかに関する計画(適合性証明計画:CP)
- 機体を製造する体制と手法に関する事項(製造計画書)
- 製造機の均一性確保に関する事項(製造管理要領)
- 機体の製造着手後、合意した事項に変更が生じた場合には、速やかに検査者との調整が必要。(合意事項と異なる内容・状況下で飛行試験を開始しても、取得したデータの有効性が認められないため)
- 既製造機である場合には、上記にいう「機体の製造に着手するための事項」について、飛行試験前に申請者と検査者との間で合意する必要がある
適合性証明計画(CP: Certification Plan)
- 適合性証明活動の計画を示すもの。具体的には以下2項目を記載
- 安全基準の各セクションを証明する文書(適合性証明文書)と基準への適合を証明する方法(MOC: Means of Compliance)を列記
- 準備、申請、各種試験の実施等の実施時期スケジュールを(大まかに)記載
適合性証明文書とは
- 設計の検査は、大きく分けて解析書等による書類の審査と、実機を用いた各種の実証による審査で構成
- 解析書等による書類の審査の結果、基準への適合性が確認された場合、航空局は「適合性判定書」を発行
- 各種の実証を実施するための必要事項を記した書類の確からしさが確認された場合にも、航空局は「適合性判定書」を発行
- 適合性判定文書とは、この「適合性判定書」を発行する対象となる文書を指す
基準への適合を証明する方法(MOC)
- 設計に関し、どういった方法で基準への適合性を示すかを表すもの
- 型式認証で主に用いられる証明方法には、以下の種類がある
<書類検査>
MOC 1:設計図面
MOC 2:解析・評価
<書類検査+立ち合い検査>
MOC 4:実験室試験
MOC 5:試験機による地上試験
MOC 6:飛行試験
MOC 7:実物検査
設計の検査(試験の場合)
試験に関しては、以下の流れで行われる。
試験方案(合意)→適合検査→試験実施
- 試験方案の内容は以下を申請者と検査者合意の上で決定する。
- 試験条件
- 試験手順
- 合否判定基準(Pass/Fail Criteria)
- 適合検査に関しては、第二種・4kg未満で立会い項目などが適合性証明計画(CP)上で明確であれば、試験立会記録書(TWR: Test Witnessing Record)に統合して記載する場合は省略可
- 飛行試験の実施にあたっては、具体的にどのような試験を行うか、飛行試験の手順書(試験方案)の設定が必要
- 試験方案には、以下の情報を含み、試験の再現性を確保
- 飛行試験の概要
- 試験条件(気象・気温・風速・高度・飛行範囲等)
- 試験機材(計測器など)
- Pass/Fail Criteria
製造過程(工程の検査)と現物の検査
- 書類の検査:設計図(As Design)が適切に作業・検査手順に反映されているか(As Plan)を確認
- 作業工程への立会:書類の審査で確認した作業・検査手順等(As Plan)で適切に製造されるか(As Build)を確認
- 現物の確認:実地による検査で確認した機体に不具合がないことを確認(As Design= As Build)
型式認証の取得
- 飛行試験が終わると、申請者はその報告書をまとめ、検査者に提出
- 検査者は、それまでに行われた各種審査・検査の結果と飛行試験の結果を総合して、総合判定書を発行
- 最終審査会(又は最終調整)では、以下の発行文書について、申請者と検査者の間で最終合意を行う
- 設計概念書(CONOPS)
- 適用基準(合意した内容に変更がない場合はその確認)
- 適合性証明計画の最終版(合意した内容に変更がない場合はその確認)
- 無人航空機飛行規程
- 無人航空機整備手順書
- 製造管理要領
- 検査者が登録検査機関の場合は必要書類を航空局へ提出
- 提出資料は申請に必要な書類の最終版と、申請から型式認証取得までに検査者が確認した書類一式(適合性証明計画、適合性証明文書等)となる
- その後、登録検査機関から提出された資料に基づき航空局の内部手続きを経て、以下の文書が発行される
- 型式認証書
- 型式認証データシート
- 無人航空機飛行規程(運用限界の章)
- 無人航空機整備手順書
以上の型式認証が取得できた場合、その型式認証の内容に基づいて、各個別の機体認証が行われる。
機体認証の費用
機体認証にかかる手数料であるが、新品で新規申請の場合(国土交通省が検査を行う場合)以下となっている。
- 第一種型式認証:150万円程度
- 第二種型式認証:4kg未満:¥284,900、4kg以上25kg未満:¥418,800、25kg以上:¥835,600~¥992,900
詳しくは:無人航空機の第一種機体認証の手数料額
ここにある金額は、国交省が受ける場合の検査費用のみで、上記に記した各書類の準備にかかる費用や各試験に際しての費用などは含んでいない。
また、当然、これ以外に安全基準を通すための開発費用もかかってくるし、工場でのプロセス改善といった費用もかかってくるだろう。そういった意味においては、型式認証を取得するための総合的な費用としては、数百万~1千万超えになってくるだろう。
また、現状、適用基準の、特に安全基準に関して、第二種の重量25kg以上および第一種のレベル4の人口密度の高い地域に対する内容が具体的な形で決まっていないため、そういった内容を求める型式認証に関しては、なおコストや時間がかかることも予想される。
それを鑑みると、現状、この型式認証取得が必要な状況は、レベル3(人口集中地区以外の目視外飛行)の立入管理措置を講じない中でのドローン活用が中心になり、やはり、具体的には山間部や島しょ部でのドローン物流の実運用に向けてということになるが、この実用化に関しての一番の課題がビジネスモデル(物流にかかる費用<機体費用だけでなく、開発費や運用費など>を誰が負担するか)というところにあり、そのなかでこの型式認証取得の費用は、そのビジネスモデルの構築にむけても大きな負担になっていくだろう。
また、型式認証取得の準備に入ったとしても、認証取得まで、最低でも3カ月以上、現実的には6カ月から1年くらいかかるのではないかと思われる。どうしても先行投資的に動かざるを得ないが、それは事業企画の観点からも様々な検討が加えられるであろう。
また、制度として連携している「操縦資格」の取得に関しても、この「機体認証」の状況は理解して動くことが必要だろう。